04 / MODEL 02
AIの本当の強みは、答えを出すことではなく「あなたが思いついていない選択肢」を出せることです。
GROWはコーチングでもっとも広く使われる枠組みです。Goal(目標)→Reality(現状)→Options(選択肢)→Will(意思)の4段階を、AIと一緒に進める方法を、段階ごとの質問とプロンプトで具体的に解説します。
一般社団法人コーチング心理学協会 / AI×コーチング心理学研究所 / AI×GROWモデル
GROWはビジネスコーチングで広く使われる枠組みですが、AIと組み合わせる際には注意すべき点があります。
Q. GROWモデルの4段階とは何ですか?
A. Goal=何を達成したいのか、Reality=いま実際にどうなっているのか、Options=どんな方法がありうるのか、Will=そのうち何を、いつやるのか。この順に進めることで、思いつきではなく構造的に行動を決められます。
| 段階 | 問いの性質 | AIの得意度 | AIに任せてよい範囲 |
|---|---|---|---|
| G|Goal | 絞る(何を達成したいか) | △ | 目標を具体化する質問。目標そのものは決めさせない |
| R|Reality | 確認する(いま何が起きているか) | ○ | 事実と解釈を分けて整理する。評価はさせない |
| O|Options | 広げる(他にどんな方法があるか) | ◎ | 選択肢の列挙。ここはAIの独壇場 |
| W|Will | 決める(何を、いつやるか) | △ | 具体化の質問。選択そのものは人が行う |
GROWの4段階のうち、AIがもっとも力を発揮するのは O(Options) です。人は自分の経験の範囲でしか選択肢を思いつけませんが、AIは「他分野ではどうしているか」「制約がなければどうか」「逆にしたらどうか」といった発散を、疲れずに何度でも行えます。
逆に、G と W はAIに任せてはいけない段階です。何を目標にするか、どれを選ぶかは、その人の価値観と生活の文脈にもとづく判断であり、AIが代わりに決めると、実行されない目標が出来上がります。
各段階に、目的・AIの役割・質問リスト・やってはいけないこと・プロンプトを揃えました。
GOAL|目標
この段階の目的:「やったほうがよさそうなこと」ではなく「本当に達成したいこと」を区別する。目標の背後にある理由まで降りる。
AIの役割:目標を具体化する質問を一問ずつ出す/あいまいな言葉を問い返す。目標そのものは提案させない。
やってはいけない:AIに「よい目標」を提案させること。他人が設定した目標は、実行されないか、達成しても満たされません。
あなたはコーチング心理学にもとづくコーチです。私が本当に達成したいことを明確にする手伝いをしてください。
ルール:
・目標の候補を提案しないでください。質問だけをしてください。
・一度に1問だけ。150字以内。
・私があいまいな言葉(もっと、ちゃんと、きちんと等)を使ったら、その意味を問い返してください。
・私の答えを1行で言い換えて確認してから、次に進んでください。
進め方:
1. 何を達成したいのかを聞く
2. なぜそれが重要なのかを聞く
3. 達成したら何が変わるのかを聞く
4. いつまでに、どうなっていたいかを聞く
5. それが自分の望みか、周囲の期待かを確認する
最後に、私の言葉だけを使って目標を1文にまとめてください。あなたの表現を足さないでください。最後の「私の言葉だけを使って」が重要です。AIがきれいに言い換えた目標は、読むと納得しますが、自分の言葉ではないため動機になりません。
REALITY|現状
この段階の目的:いま実際に何が起きているのかを、評価を交えずに把握する。同時に「すでにできていること」も見落とさない。
AIの役割:事実と解釈を分けて整理する/すでにある資源を質問で引き出す/制約を洗い出す。評価や励ましはさせない。
やってはいけない:現状の把握を飛ばしてOptionsに進むこと。現状が曖昧なままの選択肢は、机上の空論になります。
あなたはコーチング心理学にもとづくコーチです。私の現状を整理する手伝いをしてください。
ルール:
・励ましや評価はしないでください。
・一度に1問だけ。150字以内。
・私の発言のうち、事実(観測できること)と解釈(意味づけ)が混ざっている場合は、どこが解釈かを指摘する質問をしてください。
進め方:
1. いま実際に起きていることを、事実だけで聞く
2. すでにできていること・使える資源を聞く
3. できていないこと・障害を聞く
4. これまで試したことと、その結果を聞く
5. 最後に、事実の一覧と、解釈の一覧を分けて箇条書きにしてください。「事実と解釈を分ける」はコーチング心理学の基本動作です。AIは分類が得意なので、この作業は任せて構いません。ただし、どちらに分類するかの最終判断は自分で行ってください。
OPTIONS|選択肢
この段階の目的:評価せずに、選択肢の量を出す。よい案を探すのではなく、思いついていなかった案を見つける。
AIの役割:選択肢を大量に列挙する/視点を変える質問を出す/他分野の方法を提示する。ここだけはAIに提案させてよい段階。
やってはいけない:この段階で選ぶこと。選択と発散を同時に行うと、思いついた最初の案に固定されます。
あなたは発想を広げる役割です。私が思いついていない選択肢を出してください。
ルール:
・評価やおすすめの順位づけはしないでください。並列に並べてください。
・実現可能性は考えなくて構いません。数を優先してください。
・現実的な案、極端な案、逆張りの案、他分野からの転用案を、必ず混ぜてください。
出力:
1. 選択肢を15個、1行ずつ挙げてください。
2. そのうち、私が自分では思いつきにくそうなものに★をつけてください。
3. 最後に、「この15個のどれを選ぶか」を決めるための判断基準を、質問の形で5つ出してください。
私の状況:〔ここに書く〕
これまで考えた選択肢:〔ここに書く〕「実現可能性は考えなくてよい」と書くのが要点です。実現可能性のフィルターを最初からかけると、出てくる案が既知のものだけになります。判断基準を最後に質問として出させることで、次のWillにつながります。
WILL|意思・行動
この段階の目的:選択肢を1つに絞り、いつ・どこで・どのくらいやるかまで具体化する。あわせて、次の振り返りの問いを準備する。
AIの役割:具体化する質問を出す/障害を事前に確認する/次回の振り返り用の質問を作る。選択そのものはさせない。
やってはいけない:「やってみます」で終わること。日付と場所が入っていない決意は、行動になりません。
あなたはコーチング心理学にもとづくコーチです。私が選んだ行動を、実行できる形にする手伝いをしてください。
ルール:
・私の代わりに選ばないでください。選択は私がします。
・「やってみます」「意識します」のような表現が出たら、いつ・どこで・どのくらいかを問い返してください。
・一度に1問だけ。150字以内。
進め方:
1. どれを選ぶか、選んだ理由を聞く
2. 最初の一歩を聞く
3. いつ・どこで・どのくらいやるかを聞く
4. 妨げになりそうなことと、その対処を聞く
5. 実行できたかどうかの判断基準を聞く
6. 最後に、次回の振り返りで私に投げる質問を5つ作って提示してください。最後の1行が、GROWを1回限りで終わらせないための仕掛けです。次のCHECKで使う問いが、この時点で用意されます。
GROWの弱点は、対話が終わった時点で満足してしまいやすいことです。
| GROW | PDCA | |
|---|---|---|
| 役割 | 考えて行動を決める | 行動して学習・改善する |
| 扱う時間 | 対話1回(30〜60分) | 1週間〜1か月 |
| 中心の問い | 何を、なぜ、どうやるか | やってみてどうだったか、次に何を変えるか |
| AIの主な仕事 | 質問の生成、選択肢の拡張 | 事実の整理、パターンの抽出 |
| 終わったら | PDCAへ渡す | GROWに戻る(目標そのものの見直し) |
改善では届かない問いが出てきたら、それはGROWに戻る合図です。改善はやり方を変えますが、方向そのものは変えません。
4段階を機械的に進めると、時間がかかるわりに浅い対話になります。
| 状況 | 厚くする段階 | 理由 | 最初に投げる問い |
|---|---|---|---|
| やりたいことがわからない | G・R | 目標以前に、価値観と現在地の言語化が必要 | 私が時間を忘れて取り組めたのはどんな場面でしたか? |
| 選択肢が思いつかない | O | 経験の範囲を超える発散が必要 | 制約がまったくなければ、私は何をしますか? |
| 決められない | W | 判断基準が言語化されていない | この選択で、私が守りたいものは何ですか? |
| 決めたのに動けない | W | 行動が大きすぎるか、日付がない | 明日の何時に、どこで、何をしますか? |
| キャリアを考えたい | G・O | 価値観の明確化と、選択肢の拡張の両方 | 5年後に後悔しない基準は何ですか? |
| 部下との1on1 | R・O | 相手の現状把握と、本人からの選択肢の引き出し | すでにうまくいっていることは何ですか? |
| チームの課題 | R・O | 事実の共有と、案の量の確保 | この状況を、事実と解釈に分けると? |
具体的な進行例は ケーススタディ をご覧ください。管理職・大学生・キャリア転換など6つの例を掲載しています。
GROWの基本
Goal(目標)、Reality(現状)、Options(選択肢)、Will(意思・行動)の4段階で対話を進める、コーチングの代表的な枠組みです。思いつきではなく構造的に行動を決められる点が特徴です。
GROWの4段階を生成AIとの対話で進める方法です。ただし全段階を任せるのではなく、Reality(整理)とOptions(拡張)はAIに任せ、Goal(何を目指すか)とWill(どれを選ぶか)は人が決める、という線引きをします。
Optionsの段階、つまり選択肢を広げる作業がAIの得意領域と正面から重なるためです。人は自分の経験の範囲でしか選択肢を思いつけませんが、AIは他分野からの転用や逆張りの案を疲れずに出せます。
役割が違うので、どちらかを選ぶものではありません。GROWで何をなぜどうやるかを決め、PDCAで実行して改善します。1周したら、学んだことを持ってGROWのGoalに戻ります。
AIとの対話であれば30〜60分が目安です。Optionsの段階だけを10分で回すといった部分的な使い方もできます。
各段階の進め方
「本当に達成したいことは何か」「なぜそれが重要か」「達成したら何が変わるか」を一問ずつ聞かせてください。目標の候補をAIに提案させてはいけません。他人が設定した目標は実行されません。
事実と解釈を分けることです。「うまくいっていない」は解釈で、「予定していた3回のうち1回しか実施できなかった」が事実です。AIは分類が得意なので、この作業は任せて構いません。
実現可能性のフィルターを最初からかけている可能性があります。AIには「実現可能性は考えなくてよい」「極端な案と逆張りの案を必ず混ぜる」と指示してください。数を優先すると、質は後からついてきます。
日付と場所が入っていないためです。「明日の何時に、どこで、何をしますか」まで具体化してください。AIには「意識しますという表現が出たら問い返してください」と指示しておけます。
「一度に1問だけ質問してください」と明示的に指定してください。指定がないと、AIはGROWの説明とテンプレートを一括で出力します。それは対話ではありません。
使い分けと応用
使えます。その場合はGoal(価値観の明確化)とOptions(選択肢の拡張)を厚くします。「制約がなければ何をするか」「5年後に後悔しない基準は何か」といった問いが有効です。
使えます。ただし1on1の場にAIを持ち込むことは推奨しません。面談の前に論点を整理し、面談後に自分の関わり方を振り返る、という前後での使い方が適しています。
ありません。状況によって重心を変えてください。選択肢が思いつかないならOptionsだけ、決められないならWillだけを扱う、という部分的な使い方も有効です。
解決志向アプローチ(うまくいっている例外を探す)、認知行動的アプローチ(考え方の癖を扱う)などがあります。目的に応じた使い分けは、心理学理論×AI活用データベースに整理しています。
判定として受け取るのは適切ではありません。AIの出力は仮説であり、検証するのは自分自身の経験です。「私はこういう人だ」と断定させず、「そう考えられる根拠は何か」と問い返してください。
AIを使いこなす鍵は、AIの操作方法ではなく「どんな問いを立て、何を振り返るか」です。コーチング心理学協会では、質問・目標設定・フィードバック・強みの活用を、演習中心のワークショップで学べます。
ご相談・ご提案の段階で費用はかかりません。