運営一般社団法人 コーチング心理学協会
コーチング心理学ガイドCOACHING PSYCHOLOGY GUIDE
BOOKS | 教科書・専門書ガイド

コーチング心理学の本棚

コーチング心理学を学びたいとき、最初の壁は「何から読めばいいか分からない」ことです。ここでは、日本語で読める入門教科書と、国際・世界で学ぶための専門書あわせて5冊を、読む順序・役割の違い・全45章の日本語マップつきで紹介します。あわせて、Routledge「コーチング心理学」シリーズ全13冊(編者 Stephen Palmer/第8作が『ガイドブック』の原書)も一覧にしました。

READING ORDER

どの順で読むか

いきなり分厚い専門書から入ると、ほぼ挫折します。次の順序を推奨します。

STEP 1

まず全体像をつかむ

本サイトの「コーチング心理学とは」と60秒でわかるを読む。無料で、30分あれば足ります。

STEP 2

日本語の教科書で体系化する

『コーチング心理学ガイドブック』(北大路書房)。協会が監訳した日本語の入門教科書です。ここが標準の出発点。

STEP 3

実践しながら質問と技法を増やす

質問ガイドと理論・アプローチを行き来する。読むだけで終わらせないのが要点です。

STEP 4

実務に入るなら、手順書を1冊

『Coaching Psychology』(APA, 2022)。202ページ。依頼から終結までの進め方、使う道具、倫理をまとめた実務書です。詳しく見る

STEP 5

国際標準テキストで深める

『The Coaching Psychology Handbook』(Wiley, 2026)。45章・928ページ。通読ではなく、必要な章だけ引く使い方を推奨します。

STEP 6

テーマを決めて足す

職場でのポジティブ心理学なら『Positive Psychology Coaching in the Workplace』(Springer, 2021)。詳しく見る
技法を実務の視点で棚卸しするなら『Handbook of Coaching Psychology』第2版(Routledge, 2019)。詳しく見る

STEP 7

シリーズで面をとる

Routledge「コーチング心理学」シリーズ全13冊。編者は Stephen Palmer、第8作が『ガイドブック』の原書です。テーマ別に1冊ずつ足していけます。一覧を見る

BOOK 01 | 日本語の入門教科書

まず最初の1冊

書影:コーチング心理学ガイドブック(シヴォーン・オリオーダン+スティーブン・パーマー編著、徳吉陽河監訳、北大路書房)
協会監訳 | 日本語

コーチング心理学ガイドブック

原題:Introduction to Coaching Psychology/シヴォーン・オリオーダン+スティーブン・パーマー 編著/徳吉陽河 監訳/森谷 満・フジモトマナブ 訳/一般社団法人コーチング心理学協会 協力

コーチング心理学を日本語で体系的に学べる、標準的な入門教科書です。国際的にこの分野を牽引してきた執筆陣が、信頼関係の築き方、カウンセリングとの違い、エビデンスに基づく専門性という基礎から、組織やスポーツへの応用、そしてコーチング心理学の限界と未来までを一冊で解説しています。

この本で分かること

  • コーチングとカウンセリング・心理療法は、どこが同じでどこが違うのか
  • 「エビデンスに基づく実践」とは具体的に何をすることなのか
  • 認知行動・解決志向をはじめとする主要アプローチの考え方と使い分け
  • アセスメント(測ること)を支援にどうつなげるか
  • 職場・スポーツなど領域ごとの応用と、この分野の限界

こんな方に

コーチング心理学をこれから学ぶ方、すでにコーチングを実践していて理論的な裏づけを持ちたい方、人事・管理職・対人支援職として体系的な知識が必要な方。大学・大学院のテキストとしても使われています。

第Ⅰ部基礎第1〜2章
第Ⅱ部アプローチとモデル第3〜5章
第Ⅲ部応用領域第6〜9章
第Ⅳ部専門的実践と研究第10〜12章
第Ⅴ部ケーススタディと未来第13〜14章
出版社
北大路書房
発売
2023年5月1日(電子書籍版あり)
体裁
A5判・336ページ
定価
4,620円(税込)
ISBN
978-4-7628-3221-5
読書ガイド+章末ワークを用意しました全14章それぞれに「読む前の問い」「注目したい点」「章末ワーク」「1週間の実践課題」。印刷して書き込めます。読書会や講座の事前課題にもお使いいただけます。
読書ガイドを開く →

読書ガイド+章末ワーク → 書籍の詳細ページ 出版社サイト

BOOK 02 | 国際標準テキスト

この分野の最新の全体像

書影:The Coaching Psychology Handbook(Jonathan Passmore・Andrea Giraldez-Hayes 編、Wiley)
英語 | 2026年刊

The Coaching Psychology Handbook

副題:Integrating Psychological Theory, Practice and Research/Jonathan Passmore・Andrea Giraldez-Hayes 編

2026年時点のコーチング心理学の理論・研究・実践を、45章・928ページにまとめた国際的な専門書です。編者は序文で、この20年で分野が急速に発展した一方、多くの教科書が最新の研究に追いついていないことを指摘しており、本書は「現代のコーチング心理学を学ぶための新しい標準テキスト」として企画されています。

従来の教科書と違う点

  • AIコーチングを独立した章(第22章)で扱っている。従来のテキストにはほぼ見られないテーマです
  • 多様性を1つの部として扱う。DEI・LGBTIQ+・ニューロダイバーシティ・加齢の4章構成
  • 12の技法を横並びで比較できる。パーソンセンタードからACT、実存的、精神力動的まで
  • 理論・研究・技法・ケーススタディが統合されており、読んで終わりにならない
出版社
John Wiley & Sons(Wiley)
刊行
2026年
体裁
928ページ・全45章/8部構成
ISBN
978-1-394-29277-6
DOI
10.1002/9781394292806
読み方の推奨928ページを通読する必要はありません。下の「全45章マップ」で興味のある章を探し、その章だけを読む使い方が現実的です。当協会でも研修・講座づくりの参照テキストとして活用していきます。
CHAPTER MAP

全45章マップ|どの章が何の話か、一言で

8部45章を日本語で整理し、各章が答えている問いを1文にしました。右側は、その内容を本サイトのどのカテゴリーで扱っているかの対応です。部を選ぶと絞り込めます。

※ 章タイトルの日本語表記と要約は、当協会による整理です。原書の翻訳ではありません。

BOOK 03 | 実務のプロトコル

依頼から終結まで、1件のコーチングをどう進めるか

書影:Coaching Psychology — Catalyzing Excellence in Organizational Leadership(Vicki V. Vandaveer・Michael H. Frisch 著、APA)
英語 | 2022年刊

Coaching Psychology

副題:Catalyzing Excellence in Organizational Leadership/Vicki V. Vandaveer・Michael H. Frisch 著

アメリカ心理学会(APA)が刊行する Fundamentals of Consulting Psychology シリーズの1冊です。202ページと薄く、扱う範囲を組織のリーダーを対象とした1対1のコーチングに絞り込んでいます。前の2冊が「分野の地図」だとすれば、こちらは1件の依頼を最初から最後まで進めるための手順書にあたります。

この本の特徴

  • エンゲージメント全体を扱う。最初の問い合わせから契約、アセスメント、対話、そして終結までを一続きの流れとして解説しています
  • 「コーチ自身が道具である」という立場。技法の前に、コーチ自身の自己認識が学びを引き出す主要な手段になる、という考え方が全体を貫いています
  • 実際に使う道具が具体的。進行を支えるモデル、自己内省の課題、録画を使った振り返り、ジャーナリング、アセスメント、ステークホルダーからのフィードバックなどが紹介されています
  • 倫理と、コーチ自身の持続可能性。多重関係などの倫理的ジレンマに加えて、燃え尽きへの対処という、実務書ではあまり正面から扱われないテーマを含みます
  • APAの査読を経たシリーズ。コンサルティング心理学会(SCP)との協働で刊行されており、学術的な位置づけがはっきりしています
出版社
American Psychological Association(APA)
シリーズ
Fundamentals of Consulting Psychology
刊行
2022年8月16日
体裁
202ページ
ISBN
978-1-4338-4007-4
どんな人に向くかすでに実際にコーチングを引き受けている(または引き受けようとしている)人に向いています。理論の全体像を知りたい段階なら『ガイドブック』が先です。逆に、契約や進め方で迷っている、対象が経営層・管理職である、という場合は、この本がいちばん実務に近い位置にあります。英語ですが202ページなので、3冊のなかでは通読しやすい分量です。

全6章の構成

章原題/日本語での主題ページこの章が答えている問い
—Introduction
序論
3この本は誰に向けて、何を扱うのか
1Coaching Psychology: Individualized Leader Development
コーチング心理学とは——個別化されたリーダー育成
11集合研修ではなく1対1でリーダーを育てることに、どんな意味があるのか
2A Closer Look: The Coaching Psychology Engagement
1件の依頼を、詳しく見る
31最初の問い合わせから終結まで、実際には何が起きるのか
3Coaching Psychology Tools, Methods, and Techniques
道具・方法・技法
53何を、どう使うのか。本書で最も厚い章(約54ページ)
4How Effective Is Executive Coaching?
エグゼクティブ・コーチングは、どれくらい効くのか
107効果はどこまで確かめられているのか
5How Psychologists Can Prepare for Coaching Leaders
心理職は、どう準備すればよいか
119心理学の訓練を受けた人が、組織のリーダーを支援するために何を足す必要があるか
6Ethical and Professional Issues in Coaching Psychology
倫理と専門職としての課題
139多重関係、守秘、そして自分自身の持続可能性をどう扱うか
ページ配分が示していること全6章のうち、第3章「道具・方法・技法」だけが約54ページと、他の章の2〜4倍の分量を占めています。一方で第4章「効果はどれくらいあるか」は約12ページです。この本の重心は、効果の議論ではなく「実際に何をどう使うか」にあります。エビデンスの全体像を知りたい場合は、本ガイドの研究・エビデンスや Wiley の Handbook のほうが厚く扱っています。役割が違う、ということです。
本ガイドとの対応 第2章(依頼から終結まで)は効果測定プロトコルと、 第3章(道具・技法)は12技法の記事と質問ガイドと、 第4章(効果)は研究・エビデンスと、 第6章(倫理)は倫理と限界および支援する人が続けられるためにと対応します。

※ 目次の日本語表記と「この章が答えている問い」は、当協会による整理です。原書の翻訳ではありません。ページ数は目次に記載された開始ページからの算出で、全202ページには引用文献・索引が含まれます。

BOOK 04 | 職場のポジティブ心理学コーチング

「強みを活かす」を、職場でどう成り立たせるか

書影:Positive Psychology Coaching in the Workplace(Wendy-Ann Smith・Ilona Boniwell・Suzy Green 編、Springer)
英語 | 2021年刊

Positive Psychology Coaching in the Workplace

Wendy-Ann Smith・Ilona Boniwell・Suzy Green 編/Springer Cham

ポジティブ心理学とコーチング心理学、そして組織心理学が職場という一点で交わるとどうなるかを、30章・587ページで扱った国際的な論集です。編者はいずれも欧州・豪州でこの領域を牽引してきた研究者・実践者で、序文では「研究から実践へ(research-to-practice)」という位置づけが明示されています。

本書の特徴は、ポジティブ心理学コーチングを「前向きに励ますこと」から明確に切り離している点です。測定・倫理・スーパービジョン・臨床領域との境界といった、実務を支える地味な論点に相当の分量が割かれています。

この本が扱っていること

  • 3つの分野の合流点。ポジティブ心理学・組織心理学・コーチング心理学が、それぞれ何を持ち寄れるのかを整理している
  • 専門職化と倫理。「ポジティブ心理学コーチング」を名乗る人が増えるなかで、何をもって専門職とするかを正面から議論している
  • スーパービジョンを1章として扱う。省察的実践(リフレクティブ・プラクティス)を、視野を広げる装置として位置づけている
  • レジリエンスとウェルビーイング。困難な経験からの成長(心的外傷後成長)、心理的資本、感情を扱うコーチングなど
  • チームとシステム。個人だけを変えようとせず、関係と組織文化に働きかける視点
  • 効果をどう示すか。「堅牢な尺度で職場コーチングの価値を示す」ことに独立した章を割いている
第1部3分野の合流全5章
第2部専門的・倫理的実践全4章
第3部レジリエンスとウェルビーイング全5章
第4部チームとシステム全2章
第5部リーダーシップ全4章
第6部道具全4章
第7部臨床的介入と徳の合流全5章
第8部結論と今後の方向全1章
出版社
Springer Cham
刊行
2021年9月(ハードカバー)/2022年10月(ソフトカバー)
体裁
587ページ・全30章/8部構成
ISBN
978-3-030-79951-9(ハードカバー)/978-3-030-79954-0(ソフトカバー)
DOI
10.1007/978-3-030-79952-6
当協会の資格との対応ポジティブ心理学をコーチングに組み込む領域は、当協会と一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会が協働認定する「認定ポジティブ心理学コーチ&認定ウェルビーイングコーチ」(Wライセンス)が正面から扱う範囲です。国際・世界で学ぶ視点を、日本の職場の文脈に翻訳して使えるようにすることが、講座の目的にあたります。
本ガイドとの対応 第1部はポジティブ心理学コーチングと、 第2部の測定は心理アセスメントおよび効果測定プロトコルと、 スーパービジョンの章はガイド内のスーパービジョンガイドと、 第3部はウェルビーイングとレジリエンス(ウェルビーイング)と、 第4部はビジネス・組織と対応します。
読むときの注意本書は論集であり、章ごとに証拠の厚みが大きく異なります。メタ分析を土台にした章と、実践者の経験にもとづく提案の章が同じ巻に並んでいるため、「本に書いてあった」だけでは根拠になりません。各章が何を根拠にしているか(研究か、実務知見か)を確かめながら読むことを推奨します。

全30章マップ|どの章が何の話か

原書の目次を日本語で整理しました。右端は、その内容を本ガイド・ガイド内のセクションのどこで扱っているかの対応です。

章原題/日本語の主題この章が答えている問い対応
第1部 ポジティブ心理学・組織心理学・コーチング心理学の合流
1PPC in the Workplace: The Business Case
職場のPPC——事業上の根拠
会社がこれに投資する理由は何かビジネス・組織
2The Professionalization of Positive Psychology Coaching
PPCの専門職化
誰が名乗ってよいのか。何をもって専門職とするか資格・学び方
3Coaching as the Missing Ingredient…
研究の適用と訓練に欠けていたもの
ポジティブ心理学の知見が現場に届かないのはなぜかポジティブ心理学コーチング
4PPC and Industrial-Organisational Psychology
産業・組織心理学との融合
先の読めない時代に、持続可能な組織をどう作るかビジネス・組織
5Keeping with the Times: Coaching, Culture and Positive Psychology
コーチング・文化・ポジティブ心理学
文化が違えば、同じ介入は同じように効くのか多様性と包摂
第2部 専門的・倫理的実践
6How Can PPC Help Us Instill a Positive Organisational Culture?
組織文化への働きかけ
個人を変えるのではなく、文化をどう変えるかビジネス・組織
7Demonstrating the Value of Workplace PPC Using Robust Measures
堅牢な尺度で価値を示す
「効果がありました」を、どう証明するか効果測定プロトコル
8Supervision: Widening the Lens and Perspective
スーパービジョン——視野を広げる技芸
実践の質を、誰がどう保つのかスーパービジョンガイド
9PPC: Consolidating and Extending the Gains
得た変化を定着させ、広げる
セッションが終わったあと、どう続くのか基本スキル
第3部 レジリエンスとウェルビーイング
10Coaching with Emotions and Creating High Quality Connections
感情を扱い、質の高いつながりを作る
職場の関係の質は、どう上げられるのかウェルビーイング
11Coaching for Workplace Wellbeing
職場のウェルビーイング
個人の幸福と組織の成果は、どう両立するかウェルビーイング
12Coaching for Resilience in the Workplace
レジリエンス
打たれ強さは訓練できるのかレジリエンス(ウェルビーイング)
13Coaching Interventions for Challenging Experiences and Post-traumatic Growth
困難な経験と心的外傷後成長
つらい経験を、どこまで「成長」と呼んでよいのか倫理・限界
14Coaching to Develop Psychological Capital to Support Change
心理的資本(PsyCap)
希望・自己効力感・レジリエンス・楽観を、どう蓄えるか背景理論
第4部 チームとシステム
15Systemic Awareness Coaching: Film as a Coaching Tool
映像を使ったリーダーシップ開発
システム全体を見る目を、どう養うかビジネス・組織
16Coaching Teams Positively from a Complex, Adaptive Systems Perspective
複雑適応系としてのチーム
チームは足し算ではない。ではどう扱うかビジネス・組織
第5部 リーダーシップ
17Coaching for Positive Leadership During Disruption and Crisis
混乱と危機のなかのリーダーシップ
平時の手法は、危機でも通用するのかビジネス・組織
18PPC for Career Transition and Management
キャリア移行
役割が変わる時期に、何を支えるかキャリア・コーチング
19Adult Development and PPC
成人発達
大人は、どう変わっていくのか心理学の基礎
20Strength-Based Coaching and Sustainability Leadership
強みとサステナビリティ
強みは、長期的な責任とどう結びつくか強みで橋を架ける
第6部 道具
21Towards a Neuroscience-Informed Coaching Practice: Opportunities and Limitations
神経科学——機会と限界
「脳が」と言ってよいのは、どこまでか脳科学とコーチング
22Encouraging Job Crafting through a Coaching Partnership
ジョブ・クラフティング
仕事の中身を、本人がどう作り替えるかビジネス・組織
23Tangible Tools for PPC
手に取れる道具
カードなどの物理的な道具は、何をしているのかカード・教材
24LEGO® SERIOUS PLAY® in 1–1 Coaching
レゴを使った1対1
言葉にならないものを、どう外に出すか芸術・創造性
第7部 臨床的介入と徳の合流
25Coaching with Compassion
コンパッション
思いやりは、技法として訓練できるのかコンパッション
26Acceptance and Commitment Coaching in the Workplace
ACT
消せない思考や感情を、どう抱えて進むかACT
27Appreciative Inquiry Coaching in the Workplace
アプリシエイティブ・インクワイアリー
「うまくいっている点」から始める組織開発解決志向
28Coaching Wisdom in the Workplace
知恵の統合モデル
知識ではなく「知恵」を、どう扱うか実存的
29Meaning-Centred Coaching in the Workplace
意味中心のコーチング
仕事の意味は、どう見つかるのか実存的
第8部 結論と今後の方向
30PPC: Conclusion and Future Directions
結論と今後の方向
この分野はどこへ向かうのか研究の現在地

※ 章タイトルの日本語表記と「この章が答えている問い」は、当協会による整理です。原書の翻訳ではありません。

この目次が示していること 第2部に「測定」(第7章)と「スーパービジョン」(第8章)が並んで置かれている点が、この本の性格をよく表しています。職場でポジティブ心理学コーチングを名乗るなら、効果を測る仕組みと、実践の質を保つ仕組みをセットで持て、という主張です。
さらに第21章が神経科学を「機会と限界」として扱っていることも重要です。脳科学的な説明は説得力を持ちすぎる傾向があり、本ガイドも脳科学とコーチングで同じ注意を扱っています。推している分野の弱点を、同じ本のなかに書いている——この編集姿勢が、この本を信頼できるものにしています。

ポジティブ心理学コーチングの詳しい解説 → 出版社サイト(Springer)

BOOK 05 | 実務家向けの定番ハンドブック

この分野を作ってきた側からの、実務ハンドブック

書影:Handbook of Coaching Psychology — A Guide for Practitioners 第2版(Stephen Palmer・Alison Whybrow 編、Routledge)
英語 | 第2版・2019年刊

Handbook of Coaching Psychology

副題:A Guide for Practitioners(第2版)/Stephen Palmer・Alison Whybrow 編/Routledge

初版(2007年)は、コーチング心理学という分野が立ち上がっていく時期に「実務家のための標準ハンドブック」として位置づけられた一冊です。第2版はそれを大幅に増補し、43章・630ページの構成になっています。

本ガイドにとって重要なのは、編者の一人である Stephen Palmer が、当協会が監訳した『コーチング心理学ガイドブック』(原題 Introduction to Coaching Psychology)の編著者でもあるという点です。日本語で読める入門教科書と、この英語のハンドブックは、同じ系譜の上にあります。ガイドブックで基礎を固めたあと、同じ編者の手による厚い実務書へ進む、という道筋が自然に描けます。

4部構成

第1部視座と研究全7章
第2部コーチング心理学のアプローチ全19章・6グループ
第3部応用・文脈・持続可能性全8章
第4部専門的・倫理的実践全9章

この本の使いどころ

  • 技法の棚卸しに向く。第2部だけで19章あり、主要アプローチを横並びで確認できます
  • 「持続可能性」を部の単位で扱う。実務を長く続けるための条件が、応用と同じ重みで置かれています
  • 巻末資料が実用的。専門団体・学術誌・研究センター、そして国際コーチング心理学会(ISCP)の情報が付録にまとまっています
  • 第2版であること自体が情報。初版からの12年で何が加わったかを見ると、分野の重心の移動が分かります
出版社
Routledge(Taylor & Francis)
刊行
2019年(第2版。初版は2007年)
体裁
630ページ・全43章/4部構成
ISBN
978-1-138-77531-2(ハードカバー)/978-1-138-77532-9(ペーパーバック)
DOI
10.4324/9781315820217
国際的な連携という文脈当協会は、国際的な機関・研究者と連携して『コーチング心理学ガイドブック』などの監修・監訳を行ってきました。この第2版の編者は、その原著の編著者と重なります。国際・世界で学ぶ流れのなかで生まれたテキストを、日本語で読める形にしてきたことが、当協会の専門性と信頼性の実質的な根拠にあたります。
Wiley版 Handbook との違い名前が似ていますが別の本です。Routledge 版(本書)は実務家向けのハンドブックで、Wiley 版(BOOK 02)は2026年刊の最新レファレンスです。AIコーチングや多様性など、この7年で立ち上がったテーマは Wiley 版のほうが厚く扱っています。逆に、確立した技法を実務の視点で手堅く押さえたい場合は本書が向きます。
BOOK SERIES | 国際・世界で学ぶ

Routledge「コーチング心理学」シリーズ 全13冊

この分野には、コーチング心理学だけを扱う専門書シリーズが存在します。英国 Routledge の Coaching Psychology シリーズです。1冊ずつ見ると別々の本ですが、並べると「この分野がいま何を課題にしているか」が見えてきます。

このシリーズと当協会の関係 シリーズ編者は Stephen Palmer(英国 Centre for Coaching ディレクター)。そしてシリーズ第8作 Introduction to Coaching Psychology が、当協会が監訳した『コーチング心理学ガイドブック』(北大路書房)の原書です。
つまり日本語で読める入門教科書は、この国際的なシリーズの一冊を訳したものにあたります。当協会が国際的な機関・研究者と連携して監修・監訳を行ってきたという実績は、こうした具体的な出版の系譜に裏づけられています。国際・世界で学ぶという言葉を、抽象論ではなく書誌で示せる数少ない例です。

シリーズが掲げている定義

Routledge によるシリーズ紹介(当協会訳) 「コーチング心理学は、より広い人々を対象に、パフォーマンス・成長・ウェルビーイングの向上に焦点を当てる、学術的かつ応用的な心理学の一分野である」
※ 治療を必要とする人だけでなく「より広い人々(the broader population)」を対象とする、という一点が、臨床心理学との分担を示しています。

全13冊

刊行年の新しい順。各カードの「本ガイド:」リンクから、同じテーマを日本語で扱っているページへ移動できます。

※ 書影は出版社(Routledge / Taylor & Francis)のサーバー上の画像を参照しています。日本語の主題と「この本が答えている問い」は当協会による整理で、原書の翻訳ではありません。表示されない書影がある場合は、出版社側のURL変更によるものです。

シリーズ全体から読み取れること

時期何が中心だったか該当する巻
2016–2019領域と技法を広げる。学校、対話、ポジティブ心理学、構成主義と、適用先と理論の幅を確保する時期学校/対話の技芸/ポジティブ心理学/構成主義
2020–2021土台を固める。入門教科書が出て、同時に臨床領域との関係が正面から扱われる入門/構成主義アプローチ/メンタルヘルス
2023–2026難しい問いへ向かう。ニューロダイバーシティ、芸術、根深い課題、コーチングとセラピーの境界、チーム、そして実践知神経多様性/芸術/スキーマ/灰色の領域/チーム/実践知
最近10年の重心の移動 新しい巻ほど、「どこまでがコーチングの仕事か」を問う本が増えています。2025年の Coaching in the Grey Space(灰色の領域)はその象徴で、境界・倫理・複雑さを主題に据えた一冊です。
分野が成熟すると、できることの宣伝より、できないことの線引きが論点になります。本ガイドが倫理と限界を独立したカテゴリーに置いているのは、この流れと同じ判断です。
日本語で読めるのは、いまのところ1冊 13冊のうち日本語訳があるのは Introduction to Coaching Psychology(=『コーチング心理学ガイドブック』)です。残りは英語で読むことになります。
まず日本語の1冊で全体像をつかみ、関心のあるテーマが決まってから該当する巻に進む——これが現実的な順序です。当協会の講座は、こうした国際的な知見を日本の現場で使える形に翻訳することを目的としています。

テーマから選ぶ

こんなときこのシリーズの巻本ガイドの該当ページ
コーチング心理学の全体像を知りたいIntroduction to Coaching Psychology(2021)日本語版=ガイドブック
強みやウェルビーイングを実務で使いたいPositive Psychology Coaching in Practice(2019)ポジティブ心理学コーチング
発達特性のある人を支援しているNeurodiversity Coaching(2023)ニューロダイバーシティ(全12章の解説つき)
クライアントの状態が心配で、線引きに迷うCoaching in the Grey Space(2025)
Coaching Psychology for Mental Health(2021)
倫理と限界
チームを対象にコーチングしたいThe Wise Team Coach(2025)ビジネス・組織
同じパターンが繰り返されて動かないSchema Coaching(2024)精神力動的コーチング
言葉にならないものを扱いたいArts-Based Coaching(2024)芸術・創造性コーチング
教育現場で使いたいCoaching Psychology in Schools(2016)教育・キャリア
対話の質そのものを上げたいThe Art of Dialogue in Coaching(2018)基本スキル/フィードバックガイド
実践の質を継続的に保ちたい(シリーズ外)スーパービジョンガイド

シリーズ公式ページ(Routledge) 日本語版ガイドブックを見る ポジティブ心理学コーチング

HOW TO USE

5冊の使い分け

5冊は competing する本ではありません。地図・辞書・手順書・テーマ別・実務ハンドブックという、役割の違う5冊です。

コーチング心理学ガイドブックThe Coaching Psychology HandbookCoaching Psychology(APA)Positive Psychology Coaching in the WorkplaceHandbook of Coaching Psychology(第2版)
役割地図辞書手順書テーマ別の論集実務ハンドブック
言語日本語英語英語英語英語
刊行2023年2026年2022年2021年2019年(第2版)
分量336ページ・14章928ページ・45章202ページ・6章587ページ・30章630ページ・43章
出版社北大路書房WileyAPASpringerRoutledge
範囲分野全体(応用領域まで)分野全体(最新研究まで)組織リーダーへの1対1に限定職場×ポジティブ心理学に限定分野全体(実務の視点から)
向いている人これから学ぶ人/実践者/学生指導者・研究者・研修設計者実際に引き受けている実務家人事・組織開発・ウェルビーイング担当技法を一通り押さえたい実務家
強い領域基礎・カウンセリングとの違い・応用領域最新研究・AI・多様性・12技法の比較契約から終結まで・使う道具・倫理強み・レジリエンス・心理的資本・測定・チーム19のアプローチ・持続可能性・専門団体情報
読む順1冊目辞書的に随時実務に入るとき職場テーマを深めるとき技法を棚卸しするとき
1冊だけ選ぶなら日本語で通読でき、協会の講座内容とも対応している『コーチング心理学ガイドブック』から始めてください。すでに実務で引き受けているなら、次はAPAの『Coaching Psychology』が現実的です。英語の3冊は、深めたいテーマが決まってから手に取るのが効率的です——最新動向なら Wiley 版、職場のウェルビーイングなら Springer 版、技法の棚卸しなら Routledge 版。
5冊に共通する読み方どの本にも、研究で確かめられた話と、実践者の経験にもとづく提案が混ざっています。章ごとに「これは何を根拠にしているか」を確かめる読み方を、本ガイドでは一貫して推奨しています。根拠と限界を同じ基準で開示することが、エビデンスにもとづく専門性の実質だからです。

読んだ内容を、使える形にする

本を読むだけでは対話は上達しません。一般社団法人コーチング心理学協会では、これらのテキストの内容を演習と実践に落とし込んだ認定資格講座・法人研修を提供しています。

次の一歩:講座の選び方 → 認定資格を見る 講座・イベント日程 法人研修のご相談

監修
一般社団法人 コーチング心理学協会
公開日
2026年8月31日
最終レビュー
2026年9月
注記
書誌情報は各出版社の公表情報にもとづきます。価格・在庫は変動する場合があります。章タイトルの日本語表記と要約は当協会による整理であり、原書の翻訳ではありません。