医療機関は“苦手な環境”になりやすい
待ち時間の見通しが立たない、予定が変わる、感覚刺激が多い、初対面の人と多くのやりとりが必要。医療現場には、発達特性のある方が負担を感じやすい条件が重なります。
ASD・ADHDなどの発達特性を理解し、患者さん・ご家族・スタッフへの関わりを変えていく。 看護師のための発達障害支援の資格・研修ガイドと、 コーチング心理学にもとづく発達障害支援コーチングの実践をまとめました。
結論として、看護師が学ぶべきなのは「発達障害の知識」だけではなく、 発達特性に合わせて“伝え方・環境・対話”を調整する技術です。 医学的知識は臨床で得られる機会が多い一方、現場で不足しがちなのは 「どう声をかけ、どう関わるか」という具体的な方法だからです。
どれか1つでも思い当たるなら、必要なのは「もっと頑張ること」ではなく、特性に合わせた関わり方の引き出しです。
その多くは、理解力や意欲の問題ではなく
「情報の届き方」と「環境」の調整で変えられます。
待ち時間の見通しが立たない、予定が変わる、感覚刺激が多い、初対面の人と多くのやりとりが必要。医療現場には、発達特性のある方が負担を感じやすい条件が重なります。
診断がある方だけでなく、いわゆるグレーゾーンの方、診断のないまま成人期・高齢期を迎えた方にも日常的に関わります。診断名ではなく「困っている場面」から支援を組み立てる視点が求められます。
自治体や国の機関でも、看護師・准看護師を対象とした知的・発達障害に関する研修が継続的に行われています。「看護 × 発達障害」は、明確な専門教育ニーズのある領域です。
ASD・ADHD・LD・DCD。特性は「できる/できない」ではなく、情報処理・感覚・運動の“違い”として理解します。
こだわり・見通し・対人的やりとりの特性
看護のポイント説明は「いつ・どこで・何を・どのくらい」を具体化し、口頭だけでなく紙やホワイトボードで視覚化する。
注意の持続・衝動性・実行機能の特性
看護のポイント1回1メッセージに絞り、要点を紙に残す。リマインドの仕組み(アラーム・チェックリスト)を一緒に設計する。
読む・書く・計算するの特異的な困難
看護のポイント書類はふりがな・図解・読み上げなど、複数のルートで情報を届ける。
不器用さ・運動の協調の困難
看護のポイント手技は工程を分解し、できた工程を必ず言語化して返す。
外来・病棟・精神科・小児母子・高齢在宅、そして看護職自身の支援まで。あなたの現場を選んでください。
「具体的に・肯定的に・視覚的に」。スモールステップと感覚への配慮を加えることが、支援の基本形になります。
患者さんだけでなく、ご家族、そして看護職自身。この3本柱がそろうと、学びが職場全体に効いてきます。
発達特性のある患者さんの情報処理・感覚・コミュニケーションの違いを理解し、伝え方と環境を調整します。
家族の困りごとと、これまでの工夫を引き出し、医療者・地域とともに支える対話をつくります。
発達特性のある看護師・看護学生・新人が力を発揮できるよう、指導・環境調整・1on1を設計します。
Before → Assessment(見立て)→ Intervention(介入)→ After。同じ出来事でも、見立てが変わると打ち手が変わります。
服薬指導を何度説明しても患者さんに伝わらない
「理解力の問題」ではなく、一度に渡す情報量が多すぎた。口頭情報のみで、聴覚的な処理に負荷が集中していた(ASD特性+情報過多)
①1回1メッセージに短文化 ②薬の名前・時間・量を表に視覚化 ③手順を番号で順序化 ④復唱ではなく「明日の朝、最初にすることは?」と行動で確認
服薬手順の再現率が上がり、質問が具体的になった
検査の予定変更で患者さんが強く混乱し、拒否が続く
「わがまま」ではなく、見通しの変更に対する困難。変更点が口頭で一度に伝えられ、何がどう変わったのか把握できなかった
①変更点だけを紙に書いて示す ②新しい時間・場所・所要時間を明示 ③「先に済ませる/午後にする」など選べる範囲を提示 ④終わりの時刻を先に伝える
混乱が短時間で収まり、本人が予定を選べるようになった
採血のたびに強い不安があり、実施できないことがある
痛みそのものよりも、予測できない刺激と待機時間の負荷(感覚特性+見通しの困難)
①手順を写真で予告 ②所要時間と「終わりの合図」を決める ③刺激の少ない場所・時間帯を選ぶ ④本人が使えるセルフケア(呼吸・アイテム)を事前に合意
予告と選択があることで実施できる回数が増えた
保護者が「家では全然できない」と自責的に語る
できていない場面だけが語られ、うまくいっている「例外」が共有されていなかった
①解決志向の質問で例外を探す(少しでもうまくいった日は?) ②その日に何が違ったかを特定 ③再現できる条件を1つだけ決める ④次回に結果を一緒に振り返る
家庭での工夫が言語化され、支援チームで共有できた
新人看護師への指導がうまくいかず「やる気がない」と見えてしまう
指示が抽象的(「臨機応変に」「気を利かせて」)で、優先順位の判断基準が共有されていなかった
①業務を工程に分解 ②判断基準をチェックリスト化 ③フィードバックは行動レベルで具体的に ④1on1で強みと次の一歩を本人が決める
行動が明確になり、報告・相談の頻度と質が上がった
知識は理解を変えます。コーチングは、関わりと行動を変えます。両方そろって、はじめて臨床が動きます。
まずは「何を目的に学ぶか」で整理します。知識中心か、対応の技術中心か、対話の技術まで含むか。
| 学習分野 | 主な目的 | 看護師との相性 | 位置づけ |
|---|---|---|---|
| 発達障害の基礎研修 | 基礎知識の習得 | ★★★★★ | 公的機関・自治体の研修が中心 |
| 発達障害支援の専門研修 | 支援技術の習得 | ★★★★★ | 現任者向けの専門職研修など |
| 医療・看護向け発達障害研修 | 臨床場面での対応 | ★★★★★ | 医療機関・職能団体の研修 |
| コーチング(一般) | 対話・行動支援 | ★★★★★ | 民間資格・民間研修 |
| 発達障害支援コーチング | 発達特性+対話・行動支援 | ★★★★★ | 民間資格(当協会の認定資格) |
| 心理学系の資格 | 心理的理解 | ★★★★☆ | 国家資格〜民間資格まで幅広い |
| 福祉系の資格 | 制度・福祉的支援 | ★★★☆☆ | 国家資格・任用資格が中心 |
医学的知識に加えて、「その人に合わせた関わり方」まで扱うのが発達障害支援コーチングの特徴です。
| 項目 | 一般的な発達障害研修 | 発達障害支援コーチング |
|---|---|---|
| 発達障害の基礎(ASD/ADHD/LD/DCD) | ◎ | ◎ |
| 医学的知識・制度の理解 | ◎ | ○ |
| コミュニケーションの技法 | ○ | ◎ |
| コーチングの理論と実践 | △ | ◎ |
| 強み・ストレングスの活用 | △ | ◎ |
| 行動変容・行動分析の応用 | ○ | ◎ |
| 1on1・対話の設計 | △ | ◎ |
| 看護現場への応用(外来・病棟) | ○ | ◎ |
| 患者・家族への支援 | ○ | ◎ |
| 看護職自身(同僚・新人)への支援 | △ | ◎ |
| 支援者自身のメンタルヘルス | △ | ◎ |
10問に答えると、あなたの現場でいま優先度の高い学びのテーマが分かります。
「知る」から「専門性を高める」まで。どの段階からでも入れます。
国際的なコーチング心理学の知見を日本で体系化してきた協会が、発達支援に特化してプログラム化しました。
国際的なコーチング心理学の知見(Handbook of Coaching Psychology の翻訳を起点)を土台に、心理学の理論と実践を体系立てて教えています。
「どんな人にも、人生にも“障害”がある」という前提から、困難だけでなく強みと可能性に光をあてる支援観を学びます。
特性を「治す対象」ではなく「多様性」として捉え、環境と伝え方を調整する発想を臨床に持ち込めます。
認知行動的アプローチ、解決志向、ナラティヴ、応用行動分析(ABA)、ポジティブ行動支援(PBS)、質問技法・フィードバック法を一貫した枠組みで扱います。
ポジティブ発達支援の尺度など、心理尺度を用いた見立てと効果測定を重視しています。
認定発達障害支援コーチ(Basic)から上位課程へ、さらにコーチング心理士®・コミュニケーション心理士®などの認定ポイントにも接続します。
教育・医療・福祉・司法・企業・公共団体など、多様な現場での研修実績があります。
オンライン(Zoom)のワークショップ形式が中心。シフト勤務でも参加しやすく、法人向けには出張・講師派遣にも対応しています。
ADHD・ASD・LD・DCDの理解から、コーチング心理学・ポジティブ心理学を用いた実践支援まで。子どもから大人まで対応します。
ニューロダイバーシティの視点で、「その人に合った支援」を設計できるようになる実践プログラム
| 1日入門コース | 11,000円(税込) |
| 2日間コース | 22,000円(税込) |
| 資格認定費(認定を希望される場合) | 33,000円(税込) |
| 再受講 | 11,000円(税込) |
※コース区分・金額は変更される場合があります。最新の内容は公式の講座ページをご確認ください。
学んだ翌日から、外来でも病棟でも使えます。そして、患者支援を超えて職場づくりにも効いてきます。
短文化・視覚化・手順化・見通しの提示。伝え方の引き出しが増え、同じ説明時間でも理解度が変わります。
拒否・混乱・中断の背景を見立てられるようになり、処置や退院後の生活の継続性を支えやすくなります。
家族の自責感を軽くし、家庭で機能している工夫を引き出して支援計画に組み込めます。
「なぜ伝わらないのか」が分かることで、対応の空回りと自責が減ります。支援者のセルフケアも学びます。
新人教育、プリセプター、実習指導、1on1、チームづくり。指導言語が具体的になります。
院内研修の企画、相談支援、発達支援分野への展開など、看護の専門性に新しい軸を加えられます。
臨床でよくある質問と、資格・講座に関する質問をまとめました。
看護業務そのものに必須の資格ではありません。ただし、発達特性のある患者さん・家族・同僚への関わりは日常的に生じるため、体系的に学ぶことで対応の質が大きく変わります。資格は「学びを可視化し、院内外で役割を担うための裏づけ」として機能します。
発達特性を「問題行動」ではなく、情報処理・コミュニケーション・感覚の違いとして理解できるようになる点です。結果として、説明の仕方、環境調整、対話の方法を具体的に選べるようになり、患者さんの安全と満足度、そして自分自身の疲弊の軽減にもつながります。
「具体的に・肯定的に・視覚的に」が基本です。あいまいな表現を避け、してほしい行動を示し、口頭だけでなく紙や図で見える形にします。例:「少し待ってください」→「あと10分です。10分たったらお呼びします」と紙に書いて渡す。
見通しと具体性です。予定・手順・所要時間・終わりを先に伝え、変更があるときは「変わった点だけ」を明示します。比喩や遠回しな表現は避け、感覚過敏への配慮(音・光・におい)も同時に検討します。
情報量を絞ることと、記憶に頼らない仕組みづくりです。1回1メッセージに短文化し、要点は紙に残します。服薬や予約はアラーム・チェックリストなど外部の仕組みと組み合わせると、本人の負担が減ります。
待ち時間の見通しが立たない、予定が変わる、感覚刺激が多い、初対面の人と多くのやりとりが必要、といった要素が重なりやすいためです。裏を返せば、見通し・視覚化・環境調整の3点で負担は大きく減らせます。
感覚の感じ方の違い(過敏・鈍麻)は発達特性に伴って生じることがあります。医療現場は音・光・におい・接触の刺激が多いため、待合の場所、照明、呼び出し方法、処置の順番などを個別に調整する視点が役立ちます。
公的機関・自治体による基礎研修や専門職研修、医療機関・職能団体の院内研修、民間の実践講座があります。「知識中心」か「対応・対話の技術中心」かで選ぶと迷いにくく、臨床での関わり方を変えたい場合は、コーチングを含む実践型の講座が向いています。
大学院修了が要件となる国家資格・学会認定資格(公認心理師、臨床発達心理士など)、実務経験が要件となる福祉分野の資格、比較的短期間で学べる民間の支援者向け資格に大別できます。目的(医療内での活用/個別支援/独立開業)から逆算して選ぶのが現実的です。
発達特性の理解を土台に、コーチング心理学・ポジティブ心理学の対話技法を用いて、本人の強みと選択肢を広げ、小さな行動を支える支援の枠組みです。「知識として知る」から「その人に合わせて関われる」への橋渡しを担います。
発達障害支援は特性理解と環境調整を中心とした支援全般を指し、コーチングは対話を通じて本人の目標・行動を引き出す関わり方を指します。両者を統合すると、「特性に合わせた環境調整」と「本人が選び・動ける対話」の両輪がそろいます。
指示・説明中心の関わりに、引き出す関わりが加わります。患者さんの行動変容(服薬・生活習慣・セルフケア)を支えやすくなるほか、後輩指導や1on1、チームの心理的安全性づくりにも直接応用できます。
本人の特性を前提に、指示の具体化、業務の工程化、チェックリスト化、優先順位の判断基準の共有といった環境調整が中心です。あわせて、強みを活かせる役割設計と、行動レベルの具体的フィードバックが効果的です。
実習前に流れと評価基準を具体的に示し、指示を段階化します。抽象的な「臨機応変に」を、判断基準と手順に翻訳することが要点です。振り返りは、できなかった点の指摘だけでなく、できた行動の言語化から始めます。
①見通しを伝える ②情報を視覚化する ③一度に伝える量を絞る ④感覚刺激を調整する ⑤選択肢を提示する、の5点を基本形にすると、外来・病棟いずれの場面にも応用できます。
診断の有無で対応を分ける必要はありません。困っている場面(何が・いつ・どのくらい)に注目し、伝え方と環境を調整する視点が有効です。本講座でもグレーゾーンへの対応を扱います。
手順を事前に写真や図で予告し、所要時間と「終わりの合図」を決めておきます。刺激の少ない時間帯・場所を選び、本人が使えるセルフケア(呼吸法・アイテム)を事前に合意しておくと、実施できる可能性が高まります。
変更点だけを取り出して紙に書き、新しい時間・場所・所要時間を明示します。そのうえで「先に済ませる/午後にする」など、選べる範囲を提示すると、本人が状況をコントロールできる感覚を取り戻しやすくなります。
困りごとを聞くだけでなく、これまでうまくいった場面(例外)を一緒に探します。家庭で機能している工夫を言語化して支援チームで共有すると、家族の自責感が軽くなり、実行可能な支援計画につながります。
診断を受けないまま成人期・高齢期を迎える方もおり、受診・服薬・生活管理の困難として現れることがあります。加齢による変化と発達特性を分けて捉えることで、必要な仕組みづくりや家族支援の方向性が見えやすくなります。
いいえ。「認定発達障害支援コーチ」は一般社団法人コーチング心理学協会が認定する民間資格であり、公認心理師などの国家資格や、行政が実施する任用資格を取得するための講座ではありません。臨床・教育・支援の現場で実践的に活かすための資格です。
必要ありません。「すべての方がご参加できます」という方針で、医療職に限らず、教育・福祉・企業の支援者、ご家族まで幅広く受講いただけます。
はい。Zoomを用いたオンラインのワークショップ形式が中心です。シフト勤務の看護師の方でも参加しやすく、全国どこからでも受講いただけます。
はい。1日入門コースと2日間コースがあり、まず基礎に触れたい方は1日入門から始められます。資格認定を希望される場合は、別途、資格認定の手続きが必要です。
認定発達障害支援コーチ(Basic)の認定証(PDF/オプションで紙・英語版にも対応)が発行されます。上位課程への進級資格や、コーチング心理士®・コミュニケーション心理士®などの認定ポイントにも接続します。
外来・病棟での説明と環境調整、入退院支援、患者・家族面談、院内研修の企画、新人教育やプリセプター、1on1・チームづくりなど、患者支援と組織づくりの両面で活用できます。
時間の制約がある現場だからこそ、短い対話の質が効きます。「1つ質問して、1つ選んでもらう」だけでも関わりは変わります。本講座では、限られた時間で使える質問法とフィードバック法を扱います。
はい。行動分析・ポジティブ行動支援(PBS)、認知行動的アプローチ、解決志向アプローチ、ストレングスアプローチなどを、一貫した支援の枠組みの中で扱います。
扱います。支援者自身のメンタルヘルスケアはカリキュラムの一部です。共感疲労を防ぎ、長く関わり続けるためのセルフケアの視点を学びます。
医学的知識の獲得にとどまらず、コーチング心理学・ポジティブ心理学を用いた「その人に合わせた関わり方」を実践レベルで扱う点です。患者・家族に加えて、看護職自身への支援まで射程に入れている点も特徴です。
できます。院内研修としての実施や、法人向けのオーダーメイド研修に対応しています。オンラインだけでなく、対面のワークショップや講師派遣・出張研修も可能です。
公式サイトのお問い合わせフォーム、またはメール(info@coaching-psych.com)よりご相談ください。開催時期や最新の内容は、公式の講座ページでご確認いただけます。
知りたいテーマから読み進められます。
発達障害支援コーチング講座は、オンライン(Zoom)のワークショップ形式で全国から受講できます。 1日入門コースから、認定資格の取得まで。院内研修・法人向けのオーダーメイド研修(対面・出張・講師派遣)にも対応しています。