動機づけ面接法コーチングとエンゲージメント・ウェルビーイングの関係

動機づけ面接法コーチングとエンゲージメント・ウェルビーイングの関係

〜社員が「自分から動く組織」をつくるための実践ガイド〜

29989d2e93f4f9a8637cb65a3f35b34e

entry 2

「うちのメンバー、なんとなくやる気がなさそう」「離職率が下がらない」そんな悩みを抱えるマネージャーやHR担当者の方は多いのではないでしょうか。実は、その原因のひとつが「コーチングの質」にある可能性があります。

20230519 133054

本記事では、医療・福祉の現場で生まれた「動機づけ面接法(Motivational Interviewing動機づけ面接法)」という手法を組織コーチングに応用したとき、従業員のエンゲージメントとウェルビーイングにどのような変化が起きるのかを、わかりやすく解説します。

 

📋 この記事でわかること

  • 動機づけ面接法(動機づけ面接法)とは何か
  • エンゲージメント・ウェルビーイングとの関係性
  • 動機づけ面接法コーチングの4つの実践プロセス
  • 現場で使えるコーチングの具体例
  • 導入時の注意点とよくある失敗パターン

 

1. 動機づけ面接法(動機づけ面接法)とは? 〜命令より「引き出す」アプローチ〜

動機づけ面接法(Motivational Interviewing、以下動機づけ面接法)とは、1980年代にウィリアム・ミラーとスティーブン・ロルニックが開発したカウンセリング手法です。もともとはアルコール依存症や薬物乱用の治療で使われていましたが、現在は医療・福祉・教育・ビジネスなど幅広い分野で活用されています。

 

動機づけ面接法の本質は「変わりたい気持ち」をその人の中から引き出すこと。外から押し付けるのではなく、内側から湧き出る動機を大切にします。

 

動機づけ面接法と従来のコーチングの違い

従来の指示型マネジメントやティーチングは、上司が「正解」を持っており、部下にそれを教えるスタイルです。一方、動機づけ面接法に基づくコーチングは以下のような考え方が基本になっています。

  • 人は本来、変化への動機を内側に持っている
  • 変わらない理由(両価性)を丁寧に扱うことが大切
  • コーチの役割は「答えを与える」ではなく「気づきを促す」
  • 自律性の尊重が長期的な行動変容につながる

 

これは、単なる「傾聴」とも異なります。動機づけ面接法には方向性があり、「変化への動機を強化する」という明確な目的を持って会話を進めます。

 

2. エンゲージメントとウェルビーイングとは? 〜今、なぜ注目されるのか〜

従業員エンゲージメントとは

従業員エンゲージメントとは、社員が組織や仕事に対してどれだけ「主体的に関わっているか」を示す概念です。単なる「満足度」とは異なり、自発的に努力しようとする意欲や帰属意識を含みます。

ギャラップ社の調査によると、日本の従業員エンゲージメントは世界でも最低水準グループに位置しており、「積極的に仕事に関与している」社員の割合は6%前後と非常に低いのが現状です。

 

ウェルビーイングとは

ウェルビーイング(Well-being)とは、身体的・精神的・社会的に良好な状態を指す概念です。単に「病気でない」という消極的な健康ではなく、「生き生きと働ける状態」という積極的な意味合いを持ちます。

  • 身体的ウェルビーイング:疲労が少なく、睡眠・運動が充実している
  • 精神的ウェルビーイング:ストレスが少なく、心理的安全性がある
  • 社会的ウェルビーイング:職場の人間関係が良好で、所属感がある
  • 職業的ウェルビーイング:仕事に意味を感じ、成長を実感している

 

エンゲージメントとウェルビーイングは「鶏と卵」の関係。どちらかが高まると、もう一方も上昇しやすい相乗効果があります。

 

3. 動機づけ面接法コーチングがエンゲージメントを高めるメカニズム

では、動機づけ面接法に基づくコーチングが、なぜ従業員のエンゲージメントやウェルビーイングの向上につながるのでしょうか?その鍵は「自己決定理論(SDT)」にあります。

 

自己決定理論との親和性

心理学者のデシとライアンが提唱した自己決定理論によれば、人は以下の3つの心理的欲求が満たされたとき、最も高いモチベーションを発揮します。

 

① 自律性(Autonomy):自分で選択・決定している感覚

② 有能感(Competence):自分にはできるという感覚

③ 関係性(Relatedness):他者とつながっている感覚

 

動機づけ面接法コーチングはこの3つすべてに働きかけます。「自分で考えて決める」会話スタイル(自律性)、強みを引き出し承認する(有能感)、コーチとの深い対話(関係性)——これらが組み合わさることで、外からの動機づけではなく「内発的動機づけ」が育まれます。

 

心理的安全性の醸成

動機づけ面接法は「共感・受容・是認・自律性の尊重」を基本精神とします。これは、エイミー・エドモンドソンが提唱する「心理的安全性」の概念とも深く一致します。心理的安全性が高い職場では、社員は失敗を恐れず挑戦できるため、イノベーションが生まれやすくなります。

 

4. 動機づけ面接法コーチングの4つの実践プロセス(PACE

動機づけ面接法には「関わるフォーカスする引き出す計画する」という4つのプロセスがあります。これを組織コーチングに応用すると次のようになります。

 

関わる(Engaging):信頼関係を築く

最初のステップは、コーチとしての存在を「安全な場所」として感じてもらうことです。評価や判断を手放し、相手の言葉をそのまま受け取る姿勢が大切です。

「先週、プレゼンで苦労したと聞きました。どんな気持ちでしたか?」——評価せず、まず感情を聴く。

 

② 焦点化するFocusing):方向性を定める

会話の中から、相手が最も変化したい・改善したいテーマを絞り込みます。ここでコーチが方向を押し付けず、「あなたが大切にしていることは何ですか?」と問い続けることが重要です。

 

引き出す(Evoking):変化への動機を引き出す

動機づけ面接法の核心部分です。「チェンジトーク」(変化に向けた発言)を意図的に引き出し、強化します。例えば「もし理想の状態になれたら、どんな良いことがありますか?」という質問が効果的です。

  • チェンジトークの例:「○○できるようになりたい」「以前はできていたのに」「変わらないと困ると思っている」
  • コーチの反応:チェンジトークを繰り返し・要約し・掘り下げる

 

計画する(Planning):具体的なアクションへ

動機が高まったタイミングで、具体的な行動計画を一緒に考えます。重要なのは「コーチが決める」のではなく「本人が決める」こと。「では、今週できる最初の一歩は何でしょう?」という問いかけが有効です。

 

5. ウェルビーイングへの具体的な効果

動機づけ面接法コーチングを継続的に実践した組織では、以下のような変化が報告されています。

 

ストレス・バーンアウトの軽減

動機づけ面接法の傾聴スタイルは、部下が「聴いてもらえた」という体験を積み重ねることで、職場でのストレス反応を和らげます。感情の言語化(エクスプレッシブライティング的効果)が、精神的健康を支えることが心理学研究でも示されています。

 

自己効力感の向上

強みにフォーカスした是認(アファーメーション)は、バンデューラの自己効力感理論と一致します。「あなたはあの困難な状況を乗り越えてきた」という言葉は、次の挑戦への自信を育てます。

 

離職意向の低下

「自分のことを気にかけてくれる上司がいる」という実感は、組織への帰属意識を高め、離職意向を下げる最大要因のひとつです。ギャラップ社の研究でも、マネージャーの質がエンゲージメントの約70%を左右すると示されています。

 

動機づけ面接法コーチングは「スキル」である前に「あり方」です。部下を変えようとするより、まず自分の聴き方を変える——それがすべての始まりです。

 

6. 現場で使える動機づけ面接法コーチング実践例

シーン:やる気が下がっているメンバーとの1on1

× NG例(指示型):「モチベーション上げないと困るよ。何をやりたいかちゃんと考えてきて。」

○ 動機づけ面接法型:「最近、仕事でしんどいと感じることはありますか?(開かれた質問)……それは大変でしたね(共感)。その中でも、まだ大切にしたいと思っていることはありますか?(価値観への問い)」

 

シーン:目標設定のコーチング

× NG例:「来期の目標はKPI120%にしよう。できるよね?」

○ 動機づけ面接法型:「来期どんな仕事をしていたいか、理想のイメージを聞かせてもらえますか?(引き出す)……それを実現するために、今から始められそうなことはどんなことでしょう?(計画)」

 

シーン:変化への抵抗があるメンバーへの対応

変化に抵抗するメンバーに対して、説得や論争は逆効果です。動機づけ面接法では「両価性(アンビバレンス)」を扱います。

「新しいやり方に変えたくない気持ち、よくわかります(受容)。一方で、少し気になっていることもある、とおっしゃっていましたね(両面の反映)。その気になっていること、もう少し教えてもらえますか?」

 

7. 導入時の注意点とよくある失敗パターン

失敗動機づけ面接法っぽい言葉」を使うだけになる

「なるほど」「それはどう感じましたか」を連発するだけでは、相手はすぐに形式的な対応を見抜きます。動機づけ面接法は技術の前に「本当に相手の話を聴こうとしているか」というマインドセットが根本です。

 

失敗② 1回のセッションで結果を求める

動機づけ面接法は長期的な関係性の中で効果を発揮します。1回の面談で変化を求めるのは現実的ではありません。月1回の1on13ヶ月継続するだけでも、関係性は大きく変わります。

 

失敗マネージャーのスキルアップだけで終わる

動機づけ面接法コーチングが機能するためには、組織文化の変革が伴う必要があります。「何でも言える雰囲気」「失敗を責めない文化」がなければ、どれだけスキルを磨いても効果は限定的です。

 

成功のための3ステップ

  • ステップ1:まず管理職が「聴くこと」を実践するワークショップを受ける(体験的理解)
  • ステップ2:月次1on1動機づけ面接法のフレームワークを取り入れ、トライアル実施する
  • ステップ3:エンゲージメントサーベイで効果測定し、改善を継続する

 

まとめ:「引き出すリーダーシップ」が組織を変える

動機づけ面接法(動機づけ面接法)に基づくコーチングは、従業員の内発的動機を育て、エンゲージメントとウェルビーイングを同時に高める可能性を持っています。

大切なのは、「部下を変えようとする」のではなく、「部下が変わりたいと思える環境をつくる」という発想の転換です。それは、管理職やHR担当者が「答えを与える人」から「可能性を引き出す人」へと変わることを意味します。

 

あなたの組織に、本当の意味で「話を聴いてくれる人」はいますか?動機づけ面接法コーチングはそのひとつの答えかもしれません。

 

まずは今日の1on1から、ひとつだけ「開かれた質問」を試してみてください。小さな変化が、大きなエンゲージメントの芽を育てます。

Q&A:よくある質問

Q.一般社団法人コーチング心理学協会では,「動機づけ面接法」また,「動機づけ面接法コーチング」について学べますか?

はい、コーチング心理学協会では,コーチング心理学基礎講座などで紹介しております。イラスト化したりして,各講座も工夫して,楽しめるような内容にしております。ぜひ,体験してみていただければ幸甚です。

coachingpphttps://www.coaching-psych.com/event/

Q. 一般社団法人コーチング心理学協会では,「動機づけ面接法」,「動機づけ面接法コーチング」に対応できる団体研修・法人研修などを実施してますか?(新入社員・中途社員・管理職研修など)

はい,実施しております。もしご希望でしたら,お問い合わせまでご連絡をいただければ幸甚です。
各組織や会社によって異なりますので,内容に合わせて対応いたしますの。協働で研修なども可能です。
お問い合わせまでご連絡をいただければ幸甚です。

https://www.coaching-psych.com/contact/

す。

 

 

 

📌 関連キーワード

動機づけ面接法 コーチング / 従業員エンゲージメント 向上 / ウェルビーイング 職場 / 1on1 コーチング 方法 / 内発的動機づけ / 心理的安全性 組織 / マネジメント コーチング スキル / エンゲージメント サーベイ / 動機づけ面接法 組織開発 / ウェルビーイング 経営

コンテンツ一覧

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

こんな講座があります

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です