リーダーシップ・スキルの自己効力感(自信)とは何か? 資格取得の参考に

リーダーシップ・スキルの自己効力感(自信)とは何か?

変化をリードする「自信」の科学的根拠

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参考文献:Paglis, L. L., & Green, S. G. (2002). Leadership self-efficacy and managers’ motivation for leading change. Journal of Organizational Behavior, 23, 215–235.

 

カテゴリ:リーダーシップ開発・組織マネジメント・人材育成


リーダーシップ・スキル・自己効力感尺度の実用化のための現代的最適化・再調査・再研究(2026年度)を行いました。

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「自分にはリーダーとして人を動かす力があるのだろうか」――そんな不安を感じたことはありませんか? リーダーシップの自己効力感(Leadership Self-EfficacyLSE)は、まさにこの問いに答える概念です。本記事では、組織行動学の権威ある研究(Paglis & Green, 2002)をもとに、LSEの定義・3つの構成要素・現場への応用までをわかりやすく解説します。

 

📋 この記事でわかること

  • リーダーシップの自己効力感(LSE)とは何か
  • LSEを構成する3つの次元の内容
  • なぜLSEが変化をリードする意欲に直結するのか
  • LSEを高めるための具体的なアプローチ
  • マネジャーや組織開発担当者が今日から使えるヒント

 

1. リーダーシップの自己効力感(LSE)とは?

「自己効力感(Self-Efficacy)」は、心理学者アルバート・バンデューラが提唱した概念で、「自分はある課題をうまくやり遂げることができる」という信念を指します。単なる自信とは異なり、特定の状況や行動に対してどれだけ有能感を持てるかを示す、具体的で測定可能な心理的リソースです。

 

これをリーダーシップの文脈に適用したのが、PaglisGreen2002年に発表した研究です。彼らは、リーダーシップの自己効力感(LSE)を次のように定義しています。

 

LSEとは、リーダーとして必要な行動を実行できるという信念、すなわち方向性の設定・フォロワーへの働きかけ・困難への対処という3つの課題を遂行する自信のことである」(Paglis & Green, 2002, p.218

 

ポイントは、LSEが「リーダーシップ全般」への漠然とした自信ではなく、具体的な行動領域ごとに分かれているという点です。これは後述する3つの次元に対応しています。

 

2. LSEを構成する3つの次元

Paglis & Green2002)は、LSEを以下の3つの次元(ディメンション)から構成されると論じています。それぞれを詳しく見ていきましょう。

 

方向性の設定(Setting the Direction

第一の次元は、「チームや組織の進むべき方向を明確に示す能力への自信」です。これは、ビジョンの策定や目標設定に関わる行動への有能感を意味します。

 

たとえば、「自分はメンバーにとって意味のある目標を設定できる」「自分はチームの課題を的確に分析し、戦略的な方向性を示せる」といった信念がここに当たります。目標が曖昧なまま仕事を進めるチームが多い職場では、この次元のLSEが特に重要です。

 

フォロワーへの働きかけ(Influencing Followers

第二の次元は、「フォロワーをやる気にさせ、動かすことができるという自信」です。方向性を示すだけでなく、実際にメンバーを行動に駆り立てる影響力への信念がここに含まれます。

 

「自分はメンバーの共感を得られる」「自分はフォロワーを説得し、変化に向けて動機づけられる」という感覚がこの次元に属します。近年、心理的安全性やエンゲージメントが重視される中で、この次元のLSEは現代のマネジャーにとって特に不可欠なものといえます。

 

困難・障壁への対処(Coping with Challenges

第三の次元は、「変化の過程で生じる抵抗・摩擦・不確実性に対処できるという自信」です。組織変革には必ずと言っていいほど抵抗や困難が伴います。この次元は、そのような逆境の中でもリーダーとして踏みとどまれるという信念を指します。

 

「自分は反対意見を受けても揺らがずに前進できる」「想定外のトラブルが起きても対処できる」という感覚がここに含まれます。変化をリードする上で最も試されるのが、実はこの困難対処の自己効力感かもしれません。

 

3. なぜLSEが「変化をリードする意欲」に直結するのか

Paglis & Green2002)の研究の核心的な発見は、LSEが高いマネジャーほど、「変化をリードしようとする意欲(Motivation for Leading Change)」が高いという関係性を実証したことにあります。

 

この結果は直感的にも理解できます。「自分にはできる」と思えなければ、人は困難な課題に挑もうとしません。逆に言えば、リーダーが変化を起こせない最大の理由の一つは、能力の不足ではなく、自己効力感の不足である可能性があるのです。

 

研究の主な知見:LSE3次元はいずれも「変化をリードする意欲」と正の相関を示した。特に「方向性の設定」と「困難への対処」に関するLSEが、変革リーダーシップの発揮において強い予測因子であることが示された(Paglis & Green, 2002)。

 

つまり、研修や制度を整えるだけでなく、マネジャー個人の「自分にはできる」という感覚をどう育てるかが、組織変革の成否を大きく左右するということです。これは、人材育成や組織開発に携わる方々にとって非常に示唆に富んだ発見といえるでしょう。

 

4. LSEはどのように育つのか?――バンデューラの4つの情報源

バンデューラの自己効力感理論によれば、自己効力感は以下の4つの情報源から形成・強化されます。これはLSEにも同様に適用できます。

 

遂行経験(Mastery Experiences

実際にリーダーシップを発揮して成功した体験が、最も強力なLSE向上の源です。小さな成功体験でも積み重なることで、「自分にはできる」という感覚が根付いていきます。組織においては、適度に挑戦的なプロジェクトへのアサインや、段階的な責任の付与が有効です。

 

代理経験(Vicarious Experiences

自分と似た立場のロールモデルが成功する姿を観察することで、「自分にも同じことができる」という信念が強まります。メンタリング制度や、先輩リーダーの活動を見学する機会の設置が、この効果をもたらします。

 

言語的説得(Verbal Persuasion

上司や信頼できる同僚から「あなたにはそれができる」と言われることは、LSEを高める上で重要な役割を果たします。単なるほめ言葉ではなく、具体的な根拠と組み合わせた励ましが効果的です。

 

生理的・感情的状態(Physiological and Emotional States

過度のストレスや不安は自己効力感を低下させます。ウェルビーイングへの配慮や、心理的安全性の高い環境づくりは、LSEを下支えする基盤となります。

 

5. 現場への応用――マネジャーと人材育成担当者のためのヒント

以上の理論を踏まえて、実際の職場ではどのようなアクションが考えられるでしょうか。

 

マネジャー自身へのアドバイス

  • 自分のLSEの「弱い次元」を把握する:方向性・影響力・困難対処のどれが低いかを振り返り、意識的に強化する機会を設ける
  • 「小さな変化」をリードする経験を積む:大きな変革を任される前に、チーム内の小さな課題改善や業務改善をリードする機会を活かす
  • 失敗を学びに変えるフレーミングを持つ:失敗を「能力不足の証拠」ではなく「経験値を積む機会」として捉え直す

 

組織・人材育成担当者へのアドバイス

  • リーダーシップ研修にLSE視点を取り入れる:知識・スキルだけでなく、「自分にはできる」という信念の醸成を研修目標に加える
  • 成功体験を意図的に設計する:挑戦的だが達成可能な課題を段階的に与え、成功体験を積ませるプログラムを構築する
  • 上司からのフィードバックの質を高める:評価面談において、具体的な強みと成長の根拠を伝える「強化型フィードバック」を徹底する
  • 心理的安全性を組織文化として定着させる:LSEはネガティブな環境では育ちにくい。心理的安全性の高い職場づくりをLSE向上の土台として位置づける

障害を乗り越えるためにリーダーとして大切なことは?

応答曲面分析 最近のデータ分析を活用して

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Paglis & Green(2002)の理論を基盤としながら、近年の統計手法である応答曲面分析(Response Surface Analysis: RSA) を用いて、リーダーシップ自己効力感の要素間の関係を詳細に検討しました。

Paglis & Green(2002)の研究では、組織変革を進める際に、リーダーが「自分には変革を導く力がある」と感じるリーダーシップ自己効力感が重要であることが示されています。その中でも 「方向性を示すこと」「周囲の同意を得ること」 が、組織の 「障害を克服する力」 にどのように関係するかを最新の研究にて検討しました。

分析結果からは、方向性を示す力と、周囲の同意を得る力の両方が高い場合に、障害を克服する力も高くなる傾向がみられました。これは、組織の課題や変革を進めるためには、単にリーダーが強い意思やビジョンを持つだけではなく、周囲の理解や協力を得ることも重要であることを示しています。

また、結果を見ると、特に 「方向性を示すこと」 の重要性が大きい可能性が考えられます。組織が不確実な状況や変化の場面にあるときには、リーダーが「どこに向かうのか」「何を目指すのか」を明確に示すことで、メンバーが動きやすくなるためです。

一方で、方向性だけが明確でも、周囲の同意や協力が得られなければ、障害克服の効果は十分には高まらない可能性があります。逆に、周囲との関係づくりや合意形成ができていても、方向性が曖昧であれば、組織として前に進みにくくなることも考えられます。

このことから、組織の障害を乗り越えるためには、リーダーが明確な方向性を示しながら、同時に周囲を巻き込み、同意や協力を得ていくことが重要であると考えられます。

実践的には、リーダー育成やコーチングにおいて、ビジョンを示す力だけでなく、コミュニケーションや合意形成の力もあわせて育成することが、組織変革を成功させるための鍵になると考えられます。

6. まとめ――「変化を起こせるリーダー」の根底にあるもの

Paglis & Green2002)が示した研究の本質は、「変化をリードする力は、能力だけでなく自己効力感によって大きく規定される」ということです。どれほど優秀なリーダーでも、「自分にはできない」という信念に縛られれば、その力を発揮することはできません。

 

LSEは生まれ持った資質ではなく、経験・環境・関わる人々によって育むことができる心理的リソースです。組織変革が求められる現代において、リーダーシップ開発の鍵は、スキルセットと同等に、あるいはそれ以上に「リーダーとしての自己信念」を育てることにあるといえるでしょう。

 

LSEを高めることは、個人の成長だけでなく、組織全体の変革力と適応力を底上げします。まずは今日、あなた自身のリーダーシップ自己効力感を振り返ることから始めてみませんか?

よくある質問(FAQ

Q.一般社団法人コーチング心理学協会では,リーダーシップ,リーダーシップコーチングについて学べますか?

はい、コーチング心理学基礎講座,認知行動療法と認知行動コーチング講座,解決志向コーチング講座など,各講座などでについてリーダーシップスキル,紹介しております。ぜひ,体験してみていただければ幸甚です。

https://www.coaching-psych.com/event/

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Q. 一般社団法人コーチング心理学協会では,リーダーシップ・リーダーシップスキルコーチングに関する団体研修・法人研修などを実施してますか?(新入社員・中途社員・管理職研修など)

はい,実施しております。もしご希望でしたら,お問い合わせまでご連絡をいただければ幸甚です。
協働で研修なども可能です。対面・オンライン両方とも対応しております。

https://www.coaching-psych.com/contact/

 

参考文献

Paglis, L. L., & Green, S. G. (2002). Leadership self-efficacy and managers’ motivation for leading change. Journal of Organizational Behavior, 23, 215–235.

 

本記事はPaglis & Green2002)の研究内容に基づき解説したものです。

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投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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