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コーチング心理学協会
🧭 ADHD × コーチング心理学 × ポジティブ心理学

ADHDコーチングとは?
ポジティブ心理学・コーチング心理学で
強みを活かし、行動と生活を整える方法

「なぜか行動できない」 「やるべきことを先延ばししてしまう」 「時間管理が苦手」 「仕事でミスを繰り返してしまう」

そんな悩みを、単なる「努力不足」と捉えるのではなく、ADHD特性・実行機能・環境・強みという視点から整理し、自分に合った行動方法を一緒に考えるのがADHDコーチングです。このページでは、支援の中身・実践方法・科学的根拠と限界を整理し、支援する側として学べる発達障害支援コーチング基本講座までご案内します。

ひとことで言うと

ADHDコーチングとは、ADHD特性や実行機能上の困難を理解しながら、本人が設定した目標に向けて、時間管理、タスク管理、行動開始、優先順位づけ、環境調整、自己理解などを支援するコーチングです。協働的で目標志向の関わりであり、多くは週1回・8〜12週間の個別セッションとして、対面のほか電話・ビデオ・チャットでも行われます(Ahmann & Saviet, 2019, 2024)。

ADHDコーチング 成人ADHD 実行機能 先延ばし 時間管理 タスク管理 自己肯定感・自己効力感 強み(ストレングス) ウェルビーイング コーチング心理学 ポジティブ心理学 ADHDコーチ 資格
発達障害支援コーチング 一般社団法人コーチング心理学協会
画像出典:一般社団法人コーチング心理学協会 公式サイト
8〜12週
研究で多く用いられる
標準的なプログラム期間
10領域
大学生148人の研究で
有意に改善した学習方略
19件
成人ADHDの心理的介入を
検討した系統的レビューのRCT数
中〜大
成人12セッション研究で
報告された効果量(単群研究)

このページの読み進め方

「知る → 理解する → 試す → 学ぶ」の4ステップで構成しています

STEP 01

知る

ADHDコーチングの定義と、悩みの背景にある実行機能のしくみを知る。

ADHDコーチングとは →
STEP 02

理解する

強みを活かす独自モデルと、医療・心理療法との境界を理解する。

独自モデルを見る →
STEP 03

試す

先延ばし・時間管理・タスク管理の具体的な方法を、今日から試す。

実践方法を見る →
STEP 04

学ぶ

支援する側として体系的に学ぶなら、発達障害支援コーチング基本講座へ。

基本講座を見る →
SUCH A CASE

こんなことで困っていませんか?

ADHDコーチングが扱う範囲は学業や仕事だけではありません。先延ばし・時間管理・計画・自己調整・不安・日常生活の課題、そして自己肯定感まで広がっています。

仕事・行動について

やるべきことを後回しにする/締切直前にならないと動けない
忘れ物・抜け漏れが多い/連絡や提出をうっかり忘れてしまう
優先順位をつけるのが苦手/どれも同じくらい重要に見える
時間を見積もるのが苦手/気づくと予定を大きく超えている
集中が続かない/一方で興味があることには没頭できる
仕事の整理が苦手/書類やデータの置き場所がわからなくなる

感情・自己認識について

自分を責めてしまう/失敗のたびに「またやってしまった」と落ち込む
自己肯定感が下がっている/うまくいった経験を思い出しにくい
「もっと頑張らなければ」と考え、休むことに罪悪感がある

人間関係について

職場の人間関係でつまずく/悪気なく相手を戸惑わせてしまう
感情のコントロールが難しい/衝動的に反応してあとで後悔する
頼るのが苦手/助けを求めるタイミングがわからない
これらは「意志が弱い」だけなのでしょうか? ADHDコーチングは、この問いを「本人の性格の問題」から「特性・実行機能・環境・強みの組み合わせの問題」へと置き換えるところから始まります。
WHAT IS IT

ADHDコーチングとは?

「励ますこと」でも「叱咤すること」でもありません。研究の定義に沿って、まず輪郭をはっきりさせておきます。

定義

ADHDコーチングとは、ADHD特性や実行機能上の困難を理解しながら、本人が設定した目標に向けて、時間管理、タスク管理、行動開始、優先順位づけ、環境調整、自己理解などを支援するコーチングです。研究上は「協働的(collaborative)で目標志向(goal-directed)の支援」と定義され、自己理解・システム化・スキル・戦略づくりを通じて、注意・衝動性・実行機能の管理を助けることを目的とします(Ahmann & Saviet, 2019, 2024)。

🔍

自己理解

自分の注意・衝動性・実行機能がどんな場面で、どんな形で表れるのかを、責めずに観察できるようにします。心理教育がその土台になります。

⚙️

システム化・環境調整

意志の力でがんばるのではなく、環境・道具・手順の側を変える。「思い出さなくても回る仕組み」を一緒に設計します。

🎯

スキルと戦略

時間管理、タスク管理、計画立案、優先順位づけ、行動開始のきっかけづくりなど、生活のなかで実際に使える方法に落とし込みます。

💬 よくある誤解について、少しだけ

ADHDコーチングは、ADHDを「治す」ためのものではありません。また、医学的な診断や治療に代わるものでもありません。ADHDコーチングは医療の代替ではなく、必要に応じて医療・心理支援などと組み合わせながら、日常生活・仕事・目標達成を支える方法の一つです。

コーチングを受けることは「自分に足りないところがある」証明でもありません。むしろ、自分の特性に合った進め方を見つけるための、前向きな設計作業に近いものだとお考えください。

EXECUTIVE FUNCTION

なぜ「努力」だけでは解決しにくいのか

「わかっているのにできない」の背景には、多くの場合、実行機能(executive function)と呼ばれる働きのつまずきがあります。

実行機能とは

実行機能とは、目標を決め、計画を立て、行動を始め、続け、必要に応じて切り替えるまでを支える一連の脳の働きのことです。ADHD特性がある場合、この働きが状況によって不安定になりやすく、「やる気はあるのに動けない」「大事なことほど後回しになる」といった、意志の強さでは説明しきれない現象が起こります。

📋

計画・優先順位

全体像を保持しながら順番を決める働き。ここが弱ると「何から手をつけるか」で止まります。

⏱️

時間感覚・見積もり

時間の経過を感じ取り、所要時間を予測する働き。ズレると予定が次々と崩れます。

🚀

行動開始・継続

「始める」「続ける」を支える働き。開始のハードルが高いと先延ばしが起こります。

🧠

ワーキングメモリ

一時的に情報を保持しながら作業する働き。抜け漏れ・忘れ物の背景になります。

🔄

切り替え(シフト)

作業や注意の対象を切り替える働き。没頭からの離脱が難しくなることがあります。

🌊

感情・衝動の調整

反応の強さを調整する働き。人間関係でのつまずきや自己否定にもつながります。

🏠

環境の影響

実行機能は環境しだいで働きが変わります。だからこそ環境調整が有効な打ち手になります。

💬

自己認識のクセ

失敗の積み重ねが「どうせ自分は」という語りを強め、行動をさらに止めてしまいます。

🌱 だからこそ、「頑張り方」ではなく「設計」を変える

実行機能に負荷がかかりやすいのであれば、必要なのは「もっと頑張ること」ではなく、負荷が少なくても回る仕組みをつくることです。ADHDコーチングが環境調整・仕組み化・小さな行動単位を重視するのは、この理屈にもとづいています。

OUR APPROACH

一般的なADHD支援との違い

「問題を減らす」だけの支援と、「強みと可能性を活かす」支援では、対話の中身が変わります。当協会が土台に置くのは後者です。

観点一般的な問題志向のアプローチポジティブ心理学 × コーチング心理学
見るもの苦手・欠点強み・資源・すでにできていること
目指すことミスや問題を減らすうまくいくパターンを増やす
問いの向き問題の原因を探す望む未来を具体化する
関わり方行動を指示する本人と一緒に方法を設計する
合言葉「できない」「どうすればできる?」
打ち手弱点の補完強みの活用 + 環境調整
ゴール困りごとの軽減困りごとの軽減 + ウェルビーイングの向上

※ 両者は対立するものではありません。困りごとへの対処は当然必要です。違いは「そこで終わるか、その先に可能性の設計まで含めるか」にあります。ポジティブ心理学にもとづくコーチングは、強みや資源を発見・活用・発展させ、ウェルビーイングと機能向上を目指すアプローチとして整理されています(van Zyl et al., 2020)。

ORIGINAL MODEL

ADHDポジティブ・コーチングモデル

当協会が発達障害支援コーチングで扱う流れを、7つのステップとして整理したものです。1回で完結するのではなく、④〜⑥を回しながら⑦へ向かいます。

STEP 1
Understand
特性を理解する
ADHD特性・実行機能・環境の影響を、責めずに整理する
STEP 2
Strengths
強みを発見する
すでに使えている力・うまくいった例外を見つける
STEP 3
Goal
望む未来を明確にする
本人の言葉で、具体的で手の届く目標にする
STEP 4
Design
行動・環境を設計する
意志ではなく仕組みで回る形に落とし込む
STEP 5
Action
小さく行動する
5分単位まで下げて、最初の一手だけ実行する
STEP 6
Reflection
振り返る
失敗は「方法を改善する情報」として扱う
STEP 7
Well-being
充実につなげる
仕事・学び・人間関係と自己効力感の向上へ
↻ STEP 4〜6 は毎週のセッションで繰り返し、生活に合う形へ調整していきます

🌱 このモデルが目指しているもの

「ADHDの問題を解決するコーチング」ではなく、「ADHD特性を理解し、強みと可能性を活かして、よりよい行動・仕事・生活を設計するコーチング」へ。弱みを補うだけでなく、強みが発揮される環境をつくることを重視しています。

INTERVENTION

ADHDコーチングでは何をするのか

研究で繰り返し用いられている構成要素は、次の8つに整理できます(Prevatt & Yelland, 2015;Pijarnvanit & Sriphetcharawut, 2023;Ahmann & Saviet, 2019)。

🎯

目標設定

本人の言葉で、具体的で手の届く目標に分解します。

📚

心理教育

ADHDの特性と実行機能の仕組みを、責めない枠組みで学びます。

🧩

問題解決

つまずきの構造を一緒に分析し、選択肢を広げます。

🗓️

週ごとの課題確認

短い間隔でふりかえり、計画を現実に合わせて調整します。

🚧

障害の特定

「何が実行を止めているのか」を具体的に言語化します。

🤝

アカウンタビリティ

一人で抱えず、伴走者がいる状態で実行を支えます。

📝

ホームワーク

セッションの間に小さく試し、結果を持ち寄ります。

🎁

報酬・結果の設定

行動が続く仕掛けを、本人が納得できる形で用意します。

📆

期間と頻度

個別支援が中心で、週1回・8〜12週間の構成が多く報告されています。生活のなかで試して調整するサイクルを回す設計です。

Prevatt & Yelland, 2015/Pijarnvanit & Sriphetcharawut, 2023/Ahmann & Saviet, 2024
🌐

支援の範囲

学業成績だけでなく、先延ばし・時間管理・計画・自己調整・不安・日常生活課題まで対象が広がっています。

Prevatt & Yelland, 2015/Swartz et al., 2005/Sehlin et al., 2020
💻

提供形式

対面に限らず、電話・ビデオ通話・チャットなど遠隔形式にも広がっています。移動負担が支援の障壁になりにくい点は実務上の利点です。

Ahmann & Saviet, 2019/Sehlin et al., 2020/Sibley et al., 2026

実務では、実行機能スキルの支援、認知的再構成、動機づけ面接、解決志向(ソリューション・フォーカスト)アプローチなど、複数の手法が組み合わせて用いられていることが報告されています(Sibley et al., 2026)。

THEMES

扱うテーマ:3つの柱

ADHD理解・コーチング心理学・ポジティブ心理学。この3つを重ねることで、「困りごとへの対処」と「強みを活かす設計」の両方が扱えます。

① 実行機能へのアプローチ

  • 計画を立てる
  • 優先順位をつける
  • 時間管理・時間の見積もり
  • タスク管理・見える化
  • ワーキングメモリの外部化
  • 行動開始のハードルを下げる
  • 行動継続・習慣化
  • 注意の切り替え
  • 環境調整・仕組み化

② ポジティブ心理学の視点

  • 強み(ストレングス)の発見と活用
  • VIA性格の強み
  • PERMA(ウェルビーイングの5要素)
  • 自己効力感・自己肯定感
  • レジリエンス
  • ポジティブ感情
  • 希望・楽観性
  • セルフコンパッション
  • ウェルビーイングの向上

③ コーチング心理学の技法

  • 目標設定(ゴールセッティング)
  • 質問技法
  • フィードバック
  • 解決志向アプローチ
  • ナラティヴの視点
  • 認知・行動へのアプローチ
  • 動機づけ・行動変容
  • セルフマネジメント
  • ポジティブ行動支援(PBS)
STRENGTHS

ADHDの「強み」に目を向ける

特性の現れ方には大きな個人差があります。そのうえで、場面や環境しだいで強みとして働くことがある特徴には、次のようなものが挙げられます。

発想力思いがけない結びつきを見つけることがある
好奇心関心の広がりが学びや情報収集の力になる
新奇性への関心前例のない状況にも臆さず入っていける
没頭できる集中関心が合致した領域で高い集中を発揮することがある
柔軟な発想枠組みにとらわれない解決策を出せる場面がある
エネルギー場を動かす推進力として働くことがある
自発性思い立ったときの行動の速さが強みになる
チャレンジ精神不確実な状況でも一歩を踏み出せることがある
創造性既存の方法にとらわれない工夫が生まれることがある

💬 「ADHDの人は創造的」と断定しないために

ここに挙げた特徴は、すべての人に当てはまるものではありません。特性の現れ方には大きな個人差があり、同じ特性が、ある環境では強みとして、別の環境では困りごととして表れることもあります。大切なのは「ADHDだからこう」と一般化することではなく、その人にとって、どんな条件のときに力が発揮されるのかを一緒に見つけていくことです。

また、強みに目を向けることは、困りごとを軽く見ることではありません。先延ばしや時間管理の困難は切実な負担です。強みから始めるのは、変化の足場をどこに置くかという選択にすぎません。責める言葉からは行動が生まれにくく、できている部分からは次の一歩が見つかりやすいからです。

HOW TO

今日から試せる、具体的な方法

よくある4つの質問に、「結論 → 理由 → 方法 → 専門家に相談したほうがよい場合」の順でお答えします。

Q. ADHDの先延ばしを改善するには?

結論:「やる気が出たら始める」のではなく、行動開始のハードルを下げることが重要です。

やる気は行動の前提ではなく、多くの場合、行動したあとに生まれます。実行機能に負荷がかかりやすいのであれば、開始に必要な判断・準備の量を減らすほど動きやすくなります。

  1. タスクを「5分でできる大きさ」まで割る
  2. 最初の一手だけを決める(例:資料を開く、だけ)
  3. タイマーを使い、終わりの時刻を先に決める
  4. 作業を目に見える形にする(付箋・ホワイトボード・アプリ)
  5. 「終了条件」を決めておく(完璧ではなく、ここまでやれば終わり)
  6. やってみた結果を振り返り、方法を調整する

気分の落ち込みが続く、日常生活に支障が出ている場合は、方法の工夫だけで抱え込まず、医療機関や専門機関へのご相談をおすすめします。

Q. ADHDの時間管理を改善するには?

結論:「時間感覚を鍛える」より、時間を外から見えるようにするほうが確実です。

時間の見積もりのズレは、意識の問題というより時間感覚の特性によるものです。頭の中で管理しようとするほど負荷が上がるため、外部化が有効です。

  1. 実際にかかった時間を1週間だけ記録し、見積もりとの差を見る
  2. 予定に「移動・切り替え」の時間を必ず足す(10〜15分)
  3. 締め切りではなく「着手日」をカレンダーに入れる
  4. アナログの時計・タイマーで残り時間を可視化する
  5. 1日の予定は「詰める」のではなく「余白を先に置く」

職場や学校で調整が必要な場合は、合理的配慮の相談窓口を活用できることがあります。

Q. ADHDのタスク管理はどうすればいい?

結論:管理ツールを増やすより、「置き場所を1つに決める」ことが先です。

複数の場所にタスクが散らばると、それ自体がワーキングメモリの負荷になります。完璧な管理法より、迷わず開ける1か所のほうが機能します。

  1. タスクの置き場所を1つに決める(紙でもアプリでも可)
  2. 「今日やらないこと」を先に決めて、選択肢を減らす
  3. タスクは動詞ひとつの大きさまで分解して書く
  4. 週の初めに10分だけ、全体像を見渡す時間をとる
  5. 終わったタスクを消さずに残し、できた量を目に見えるようにする

ツールが続かないのは意志の問題ではなく、相性の問題であることがほとんどです。合わなければ、責めずに次を試してかまいません。

Q. ADHDの強みを活かすには?

結論:強みは「探す」より、うまくいった場面の条件を分解するほうが見つかります。

「あなたの強みは何ですか」と問われても答えにくいものです。一方、実際にうまくいった出来事には、その人の強みと最適な環境条件が必ず含まれています。

  1. この1か月で「思ったよりうまくいったこと」を3つ書き出す
  2. そのときの条件(時間帯・場所・人・締め切りの有無)を書き添える
  3. 共通点を探す(それが再現できる条件です)
  4. 次の仕事や学びを、その条件に近づけて設計する
  5. VIA性格の強みなどの枠組みを使い、言葉として整理する

強みを活かす設計は、環境側の調整とセットで考えると効果が出やすくなります。一人で完結させず、周囲との相談も選択肢に入れてみてください。

BEFORE → AFTER

ADHDコーチングで、何ができるようになるのか

症状そのものをゼロにすることではなく、「行動の設計」ができるようになることを目指します。

何から始めればいいかわからない
最初の一歩を具体化できる
タスクが多すぎて手がつかない
優先順位を整理できる
自分は何をやっても続かない
自分に合う環境・方法を試せる
失敗すると自分を責めてしまう
失敗を「方法を改善する情報」として捉えられる
時間の見積もりがいつも外れる
実測にもとづいて予定を組める
自分の強みがわからない
うまくいく条件を言葉にできる

※ 変化の内容・速さには個人差があります。効果を保証するものではありません。

SCOPE

ADHDコーチングでできること/できないこと

安心してご利用いただくために、支援の範囲と、医療・心理療法との境界をはっきりお伝えします。

✅ できること⛔ できないこと
目標設定の支援ADHDの診断
行動計画づくり医療行為
タスク整理・優先順位づけ薬の処方
時間管理の工夫薬物療法の代替
強みの発見と活用精神疾患の治療
環境調整の検討緊急性の高い心理的問題への単独対応
振り返りと方法の調整医師による診断・治療の代替

🤝 医療・心理支援と、対立するものではありません

ADHDコーチングは医療の代替ではなく、必要に応じて医療・心理支援などと組み合わせながら、日常生活・仕事・目標達成を支える方法の一つです。成人ADHDの支援に関する国際的な合意文書でも、薬物療法に加えて心理的・行動的支援を組み合わせる多面的なアプローチが推奨されています(Kooij et al., 2010)。実際、成人ADHDコーチングの研究でも、コーチングは単独でも、多面的支援の一部としても利用しうる方法として位置づけられています(Ahmann, Saviet & Otto, 2026)。

診断がまだの方、気分の落ち込みや不安が強い方は、まず医療機関へのご相談をおすすめします。そのうえで、生活・仕事の設計を支える手段としてコーチングをご検討ください。

コーチング・カウンセリング・治療の違い

観点ADHDコーチングカウンセリング/心理療法医学的治療
主な焦点これからの行動・目標・仕組みづくり感情・認知・関係性の理解と変化症状そのものへの医学的介入
時間の向き現在から未来へ過去〜現在〜未来現在の症状管理
関係性協働的なパートナーシップ治療的・支持的関係診療関係
典型的な形式週1回・8〜12週の個別セッション頻度・期間は方法により多様診断にもとづく継続的管理
担い手訓練を受けたコーチ公認心理師・臨床心理士等医師
位置づけ多面的支援の一部として組み合わせる必要に応じて併用必要に応じて中心的役割

※ 区分は理解のための整理であり、実際の支援は重なり合いながら進みます。認知行動療法(CBT)との違いについては、FAQでも詳しくお答えしています。

EVIDENCE

ADHDコーチングに科学的根拠はありますか?

「効く」と一括りにするより、確立している知見/関連するエビデンス/ADHDコーチング自体の新しい研究を分けてお伝えするのが、いちばん誠実だと考えています。

LAYER 1 / 確立している知見

成人ADHDの支援は「多面的な組み合わせ」が基本

成人ADHDの診断と治療に関する欧州の合意文書では、薬物療法に加えて心理教育・心理的支援・行動的アプローチを組み合わせる多面的な支援が推奨されています。「どれか一つだけ」ではなく、必要な要素を組み合わせるという考え方は、すでに広く共有されています。

Kooij et al. (2010), BMC Psychiatry
LAYER 2 / 関連するエビデンス

成人ADHDの不注意症状には、行動的アプローチの有効性が示されている

成人ADHDの不注意症状を対象とした系統的レビューでは、19件のランダム化比較試験(RCT)が分析され、とくに行動療法について、不活性な対照群と比べて効果が示されました(SMD 0.44〜1.71)。一方、ニューロフィードバック・認知トレーニング・心理教育単独では、対照群と比べた効果は認められていません。ADHDコーチングが用いる目標設定・行動計画・振り返りといった行動的な要素は、この知見と地続きにあります。

Scholz et al. (2023), Journal of Mental Health, 32(1), 307–320
LAYER 3 / ADHDコーチング自体の研究

前向きな結果が出ているが、研究デザインには限界がある

大学生148人を対象とした8週間の研究では、学習方略10領域すべて、自尊感情、症状による苦痛、学校・仕事の満足度が有意に改善しました。成人を対象とした12セッションの前向き研究でも、ADHD症状・実行機能・機能障害に中〜大の効果量で有意な改善が報告されています。ただし後者は対照群を置かない単群(pre-post)研究であり、効果を確定するにはさらなる比較研究が必要です。

Prevatt & Yelland (2015), Journal of Attention Disorders/Ahmann, Saviet & Otto (2026), American Journal of Lifestyle Medicine
148人

大学生の8週間コーチング研究

学習方略10領域すべて、自尊感情、症状苦痛、学校・仕事の満足度が有意に改善。

Prevatt & Yelland (2015)
中〜大

成人12セッションの効果量

ADHD症状・実行機能・機能障害に中〜大の効果量で有意な改善。ただし単群研究。

Ahmann, Saviet & Otto (2026)
19 / 19

レビューでの一貫性

対象となった19研究のすべてが、ADHD症状または実行機能の改善を報告。

Ahmann et al. (2018)
5領域

大学生で一貫する改善

学習スキル、時間管理、個人目標、自己決定、メタ認知の改善が一貫して報告。

Álvarez-Godos et al. (2023)
well-being

ウェルビーイングへの影響

大学生対象の系統的レビューで、コーチング群が対照群より高いスコアを示した。

Ali et al. (2024)
24研究

ポジティブ心理学コーチングの整理

24本の査読研究から定義とモデルが体系的に整理され、強み・資源の活用とウェルビーイング向上が中核と位置づけられている。

van Zyl et al. (2020), Frontiers in Psychology

⚖️ 同時に、押さえておきたい限界

  • エビデンスの質はまだ発展途上です。 単群デザインや小規模研究が多く、ADHDコーチングそのものを対象とした無作為化比較試験の蓄積は十分ではありません。
  • 安全性(有害事象)の評価が不足しています。 どんな条件で合わない人がいるのかは、まだ十分に検討されていません。
  • 「コーチング」の中身に幅があります。 提供者の訓練背景・手法・期間が研究間で異なるため、結果を単純に比較しにくい面があります。
  • 子どもへの単独適用は慎重に。 小児・思春期では、親訓練・教師支援を含む多面的介入のほうが研究基盤が強いことが示されています(Daley et al., 2018;Park & Park, 2017;Doffer et al., 2023)。
  • 現時点での最も妥当な位置づけ:ADHDコーチングは、多職種・多面的な支援の一部として捉えるのが、研究の現状にもっとも忠実です。
対象主な報告内容研究デザインの水準実務上の読み方
大学生学習方略・時間管理・自己決定・メタ認知・自尊感情の改善比較的蓄積あり(レビュー複数)修学支援の選択肢として検討しやすい
成人ADHD症状・実行機能・機能障害の改善(中〜大の効果量)前向き研究・単群が中心前向きだが対照群つき研究の蓄積待ち
成人(行動的介入全般)不注意症状に対する行動療法の有効性19件のRCTを含む系統的レビュー行動的アプローチの土台は比較的堅い
小児・思春期コーチング単独より多面的介入で知見が厚い親訓練の研究基盤が強い家庭・学校を含めた設計が前提
遠隔形式電話・ビデオ・チャットでの実施可能性が報告実行可能性研究が中心アクセス改善の手段として有望
REFERENCES

参考文献

本ページの記述は、以下の文献にもとづいています(APA形式・DOIリンク付き)。

  1. Ahmann, E., Tuttle, L. J., Saviet, M., & Wright, S. D. (2018). A descriptive review of ADHD coaching research: Implications for college students. The Journal of Postsecondary Education and Disability, 31, 17–39.
  2. Ahmann, E., & Saviet, M. (2019). Communication modalities and their perceived effectiveness in coaching for individuals with attention-deficit/hyperactivity disorder (ADHD). International Journal of Evidence Based Coaching and Mentoring, 17, 93–107. https://doi.org/10.24384/w8rm-c324
  3. Ahmann, E., & Saviet, M. (2024). Development of a manualized coaching intervention for adult ADHD. International Journal of Evidence Based Coaching and Mentoring, 22, 177–198. https://doi.org/10.24384/hd8r-gc79
  4. Ahmann, E., Saviet, M., & Otto, M. (2026). Coaching for adults with ADHD: A prospective study. American Journal of Lifestyle Medicine, 15598276261432960. https://doi.org/10.1177/15598276261432960
  5. Ali, A., Collier, K., & Mayomi, T. (2024). Navigating ADHD in higher education: Evaluating psychosocial interventions for student self-esteem, well-being, and quality of life. BJPsych Open, 10, S17–S18. https://doi.org/10.1192/bjo.2024.106
  6. Álvarez-Godos, M., Ferreira, C., & Vieira, M. (2023). A systematic review of actions aimed at university students with ADHD. Frontiers in Psychology, 14. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2023.1216692
  7. Daley, D., Van Der Oord, S., Ferrín, M., Cortese, S., Danckaerts, M., Doepfner, M., … Sonuga-Barke, E. (2018). Practitioner review: Current best practice in the use of parent training and other behavioural interventions in the treatment of children and adolescents with attention deficit hyperactivity disorder. Journal of Child Psychology and Psychiatry, 59, 932–947. https://doi.org/10.1111/jcpp.12825
  8. Doffer, D. P. A., Dekkers, T., Hornstra, R., Van Der Oord, S., Luman, M., Leijten, P., Hoekstra, P. J., Van Den Hoofdakker, B. J., & Groenman, A. (2023). Sustained improvements by behavioural parent training for children with attention-deficit/hyperactivity disorder: A meta-analytic review of longer-term child and parental outcomes. JCPP Advances, 3. https://doi.org/10.1002/jcv2.12196
  9. Kooij, J. J. S., Bejerot, S., Blackwell, A., Caci, H., Casas-Brugué, M., Carpentier, P. J., … Asherson, P. (2010). European consensus statement on diagnosis and treatment of adult ADHD: The European Network Adult ADHD. BMC Psychiatry, 10, 67. https://doi.org/10.1186/1471-244X-10-67
  10. Park, S., & Park, W. (2017). Development and effects of an instructional coaching program regarding children with attention deficit hyperactivity disorder for elementary school teachers. Journal of Korean Academy of Nursing, 47(3), 305–318. https://doi.org/10.4040/jkan.2017.47.3.305
  11. Pijarnvanit, P., & Sriphetcharawut, S. (2023). The effects of telehealth parent coaching on occupational performance and executive function of children with attention-deficit/hyperactivity disorders, and parent self-efficacy: A preliminary study. Occupational Therapy in Health Care, 38, 783–799. https://doi.org/10.1080/07380577.2023.2169976
  12. Prevatt, F., & Yelland, S. (2015). An empirical evaluation of ADHD coaching in college students. Journal of Attention Disorders, 19, 666–677. https://doi.org/10.1177/1087054713480036
  13. Scholz, L., Werle, J., Philipsen, A., Schulze, M., Collonges, J., & Gensichen, J. (2023). Effects and feasibility of psychological interventions to reduce inattention symptoms in adults with ADHD: A systematic review. Journal of Mental Health, 32(1), 307–320. https://doi.org/10.1080/09638237.2020.1818189
  14. Sehlin, H., Ahlström, B. H., Bertilsson, I., Andersson, G., & Wentz, E. (2020). Internet-based support and coaching with complementary clinic visits for young people with attention-deficit/hyperactivity disorder and autism: Controlled feasibility study. Journal of Medical Internet Research, 22. https://doi.org/10.2196/19658
  15. Sibley, M. H., Graham, E. D., Holbrook, J. K., Dvorsky, M. R., Yeguez, C. E., Rosier, T., Coghill, D., Page, T. F., Fouché, R., & Demuth, J. (2026). Demographics, services, and practices in attention-deficit/hyperactivity disorder coaching in the US. JAMA Network Open, 9. https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2025.52407
  16. Swartz, S., Prevatt, F., & Proctor, B. E. (2005). A coaching intervention for college students with attention deficit/hyperactivity disorder. Psychology in the Schools, 42, 647–656. https://doi.org/10.1002/pits.20101
  17. van Zyl, L. E., Roll, L. C., Stander, M. W., & Richter, S. (2020). Positive psychological coaching definitions and models: A systematic literature review. Frontiers in Psychology, 11, 793. https://doi.org/10.3389/fpsyg.2020.00793
SELF CHECK

いま、どこから支えると動きやすい?

10の質問に答えると、実行機能のつまずきが集まりやすい領域が見えてきます。コーチングで最初に扱うテーマを決めるための、シンプルな整理ツールです。

実行機能セルフチェック(10問・約2分)

この2週間のご自身(または支援対象の方)を思い浮かべて、当てはまる程度をお選びください。診断ではなく、話し合いの出発点をつくるための整理です。

※ このセルフチェックは、妥当性が検証された心理測定尺度ではありません。診断や医学的評価に代わるものではなく、困りごとが強い場合は医療機関・専門機関へのご相談をおすすめします。

BASIC COURSE

発達障害支援コーチング基本講座
(認定発達障害支援コーチ講座)

ADHDコーチングを「支援する側」として学びたい方へ。一般社団法人コーチング心理学協会が、ポジティブ心理学とコーチング心理学を土台に、ADHD・ASD・LD・DCDなど神経発達症の特性を強みから支える実践講座を開催しています。

発達障害支援コーチング基本講座 認定発達障害支援コーチ講座 イメージ
認定 発達障害支援コーチ(Basic) オンライン(ZOOM) 1日入門/2日間集中 どなたでも参加可

「できない」を「できるかもしれない」に変える、肯定的な支援アプローチ

ADHD・ASD・LD・DCD、そしてグレーゾーンにある方まで。弱みの矯正ではなく、強み・特性に着目した支援を、理論と実践の両面から学びます。教育・福祉・キャリア支援の現場の方、管理職・人事担当の方、ご家族まで、前提資格なしで参加できます。

この講座が扱う「4つの領域」

🧠
ADHD・発達特性の理解
特性・実行機能・環境の影響/ADHD・ASD・LD・DCDとグレーゾーン
💬
コーチング
質問技法・目標設定・フィードバック・行動変容の支援
🌱
ポジティブ心理学
強み・PERMA・ウェルビーイング・自己効力感の高め方
🛠️
実践への応用
時間管理・タスク管理・仕事・学習・生活・キャリア支援

つまり、「ADHDを知る」だけでなく、「ADHD特性を理解したうえで、その人の強みと可能性を活かして行動につなげる」ところまでを扱います。

DAY 1/発達障害支援の理論・方法

  • 発達障害・神経発達症の種類と特徴
  • ポジティブ発達支援の尺度・リスト
  • グレーゾーンへの対応
  • 脳科学の知見/薬物療法の基礎知識
  • ポジティブ・アプローチとコーチング心理学の統合
  • 質問技法・フィードバック法
  • 心理療法の視点(解決志向・ナラティヴ・認知行動療法など)
  • ストレングスアプローチ/選択的最適化理論
  • 行動観察・分析法/ポジティブ行動支援(PBS)
  • ポジティブ・リソース法、ポジティブ・ルール法

DAY 2/発達障害支援の実践と応用

  • ケーススタディ(子どもから大人まで)
  • 観察法・認知行動法・ABA(応用行動分析)
  • 家族療法とチームコーチング
  • ポジティブ心理学の応用/PBSと発達障害支援
  • 日本文化への配慮
  • ストレス対処・ソーシャルサポート
  • 社会的支援資源の紹介
  • 援助要請スキルの促進
  • 生活支援に必要な視点
  • キャリア支援と発達障害

受講すると、何ができるようになるのか

🔍

特性を「見立てる」視点が持てる

「困った行動」を性格の問題として扱わず、特性・実行機能・環境の組み合わせとして理解できるようになります。

🗣️

指示ではなく問いで関われる

質問技法・リフレーミング・フィードバックを使い、本人が自分で方法を見つけるプロセスを支えられます。

🌱

強みから支援を組み立てられる

「何ができないか」ではなく「どんな条件なら力を発揮できるか」から支援を設計できます。

⚙️

環境調整を提案できる

本人の努力に頼りきらず、家庭・学校・職場の側の設計を変える提案ができるようになります。

👨‍👩‍👧

家族・チームと連携できる

家族療法的な視点とチームコーチングを学び、関係者を巻き込んだ支援ができます。

🧭

キャリア支援に活かせる

発達特性を踏まえた職業選択・働き方・合理的配慮の相談に、コーチングの視点を持ち込めます。

こんな方が受講されています

カウンセラー・心理職
ADHD・発達特性への理解に、目標志向のコーチング技法を加えたい方
コーチ
クライアントの発達特性を理解し、関わり方の引き出しを増やしたい方
教員・保育士・支援員
学習・行動・強みへの支援を、叱責ではない方法で組み立てたい方
人事・管理職
職場の多様な特性への理解と、合理的配慮・マネジメントに活かしたい方
キャリア支援・就労支援
発達特性とキャリア形成の関係を踏まえた面談をしたい方
ご家族・当事者の方
自分や家族の特性を理解し、無理のない関わり方を学びたい方

受講コースと費用の目安

1日入門コース
11,000円
まず概要を知りたい方に
2日間コース
22,000円
理論と実践を通して学ぶ
資格認定コース
44,000円
うち資格認定費 33,000円
再受講(2日間)
11,000円
学び直し・復習に

※ 金額・日程・開催形式は変更される場合があります。最新情報は公式イベントページでご確認ください。支払方法は銀行振込・クレジット・コンビニ払いに対応。認定証は標準でPDF発行(紙の証書・英語版国際証書はオプション)。資格者コース受講者には講座関連の心理テストアプリの特典があります。

開催日程を確認して申し込む →

🎥 講座の雰囲気を動画で見る

出典:一般社団法人コーチング心理学協会 公式イベントページに掲載の紹介動画

STEPS

受講から資格取得までの流れ

1

申込み

公式イベントページから、受講したいコース(1日入門/2日間/資格認定)を選んで申込みます。受付は開催日の3日前まで。

2

受講

ZOOMによるオンライン・ワークショップ形式。理論だけでなく演習・ケーススタディを通して学びます。

3

認定申請

資格認定コースの方は、所定の手続きを経て「認定 発達障害支援コーチ(Basic)」として登録されます。

4

実践・上位資格へ

現場での実践を重ねながら、コーチング心理士®・コミュニケーション心理士®などの上位資格へ進むこともできます。

KNOWLEDGE HUB

ADHDコーチングの知識ハブ

このページは「親ページ」として、ADHDコーチングに関わるテーマ全体を見渡せるように構成しています。それぞれのテーマは、さらに深く掘り下げていく予定です。

ADHDコーチング(このページ)

ADHDを理解する

  • ADHDと実行機能
  • ADHDと先延ばし
  • ADHDと時間管理
  • ADHDと仕事・職場
  • 成人ADHDの生きづらさ

コーチングで支える

  • 目標設定と行動変容
  • 質問技法・フィードバック
  • 解決志向アプローチ
  • 認知行動的アプローチ
  • ADHDとコーチング心理学

強み・幸福につなげる

  • ADHDと強み(ストレングス)
  • VIA性格の強み
  • PERMAとウェルビーイング
  • 自己肯定感・自己効力感
  • ADHDとポジティブ心理学
→ 実生活への応用(仕事・学習・人間関係)→ ウェルビーイングの向上

※ 各テーマの個別ページは順次公開予定です。まとめて学びたい方は、発達障害支援コーチング基本講座で体系的に扱っています。

FAQ

よくあるご質問

ADHDコーチングそのもの、悩み別の対処、科学的根拠、そして発達障害支援コーチング基本講座について、36問にお答えします。

基礎知識:ADHDコーチングとは
ADHDコーチングとは、ADHD特性や実行機能上の困難を理解しながら、本人が設定した目標に向けて、時間管理、タスク管理、行動開始、優先順位づけ、環境調整、自己理解などを支援するコーチングです。研究上は「協働的で目標志向の支援」と定義され、自己理解・システム化・スキル・戦略づくりを通じて、注意・衝動性・実行機能の管理を助けます(Ahmann & Saviet, 2019, 2024)。
ADHD特性と実行機能への理解を持ち、コーチングの技法(目標設定、質問、フィードバック、振り返り)を用いて本人の目標達成を支える訓練を受けた支援者です。医師や心理職とは役割が異なり、診断や治療は行いません。米国の調査でも、実行機能スキルの支援、認知的再構成、動機づけ面接、解決志向アプローチなど複数の手法が実務で用いられていることが報告されています(Sibley et al., 2026)。
研究で共通してみられる要素は、目標設定、心理教育、問題解決、週ごとの課題確認、障害(つまずき)の特定、アカウンタビリティ、ホームワーク、報酬や結果の設定です。毎回すべてを行うわけではなく、その時期のテーマに合わせて組み合わせていきます。
研究では、週1回・8〜12週間の個別セッションという構成が多く用いられています。短期間で何かを詰め込むのではなく、生活のなかで小さく試し、その結果を持ち寄って調整するサイクルを回すための期間設計です(Prevatt & Yelland, 2015;Pijarnvanit & Sriphetcharawut, 2023;Ahmann & Saviet, 2024)。
提供形式は対面に限らず、電話・ビデオ通話・チャットなどの遠隔形式へ広がっています。遠隔は移動の負担が支援の障壁になりにくいという利点があります。ただし研究としては実行可能性の検討が中心の段階で、形式ごとの効果の差はさらなる検証が必要です(Ahmann & Saviet, 2019;Sehlin et al., 2020;Sibley et al., 2026)。
コーチングは診断名を前提とするものではなく、生活のなかで実際に起きている困りごとと強みから出発します。当協会の発達障害支援コーチングでも、グレーゾーンへの対応をカリキュラムに含めています。ただし、診断や医学的評価が必要と思われる状態については、医療機関へのご相談をおすすめします。
小児・思春期については、コーチング単独よりも、親訓練や教師支援を含む多面的介入のほうが研究基盤が強いのが現状です。子どもへの支援を考える場合は、本人へのコーチングだけで完結させず、家庭・学校を含めた設計を前提にすることをおすすめします(Daley et al., 2018;Doffer et al., 2023)。
ちがいを知る:カウンセリング・心理療法・医療との関係
大まかには焦点の違いです。コーチングはこれからの行動・目標・仕組みづくりに重心を置き、カウンセリングは感情・認知・関係性の理解と変化を扱います。実際にはこの2つは重なり合いますし、必要に応じて併用されます。どちらが優れているというものではなく、いま何を支えたいかで選ぶものです。
心理療法は、心理的な症状や苦痛の軽減を目的とし、専門的な訓練を受けた心理職や医師が実施します。ADHDコーチングは治療ではなく、目標達成と生活・仕事の設計を支える関わりです。苦痛や不調が強い場合は、コーチングの前に、あるいは並行して、医療・心理支援につながることをおすすめします。
重なりの大きい2つですが、位置づけが異なります。CBTは、思考・感情・行動のつながりに働きかける治療的アプローチで、症状の軽減を目的とすることが多い方法です。ADHDコーチングは、CBTの考え方(行動の分解、振り返り、認知の捉え直し)を取り入れつつ、目的は治療ではなく目標達成と行動設計にあります。実際、成人ADHDの不注意症状に対しては行動療法の有効性が示されており(Scholz et al., 2023)、コーチングが用いる行動的な要素はこの知見と地続きです。
いいえ、医療行為ではありません。診断、薬の処方、精神疾患の治療は行いません。ADHDコーチングは医療の代替ではなく、必要に応じて医療・心理支援などと組み合わせながら、日常生活・仕事・目標達成を支える方法の一つです。
ポジティブ心理学は「何が人を良く機能させるのか」を研究する分野で、強み・自己効力感・レジリエンス・ウェルビーイングといった概念を扱います。ポジティブ心理学にもとづくコーチングは、強みや資源を発見・活用・発展させ、ウェルビーイングと機能向上を目指すアプローチとして整理されています(van Zyl et al., 2020)。ADHDコーチングにこの視点を加えると、困りごとの軽減にとどまらず「力が発揮される条件づくり」まで扱えるようになります。
コーチング心理学は、心理学の理論と研究にもとづいてコーチングを体系化した学問領域です。目標設定理論、行動変容、解決志向アプローチ、ナラティヴ、認知行動的アプローチなどを扱います。ADHDコーチングは、この技術体系をADHD特性と実行機能という具体的な文脈に適用したものと考えると理解しやすくなります。
悩み別:先延ばし・時間管理・自己肯定感・強み
やる気や性格の問題というより、行動開始を支える実行機能に負荷がかかりやすいことが背景にあると考えられています。「何から手をつけるか」を決める、必要な情報を頭に保持する、退屈な作業を始める——このいずれもが負荷になるため、開始のハードルが上がります。だからこそ、意志を強くするより、開始に必要な判断の量を減らす工夫が有効です。
「やる気が出たら始める」のではなく、行動開始のハードルを下げることが重要です。①タスクを5分単位に割る、②最初の一手だけ決める、③タイマーで終わりの時刻を先に決める、④作業を目に見える形にする、⑤終了条件を決めておく、⑥やってみた結果を振り返り方法を調整する。この6つが基本の型になります。
時間の経過を感じ取る感覚や、所要時間を予測する働きが不安定になりやすいためです。頭の中だけで時間を管理しようとするほど負荷が上がるので、「感覚を鍛える」より「時間を外から見えるようにする」ほうが現実的な対策になります。
①実際にかかった時間を1週間記録し見積もりとの差を見る、②予定に移動・切り替えの時間を必ず足す、③締め切りではなく「着手日」をカレンダーに入れる、④アナログ時計やタイマーで残り時間を可視化する、⑤予定を詰めずに余白を先に置く。記録するだけでも見積もりの精度は変わっていきます。
管理ツールを増やすより、「置き場所を1つに決める」ことが先です。タスクが複数の場所に散らばること自体がワーキングメモリの負荷になります。そのうえで、「今日やらないこと」を先に決める、動詞ひとつの大きさまで分解して書く、週の初めに10分だけ全体像を見渡す、といった工夫が有効です。
記憶と注意に頼る場面を減らすのが基本方針です。チェックリストを作る、確認のタイミングを行動に紐づける(送信前に必ず読み返す等)、よく使うものの定位置を決める、通知やリマインダーを場所と時間に結びつける。個人の努力だけでなく、職場側の手順やツールの設計を変えられないかも一緒に検討します。
失敗や叱責の経験が積み重なると、「どうせ自分は」という語りが強まり、それがさらに行動を止めてしまうことがあります。大学生を対象とした研究では、コーチングによって学習方略だけでなく自尊感情も有意に改善したことが報告されています(Prevatt & Yelland, 2015)。できている部分を具体的に言語化し、失敗を「方法を改善する情報」として扱うことが、自己効力感の回復につながります。
強みは「探す」より、うまくいった場面の条件を分解するほうが見つかります。この1か月で思ったよりうまくいったことを3つ書き出し、そのときの条件(時間帯・場所・人・締め切りの有無)を書き添え、共通点を探してみてください。それが再現できる条件です。VIA性格の強みなどの枠組みを使うと、言葉として整理しやすくなります。
反応の速さそのものを消そうとするより、「反応と行動の間に一拍を入れる仕組み」をつくるほうが現実的です。すぐ返信しない時間帯を決める、感情が高ぶったときの合図を自分で決めておく、相手に意図を先に伝えておく、といった方法があります。関係性の悩みが深い場合は、カウンセリングなど別の支援と組み合わせることも選択肢です。
科学的根拠について
「確立している知見」「関連するエビデンス」「ADHDコーチング自体の研究」を分けて考えるのが正確です。成人ADHDでは、薬物療法に心理的・行動的支援を組み合わせる多面的な支援が国際的に推奨されています(Kooij et al., 2010)。また、成人ADHDの不注意症状に対しては、19件のRCTを分析した系統的レビューで行動療法の有効性が示されています(Scholz et al., 2023)。一方、ADHDコーチングそのものについては研究数や研究デザインに限界があり、効果を一律に断定する段階ではありません。
成人を対象とした12セッションの前向き研究では、ADHD症状、実行機能、機能障害に中〜大の効果量で有意な改善が報告されています。ただしこの研究は対照群を置かない単群(pre-post)デザインであり、効果を確定するにはさらなる比較研究が必要です(Ahmann, Saviet & Otto, 2026)。
大学生を対象とした系統的レビューでは、コーチングを受けた群が対照群よりも高いウェルビーイングのスコアを示しました。また、学習方略だけでなく自尊感情や満足度の改善も報告されています(Ali et al., 2024;Prevatt & Yelland, 2015)。
主に4点です。①単群・小規模研究が多く、ADHDコーチングそのものを対象とした質の高い比較試験が不足していること、②安全性・有害事象の評価が十分でないこと、③「コーチング」の内容や提供者の訓練背景が研究間で異なり比較しにくいこと、④子どもへの単独適用の根拠が限定的であること。現時点では、多職種・多面的支援の一部として捉えるのが最も研究に沿った理解です。
いいえ、代わりにはなりません。薬物療法の要否は医師が判断するものであり、コーチングがその判断に置き換わることはありません。国際的な合意文書でも、薬物療法と心理的・行動的支援を組み合わせる多面的なアプローチが推奨されています(Kooij et al., 2010)。服薬について迷いがある場合は、必ず主治医にご相談ください。
発達障害支援コーチング基本講座について
一般社団法人コーチング心理学協会が開催する、ADHD・ASD・LD・DCDなどの特性を強みの視点から支援するための講座です。ZOOMによるオンライン・ワークショップ形式で、Day1が「発達障害支援の理論・方法」、Day2が「発達障害支援の実践と応用」という2日間構成。1日だけの入門コースからも参加できます。修了して所定の手続きを経ると「認定 発達障害支援コーチ(Basic)」として登録されます。
公認心理師のような国家資格、臨床発達心理士、児童発達支援管理責任者、特別支援教育士など、目的と学習期間の異なる資格があります。選ぶときは、①どの現場で活動したいか、②取得にかけられる時間と費用、③いま持っている資格との組み合わせ、④独立の可能性、という4点で考えると整理しやすくなります。発達障害支援コーチは、比較的短期間で学べ、本人の強みに焦点を当てた支援を扱える点が特徴です。
特別な前提資格は必要ありません。教育・福祉・キャリア支援の現場の方、管理職や人事担当の方、ご家族など、どなたでも参加いただけます。心理職・支援職の方が、既存の専門性に強みベースの視点を加える目的で受講されることもあります。
1日入門コースが11,000円、2日間コースが22,000円、資格認定コースが44,000円(うち資格認定費33,000円)、再受講が11,000円です。開催は2日間集中のオンライン・ワークショップ形式で、1日のみの参加も可能です。金額・日程は変更される場合がありますので、最新情報は公式イベントページでご確認ください。
国家資格ではなく、当協会が認定する民間資格です。民間資格だからこそ、国際的な研究動向や当協会の研究・実践をいち早く教育内容に反映し、社会や科学の変化に柔軟に対応しながら、特定の専門領域に特化した実践的な教育・資格制度を迅速に開発することができます。心理学・コーチング・行動科学の最新の知見を柔軟に取り入れ、教育・福祉・ビジネスの現場で活用できる専門教育を提供できることは、開かれた民間資格だからこそ実現できる独自性と価値の一つです。
学校・放課後等デイサービス・就労支援などの現場での関わり方、企業における合理的配慮やマネジメント、キャリア支援の面談、家庭での関わりなど、活用の場は幅広くあります。既存の職務のなかで「関わり方の引き出し」として使われる例が多いのが特徴です。
コーチング心理士®、コミュニケーション心理士®などが位置づけられています。また、ポジティブ心理学コーチ、認知行動コーチ®、解決志向コーチ®、ナラティヴコーチ®など、目的に応じて組み合わせられる資格も用意されています。
標準ではPDF形式の認定証が発行されます。紙の証書や英語版の国際証書はオプションで対応しています。また、資格者コースを受講された方には、講座に関連する心理テストアプリの特典があります。詳細は公式イベントページの案内をご確認ください。
はい、どなたでもご参加いただけます。ご自身やご家族の特性を理解し、日常のなかで無理のない関わり方を設計するために学ばれる方もいらっしゃいます。ただし、講座は支援の技術を学ぶ場であり、個別の治療やカウンセリングを行う場ではありません。体調や気分の落ち込みが強い時期は、まず医療・心理支援を優先されることをおすすめします。
SUPERVISION

監修・運営について

一般社団法人 コーチング心理学協会 ロゴ
監修・運営

一般社団法人 コーチング心理学協会

「豊かな人生と豊かな社会づくりへの貢献」を掲げ、個人・組織のモチベーション向上とウェルビーイングの実現を目指す実践・研究機関です。国際的なエビデンスとナラティヴにもとづくコーチング心理学を体系化し、発達障害支援コーチングをはじめとする認定資格・講座、団体・法人研修を提供しています。

専門性の土台

コーチング心理学・ポジティブ心理学・認知行動的アプローチ・解決志向アプローチ・ナラティヴを横断し、流派にとらわれない開かれた学びの場を掲げています。

認定資格・講座

発達障害支援コーチング、コーチング心理士®、ポジティブ心理学コーチ、認知行動コーチ®、解決志向コーチ®、ナラティヴコーチ® ほか。

「できない」を数える支援から、
「できる条件」を設計する支援へ。

ADHDコーチングは、本人の努力を増やす方法ではなく、力が発揮される条件を一緒につくる方法です。まずは1日の入門コースから、強みベースの支援を体験してみませんか。

基本講座の日程・申込へ → 資格ガイドを見る
発達障害支援コーチング基本講座(オンライン)1日入門 11,000円/2日間 22,000円/認定コース 44,000円・前提資格不要