PERMA理論・拡張形成理論(Broaden-and-Build Theory)・PRISM理論という3つの基盤理論と、ポジティブ心理学1.0から4.0までの発展の歴史を、具体例つきで丁寧に解説します。
ひとことで言うと:ポジティブ心理学とは、人間の弱さや病理ではなく「強み・幸福・最適な機能」に焦点を当て、個人とコミュニティが十分に力を発揮するための要因を科学的に研究する心理学の一分野です。1998年、心理学者マーティン・セリグマンによってアメリカ心理学会年次大会で提唱されました。
「知る→理解する→実践する→深める」の順に読み進めると、全体像がつかみやすくなります。
ポジティブ心理学という言葉は聞いたことがあっても、内容を説明できる人は多くありません。
強み・幸福・最適な機能を科学的に研究する、比較的新しい心理学の一分野です。
マーティン・セリグマンが提唱した、ウェルビーイング(持続的幸福)を構成する5つの要素の頭文字を取ったモデルです。
ひとことで言うと:PERMA理論とは、人がウェルビーイングを実感するために欠かせない「ポジティブ感情・エンゲージメント・人間関係・意味/目的・達成」という5つの要素を示すモデルです。どれか1つではなく、5つのバランスが重要とされています。
喜び・感謝・愛情・興味・希望など、心地よい感情を経験すること。
時間を忘れるほど物事に没頭する「フロー状態」を経験すること。
信頼でき、支え合える意味のあるポジティブな関係を持つこと。
自分を超えた、より大きなものへ貢献していると感じられること。
目標に向けて努力し、それを成し遂げることで得られる充実感。
💡 PERMAを高める方法:5つの要素は生まれつきの才能ではなく、日々の小さな行動の積み重ねで伸ばせるとされています。とくに仕事の場面では、エンゲージメント(没頭)を高める工夫が「ワークエンゲージメント」の向上や心理的ウェルビーイングの土台にもつながると考えられています。まずはセルフチェック(簡易的なPERMA診断)で、自分がどの要素を伸ばしやすいか確認してみましょう。
PERMAセルフチェックをするポジティブ心理学のもう一つの大きな柱が、「弱み」ではなく「強み」に注目するVIA(Values in Action)の枠組みです。
ひとことで言うと:VIA性格の強み(キャラクター・ストレングス)とは、心理学者クリストファー・ピーターソンとマーティン・セリグマンが2004年に体系化した、人間に共通する24の性格的な強みを「英知と知識・勇気・人間性・正義・節制・超越性」という6つの美徳に分類した枠組みです。ポジティブ心理学における代表的な「強み診断」の理論的基盤とされています。
出典:連携団体(一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会)「強み」関連コンテンツより引用
創造性・好奇心・向学心・大局観など、知識を得て活用する強み。
誠実さ・勇敢さ・忍耐力・熱意など、困難に立ち向かう強み。
愛情・親切心・社会的知能など、人とつながる強み。
チームワーク・公平さ・リーダーシップなど、共同体を支える強み。
自己統制・感謝・希望・ユーモアなど、自分を整え意味を見出す強み。
🔍 自分の強みを知りたい方へ:VIA性格の強みは、VIA Institute on Character(米国)の公式サイトで無料のオンライン強み診断(VIA診断)を受けることができます。ポジティブ心理学における「強み診断」として世界的に広く使われているツールです。
診断で上位に出た「シグネチャーストレングス(自分らしい強み)」を、いつもと違う場面で意識的に使ってみることが、ウェルビーイングを高める代表的な実践法とされています。
メンバーそれぞれの強みを理解し、役割分担や1on1に活かすことで、エンゲージメントの高いチーム作りにつながるとされています。
コーチング心理学の対話では、弱みの克服だけでなく「すでに持っている強み」に光を当てる問いかけが、目標達成への意欲を引き出す鍵になるとされています。
心理学者バーバラ・フレドリクソンが1998年に提唱した、ポジティブ感情の働きを説明する理論です。
ひとことで言うと:拡張形成理論とは、ポジティブな感情が私たちの思考と行動の幅を「拡張(Broaden)」し、将来にわたって使える心理的・社会的な資源を「形成(Build)」することを説明する理論です。従来の感情研究がネガティブ感情の生存機能に注目してきたのに対し、この理論はポジティブ感情ならではの働きに焦点を当てました。
ポジティブ感情は、こうして「上昇スパイラル」を生み出すと考えられています
「気分が乗るまで待つ」のではなく、「行動する」ことで気分を変える行動活性化は、拡張形成理論が描く上昇スパイラルを実際に動かす手段になります。
何をしたか、気分スコア(0〜10点)、楽しさ・達成感を記録します。
感謝日記、親切な行為、自然や芸術との接触、マインドフルネスなど。
「別の見方はないか?」と自問し、根拠を検証する習慣を持ちます。
気分が乗らなくても「5分だけ」など、小さな行動から始めます。
不確実で変化の激しい時代を、主体的に生き抜くための5つの心理的スキルの体系です。
ひとことで言うと:PRISM理論とは、ポジティブ心理学の創設者マーティン・セリグマン博士と医学博士ガブリエラ・ケラーマン氏による著書『Tomorrowmind(これからの生き方)』で示された、変化の激しい「ホワイトウォーター社会」に適応するための5つのスキルの頭文字を取った理論です。これらは生まれ持った才能ではなく、練習によって育てられるスキルとされています。
出典:当協会(一般社団法人コーチング心理学協会)「Tomorrowmind これからの生き方 PRISM理論を活用したコーチング心理学のメリット」より引用
未来を具体的にイメージし、希望を持って行動する力。
逆境から立ち直る回復力と、経験から学んで成長する力。
新しいアイデアを生み出し、変化に柔軟に対応する力。
必要なときに支援を求め、他者を支えることでつながりを強くする力。
自分の存在や仕事が、他者や社会にとって意味があると実感できる力。
📊 自分の現在地を知りたい方へ:連携団体である一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会は、Tomorrowmindの内容にもとづく公式の「PRISM(プリズム)未来適応力尺度心理テスト」を提供しています。
公式PRISM診断を受けてみる1998年の誕生以来、ポジティブ心理学という学問そのものも議論を重ねながら発展してきました。学術的に統一された公式区分ではありませんが、代表的な4つの発展段階として整理すると理解しやすくなります。
人間の強み・美徳・幸福感に焦点を当てた第一世代。感謝日記や強みの発見など、ポジティブな側面への集中が特徴です。
PERMA理論はこの段階ポジティブな側面だけでなく、困難や逆境もまた成長と意味の源泉であるとし、喜びと苦悩を統合的に扱う視点が加わりました。
意味中心・レジリエンス文化的背景や人生の文脈を尊重し、ウェルビーイングを到達点ではなく継続的なプロセスとして捉える、より成熟した視点です。
コーチング実践への応用個人の幸福最適化から、生命を支えるシステム全体の健全性へ視野を広げ、AIとの協働やデータにもとづく個別対応を統合する最新の提案です。
PRISM理論・Tomorrowmindと親和性| 段階 | 主な焦点 | キーワード | 代表的な理論・実践 |
|---|---|---|---|
| 1.0 | 強み・幸福感の発見 | 感謝日記/強みの発見 | PERMA理論 |
| 2.0 | 喜びと苦悩の統合 | 意味づけ/逆境耐性 | 拡張形成理論の応用拡大 |
| 3.0 | 文脈・多様性・プロセス | 文化的謙虚さ/システム思考 | コーチング心理学との統合 |
| 4.0 | 集団的・生成的な繁栄 | AI協働/個別最適化/倫理 | PRISM理論・Tomorrowmind |
参考:Seligman & Csikszentmihalyi (2000)/Paul T. P. Wong (2009〜)のポジティブ心理学第二の波に関する提言/van Zyl, L. E. (2026). Positive Psychology 4.0: A Science of Consequence for a World That Can No Longer Wait. Frontiers in Psychology.
それぞれ扱う問いが異なるため、組み合わせて理解すると全体像が見えてきます。
「何が」ウェルビーイングを構成するのか、という要素のモデル
「どんな強みを」活かすのか、という個人差のある資質の枠組み
「なぜ」ポジティブ感情が良い結果を生むのか、というメカニズム
「これからをどう生きるか」という未来適応の実践スキル体系
これらの理論が生まれてきた学問的な文脈・時代背景の変遷
セットで語られることが多い2つの学問領域ですが、それぞれの役割は少し異なります。
ひとことで言うと:コーチング心理学とは、心理学の理論・技法を用いて、健常な人が目標を達成し、自己実現していくプロセスを支援する応用心理学の一領域です。ポジティブ心理学が「何が人を健やかにし、力を発揮させるのか」を明らかにする基礎科学だとすれば、コーチング心理学は、その知見を対話や問いを通じて実践に落とし込む「応用の技術」といえます。
出典:一般社団法人コーチング心理学協会 公式サイトより引用
PERMA理論・拡張形成理論・強み理論などが、コーチングの対話設計の土台になっています
PRISM理論のProspection(未来志向)は「1年後の自分はどんな姿でいたいですか?」といった問いによって育てられるとされています
目標達成そのものが、PERMAの「達成」や「エンゲージメント」を満たすように設計される点が特徴です
当協会(一般社団法人コーチング心理学協会)は、一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会と連携し、理論と実践を橋渡しする学びを提供しています
| 観点 | ポジティブ心理学 | コーチング心理学 |
|---|---|---|
| 目的 | 何が幸福・最適な機能を生むかを解明する科学 | 個人の目標達成・自己実現を支援する実践 |
| アプローチ | 研究・測定・理論構築 | 対話・問い・セッション |
| 代表理論 | PERMA理論/拡張形成理論/PRISM理論 | 目標設定理論/解決志向アプローチ 等 |
| 両者の関係 | ポジティブ心理学が「理論的基盤」を提供し、コーチング心理学がそれを「実践の技術」として対話に落とし込む、補い合う関係にあります | |
さらに詳しく学びたい方は、当協会の解説記事「ポジティブ心理学2.0とコーチング心理学とは?」もあわせてご覧ください。
出典:一般社団法人コーチング心理学協会 公式YouTubeチャンネル
ポジティブ心理学の知見は、特別な場面だけでなく毎日の暮らしの中で少しずつ実践できます。
5つの質問から、いまのあなたにとって伸ばしやすいPERMAの要素を確認してみましょう。
※これは学びを深めるための簡易的な自己診断であり、科学的に妥当性が検証された心理測定尺度ではありません。より本格的な測定は、公式の「PRISM未来適応力尺度心理テスト」をご利用ください。
直感で、いちばん近いと感じる選択肢を選んでください。
ポジティブ心理学をさらに体系立てて学びたい方向けの関連ページです。
コーチング心理学とポジティブ心理学を統合した、当協会の資格・講座の詳細を確認できます。
連携団体の資格拡張形成理論とCBTを統合した、連携団体(ポジティブ心理カウンセラー協会)の実践資格です。
連携団体の公式診断Tomorrowmindにもとづく、連携団体が提供する公式の心理測定ツールで現在地を確認できます。
連携団体PERMA理論・拡張形成理論・PRISM診断など、ポジティブ心理学の理論と実践を提供しています。
ポジティブ心理学に関してよく寄せられる質問をまとめました。
PERMA理論・拡張形成理論・PRISM理論の理解を土台に、資格講座では実践スキルまで体系的に学ぶことができます。
本ガイドは、コーチング心理学とポジティブ心理学を統合した実践型ワークショップ・資格講座を提供する一般社団法人が運営しています。
国際的なエビデンスとナラティヴにもとづくコーチング心理学を日本で初めて体系化し、ポジティブ心理学と統合した資格講座・研修を提供している一般社団法人です。本ガイドの理論的な内容・用語の解説は、同協会の監修のもとに作成されています。
一般社団法人コーチング心理学協会。コーチング心理学とポジティブ心理学に関する資格認定・講座運営を行っています。
一般社団法人ポジティブ心理カウンセラー協会と連携し、ポジティブ心理学の理論・診断ツールを共同で提供しています。
本ガイドの内容は、両協会の公式サイト記事および国際的な学術文献(Seligman、Fredrickson、Wong、van Zylほか)を参照しています。
ポジティブ心理学に関する資格は、現状ほぼすべてが学会・協会等による民間資格です。目的に応じて専門性を体系的に学べる選択肢のひとつとして位置づけています。