運営一般社団法人 コーチング心理学協会
コーチング心理学ガイドCOACHING PSYCHOLOGY GUIDE
11-3 RESEARCH

尺度開発の進行状況

まだ確かめられていないことを、確かめられていないと書く。

結論から 当協会がこのガイドで公開しているセルフチェックは、現在すべて「暫定・研究中」です。 項目は作成されており、自己理解や対話のきっかけとしては使えます。しかし信頼性係数・因子構造の妥当性・標準化された基準値は、まだ算出されていません。このページでは、何が確かめられていないのか、どう検証を進めるのか、そしてどう協力できるのかを公開します。

いまの状態

尺度構成状態使ってよい範囲
コーチング・レディネス・セルフチェック24項目・4因子・5段階暫定・研究中(v1)自己理解/対話の材料/講座の事前ワーク
作業同盟セルフチェック18項目・3次元・7段階暫定・研究中(v1)関係の点検/コーチと本人のずれの確認
目標達成スコア記録シート達成度×難易度/2目標×3時点記録シート(尺度ではない)成果の記録/前後比較
使ってはいけない範囲採用・配置・人事評価の判断材料に使うこと、研究論文の測定尺度として使うこと、個人に診断的なラベルを与えること。これらは確定した尺度であっても慎重に扱うべき用途であり、暫定・研究中の段階では行わないでください。

なぜ「暫定・研究中」と書くのか

心理尺度は、項目を並べれば完成するものではありません。その項目群が本当に1つのまとまりを測っているか(内的整合性)、想定した構造になっているか(因子妥当性)、点数が何を意味するか(基準値)——これらはデータで確かめて初めて言えることです。

書かなかった場合書いた場合
使う人点数を確定した事実として受け取る参考として受け取り、自分の実感と照らす
研究検証されていない数値が引用され、広がる引用される場合も、状態が伝わる
協会後から数値が変わったとき、信頼を失う改訂が「予定どおり」として受け入れられる

本ガイドは、研究の限界を書くことを一貫した方針にしています。研究・エビデンスのページでも、効果量だけでなく有意にならなかった結果や、研究デザインの弱さを併記しています。自分たちが作った道具についても、同じ基準を適用します。

検証の段階と達成条件

フェーズ0:項目作成(完了)

測りたい概念を定義し、項目を作成。既存の標準化尺度の項目は使用しない。理論的中間値から暫定の得点区分を設定。現在ここ。

フェーズ1:予備データの収集

目標 N=100〜200。達成条件——各項目の記述統計、天井効果・床効果の確認、項目‐全体相関の算出、明らかに機能していない項目の特定。

フェーズ2:構造の確認

目標 N=300以上。達成条件——内的整合性(α係数、ω係数)が各下位尺度で .70 以上、探索的因子分析で想定した因子構造が再現されること。

フェーズ3:妥当性と基準値

目標 N=500以上。達成条件——確認的因子分析でモデル適合が基準を満たすこと、既存の標準化尺度との相関(収束的妥当性)、2〜4週間後の再検査信頼性、日本語話者の得点分布にもとづく基準値の作成。

公開と改訂

結果を学会発表・論文として公開し、本ページと各ツールの表記を更新。基準を満たさなかった項目は、削除または修正します。結果が思わしくない場合も、そのまま公開します。

いつ終わるのか時期は約束しません。データが集まるかどうかで決まるためです。進捗はこのページで更新します。フェーズが進まないままの場合も、その事実を書きます。

分析の手順

予定している分析を、あらかじめ公開します。結果を見てから分析方法を選ぶこと(後付けの解析)を避けるためです。

手順見るもの判断の目安
1. 記述統計平均・標準偏差・歪度・尖度特定の選択肢に極端に偏っていないか
2. 天井・床効果平均±標準偏差が上限・下限を超えないか超える項目は改訂を検討
3. 項目‐全体相関各項目と下位尺度合計の相関.30 未満の項目は削除を検討
4. 内的整合性α係数・ω係数各下位尺度で .70 以上
5. 探索的因子分析因子数・因子負荷量想定した数の因子が抽出され、負荷量 .40 以上
6. 確認的因子分析モデル適合度一般的な基準にもとづき判断し、数値をそのまま公開
7. 収束的妥当性既存の標準化尺度との相関理論的に予測される方向と大きさか
8. 再検査信頼性2〜4週間後の再測定との相関安定していると言える水準か
9. 基準値の作成得点分布理論的中間値ではなく、実際の分布から区分を作り直す
あらかじめ書いておくことこれらの基準を満たさない結果が出た場合も、公開します。基準を後から緩めることはしません。項目の削除や尺度の統合が必要になれば、そのように改訂します。「うまくいった結果だけを出す」ことは、この分野の信頼性をもっとも損なう行為です。

研究倫理とデータの扱い

協力の方法

ツールに回答する

レディネス・セルフチェックまたは作業同盟セルフチェックに回答します。所要時間は5分程度です。

結果画面で同意にチェックを入れる

結果の下にある「研究にご協力いただける方へ」で説明を読み、同意のチェックを入れます。

匿名IDつきCSVを作成する

ボタンを押すとCSVがダウンロードされます。中身をご自身で確認してください。個人情報が含まれていないことを、目で確かめられます。

協会に送る

お問合せフォームから、件名に「尺度研究データ」とご記入のうえ送付してください。表示された匿名IDは、撤回するときに使いますので控えておいてください。

時間をおいて2回答えていただけると、価値が大きく上がります再検査信頼性(時間をおいても同じような結果になるか)は、1回きりのデータでは確かめられません。2〜4週間あけて2回ご協力いただける場合は、同じ匿名IDのままCSVを作成してください。自動的に同じIDが使われます。

よくある質問

「暫定・研究中」とはどういう意味ですか?
項目は作成されており使うことはできますが、信頼性係数・因子構造の妥当性・標準化された基準値がまだ算出されていない状態です。 自己理解や対話のきっかけには使えますが、研究の測定や採用・評価の判断には使えません。
なぜ確定していない尺度を公開するのですか?
確定を待つと数年かかり、その間、現場で使える道具がないままになるためです。 ただし、確定していないことを隠して使うのは害があります。そこで、状態を明示したうえで公開し、検証の進捗も同時に公開する方法をとっています。
何が確かめられれば「確定」になりますか?
内的整合性、因子構造の確認、既存の標準化尺度との関連、再測定の安定性、そして日本語話者の得点分布です。 それぞれの達成条件は、このページの段階表に示しています。
データの提供に協力できますか?
できます。各ツールの結果画面から、氏名や連絡先を含まない匿名IDつきのCSVを作成できます。 参加は任意で、いつでも撤回できます。手順はこのページに記載しています。
既存の標準化尺度を使うべきではないですか?
研究目的や、確定した数値が必要な場面では、標準化された既存尺度を権利者の許諾条件にしたがってお使いください。 協会オリジナルの尺度は、許諾の手続きなしに現場で使える簡易な道具として位置づけています。既存尺度の構成は心理アセスメントにまとめています。

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参考文献

  1. de Haan, E., Terblanche, N., & Nowack, K. (2026). A randomised controlled comparison of the effectiveness of human and AI chatbot coaching with goal attainment, wellbeing and self-efficacy. Human Resource Development International. doi:10.1080/13678868.2026.2633990
  2. Graßmann, C., Schölmerich, F., & Schermuly, C. C. (2020). The relationship between working alliance and client outcomes in coaching: A meta-analysis. Human Relations, 73(1), 35–58. doi:10.1177/0018726718819725
  3. オリオーダン, S.・パーマー, S.(編)徳吉陽河(監訳)(2023). コーチング心理学ガイドブック 北大路書房
監修
一般社団法人 コーチング心理学協会
公開日
2026年8月31日
最終レビュー
2026年8月
注記
本ページは教育・情報提供を目的としたもので、医学的診断・治療の代替ではありません。心身の不調が疑われる場合は医療機関にご相談ください。