使い方
質問の役割は2つだけです。相手の思考を「広げる」か「具体化する」か。
迷ったら、いま必要なのがどちらかを考えてください。話が漠然としていれば具体化する問いを、行き詰まっていれば広げる問いを使います。たくさん覚える必要はありません。まず3つ選んで、繰り返し使ってください。
避けるべき2つの問い方
誘導尋問——「〜したほうがいいと思いませんか?」は助言を質問の形にしたもので、この分野では典型的な失敗とされます。
「なぜ」で始まる問い——相手を防御的にしやすいため、「いつ・どこで・何が」に置き換えると扱いやすくなります。
場面別の問い(全66問)
目標|目標を明確にする
GROWモデルのGに対応します。相手が「何を実現したいか」を自分の言葉にする段階です。
- もしすべてがうまくいくとしたら、半年後のあなたはどんな一日を過ごしていますか。
- その目標が実現したことは、何を見れば分かりますか。
- 今その目標は、あなたにとって10点満点で何点くらい大切ですか。その点数の理由は何ですか。
- 誰かに決められた目標ではなく、あなた自身が望んでいる部分はどこですか。
- 今日のこの時間で、どこまで進めば十分ですか。
- その目標が実現したら、まわりの人にはどんな変化が見えますか。
現状|事実を明らかにする
解釈や評価ではなく、事実を出す段階です。ここが浅いまま選択肢に進むと、思いつきの案しか出ません。
- いま、事実として何が起きていますか。
- 10点満点で、いまは何点ですか。その点数の理由は何ですか。
- これまでに、すでに試したことは何ですか。結果はどうでしたか。
- その状況を、まわりの人はどう見ていると思いますか。
- うまくいっていない、と判断している根拠は何ですか。
- いま使えるもの(人・時間・情報)は何がありますか。
未来|見通しを描く
制約を一度外して考える段階です。現実的な案は、非現実的な案を出したあとのほうが良くなります。
- 制約が何もないとしたら、どうしますか。
- 3年後、この選択を振り返って「よかった」と思うとしたら、何が起きていますか。
- 尊敬している人なら、この状況でどうすると思いますか。
- 何も失敗しないと分かっていたら、何を始めますか。
- 1年後の自分から、いまの自分に一言もらえるとしたら何と言われますか。
- この先、絶対に避けたい状態は何ですか。
強み|強みを発見する
ポジティブ心理学コーチング。弱点の改善ではなく、すでにある力をいまの課題に振り向けます。
- 最近「自分らしく力が出せた」と感じた場面を、ひとつ教えてください。
- あなたのその強みを、まわりの人はどんな言葉で表現しますか。
- その強みを、今の課題にあと10%多く使うとしたら、どこに使いますか。
- うまくいったとき、あなたは何をしていましたか。
- 自分では当たり前だと思っているのに、人からよく感謝されることは何ですか。
- 疲れているときでも、なぜかできてしまうことは何ですか。
解決志向|例外とスケーリング
原因を掘り下げるより、すでにうまくいっている場面を探して増やします。原因追及が行き詰まったときに有効です。
- その問題が起きていない時間帯や場面は、いつですか。何が違いますか。
- 0から10で、今はどのあたりですか。1つ上がったら、何が変わっていますか。
- 今夜眠っている間に問題が解決したとしたら、朝いちばんに気づく小さな変化は何ですか。
- これまで、どうやってここまで持ちこたえてきたのですか。
- 少しでもましだった日は、何が違いましたか。
- すでにやっていることのうち、続けたほうがよいことは何ですか。
認知行動|思考を点検する
考え・感情・行動を切り分けて扱います。思い込みが行動を止めているときに使います。
- そのとき、頭に浮かんだ言葉をそのまま言うと何でしたか。
- その考えを支える事実と、そうでない事実を挙げるとしたら何がありますか。
- 同じ状況にいる大切な人に、あなたなら何と声をかけますか。
- その考えが少しゆるんだら、まず何ができそうですか。
- 最悪の場合、実際には何が起きますか。そのとき、あなたはどうしますか。
- その解釈以外に、あと2つ別の見方を挙げるとしたら何ですか。
1on1|上司と部下
評価面談ではなく、支援のための問いです。進捗確認だけの場にしないことが要点です。
- この1か月で、いちばん手ごたえがあった仕事は何でしたか。
- いま、仕事を進めにくくしているものは何ですか。
- 私(上司)が減らすと、あなたの仕事が進みやすくなることは何ですか。
- 今いちばん相談しにくいと感じていることは、どんなことですか。
- 半年後、どんな仕事ができるようになっていたいですか。
- この1か月で、私が知らないほうがよかったと思う判断はありましたか。
リーダー|管理職・経営者向け
役割が変わるときに、何を手放し何を引き受けるかを扱います。
- あなたにしかできない仕事は、いま何ですか。
- 手放すべきなのに、まだ握っている仕事はどれですか。
- あなたのチームで、いちばん発言していない人は誰ですか。それはなぜだと思いますか。
- 直近の意思決定で、印象と事実のどちらを多く使いましたか。
- あなたが明日いなくなったら、何が止まりますか。
- 3年後、このチームがどうなっていたら成功だと言えますか。
キャリア|節目を考える
正解を示すのではなく、価値を言語化して本人が選べるようにします。
- これまでの仕事で、時間を忘れて取り組めたのはどんなときですか。
- 仕事で大切にしたい価値を3つ挙げるとしたら何ですか。
- その3つのうち、いま満たされているのはどれですか。
- いまの仕事のどの部分なら、明日から少し自分で設計できますか。
- 10年後に「やっておいてよかった」と思う選択は、どれだと思いますか。
- これだけは避けたい、という状態は何ですか。
レジリエンス|困難から戻る
折れない力ではなく、折れてから戻る力を支える問いです。
- 過去に似た困難を乗り越えたとき、何が助けになりましたか。
- 今、あなたを支えている人・場所・習慣は何ですか。
- 自分でコントロールできることと、できないことを分けるとどうなりますか。
- この経験から、あとで振り返って意味を見いだせるとしたら何だと思いますか。
- いちばん消耗するのは、どんな場面ですか。
- 回復のために、いま減らせるものは何ですか。
ウェルビーイング|幸福・意味・つながり
PERMAとマタリングに関連します。良い状態を押しつけにしないよう注意してください。
- 最近、誰かの役に立てたと感じたのはどんな場面でしたか。
- あなたの一日の中で、いちばん心が落ち着く時間はいつですか。
- 「これがあるから頑張れる」と思えるものは何ですか。
- あなたの存在が、誰にとってどんな意味を持っていると思いますか。
- 時間を忘れて没頭できるのは、どんなときですか。
- この1週間で、もう一度やりたいと思うことは何でしたか。
問いを効かせる4つのこと
- 1回に1つだけ聞く。2つ重ねると、相手は答えやすいほうだけ答えます。
- 沈黙を待つ。考えている沈黙を埋めると、思考が止まります。10秒は待ってください。
- 相手の言葉を使う。こちらの語彙に言い換えると、相手の実感から離れます。
- 答えを評価しない。「いいですね」と返した瞬間、相手は正解を探し始めます。
自分に使う(セルフコーチング)
これらの問いは、自分に対しても使えます。頭の中だけで考えず、書き出すか声に出してください。それだけで整理の進み方が変わります。
- 目標から1問 — いま実現したいことを書く
- 現状から1問 — 10点満点で何点か、理由も書く
- 解決志向から1問 — 少しでもましだった日は何が違ったか
- 最後に — 明日できることを1つだけ決める
AIを補助に使う場合の型はAI×コーチングにまとめています。
よくある質問
コーチングではどんな質問をするのですか?
相手の思考を「広げる」か「具体化する」かのどちらかを起こす問いです。 何を実現したいか(目標)、すでにうまくいっている場面はどこか(例外)、10点満点で今は何点か(スケーリング)などが代表的です。
避けるべき質問はありますか?
2つあります。 助言を質問の形にした誘導尋問(「〜したほうがいいと思いませんか」)と、「なぜ」で始まり相手を防御的にさせる問いです。後者は「いつ・どこで・何が」に置き換えてください。
質問をたくさん覚える必要はありますか?
ありません。まず3つだけ選び、繰り返し使うほうが身につきます。 目標・現状・次の一歩に対応する問いを1つずつ持っておけば、ほとんどの対話は進みます。
沈黙が続いたらどうすればよいですか?
待ってください。 考えている沈黙を埋めると、相手の思考が止まります。10秒待っても言葉が出ない場合は、質問が抽象的すぎた可能性があるため、より具体的な問いに言い換えます。
自分に対しても使えますか?
使えます。 書き出しながら答えるセルフコーチングとして有効です。声に出す、あるいは紙に書くと、頭の中だけで考えるより整理が進みます。
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