エグゼクティブ・ビジネスコーチングで活用できる質問集
エグゼクティブ・ビジネスコーチングで活用できる質問集:旅路と目的地のバランス
以下は、Athanasopoulou & Dopson (2018)の研究に基づいて作成した、エグゼクティブコーチングで使用できる質問法集です。「旅路(プロセス)」と「目的地(成果)」両方に焦点を当て、文脈を考慮した質問を用意しました。資格取得の参考にしていただければ幸いです。
1. コーチング前の準備質問
目的: 関係構築とコンテキスト理解のための質問
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目標設定と期待の明確化
- あなたはこのコーチングから何を得たいですか?
- 理想的な成果とはどのようなものでしょうか?
- 成功を評価する基準は何ですか?
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組織コンテキストの把握
- あなたの組織の文化はどのような特徴がありますか?
- 組織内でのあなたの役割とその期待は何ですか?
- このコーチングに関して、あなたの上司や組織は何を期待していますか?
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個人のバックグラウンド
- あなたのリーダーシップの強みと課題は何だと思いますか?
- 過去のコーチングや学習経験で役立ったことは何ですか?
- あなたの学習スタイルはどのようなものですか?
2. 「旅路」に焦点を当てた質問(プロセス重視)
目的: コーチングプロセスの質と意味を深める質問
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自己発見と内省
- 今日のセッションで最も重要な気づきは何でしたか?
- その気づきはあなたにとってどのような意味を持ちますか?
- この会話の中で不快または挑戦的に感じた瞬間はありましたか?
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コーチング関係の構築
- このコーチング関係であなたが最も価値を感じるのはどのような点ですか?
- コーチング関係をより効果的にするために何が必要ですか?
- 今日の対話で、もっと掘り下げたいテーマはありますか?
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プロセスの最適化
- コーチングの進め方で調整したほうがいい点はありますか?
- 次回のセッションまでにどのような準備や実践が役立つと思いますか?
- このプロセスをより有意義にするためのアイデアはありますか?
3. 「目的地」に焦点を当てた質問(成果重視)
目的: 具体的な成果と行動変容を促す質問
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具体的行動計画
- 次回のセッションまでに取り組む具体的なステップは何ですか?
- 今日の学びをどのように実践に移しますか?
- その行動の成功を測る方法は何ですか?
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障壁と解決策
- 目標達成の障害となる可能性のあるものは何ですか?
- その障壁をどのように乗り越えられますか?
- どのようなサポートが必要ですか?
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成功指標の設定
- 今日の話し合いの成果をどのように測定しますか?
- 短期的な成功の指標は何ですか?
- 長期的な変化を評価するためにどのような指標が役立ちますか?
4. 文脈要因を探る質問
目的: 個人・組織・関係性の文脈を理解し活用する質問
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組織文化・環境
- 組織のどのような側面があなたの目標達成を支援/妨げますか?
- 組織内でのキーパーソンは誰で、彼らとどう関わるべきですか?
- あなたの部署/チームの文化的特徴は、このプロセスにどう影響しますか?
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個人の特性・価値観
- あなたの個人的な価値観は、今の課題とどう関連していますか?
- あなたの強みをこの状況でどのように活かせますか?
- 過去の経験から、同様の状況をどのように乗り越えましたか?
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関係性の力学
- あなたと主要な利害関係者との関係性はどのようなものですか?
- それらの関係をどのように強化できますか?
- チームメンバーやステークホルダーはあなたの取り組みをどう認識していますか?
5. 振り返りと学習のための質問
目的: 各セッションからの学びを深め、内面化する質問
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セッションの統合
- 今日のセッションから最も価値のある学びは何ですか?
- それはあなたの考え方や行動にどのような影響を与えますか?
- あなたの視点や理解が変化した点はありますか?
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内省の促進
- このプロセスであなた自身について新たに気づいたことは何ですか?
- その気づきはあなたのリーダーシップにどう影響しますか?
- コーチングプロセスの中で、あなたが最も価値を感じている点は何ですか?
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継続的な学習
- この学びをさらに深めるために、どのような資源や支援が必要ですか?
- この経験をどのように他の状況に応用できますか?
- 自己成長のために次に探求したい分野は何ですか?
6. フォローアップのための質問
目的: 持続的な変化と成長を確保するための質問
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進捗の評価
- 前回のセッション以降、どのような進展がありましたか?
- 試みたことで効果的だったのはどの部分ですか?
- 予期せぬ課題や発見はありましたか?
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適応と調整
- 計画やアプローチで調整が必要な点はありますか?
- 状況の変化に応じて、目標を見直す必要はありますか?
- これまでの学びを踏まえて、どのように戦略を進化させられますか?
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持続可能性の確保
- この変化を持続させるために必要なサポートや仕組みは何ですか?
- 学んだことを組織内で共有・拡散する方法はありますか?
- この経験から得た最も重要な教訓は何ですか?
メモ欄
(コーチングセッション中の気づきや重要なポイントを記録するためのスペース)
使用上の注意
- 質問はコーチーの状況や文脈に合わせて適応させてください
- すべての質問を使う必要はなく、状況に応じて選択してください
- 「旅路」と「目的地」のバランスを意識してください
- 組織・個人・関係性の各レベルの文脈を考慮してください
- 定期的に進捗と方向性を確認し、必要に応じてアプローチを調整してください
参考文献: Athanasopoulou, A., & Dopson, S. (2018). A systematic review of executive coaching outcomes: Is it the journey or the destination that matters the most? The Leadership Quarterly, 29(1), 70-88.
投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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