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コーチング心理学ガイドCOACHING PSYCHOLOGY GUIDE
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12 EVIDENCE

研究・エビデンス

どのくらい効くのか。効かない条件は何か。数値と限界を、同じ重さで。

結論から コーチングの効果は、複数のメタ分析で繰り返し確認されています。 RCTのみを対象とした最も厳密な分析でも g=0.59(中程度)でした[3]。同時に、出版バイアスの兆候、自己報告への偏り、日本語圏の研究の少なさといった限界も報告されています。数値と限界の両方を見てください。

主要なメタ分析

研究対象主な結果実務への意味
Theeboom ら(2014)[1]組織内コーチングすべての領域で有意。g=0.43〜0.74(最大は目標志向的自己調整)「自分で目標を管理する力」に最も効く
Jones ら(2016)[2]職場コーチング(k=17)全体 δ=0.36/情意0.51/個人成果1.24。社内コーチ>外部コーチ内製の設計に投資する価値
de Haan ら(2023)[3]RCTのみ37研究(n=2,528)g=0.59。出版バイアスの兆候あり。期間の長さは効果を左右しない最も厳密でも効果は残る/過大評価に注意
Wang ら(2021)[4]心理学ベース(k=20)目標達成 g=1.29/自己効力感0.59。統合型0.71>単一0.45単一流派に固執しない
Graßmann ら(2020)[5]作業同盟(27標本・N=3,563)成果との相関 r=.41/負の効果とは r=−.29技法より先に関係の質
Kraft ら(2018)[6]教師コーチング(60研究)指導行動 0.49 SD/学力0.18 SD。規模拡大で効果縮小少人数・個別の設計が要る

※ 効果量の目安:0.2=小、0.5=中、0.8=大。g・δ は標準化平均差、r は相関係数です。

何が効果を左右するのか

要因知見
関係の質成果と r=.41。負の効果とは r=−.29。最も安定した要因[5]
アプローチの統合統合型 g=0.71 > 単一手法 g=0.45[4]
コーチの所属社内コーチのほうが効果が大きい[2]
セッション数・期間効果を左右しないという結果が複数[2][3]
多面フィードバックの併用併用したほうが効果が小さかったという報告[2]
測定の主体自己報告のほうが、他者評価より効果が大きく出る[3]
「回数を増やす」は解ではない期間や回数が効果を左右しないという結果は、実務上重要です。回数を増やすより、関係の質と一回ごとの設計に投資するほうが合理的だということになります。

限界を正直に書く

AIコーチングは結論が割れている

この領域は現在進行形です。10か月のRCT比較ではAIチャットボットが人間コーチと同等の目標達成効果を示した一方[7]、別のRCTでは有意だったのは目標達成のみで、レジリエンス・ウェルビーイング・ストレスは有意ではありませんでした[8]。認定コーチと直接比較した最新のRCT(N=114)では、有意な効果が出たのは人間コーチのみでした[9]。

現時点で妥当な要約は、「AIは狭く定義された目標達成には効くが、関係性・情動を要する領域は人間コーチの領分」です。詳しくはAI×コーチングをご覧ください。

研究を読むときの最低限の作法

  1. デザインを見る。RCTか、前後比較か、相関研究か。言えることが違います。
  2. 効果量を見る。「有意だった」だけでは、実質的な大きさは分かりません。
  3. 誰を測ったか見る。自己報告か他者評価か。学生か実務者か。
  4. 限界の節を読む。著者自身が書いている制約が、最も信頼できる批判です。
  5. 相関を因果と読まない。関連があることと、原因であることは別です。

よくある質問

コーチングに科学的根拠はありますか?
あります。複数のメタ分析で、目標達成・自己効力感・パフォーマンス・ウェルビーイングへの有意な効果が繰り返し報告されています。 RCTのみを対象とした厳密なメタ分析でも中程度の効果(g=0.59)が確認されています[3]。
効果量とは何ですか?
介入がどのくらい効いたかを標準化して表す指標です。 おおよそ0.2が小、0.5が中、0.8が大の目安とされます。有意かどうかとは別に、実質的にどれだけ大きいかを示します。
コーチングは意味がないと言われることがあるのはなぜですか?
研究の限界が指摘されているためです。 出版バイアスの兆候、自己報告への偏り、学生対象の研究で効果が大きく出ること、日本語圏の研究が少ないことなどです。効果があることと、報告値をそのまま信じてよいことは別です。
何が効果を左右しますか?
関係の質(作業同盟)が繰り返し確認されています。 27標本を統合したメタ分析では成果との相関が r=.41、意図しない負の効果とは r=−.29 でした[5]。
セッション数は多いほうがよいですか?
複数のメタ分析で、セッション数や期間の長さが効果を左右しないという結果が報告されています[2][3]。 回数を増やすより、関係の質と一回ごとの設計に投資するほうが合理的です。

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参考文献

  1. Theeboom, T., Beersma, B., & van Vianen, A. E. M. (2014). Does coaching work? A meta-analysis on the effects of coaching on individual level outcomes in an organizational context. The Journal of Positive Psychology, 9(1), 1–18. doi:10.1080/17439760.2013.837499
  2. Jones, R. J., Woods, S. A., & Guillaume, Y. R. F. (2016). The effectiveness of workplace coaching. Journal of Occupational and Organizational Psychology, 89(2), 249–277. doi:10.1111/joop.12119
  3. de Haan, E., & Nilsson, V. O. (2023). What can we know about the effectiveness of coaching? A meta-analysis based only on randomized controlled trials. Academy of Management Learning & Education, 22(4). doi:10.5465/amle.2022.0107
  4. Wang, Q., Lai, Y.-L., Xu, X., & McDowall, A. (2021). The effectiveness of workplace coaching: A meta-analysis of contemporary psychologically informed coaching approaches. Journal of Work-Applied Management, 14(1). doi:10.1108/JWAM-04-2021-0030
  5. Graßmann, C., Schölmerich, F., & Schermuly, C. C. (2020). The relationship between working alliance and client outcomes in coaching: A meta-analysis. Human Relations, 73(1), 35–58. doi:10.1177/0018726718819725
  6. Kraft, M. A., Blazar, D., & Hogan, D. (2018). The effect of teacher coaching on instruction and achievement. Review of Educational Research, 88(4), 547–588. doi:10.3102/0034654318759268
  7. Terblanche, N., Molyn, J., de Haan, E., & Nilsson, V. O. (2022). Comparing artificial intelligence and human coaching goal attainment efficacy. PLoS ONE, 17(6), e0270255. doi:10.1371/journal.pone.0270255
  8. Terblanche, N., et al. (2022). Coaching at scale: Investigating the efficacy of artificial intelligence coaching. International Journal of Evidence Based Coaching and Mentoring, 20(2). doi:10.24384/5cgf-ab69
  9. de Haan, E., et al. (2026). A randomised controlled comparison of the effectiveness of human and AI chatbot coaching. Human Resource Development International. doi:10.1080/13678868.2026.2633990
監修
一般社団法人 コーチング心理学協会
公開日
2026年8月31日
最終レビュー
2026年8月
注記
本ページは教育・情報提供を目的としたもので、医学的診断・治療の代替ではありません。心身の不調が疑われる場合は医療機関にご相談ください。