構成主義と心理療法をわかりやすく解説 高校生にもわかる心理学入門 用語

 

 

社会構成主義と心理構成主義、他の心理療法との違いをわかりやすく解説

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はじめに:心の見方ってこんなに違う!

みなさんは「心」や「考え方」がどのように作られると思いますか?自分の頭の中だけで作られるのでしょうか?それとも友達や家族との関わりの中で作られるのでしょうか?

実は、この「心や考え方がどう作られるか」について、心理学にはいくつかの考え方があります。今回はその中でも特に「構成主義」と呼ばれる考え方と、そこから派生した「社会構成主義」と「心理構成主義」について、わかりやすく解説します。

さらに、これらと他の心理療法(カウンセリングの方法)との違いも紹介するので、自分にはどんな考え方が合っているのか発見してみましょう!

そもそも「構成主義」って何?

構成主義の基本的な考え方

構成主義とは「私たちの知識や考えは、外から与えられるものではなく、自分で作り上げるもの」という考え方です。

例えば、教科書に書いてあることをそのまま頭に入れるわけではなく、自分の経験や既に持っている知識と照らし合わせて、自分なりの理解を作っていくということです。

身近な例で考えてみよう

同じ授業を受けていても、友達によって理解の仕方が違いますよね。それは、一人ひとりが自分の経験や知識をもとに、新しい情報を「構成」しているからなんです。

社会構成主義とは?

社会構成主義の基本的な考え方

社会構成主義は「知識や考えは、人と人との関わり(対話や会話)の中で作られる」と考えます。

つまり、私たちの考え方は一人で生まれるものではなく、友達や家族、先生など、周りの人との関係の中で形作られるという考え方です。

身近な例で考えてみよう

例えば、学校での「かっこいい」の基準は、みんなとの会話の中で作られますよね。

また、SNSでの流行も、多くの人が「いいね」や「シェア」をすることで「これが流行っている」という現実が作られています。

これらは個人が一人で決めたものではなく、社会的なやりとりの中で生まれた「現実」なのです。

ポイント

社会構成主義では、「正しい」「間違い」は絶対的なものではなく、その社会や集団の中での約束事だと考えます。だから、違う文化や集団では「当たり前」が全く違うことがあるんですね。

心理構成主義とは?

心理構成主義の基本的な考え方

心理構成主義は「知識や考えは、一人ひとりの頭の中で個別に作られる」と考えます。

つまり、外界の情報は一人ひとりの頭の中で処理され、その人なりの意味づけがされるという考え方です。

身近な例で考えてみよう

例えば、あなたと友だちが同じ映画を見ても、感想が全く違うことがありますよね。

また、同じ先生の授業を聞いていても、人によって「わかりやすい」と思う人もいれば「わかりにくい」と思う人もいます。

これは、それぞれの人が自分の過去の経験や知識をもとに、独自に情報を処理して理解しているからなのです。

ポイント

心理構成主義では、一人ひとりの頭の中で独自の「現実」が作られると考えるため、他人と完全に同じ理解をすることは不可能だと考えます。だからこそ、お互いの考え方の違いを尊重することが大切なんですね。

社会構成主義と心理構成主義の違いは?

社会構成主義

  • 知識や考えは人との関わりの中で作られる
  • 言葉や会話の役割を重視する
  • 「みんなで作る現実」に注目する
  • 集団や文化の影響を重視する

心理構成主義

  • 知識や考えは個人の頭の中で作られる
  • 個人の認知プロセスを重視する
  • 「一人ひとりの理解」に注目する
  • 個人の過去の経験や知識を重視する

比較してみよう:「学校での失敗体験」の場合

社会構成主義の見方

「失敗」という概念そのものが学校という社会の中で作られたもの。友達や先生との会話の中で「失敗」だと意味づけられたことで、その体験が「失敗体験」になる。

心理構成主義の見方

同じ出来事でも、その人がどう受け止めるかによって「失敗」にも「挑戦の一歩」にも意味づけられる。個人の中での解釈が重要。

他の心理療法との違いは?

では、社会構成主義や心理構成主義と、他の有名な心理療法(カウンセリングの方法)にはどんな違いがあるのでしょうか?

心理療法 基本的な考え方 何を重視する? 高校生の日常での例
社会構成主義 知識や考えは人との関わりの中で作られる 会話や対話、言葉による現実の構築 友達との会話で「自分はダメだ」という思い込みが変わる体験
心理構成主義 知識や考えは個人の頭の中で作られる 個人の認知プロセス、意味づけの仕方 テストの点数が悪くても「次頑張ろう」と前向きに解釈する
精神分析 問題は過去の抑圧された感情や無意識から生じる 幼少期の体験や無意識の欲求 小さい頃の親との関係が今の友人関係に影響している
認知行動療法 問題は考え方のクセと行動パターンから生じる 否定的な思考パターンの修正と行動の変化 「発表は絶対失敗する」という考えを「練習すればできる」に変える
人間性心理学 人には自己成長と自己実現への自然な傾向がある 可能性の発揮、自己理解、自己受容 自分の強みを活かして部活動で新しい役割に挑戦する

知っておこう!

どの心理療法も「正しい」「間違い」ではなく、それぞれ違った視点で人の心を理解しようとしているんだ。自分に合った考え方や方法を知ることが大切なんだよ。

ナラティブアプローチってなに?

ナラティブアプローチとは

ナラティブアプローチは社会構成主義をベースにした実践的な方法で、「自分の物語(ナラティブ)を語り直すことで新しい見方を見つける」手法です。

私たちは自分の経験を「物語」として理解しています。ナラティブアプローチでは、その「物語」の語り方を変えることで、問題の見方を変えていきます。

ナラティブアプローチの例:部活での挫折体験

古い物語

「バスケ部のレギュラーになれなかった。努力してもダメだった。自分には才能がないんだ。」

新しい物語

「バスケ部でレギュラーにはなれなかったけど、チームメイトを応援することでチームに貢献できた。そこで学んだ忍耐力と協調性は、他の場面でも活かせている。」

このように、同じ出来事でも「語り方」を変えることで、自分自身への見方や将来への希望が変わります。これがナラティブアプローチの魅力です。

それぞれの方法はどんなときに役立つ?

社会構成主義的アプローチが役立つとき

  • 友達関係や家族関係の問題を考えたいとき
  • 「周りはこう思ってるはず」という思い込みに悩んでいるとき
  • 社会のルールや「当たり前」に違和感を感じるとき
  • 自分の話を聞いてもらいたい、物語を語り直したいとき

心理構成主義的アプローチが役立つとき

  • 自分の考え方のクセを知りたいとき
  • 物事の受け止め方や解釈の仕方を変えたいとき
  • 学習の方法や理解の仕方を工夫したいとき
  • 自分なりの意味づけや価値観を作りたいとき

精神分析的アプローチが役立つとき

  • 同じパターンの問題が繰り返し起きるとき
  • 理由がわからない感情や行動に悩むとき
  • 幼少期からの経験と今の問題のつながりを知りたいとき

認知行動療法が役立つとき

  • 具体的な行動や思考パターンを変えたいとき
  • 不安やストレスへの対処法を学びたいとき
  • 目標達成のための具体的なステップが欲しいとき

人間性心理学が役立つとき

  • 自分の可能性を探りたいとき
  • 自己理解や自己受容を深めたいとき
  • 人生の意味や目的について考えたいとき

まとめ:大切なのは多様な見方

ここまで社会構成主義と心理構成主義、そして他の心理療法について見てきました。どれが「正解」というわけではなく、それぞれの考え方には良さがあります。

最後に大切なこと

  • 心の悩みにはいろいろな見方があることを知ろう
  • 自分に合った考え方や方法を探すのも大切
  • 友達と違う見方をしていてもそれは自然なこと
  • 専門家(スクールカウンセラーなど)に相談するのも選択肢の一つ

高校生活では様々な悩みや課題に直面することがあります。そんなとき、今日学んだ考え方が、あなたの新しい視点や解決策を見つけるヒントになれば嬉しいです。

「私の問題は私の頭の中だけにあるのか?」「それとも、周りの人との関係の中にあるのか?」と考えてみると、思わぬ発見があるかもしれませんね。

さらに学びたい人へ

心理学には他にもたくさんの考え方や理論があります。興味を持った人は、学校の図書館で心理学の入門書を探してみたり、スクールカウンセラーの先生に質問してみるのもおすすめですよ!

 

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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