一般社団法人コーチング心理学協会 / AI×コーチング心理学研究所 / AIGROW尺度 / AIGROW尺度とは|測るもの・4因子・統計データ
AIを活用したGROWモデルスキル尺度(AIGROW)が何を測り、何を測っていないのか。GROWモデルとの関係、4つの因子の定義、採点と5段階区分の考え方、そして統計的な検証結果までを、専門用語をかみくだいて説明します。
Q. AIGROW尺度とは何ですか?
A. 「AIを活用したGROWモデルスキル尺度(AI-assisted GROW Model Skill Scale)」の略称で、対話型AIを使いながら目標を明確にし、現状を捉え、選択肢を広げ、行動へつなげる力を測る12項目・4因子の心理尺度です。一般社団法人コーチング心理学協会が、コーチング心理学とポジティブ心理学の観点から開発しました。
| 測っているもの | 測っていないもの |
|---|---|
| AIとの対話を通じて、自分の考えが整理されている感覚 | AIの知識量・専門用語の理解度 |
| AIに何を尋ねるかを自分で決められている感覚 | プロンプトを書く技術的な巧みさ |
| AIの提案を材料として、自分の判断につなげられる感覚 | AIの出力をそのまま採用できるかどうか |
| 4つの段階のどこでAIを使えているかという分布 | AI活用の総合的な優劣・能力の高さ |
| 現在の状態(自己申告による主観的な手ごたえ) | 客観的な行動記録・実際の成果 |
この表の右側にあるものは、いずれもこの尺度の対象外です。とくに「AIをたくさん使っているほど高得点になる」わけではない点にご注意ください。AIに任せきりで自分の考えが動いていない場合、項目に正直に答えれば得点は上がりません。
GROWモデルは、ジョン・ウィットモアらによって広められた対話の枠組みで、コーチングの現場で長く使われてきました。特別な理論というより、人が何かを決めて動くときに自然にたどる順番を、4つの言葉で整理したものと考えるとわかりやすいかもしれません。
| 段階 | この段階ですること | 代表的な問い | AIとの関わり方 |
|---|---|---|---|
| G|Goal(目標) | どこへ向かうのかを決める | 何が達成できたら満足ですか/それはいつまでですか | 目標を決めるのは本人。AIは問いを出す役 |
| R|Reality(現状) | 今どこにいるのかを確かめる | 今の状況を事実だけで挙げると何ですか/すでにできていることは | AIは事実の整理役。評価や点数づけはさせない |
| O|Options(選択肢) | 進める道をできるだけ多く見つける | ほかにどんなやり方がありますか/制約がないとしたら | AIが最も力を発揮する段階。ただし選ぶのは本人 |
| W|Will(意思・行動) | 何を、いつやるかを決めて動く | 最初の一歩は何ですか/それはいつやりますか | AIは行動を刻む役。続けるかどうかを評価させない |
この4段階は、上から順に一度だけ通るものではありません。実際には、選択肢を考えているうちに目標そのものが変わる、行動してみたら現状の見え方が変わる、といった行き来が起こります。行き来があること自体が、対話が進んでいるしるしと考えられています。
GROWモデルをAIと実際に回す手順は、AI×GROWモデル のページで、各段階の質問例とプロンプト全文とともに解説しています。
| 段階 | AIの得意さ | 理由 | 人が手放してはいけないこと |
|---|---|---|---|
| Goal | △ | 候補は出せるが、何を大切にしたいかはAIには決められない | 何を目指すかの最終決定 |
| Reality | ○ | 感情を挟まず、書かれた内容を整理し直せる | 書かなかったことの重み・違和感の判断 |
| Options | ◎ | 自分では思いつきにくい方向の案を大量に出せる | どれを選ぶかという判断軸 |
| Will | ○ | 行動を小さく刻む、止まったときに整理を手伝える | 続けるか休むかの決定・自分への評価 |
AIGROW尺度で4因子の得点差を見ると、多くの場合、この得意・不得意の分布がそのまま個人の得点にも表れます。Options因子が高く出やすいのは、AIがその段階で力を発揮しやすいためであり、その人の性質だけを反映しているわけではありません。
逆に言えば、GoalやWillの得点が高い方は、AIが得意でない領域までAIとの対話を持ち込めているということでもあります。その場合、どのような問いを立てているのかを言葉にできると、他の方にとって大きな手がかりになります。
AIとの対話を通して、自分が本当に望んでいることを言葉にし、輪郭のはっきりした目標に変えていく力です。
この因子の定義GROWモデルの最初の段階である「Goal(目標)」は、対話の行き先を決める段階です。この因子が測っているのは、AIに目標を決めてもらう力ではなく、AIとのやりとりを通して、自分の中にすでにある願いを、自分の言葉で明確にしていく力です。
3つの項目は、それぞれ少しずつ違う側面を見ています。1つめは「目標をはっきり定められるという手ごたえ」、2つめは「価値観という土台とつなげて目標を立てられること」、3つめは「未来の場面を具体的に思い描けること」です。つまりこの因子は、決める・根づかせる・描くという3つの働きの合成として理解できます。
AIの客観的な視点を借りて、自分の現在地・強み・課題を、責めることも甘くすることもなく眺める力です。
この因子の定義GROWモデルの「Reality(現状)」は、今どこにいるのかを確かめる段階です。目標が目的地だとすれば、現状は出発点にあたります。出発点があいまいなままだと、どんなに良い目標を立てても、進む道筋が描けません。
この因子が測っているのは、AIという「感情を持たない第三の視点」を使って、自分の状況を落ち着いて眺める力です。3つの項目は、「状況全体を客観的に捉えること」「強みと課題を分けて整理すること」「取り組むべき課題を的確に絞ること」という、段階の異なる3つの働きを見ています。
AIを発想の呼び水として使い、選択肢を広げ、比べ、自分なりの形にまとめていく力です。
この因子の定義GROWモデルの「Options(選択肢)」は、目標と現状の間にある道を、できるだけたくさん見つける段階です。コーチングでは、この段階で「広げる」と「絞る」を分けて行うことが重視されます。同時にやろうとすると、良いアイデアが出た瞬間に評価が始まり、発想が止まってしまうためです。
3つの項目は、この段階の3つの局面を見ています。7番は「AIの提案に触発されて自分の中から案が出てくること(広げる)」、8番は「複数の案を並べて比べられること(絞る)」、9番は「借り物ではなく自分のアイデアとして形にできること(つくる)」です。
AIの支援を受けながら、決めたことを行動に移し、続け、つまずいても戻ってこられる力です。
この因子の定義GROWモデルの「Will」は、意思と行動の段階です。ここには「始める」「続ける」「立て直す」という3つの異なる力が含まれています。この3つは似ているようで別物です。始めるのが得意でも続かない人、続けられるが一度止まると戻れない人など、組み合わせは人によって大きく異なります。
3つの項目は、まさにこの3局面に対応しています。10番は計画から着手まで、11番は継続、12番は困難のあとの回復です。とくに12番は、レジリエンス(立ち直る力)に近い性質を持っており、この因子の中でもやや異質で、重要な項目といえます。
| 得点 | 段階 | 目安の位置 |
|---|---|---|
| 12点以上 | かなり高い | 平均より1.3標準偏差以上高い |
| 10〜11点 | 高い | 平均より0.6〜1.3標準偏差高い |
| 7〜9点 | 普通 | 平均の前後0.6標準偏差の範囲 |
| 5〜6点 | 低い | 平均より0.6〜1.0標準偏差低い |
| 3〜4点 | かなり低い | 平均より1.0標準偏差以上低い |
| 得点 | 段階 | 目安の位置 |
|---|---|---|
| 43点以上 | かなり高い | 平均より1標準偏差以上高い |
| 38〜42点 | 高い | 平均より0.5標準偏差ほど高い |
| 27〜37点 | 普通 | 平均の前後0.5標準偏差の範囲 |
| 22〜26点 | 低い | 平均より0.5〜1標準偏差低い |
| 12〜21点 | かなり低い | 平均より1標準偏差以上低い |
たとえば因子得点が9点と10点では、表示される段階が「普通」と「高い」に分かれます。しかしこの1点差は、12項目のうちどれか1つの回答を隣のマスに変えただけで動く幅です。境目付近の得点は、両方の段階の解説を読んでみることをおすすめします。どちらがしっくりくるかを考えること自体が、自己理解につながります。
適合度:CFI=.991, TLI=.988, RMSEA=.049 [95% CI: .043, .055]
信頼性:α = .90〜.91, ω = .90〜.91, AVE = .76〜.78
参考値:12項目総合:M=32.0, SD=11.0(N=500 推計)/各因子3項目:M=8.0, SD=3.0
| 指標 | 本尺度の値 | 一般的な目安 | 何を表すか |
|---|---|---|---|
| CFI | .991 | .95以上 | 想定したモデルの当てはまりのよさ。1に近いほどよい |
| TLI | .988 | .95以上 | 項目数の影響を調整した当てはまりのよさ |
| RMSEA | .049 | .06以下 | 当てはまりの悪さ。小さいほどよい |
| α係数 | .90〜.91 | .80以上 | 同じ因子の項目が一貫して同じものを測れているか |
| ω係数 | .90〜.91 | .80以上 | αより前提のゆるやかな内的整合性の指標 |
| AVE | .76〜.78 | .50以上 | 因子が項目のばらつきをどれだけ説明できているか |
これらの指標が示しているのは、「4つの因子に分けるという考え方が、データと矛盾していない」ということです。尺度が測っている内容が正しいことや、得点が高い人ほど実際にうまくいくことを保証するものではありません。
また、参考値のM=32.0、SD=11.0は推計値です。回答者の属性(年代、職種、AI利用歴)によって分布は変わります。組織で継続的に実施される場合は、外部の参考値ではなく、その組織内での分布を目安にされるほうが実態に合うことがあります。
自分がAIをどの場面で使っているかを言葉にし、次に試したいことを1つ決めるための材料として。
AI活用について、抽象的な議論ではなく、自分の経験に基づいて話し始めるためのきっかけとして。
上司や支援者が「どの段階が入口になっているか」を一緒に眺め、次の問いを立てるための材料として。
評価に使われるとわかった時点で回答が変わり、本来測りたいものが測れなくなるため。
この尺度は心身の状態を判定するものではなく、診断や治療の代わりにはなりません。
得点の高低は優劣ではなく、AIを使う場面の違いを表すため、順位づけは意味を持ちません。
AIコーチングそのものの倫理的な留意点は、AIコーチングの倫理と限界 のページで詳しく扱っています。
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尺度の基本
AIを仕事や学習に取り入れ始めた社会人、キャリアを考えている学生、部下との1on1にAIを使いたい管理職、支援職の方などを想定しています。AIの専門知識は必要なく、対話型AIを使ったことがある方であれば回答できます。使ったことがない方でも、その状態が結果に正直に反映されます。
回答できます。12項目はいずれも日常の言葉で書かれており、GROWモデルの知識を前提としていません。結果画面で、それぞれの項目がGROWのどの段階に対応しているかが説明されますので、回答後に理解が深まる構成になっています。
従来のGROW関連の尺度は、人と人との対話を前提としています。AIGROW尺度は、対話の相手がAIである場合に特有の側面、たとえばAIの提案に触発されて自分の案が出てくるか、AIの整理を客観的な視点として受け取れるかといった点を扱っている点が異なります。
回答の負担を抑えつつ、4つの段階を区別して測ることを優先したためです。各因子3項目という構成は、内的整合性の指標(α係数で.90前後)から見て一定の一貫性が確認されています。ただし項目数が少ないぶん、1項目の回答が得点に与える影響は大きくなります。
4因子について
AIとの対話を通して、自分が望んでいることを言葉にし、輪郭のはっきりした目標に変えていく力を見ています。AIに目標を決めてもらう力ではありません。3つの項目は、目標を定める手ごたえ、価値観と結びつける力、未来像を具体的に描く力にそれぞれ対応しています。
AIという感情を持たない第三の視点を借りて、自分の現在地・強み・課題を落ち着いて眺める力を見ています。自己評価はその日の気分に左右されやすいため、外からの整理を取り入れられることには意味があります。ただしAIの整理を正解として受け取らないことが前提です。
AIを発想の呼び水として使い、選択肢を広げ、比べ、自分の形にまとめる力を見ています。この段階では広げる作業と絞る作業を分けることが重視されます。同時に行うと、良い案が出た瞬間に評価が始まり、発想が止まってしまうためです。
AIの支援を受けながら行動を始め、続け、つまずいても戻ってくる力を見ています。この3つは似ているようで別の力です。とくに3つめの項目は、立ち直る力(レジリエンス)に近い性質を持っており、この因子の中でも重要な位置を占めています。
ありません。ただしGROWモデルの考え方では、目標と現状が定まっていないまま選択肢や行動に進むと、進んでいる感覚はあっても方向が定まらないことがあるとされます。その意味で、GoalとRealityは土台としての役割を持っています。
採点と統計
各項目を1点から5点で回答し、同じ因子に属する3項目を合計します。各因子は3点から15点、4因子の合計である総合得点は12点から60点の範囲になります。逆転項目はなく、点が高いほどその力を発揮できていると回答したことになります。
総合得点はM=32.0、SD=11.0(N=500推計)、各因子はM=8.0、SD=3.0という参考値に基づいています。総合では43点以上をかなり高い、38点以上を高い、27点以上を普通、22点以上を低い、それ未満をかなり低いとしています。各因子では12点以上、10点以上、7点以上、5点以上で区切ります。
想定した4因子の構造が、実際のデータにどれくらい合っているかを表す指標です。CFIとTLIは1に近いほど、RMSEAは小さいほど当てはまりがよいとされ、一般にCFI・TLIは.95以上、RMSEAは.06以下が目安とされます。本尺度はCFI=.991、TLI=.988、RMSEA=.049となっています。
同じ因子に属する項目が、一貫して同じものを測れているかを表す指標です。αとωは.80以上あれば十分とされることが多く、本尺度は.90から.91の範囲にあります。AVEは、その因子が項目のばらつきをどれだけ説明できているかを示し、.50以上が目安とされます。
統計指標の上では一貫性が確認されていますが、自己申告に基づく尺度である以上、回答時の気分や、直前の出来事に影響を受けます。1回の結果を確定的なものとして扱うより、時期を変えて数回測り、変化の方向を見るほうが実用的です。
利用について
個人の利用は無料です。教育・研究(非営利)の場合も自由にご活用いただけます。ビジネス・商用でご利用の場合は、当協会の資格または関連する資格を取得いただくか、法人契約などが必要になりますので、必ずご連絡をお願いいたします。
適していません。自己申告に基づく尺度は、評価に使われるとわかった時点で回答が変わりやすく、本来測りたいものが測れなくなります。またこの尺度は能力の優劣を判定するものではないため、選抜や査定の材料として用いることは想定していません。
比べること自体は問題ありませんが、得点の高低は優劣ではなく、AIをどの場面で使っているかの違いを表します。チームで実施する場合は、点数の順位ではなく、それぞれの入口が違うことを共有する使い方のほうが役立つことが多いようです。
AIを使いこなす鍵は、AIの操作方法ではなく「どんな問いを立て、何を振り返るか」です。コーチング心理学協会では、質問・目標設定・フィードバック・強みの活用を、演習中心のワークショップで学べます。
ご相談・ご提案の段階で費用はかかりません。