「問題が起きてから対応する」組織から、「小さな変化に気づき、対話し、決められる」組織へ。
情報が足りず、時間もないなかで判断する力(C-LEAD)と、危機の前後を支える心理的資源(PRISM)を、コーチング心理学の実践でつなぎます。

重大なリスクが、まったく前触れなく発生することはまれです。多くの場合、その前に小さな兆候があります。それは「報告」ではなく、口数の減少、提出物の質、会議の沈黙といった形で現れます。次のうち、いくつ当てはまりますか。

Q. リスクマネジメントコーチングとは何ですか?
A. リスクの兆候に「気づき」、対話によって「共有」し、不確実ななかでも「決められる」人と組織を育てる研修です。 ルール・マニュアル・チェックリストの整備を目的とする従来型のリスクマネジメント研修に対し、その手順が実際に機能するための前提——観察・問い・対話・意思決定・振り返り——をコーチング心理学の技法で扱います。対象は、人/関係/組織/業務/倫理という5領域のリスクです。
本研修は、既存のリスク管理施策(BCP、コンプライアンス、ハラスメント防止、メンタルヘルス対策)を置き換えるものではなく、「人と対話」の側面から補完する横断型の研修として設計されています。
ルール・マニュアル・チェック
→ 想定内には強い。想定外と「言い出せなさ」には弱い。
観察 → 気づき → 問い → 対話 → 意思決定 → 振り返り
→ 「リスクを管理する人」ではなく「リスクに気づき、対話し、行動できる人」を育てる。
危機の前・発生・対応・後・次への適応。この5つのフェーズで、必要な力は変わります。本研修は、C-LEAD(危機の最中)とPRISM(危機の前後)を、フェーズに沿って配置します。
予測し、備え、関係をつくる
情報が足りない。時間もない。それでも決める
伝え、動かし、影響を見積もる
回復し、意味づけ、学びに変える
学びを、次のシナリオに折り返す
C-LEAD(Crisis Leader Efficacy in Assessing and Deciding)は、危機下で情報を査定し意思決定を行う自己効力感を測る尺度です。Hadley, Pittinsky, Sommer, & Zhu(2011, The Leadership Quarterly)により、公衆衛生・安全の危機を導いた実務家50名へのインタビューをもとに開発されました。9項目・1因子・7件法で構成されています。
研修では、この9つを演習の設計軸として用います(自己理解と振り返りのために用い、人事評価・選抜には用いません)。



一般社団法人コーチング心理学協会 代表理事。コーチング心理学・ポジティブ心理学を専門とし、教育・医療・産業・公共団体の分野で研修と実践を重ねてきました。
※ C-LEADの原尺度はHadley, Pittinsky, Sommer, & Zhu(2011)によるものです。研修では研究知見にもとづく設計を行い、尺度そのものを人事評価の道具としては使用しません。
PRISMは、マーティン・セリグマンとガブリエラ・ローゼン・ケラーマンによる『Tomorrowmind(邦訳:これからの生き方)』で示された枠組みです。C-LEADが危機の最中を扱うのに対し、PRISMは不確実な未来に適応する力を扱います。
複数の未来を思い描き、シナリオとして具体化する力。危機の前に「まだ起きていないこと」を扱えるようにする。
逆境から回復し、状況が変わったときに考え方を切り替える力。感情を調整し、粘り強く向き合う。
限られた資源のなかで、既存のやり方に縛られず新しい解決策を生み出す力。
初対面でも短時間で信頼関係を築き、支援を求め、支援を与えられる力。危機時ほど「つながりの太さ」が効く。
自分の仕事が誰かの役に立っているという感覚。危機のあとの疲弊を、意味づけと貢献の実感が支える。

2つのモデルは、扱う時間軸が異なります。だからこそ、組み合わせると「危機に強く、変化にも強い」状態を設計できます。
情報を査定し、限られた情報と時間のなかで意思決定する。C-LEADの研究知見にもとづく演習。
不確実な未来を見通し、レジリエンス・創造性・つながり・意味を活用する。PRISMにもとづく実践。
問い・傾聴・フィードバック・省察により、知識を行動に変える。研修後の実践までを設計。
組織のリスクは独立していません。人の不調は関係の悪化を生み、関係の悪化は情報を止め、情報が止まれば業務事故と倫理違反が見えなくなります。この連鎖を「リスク・エコシステム」として扱います。
| 領域 | 主なリスク | コーチングによるアプローチ | 入口になる問い |
|---|---|---|---|
| 人 People | メンタルヘルス不調・離職・燃え尽き・過重負荷 | 変化への気づき/傾聴/セルフケアとラインケア | 最近、以前と違うと感じることはありますか? |
| 関係 Relationship | ハラスメント・対立・不信・孤立 | 対話/フィードバック/アサーション | その言葉は、相手にはどう届いたと思いますか? |
| 組織 Organization | 心理的安全性の低下・情報の目詰まり・同調圧力 | 問い/相互理解/会議設計 | この決定に反対するとしたら、どんな理由がありえますか? |
| 業務 Operation | ミス・事故・判断の遅れ・属人化 | 振り返り/意思決定支援/プレモーテム | このやり方が失敗するとしたら、最初に壊れるのはどこですか? |
| 倫理 Ethics | コンプライアンス違反・不正・情報漏洩・SNS炎上 | 倫理的意思決定/相談ルート/説明責任 | これが明日、社外に公開されても説明できますか? |
管理職が現場で使うための、6つの手順です。研修では各ステップに演習と問いのレパートリーが対応します。
数字になる前の変化(表情・口数・提出物・空気)を観察し、言語化する。
解釈を急がず、事実と推測を分ける。相手の見えている世界を確認する。
確証バイアス・正常性バイアスを疑い、反証を意図的に探す。
放置した場合/対応した場合の影響を、人・関係・組織・業務・倫理の5領域で評価する。
一人で抱えず、必要な相手に必要な粒度で伝える。相談先へつなぐ。
小さく試し、期日を決めて見直す。学びを次のシナリオに折り返す。
※ 「RISK-COACHING 6 STEP」は本研修の独自フレームです。

1on1や会議を、進捗確認の場から「兆候に気づく場」へ変えるための問いです。単なる会話術ではなく、リスク認知・メタ認知・意思決定支援として設計しています。研修では、問いを出したあとの沈黙の扱い方と、相談を受けたあとのつなぎ方まで訓練します。
自組織の現状を、危機対応(C-LEADの考え方)と未来適応(PRISMの考え方)の2軸で振り返ります。全16問・約3分。ブラウザ内で完結し、入力内容はどこにも送信されません。
危機対応力(C-LEADの視点):
未来適応力(PRISMの視点):
おすすめの進め方:
研修の前後測定や、参加者の自己理解に活用できます(個人利用は無料で公開しています)。
「気づく」→「対話で予防する」→「組織として強くなる」の順に設計しています。単発でも、体系としても導入できます。
対象:管理職・チームリーダー・新任マネジャー
時間:90分/半日/1日
対象:中間管理職・人事・安全衛生・危機管理担当
時間:1日/2日/シリーズ(隔週など)
対象:経営層・人事責任者・BCP/危機管理部門
時間:シリーズ研修+伴走(3〜12か月)



Zoom等でのライブ研修。全国・多拠点の管理職を同時に集めやすく、ブレイクアウトでの演習も可能です。
会場へ講師が出向く形式。実地の危機対応訓練や、部門横断のワークショップと相性がよい形式です。
本社は対面、拠点はオンライン。同じ事例を全社で共有したい場合に適しています。
研修後の実践期間に、管理職向けのグループコーチングや個別相談を組み合わせます。
※ 開催日程・料金は、対象者・人数・時間・形式により個別に設計します。詳細はお問い合わせください。実施分野:企業(製造・IT・サービス・金融ほか)、医療・福祉、教育、自治体・公共団体。
組織リスクと経営判断、人的資本経営、リスク文化の設計。危機時に情報が上がる構造をつくる。
管理職育成、離職予防、メンタルヘルスとハラスメント対策、1on1の質の向上。
部下の変化への気づき、傾聴とフィードバック、問題の早期発見、相談対応とつなぐ判断。
チーム内のコミュニケーション、心理的安全性、コンフリクト対応、ミスの共有。
マニュアルの実効性、訓練設計、危機時の意思決定と情報共有、危機後の回復支援。
災害対応、住民・患者・児童生徒への影響評価、多機関連携、支援者自身のケア。
研修では、以下のような典型ケースを題材に「どの段階で、何を問えたか」を検討します。事前ヒアリングにもとづき、自組織で起こりうるケースの教材化も可能です(個人が特定されない形に加工します)。
兆候:3か月前から会議での発言が減り、提出物の質が落ちていた。1on1では「大丈夫です」が続いていた。
見落とし:「大丈夫」を確認で終わらせ、行動の変化を扱わなかった。
コーチング的アプローチ:「以前と比べて変わったこと」を具体的に取り上げ、事実→解釈→要望の順に対話する。5領域の「人」と「関係」を同時に点検する。
兆候:特定のメンバーへの発言が繰り返され、周囲は笑って流していた。
見落とし:意図(冗談)で評価し、受け手への影響を評価しなかった。
コーチング的アプローチ:「その言葉は相手にどう届いたか」を問い、影響評価の視点を導入。傍観者が声を上げられる規範づくりへ。
兆候:発言量の減少、遅刻の増加、体調不良の申し出。
見落とし:評価の話と受け取られることを恐れ、声をかけられなかった。
コーチング的アプローチ:評価から切り離した声かけと、専門職・相談窓口へのつなぎ方を訓練する。コーチングは診断・治療ではないという線引きを明確にする。
兆候:ヒヤリハットの報告数が減少していた(=起きていないのではなく、上がっていない)。
見落とし:報告が「責任追及」につながる空気があった。
コーチング的アプローチ:報告を歓迎する応答の型を管理職が学ぶ。報告→感謝→事実確認→改善の順序を徹底する。
兆候:議論が短く、反対意見が出ない。決定後に別ルートで不満が流れる。
見落とし:沈黙を合意と解釈した。
コーチング的アプローチ:反対意見を意図的に引き出す設計(悪魔の代弁者、プレモーテム、匿名の事前意見収集)を会議に組み込む。
兆候:情報が錯綜し、誰が何を決めるのかが曖昧なまま時間が過ぎた。
見落とし:完全な情報を待ってしまった。
コーチング的アプローチ:C-LEADの考え方に沿って「不完全情報下で決める」訓練を行い、事前に決定権限と情報経路を決めておく。
「コミュニケーション能力が向上します」では、導入の判断材料になりません。本研修では、研修→行動→組織指標というロジックモデルに沿って測定を設計します。

| 指標 | 測り方 |
|---|---|
| リスクへの気づき | 兆候チェックリストの自己評価/事例演習での指摘数 |
| 相談しやすさ | 部下側サーベイ(「相談できる」と回答した割合) |
| 傾聴・フィードバックの自己効力感 | 研修前後の自己効力感尺度 |
| 危機時の意思決定への自信 | C-LEADの考え方に基づく自己効力感の測定(研究ツールとしての利用が前提) |
| 心理的安全性 | チーム単位の測定(例:心理的安全性テスト) |
| 未来適応力 | PRISMの5要素に沿ったセルフチェック |
| リスク共有行動 | ヒヤリハット・相談・エスカレーションの件数(増加=健全化のサイン) |
| 早期対応 | 兆候把握から対応着手までの日数 |
本研修は既存研修の代替ではありません。それぞれの研修が届きにくい「気づき」「言い出せなさ」「決められなさ」を補完します。
| 研修 | 主目的 | 中心となる内容 | 届きにくい領域 |
|---|---|---|---|
| リスクマネジメント研修 | 制度・手順としてのリスク管理 | ルール・マニュアル・チェック | 「気づき」と「言い出せる関係」は扱いにくい |
| コンプライアンス研修 | 法令・規則の理解 | 知識の付与 | 知っていても言い出せない構造は変わらない |
| ハラスメント防止研修 | 該当行為の抑止 | 定義・判例・NG行動 | グレーゾーンの対話までは踏み込みにくい |
| メンタルヘルス研修(ラインケア) | 不調の予防と早期対応 | セルフケア・ラインケア・相談 | 業務・倫理リスクとは接続されにくい |
| コーチング研修 | 人材育成 | 目標達成・成長支援 | リスク・危機の文脈では設計されていない |
| 1on1研修 | 対話の習慣化 | 面談スキル | 何を聴けばリスクに気づけるかは別問題 |
| BCP・防災訓練 | 事業継続と初動 | 手順の反復 | 人の心理・判断のクセは扱われにくい |
| リスクマネジメントコーチング | 気づく・対話する・決める力の育成 | 観察→問い→対話→意思決定→振り返り | 既存施策を「人と対話」の側面から補完する横断型 |
本研修の設計は、以下の研究知見にもとづいています。効果を断定するものではなく、設計の根拠として提示します。
Hadley, Pittinsky, Sommer, & Zhu(2011, The Leadership Quarterly)は、公衆衛生・安全の危機で求められる中核行動を情報査定と意思決定に定め、C-LEAD尺度(9項目)を開発しました。曖昧性・高い利害・切迫性が判断力を圧迫するという前提に立っています。
C-LEADの研究briefingでは、CDC職員85名の危機シミュレーションにおいて、C-LEADの得点が危機下の意思決定のしやすさと関連した一方、一般的なリーダーシップ自己効力感尺度は関連を示さなかったと報告されています。対応手順の習熟だけでは、危機時の情報査定・意思決定を十分に予測できない可能性が示唆されています。
管理職300名を対象とした研究では、C-LEADが危機時にリーダー役を引き受ける動機づけ・実際の立候補・シミュレーションでの判断の正確さと関連したと報告されています。
徳吉陽河(2015)は、20歳以上の社会人487名(男性340名・女性147名/平均35歳)を対象にC-LEAD-Jを検討し、1因子構造、α=.93、ω=.93、確認的因子分析でCFI=.955・TLI=.940・RMSEA=.098と報告しています。
同研究では、C-LEAD-Jはリーダーシップ自己効力感(Paglis & Green, 2002)、およびビッグファイブの勤勉性・外向性・開放性と正の相関、神経症傾向と負の相関を示しました。
Judge, Bono, Ilies, & Gerhardt(2002, Journal of Applied Psychology)は73サンプル・222の相関をメタ分析し、神経症傾向 −.24、外向性 .31、開放性 .24、協調性 .08、勤勉性 .28、5因子全体の重相関 .48を報告しています。ただし特性だけで危機対応が決まるわけではありません。
Bono & Judge(2004, Journal of Applied Psychology)は26研究・384の相関をメタ分析し、外向性が変革型リーダーシップの最も一貫した相関を示す一方、関連は総じて弱く、非特性的要因や訓練の重要性を指摘しています。
C-LEADの研究briefingは、現段階では主に研究ツールとしての利用を推奨し、研修モジュールの開発・評価や、将来的なプログラム評価・個人評価への発展可能性を述べています。本研修でも、合否判定や人事評価の道具としては用いません。
自組織の課題整理から、プログラム設計、効果測定までご相談ください。
対象者・人数・時間・実施形式にあわせて個別に設計します。まずは自組織の課題整理からご相談ください。