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コーチングとは、自ら考え、行動を起こす人材を育むコミュニケーション技術の一つです。適切なコーチングを受けることで、これまで気づけなかった視点や考え方を得られ、目標達成に向けた行動を自ら選び取れるようになります。以下では、コーチングの歴史とビジネスにおける必要性について詳しく見ていきましょう。

1-1. コーチングの歴史

“コーチング”という言葉の起源には複数の説があり、必ずしも明確な一人の発案者がいるわけではありません。
英語では “coach”(馬車)という語が、人をある場所から別の場所へ導く比喩として用いられた歴史があり、そこから「導く」「援助する」の意味を持つようになったという説もあります。
20世紀後半になると、心理学・教育学・スポーツ分野で “コーチング” 的手法が発展し、特に1980〜1990年代以降、ビジネス分野にも広まっていきました。

日本では1990年代ごろからコーチングが注目され、コーチ養成スクールの設立や企業での導入が進み始めました。現在ではビジネスだけでなくスポーツ、学習、ライフプランなど幅広な領域で用いられています。

1-2. ビジネスにおけるコーチングの必要性

日本などで少子高齢化が進み、労働力人口が減る中、企業は限られた人材で高い成果を求められるようになっています。また、働き方改革やテクノロジーの変化により、従来の指示命令型のマネジメントだけでは通用しない場面が増えています。

こうした環境では、部下や社員にただ指示を出すのではなく、自ら考え、行動できる人を育てることが求められます。そのため、ビジネス現場でもコーチングが重要な役割を担うようになりました。

1-3. コーチの役割

コーチの主な役割は、話をしっかり聴きながら、クライアント(部下・社員など)が持っている内的資源を引き出し、自分自身の考えと行動へとつなげる支援をすることです。

コーチは自分の価値観や見解を押し付けず、あくまで相手の主体性を尊重しながら、一緒によりよい行動の方向を探ります。


2. コーチングと似た用語の違い

以下は、コーチングと他の手法との違いについての整理です。ただし、実際にはこれらの領域は重なりながら使われることも多い点に注意してください。

2-1. コーチング vs ティーチング

ティーチングは「教える」「指導する」が主であり、知識・スキルを伝える一方向のプロセスです。一方、コーチングは双方向的な対話を通して、相手自身が答えを見つける支援をする点で異なります。

2-2. コーチング vs コンサルティング

コンサルティングは、専門家が課題を分析・指摘し、解決策を提案するのが主な役割です。一方、コーチングではクライアント自身が考え、意志決定するプロセスを重視し、答えを導くのはクライアント自身という立場を取ります。

2-3. コーチング vs カウンセリング

カウンセリングは、過去の傷や心理的課題に焦点を当てて支援することが多いのに対し、コーチングは現在から未来に向けた成長や成果に向かう支援を主眼とします。

2-4. コーチング vs メンタリング

メンタリングでは、経験豊富なメンターが自身の経験や知見を伝えながら助言を与える傾向があります。コーチングは助言よりも「問い」「聴く」「気づかせる」ことを重視し、クライアント主体の対話を中心とします。


3. コーチングの種類

コーチングには目的や対象、領域に応じていくつかの種類があります。

  • ビジネスコーチング:組織・仕事上の目標達成、リーダー育成、成果向上を支援

  • ライフコーチング:人生全体・価値観・生き方をテーマにした対話支援

  • エグゼクティブコーチング:経営層・上位管理職を対象としたコーチング

  • セルフコーチング:自分自身で問いを立てて自己コーチングする方法

  • メンタルコーチング:心理的側面(不安・自信・モチベーション)を重視するコーチング


4. コーチングに必要な6大スキル ・・・ コーチング心理学の視点では、

コーチングを効果的に行うためには、以下のスキルが重要です。

国際基準である国際コーチング心理学会、また、書籍である「コーチング心理学ガイドブック」に基づき、コーチング心理学協会では、まず、以下の点を重視しています。

  1. 心理的安全性:信頼関係づくりをまずとるが重要。コーチング・アライアンス(コーチング同盟)確立すること

  2. 傾聴(アクティブリスニング):言葉だけでなく、感情・間・表情を含めて聴く。ロジャーズの人間性中心主義を尊重し、ポジティブ心理学の視点を活かす。

  3. 承認:相手の考えや変化を具体的かつ肯定的に認める。コーチング心理学では、アドラー心理学の勇気づけ、ポジティブ心理学の感謝、教育心理学的な承認を重視。

  4. 質問:思考を深め、気づきを促す問いかけ。クライエントの主体性、意思決定の尊重、認定行動コーチングなどのソクラテス質問法、動機づけ面接法のなど各アプローチを採用。

  5. フィードバック・提案:建設的な観点から相手の振る舞いを共有。学習、教育心理学的な視点を尊重して、効果的なフィードバックの方法を実践します。
    (アドバイスではなく、相手に気づいてもらう視点を重視)

  6. 心理教育:必要に応じて、知識や技術、ヒントの提要・教授。知らないこと、経験の無いことを無理に引き出そうせず、必要に応じて教育を行うことも重要とされています。
    (とくに、ポジティブ心理学コーチングの視点では)

5. 現代的なコーチングの原則・ポイント

現代では、コーチングを実践するうえで留意すべき原則や心がけです。

  • 双方向性を保つこと

  • 1対1の関係性を大切にすること

  • 継続性を重視して、反復・習慣化を図ること

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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