05 / SKILL
答えを出す力の価値は下がり、問いを立てる力の価値が上がる。これがAI時代のもっとも大きな変化です。
「プロンプトの書き方」は数年で変わります。しかし「何を問うべきか」は変わりません。このページでは、コーチング心理学の質問技法をAIとの対話に翻訳し、10種類の型として整理しました。
一般社団法人コーチング心理学協会 / AI×コーチング心理学研究所 / AI質問法と「問い」の設計
問いの質は、AIの性能ではなく、問いを立てる人の側で決まります。
| 観点 | 考えが止まる問い | 考えが動く問い |
|---|---|---|
| 形式 | はい/いいえで答えられる | 自分の言葉で説明する必要がある |
| 前提 | 答えの方向を含んでいる(誘導) | 前提そのものを問い直せる |
| 時間 | 「なぜできなかったのか」(過去の追及) | 「次に何を変えるか」(未来の設計) |
| 対象 | 「あなたはどういう人か」(人格) | 「そのときどうしたか」(行動) |
| 焦点 | 「何が問題か」(欠けているもの) | 「うまくいったのはどんなときか」(例外) |
| 数 | 一度に複数を聞く | 一度に1つだけ聞く |
| 範囲 | 「どうすればいいですか」(丸投げ) | 「私は何を大切にしたいのか」(自分の軸) |
「コーチとして」「質問だけをする役割で」と指定します。指定しないと、AIは自動的に助言者になります。
「助言・提案・結論は書かないでください」と明記します。これがないと、対話は1往復で終わります。
「一度に1問だけ」と指定します。複数まとめて聞かれると、人は最初の1問にしか本気で答えません。
コーチング心理学の質問技法を、AIとの対話に使える形に整理しました。
| いまの状態 | 足りない型 | 投げる問い |
|---|---|---|
| 何が問題かわからない | ① 探索 | 本当に問題なのは何ですか? |
| 話が抽象的で進まない | ② 明確化 | 具体的には、どういう状態ですか? |
| やる気が出ない | ③ 深掘り | なぜそれが重要なのですか? |
| 同じ考えをぐるぐる回っている | ④ 視点転換 | 別の立場から見ると、どう見えますか? |
| 選択肢が2つしかない | ⑤ 選択肢生成 | 制約がなければ何をしますか? |
| できないことばかり見えている | ⑥ 例外 | うまくいったのは、どんなときでしたか? |
| 納得して終わりそう | ⑦ 実行 | 明日の何時に、どこでやりますか? |
| 印象でしか振り返れない | ⑧ 振り返り | 実際に何が起きましたか?(事実だけ) |
| 毎回同じ話に戻る | ⑩ メタ認知 | 私は何を前提にして話していますか? |
コーチング心理学でよく使われる3つの技法を、AIとの対話に落とし込みます。
認知行動的アプローチで使われる技法で、思い込みを直接否定せず、根拠を問うことで本人に検証させます。AIは反論せずに問うのが得意なため、この技法と相性がよい一方、断定的な結論を出させないよう指示が必要です。
あなたはコーチング心理学にもとづくコーチです。私の考えの前提を、私自身が検証できるように手伝ってください。
ルール:
・私の考えを否定しないでください。また、正解を示さないでください。
・一度に1問だけ、150字以内で質問してください。
・「あなたは〜な人だ」のような人格の断定はしないでください。
進め方:
1. 私の発言のなかにある前提(決めつけ)を1つ選び、それを言い換えて確認してください。
2. その前提の根拠を聞いてください。
3. 反対の証拠がないかを聞いてください。
4. 同じ状況の他人にどう言うかを聞いてください。
5. 最後に、私の言葉だけを使って、検証後の考えを1文にまとめてください。
私が困っていること:〔ここに書く〕「否定しない」「正解を示さない」の2つがないと、AIはすぐに「そう考える必要はありません」と結論を言ってしまい、検証になりません。
事実は変えずに、解釈の選択肢を増やす技法です。ポジティブに考え直すことではありません。「他の見方もありうる」と気づくことが目的です。
| もとの枠 | 問い | 別の枠の例 |
|---|---|---|
| 失敗した | この経験から得た情報は何ですか? | この方法は合わないと分かった |
| 時間がない | 何を優先しないと決めましたか? | 優先順位を選んでいる状態 |
| 優柔不断だ | 何を大切にしているから迷うのですか? | 複数の価値を両立させようとしている |
| 人に頼れない | 頼ることを何だと思っていますか? | 自分で引き受ける力があるとも言える |
| 変化が遅い | 3か月前と比べて何が違いますか? | 見えにくい変化が積み上がっている段階 |
メタ認知とは、自分の思考や感情を一段上から眺める働きです。AIとの対話は、頭の中にあるものを外に出す作業なので、それ自体がメタ認知の練習になります。
これまでの私の発言を読み返して、次の3つを教えてください。
1. 私が繰り返し使っている言葉や表現(頻度の高いものから5つ)
2. 私の話に共通して含まれている前提(3つ。「〜と考えている可能性があります」の形で、断定はしないでください)
3. 私が触れていない側面(3つ。質問の形で)
注意:私の性格や能力についての評価は書かないでください。観察された言葉と、そこから考えられる可能性だけを書いてください。「性格や能力の評価は書かない」が重要です。この指定がないと、AIは性格診断のような文章を書きはじめ、根拠のない自己像が強化されます。
プロンプト集は便利ですが、そのままでは自分の状況に合いません。
| ① 心理学的な目的 | ② 使う技法 | ③ AIへの指示(要点) |
|---|---|---|
| あいまいな目標を具体にする | 目標設定・SMART | 「目標を具体化する質問を一問ずつ。提案はしない」 |
| 視野が狭くなっているのを広げる | 選択肢生成・逆説 | 「実現可能性を問わず15案。極端な案を混ぜる」 |
| 思い込みを検証する | ソクラテス式質問 | 「否定せず、根拠と反証を問う。正解は示さない」 |
| できていることに目を向ける | 解決志向・例外探し | 「問題ではなく、うまくいった場面を聞く」 |
| 強みを言語化する | 強みに基づくアプローチ | 「過去の具体的な場面から共通点を質問で引き出す」 |
| 感情を扱える大きさにする | 感情のラベリング | 「感情に名前をつける質問。診断や助言はしない」 |
| 行動を起こしやすくする | 実行意図 | 「もし〜のときは〜する、の形にする質問」 |
| 振り返りを学習に変える | 自己調整学習 | 「事実→差分→パターン→変更点の順に一問ずつ」 |
| 考え方の癖に気づく | メタ認知 | 「観察された言葉と可能性のみ。性格評価は禁止」 |
| 言いにくいことを伝える | アサーション・Iメッセージ | 「主語を私にして言い換える。相手を評価しない」 |
あなたはコーチング心理学にもとづくコーチです。次のルールを必ず守ってください。
1. 助言・提案・結論は書かず、質問だけをしてください。
2. 一度に質問するのは1問だけです。
3. 1問は150字以内にしてください。
4. 私の性格・能力・気持ちを断定しないでください。
5. 私の答えを1行で言い換えて確認してから、次に進んでください。
このあと、〔目的〕のための対話をはじめてください。この5行を土台にして、最後の1行だけを目的に応じて差し替えます。プロンプト集を暗記するより、この骨格を覚えるほうが応用が利きます。
| NGの指示 | 何が起きるか | 代わりにする指示 |
|---|---|---|
| 「私に合った目標を提案して」 | 自分のものでない目標が出来上がる | 「目標を具体化する質問をして」 |
| 「私の性格を分析して」 | 根拠のない自己像が固定される | 「私の発言に共通する前提を、可能性として挙げて」 |
| 「これは正しいですか?」 | AIの判断を正解として受け取る | 「この考えの根拠と、反対の証拠を問う質問をして」 |
| 「励ましてください」 | 事実の確認が甘くなる | 「評価や励ましは書かず、事実を聞いてください」 |
| 「まとめて全部答えて」 | 対話ではなくテンプレート出力になる | 「一度に1問だけ聞いてください」 |
問いの基本
答える前と後で、その人の見え方が変わる問いです。情報を引き出す問いではなく、考えを動かす問いを指します。自分の言葉で説明する必要があり、答えの方向を含まず、行動につながる問いが該当します。
悪い問いは、はい/いいえで答えられ、答えの方向を含み、過去の追及や人格の評価に向かいます。良い問いは、自分の言葉で説明する必要があり、前提そのものを問い直せ、未来の行動につながります。
3つの原則があります。役割を与える(コーチとして質問だけをする)、助言を禁止する、一度に1問だけにする、です。この3つを指示するだけで、AIの応答は大きく変わります。
判断をAIに渡してしまうからです。一般論が返ってきて納得しますが、行動は変わりません。同じ状況でも「私は何を大切にしたいのか」に変えると、答えは自分の中から出てきます。
考えを広げたいときはオープン、事実を確認したいときはクローズドです。振り返りの冒頭のように事実確認が目的の場面では、クローズドのほうが正確な材料が集まります。
10の型
探索・明確化・深掘り・視点転換・選択肢生成・例外・実行・振り返り・学習・メタ認知の10種類です。対話が行き詰まったとき、いま足りていない型を選ぶことで、話を進められます。
何が問題かわからない段階なら探索、話が抽象的なら明確化です。もっとも使用頻度が高いのは明確化質問(具体的にはどういう状態ですか)で、これだけでも対話の質が上がります。
解決志向アプローチで使われる技法で、問題が起きなかった場面を探す問いです。「うまくいったのはどんなときでしたか」と聞くことで、すでに持っている解決策に気づけます。
「いま私は何を前提にして話していますか」「私が繰り返し使っている言葉は何ですか」「私が避けている話題はありますか」などです。AIに投げる場合は、性格の評価をしないよう明示してください。
技法
思い込みを直接否定せず、根拠や反証を問うことで、本人自身に検証させる技法です。認知行動的アプローチで使われます。AIに使わせる場合は「否定しない」「正解を示さない」を明示してください。
出来事の意味づけの枠組みを変える技法です。事実は変えずに、解釈の選択肢を増やします。ポジティブに考え直すことではなく、他の見方もありうると気づくことが目的です。
つらい状況を無理に前向きに解釈させるのは、リフレーミングではなく否認です。「それでもつらい」という事実を残したまま、別の見方を1つ足すのが正しい使い方です。
推奨しません。AIはテキストしか見ていないため、感情の断定は根拠を欠きます。「〜のように感じている可能性がありますか」と、本人に確認させる形にしてください。
プロンプト設計
必要ありません。共通の骨格(助言禁止・1問ずつ・150字以内・断定禁止・言い換えて確認)を覚え、最後の1行だけを目的に応じて差し替えるほうが応用が利きます。
使えますが、そのままでは自分の状況に合わないことが多いです。目的(何を変えたいか)→技法(どの心理学的アプローチか)→指示文、の順で組み立てられるようになると、自分で作れるようになります。
プロンプトの冒頭に「助言・提案・結論は書かず、質問だけをしてください」と明記してください。生成AIは既定では助言者としてふるまうため、明示的に禁止する必要があります。
「私の性格を分析して」という指示は避けてください。根拠のない自己像が固定されるおそれがあります。「私の発言に共通する前提を、可能性として挙げてください」という形に言い換えると、検証可能な材料になります。
AIを使いこなす鍵は、AIの操作方法ではなく「どんな問いを立て、何を振り返るか」です。コーチング心理学協会では、質問・目標設定・フィードバック・強みの活用を、演習中心のワークショップで学べます。
ご相談・ご提案の段階で費用はかかりません。