結論から
コーチング心理学とは、心理学の理論と研究知見(エビデンス)にもとづいて、個人や組織の目標達成・成長・ウェルビーイング・パフォーマンス向上を対話で支援する実践と研究の分野です。
臨床的な問題の治療ではなく、健康な人の機能をさらに高めることを主たる目的とし、認知行動的アプローチ、解決志向アプローチ、ポジティブ心理学などの枠組みを用います。
定義:3つの要素
この分野の定義は論者によって細部が異なりますが、共通しているのは次の3点です。
3つ目が実務上いちばん難しいところです。助言を質問の形にした誘導尋問(「〜したほうがいいと思いませんか?」)は、この分野で避けるべき典型例とされます。
4つの特徴
- 根拠を示す。「なぜその問いを使うのか」を理論とデータで説明できる。
- 限界を示す。効かない条件、適用してはいけないケースを明示する。
- 測る。変化を尺度やスケーリングで確かめ、次の一手を決める。
- 統合する。単一の流派に固執しない。研究上も、複数の枠組みを統合したアプローチのほうが効果が大きいと報告されています。
歴史
人の成長を対話で支える営み自体は古くからありますが、学術分野として組織化されたのは2000年前後です。オーストラリアと英国の心理学会にコーチング心理学の部会が設けられ、専門誌が創刊されたことが節目とされています。
前史
人間性心理学、行動主義、認知行動療法など、既存の心理学の蓄積。
2000年前後:学術分野として成立
心理学会内に部会が設立され、専門誌が創刊。「経験則からの脱却」が課題として掲げられる。
2010年代:効果研究の蓄積
メタ分析が相次いで発表され、効果量が数値で示されるようになる。
2020年代:適用範囲の拡大とAI
多様性・ウェルビーイング・AIコーチングへ。日本語の標準テキストも刊行される。
誰が、どこで使うのか
扱わないことコーチング心理学は医療ではありません。抑うつ・不安などの明確な不調が疑われる場合、危機的状況にある場合、本人に変化の意思がない場合は、適用の対象外です。判断基準は
倫理・限界にまとめています。
学ぶ順序
この分野は範囲が広いため、順序を決めて進むほうが早く身につきます。
- 違い・比較 — カウンセリング・コンサルとの境界を先に押さえる
- 研究・エビデンス — どの程度効くのか、限界は何かを確認する
- 理論・アプローチ — 12の技法の考え方を比較する
- 基本スキル・質問ガイド — 実際に使ってみる
- 心理アセスメント — 変化を測る
- 資格・学び方 — 体系化する
よくある質問
コーチング心理学とは何ですか?
心理学の理論・研究・実証知見を活用し、個人や組織の成長、ウェルビーイング、目標達成、パフォーマンス向上を支援する応用心理学の一領域です。 臨床的な問題の治療ではなく、健康な人の機能をさらに高めることを主たる目的とします。
コーチングとコーチング心理学は何が違うのですか?
心理学の理論と研究知見を明示的な土台に置くかどうかです。 一般的なコーチングは経験則や独自メソッドに基づくことも多い一方、コーチング心理学は理論的根拠と効果検証を前提とし、効果の限界や適用外のケースも明示します。
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いつごろ生まれた分野ですか?
学術分野として組織化されたのは2000年前後です。 オーストラリア心理学会や英国心理学会にコーチング心理学の部会が設立され、専門誌が創刊されたことが節目とされています。日本でも関連学会・協会が設立され、教科書の翻訳が進んでいます。
誰が使えるものですか?
心理職に限られません。 管理職の1on1、人材開発、教育、キャリア支援、対人支援職、そして自分自身へのセルフコーチングまで幅広く使えます。ただし医療的な治療の代替ではありません。
何から学べばよいですか?
定義 → カウンセリングとの違い → エビデンス → 理論、の順を推奨します。 上の「学ぶ順序」に沿って進むと、全体像が崩れずに積み上がります。
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