ポジティブ・エゴグラム ウェルビーイングとストレングスを高める!
ポジティブ・エゴグラムは以下のプログラムで実践します。
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ポジティブ・エゴグラムとは?ウェルビーイング・ストレングスを活かすために
パーソナリティコーチングでは、「エゴグラム」と個人のウェルビーイング(幸福感や心理的健康)との関連性、特に「新版ポジティブ・エゴグラム」の新規性と意義について紹介。
多数の学術研究により、エゴグラムで示される自我の状態は、個人の幸福感やストレス耐性と強く関連することが明らかになっています。この知見を基に開発された「ポジティブ・エゴグラム」は、従来の分析手法にコーチング心理学やポジティブ心理学の視点を統合した画期的なツールです。その最大の特徴は、個々の性格特性を単なる傾向として捉えるのではなく、すべてを「強み」や「長所」として積極的に解釈し、自己肯定感の向上と持続的な成長へとつなげる点にあります。
さらに、このポジティブ・エゴグラムは、国際的に信頼性の高い性格分析モデル「ビッグファイブ」や、主要なウェルビーイング指標との関連性が科学的なデータ分析(心理ネットワーク分析)によって検証されています。これにより、個人の自己理解を深めるだけでなく、キャリア開発、コミュニケーション改善、組織開発といったビジネスシーンでの具体的な活用において、エビデンスに基づいた信頼性の高いアプローチを提供します。
パーソナリティ心理学コーチングでは、ポジティブエゴグラムの実践とを押して、ビジネスパーソンが自己のポテンシャルを最大限に引き出し、より良い人間関係と組織文化を構築するための、実践的かつ効果的な洞察を提供します。

1. エゴグラムの基礎とウェルビーイングとの関連性
1.1. エゴグラムとは何か?
エゴグラムは、アメリカの心理学者J.M.デュセイによって提唱された心理分析の手法であり、交流分析(Transactional Analysis, TA)という理論の一部です。個人の性格や行動パターンを客観的に把握するためのツールとして、カウンセリングから人材育成まで幅広く活用されています。
その中核は、人間の自我(心)の状態を以下の5つのカテゴリーに分類し、それぞれの強弱をグラフで可視化することにあります。

| 自我状態 | 略称 | 特徴 |
| 批判的な親 (Critical Parent) | CP | 規律や原則、正しさを重んじる、厳格で責任感の強い側面。 |
| 養育的な親 (Nurturing Parent) | NP | 思いやりや共感を大切にし、他者を支援・保護しようとする側面。 |
| 大人 (Adult) | A | 感情に流されず、事実に基づき論理的・客観的に判断する側面。 |
| 自由な子ども (Free Child) | FC | 好奇心旺盛で創造性に富み、感情を素直に表現する側面。 |
| 順応した子ども (Adapted Child) | AC | 周囲の期待に応え、協調性を重んじ、ルールに適応しようとする側面。 |
この5つのバランスを見ることで、個人の強みや課題、コミュニケーションのクセなどを深く理解することができます。
2. 「ポジティブ・エゴグラム」の新規性と特徴
こうした学術的背景を踏まえ、一般社団法人コーチング心理学協会は、伝統的なエゴグラムを発展させた「新版ポジティブ・エゴグラム」を開発しました。これは、温故知新の視点から、コーチング心理学とポジティブ心理学の知見を融合させた新しいアプローチです。

2.1. 従来のエゴグラムとの決定的違い:ポジティブな再解釈
ポジティブ・エゴグラムの最も重要な新規性は、すべての自我状態の働きを「強み」や「長所」としてポジティブな視点から捉え直す点にあります。
従来のエゴグラムでは、例えばCP(批判的な親)が高いと「批判的・厳格すぎる」、AC(順応した子ども)が高いと「自己主張ができない」といったネガティブな側面が強調されがちでした。しかし、ポジティブ・エゴグラムでは、診断結果がどのようなものであっても、それを成長とポジティブな行動変容への出発点として位置づけます。
- 目的: クライエントのウェルビーイング(幸福感)と自己肯定感を高める。
- アプローチ: 診断結果を基に、最適な行動習慣を身につけ、必要に応じてパーソナリティの変容を促す。
- 理念: 自己肯定感が低い状態であっても、それを成長の機会と捉え、より良い状態へ進むことを支援する。
2.2. 5つの自我状態のポジティブな働き
ポジティブ・エゴグラムでは、5つの自我状態を以下のように、その建設的な側面を重視して解釈します。
| 自我状態 | 略称 | ポジティブな働き |
| 批判的な親 | CP | 正義感・規律のある行動: ルールや規範を重視し、誠実に物事を進める力。 |
| 養育的な親 | NP | 支援・温かいコミュニケーション: 他者に共感し、思いやりを持ってサポートする力。 |
| 大人 | A | 客観的判断・冷静な意思決定: データや事実に裏付けられた論理的思考力。 |
| 自由な子ども | FC | ユーモア・柔軟性・自己表現力: 創造性を発揮し、新しいことに挑戦するエネルギー。 |
| 順応した子ども | AC | 協調性・礼儀正しさ・社会適応: 周囲と円滑な関係を築き、組織に貢献する力。 |
このアプローチにより、利用者は自身の性格特性を肯定的に受け入れ、それを強みとして意識的に活用することが可能になります。
3. ポジティブ・エゴグラムの妥当性
ポジティブ・エゴグラムは、その有効性を担保するため、国際的に標準化された他の心理尺度との関連性を「心理ネットワーク分析」という最新の統計手法を用いて検証しています。
3.1. ビッグファイブ・パーソナリティとの関連性
ビッグファイブは、現在最も信頼されている性格理論です。ポジティブ・エゴグラムと日本語版ビッグファイブ尺度(TIPI-J)の関係を分析した結果、以下のような強い関連が見られました。
- A(大人)と CP(批判的な親): ビッグファイブの「勤勉性」と強い関連がありました。これは、客観的・論理的に物事を判断する力や、規律を守り誠実に努力する姿勢が、計画性や責任感といった特性に結びついていることを示します。
- NP(養育的な親)と AC(順応した子ども): 「協調性」と強い関連がありました。他者への配慮や周囲と合わせる力は、対人関係における優しさや協力的な態度として現れます。
- FC(自由な子ども): 「開放性(知的好奇心)」と強い関連がありました。創造性や好奇心は、新しい経験やアイデアに対してオープンな姿勢と一致します。
- ストレスへの注意点: 分析の結果、CP、NP、ACは、やや「神経症傾向(ストレスや不安を感じやすい傾向)」とも関連があることが示唆されました。「親」的な役割や、周囲に合わせる姿勢が、時に精神的な負担となり得るため、これらの特性が高い人は意識的なメンタルケアやストレス対策が重要であると言えます。

3.2. 主要なウェルビーイング指標との関連性
ポジティブ・エゴグラムが目指す「ウェルビーイングの向上」について、その効果を検証するため、2つの代表的なウェルビーイング・モデルとの関連も分析されています。
A) Ryffの「精神的幸福感モデル」との関係
このモデルは「自己受容」「個人的成長」「人生の目的」など6つの要素で構成されます。
- FC(自由な子ども)“I am OK”(自己肯定)」と深く関わり、**個人的な成長やレジリエンス(精神的回復力)**に影響を与える重要な要素であることが確認されました。
- **AC(順応した子ども)**は、人間関係を大切にするというポジティブな側面が見られる一方、ストレス耐性に課題がある可能性も示唆されました。
B) Flourish尺度(持続的幸福感尺度)との関係
このモデルはポジティブ感情、達成、人間関係、意味・意義などで構成されます。
- **A(大人)とNP(養育的な親)**が、全体的なウェルビーイングと密接に関連し、中心的役割を果たしていることが明らかになりました。
- **FC(自由な子ども)**は、特に「意義・意味(Meaning)」や「達成(Achievement)」と強く関連していました。
- **NP(養育的な親)**は、「人間関係(Relationship)」との強い結びつきが見られました。
- **AC(順応した子ども)**は、「意義・意味」との関連が弱い傾向が見られ、これは「従順な教育の影響で、自ら意味を見出すことが苦手になっているのではないか」という重要な示唆を与えています。自由な生き方を尊重する学びの重要性が浮き彫りになりました。
4. ビジネスパーソンおよび組織における活用法

ポジティブ・エゴグラムは、そのポジティブな視点と科学的妥当性から、個人と組織の双方に多大な利益をもたらすツールです。
| 活用法 | 概要 |
| 自己理解の促進 | 自身の強みや思考・行動のクセを客観的に把握し、自己成長の方向性を明確にします。 |
| キャリア開発 | 自分の適性や興味を深く理解し、最適なキャリアプランの策定や職業選択に役立てます。 |
| 人間関係・コミュニケーション改善 | 自分と他者のコミュニケーションスタイルを理解することで、対話を円滑にし、信頼関係を構築します。 |
| メンタルヘルスの向上 | ストレスを感じやすいパターンを特定し、セルフケアや適切な対処法を見つけることで、心の健康を維持します。 |
| 組織・チームの強化 | チームメンバーそれぞれの特性を「強み」として把握し、互いを尊重し協力しやすい環境を構築します。人材育成やリーダーシップ開発にも応用可能です。 |
5. まとめ
ポジティブ・エゴグラムは、確立された心理学理論であるエゴグラムを、現代のコーチング心理学とポジティブ心理学の視点から再構築した、革新的かつ実践的なツールです。
全ての性格特性を「強み」と捉え、自己肯定感を高めながら成長を促すというアプローチは、個人のウェルビーイングを向上させるだけでなく、コミュニケーションの質を高め、組織全体の生産性とエンゲージメントを向上させる大きな可能性を秘めています。
今後の課題としては、文化差による影響や、介入による長期的な効果の検証などが挙げられますが、現状でもビジネスパーソンが自己と組織をより良い方向へ導くための、信頼できる羅針盤として大いに活用が期待されます。
投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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