解決志向コーチングでエンゲージメントを高める方法 解決志向1on1
解決志向コーチングでエンゲージメントを高める方法
〜なぜ「問題を掘り下げる」より「未来を描く」ほうが職場が変わるのか〜
カテゴリ:組織開発・人材育成・コーチング・1on1
「うちの社員、なんとなく覇気がないんだよな…」
そんな悩みを抱えるリーダーやマネジャーの方に、今注目されているアプローチが「解決志向コーチング(Solution-Focused Coaching)」です。
従来の「なぜできていないのか」を掘り下げる問題志向とは異なり、解決志向コーチングは「どうなりたいか・どうすればうまくいくか」に焦点を当てます。この考え方が、組織のエンゲージメント(仕事への熱意・主体性)を劇的に高めることが、世界中の研究や実践事例から明らかになっています。
本記事では、解決志向コーチングの基本概念からエンゲージメントとの関係、実際の職場での使い方まで、わかりやすく解説します。
目次
- 解決志向コーチングとは何か
- エンゲージメントとは何か:なぜ今、企業が注目するのか
- 解決志向コーチングがエンゲージメントを高める「3つの理由」
- 問題志向 vs 解決志向:具体的な会話の違い
- 職場で使える解決志向コーチングの実践ステップ
- マネジャーが陥りやすい落とし穴と対処法
- よくある質問(FAQ)
- まとめ:未来に目を向けるだけで、職場は変わり始める
1. 解決志向コーチングとは何か
ルーツと基本思想
解決志向コーチング(Solution-Focused Coaching)は、1980年代にアメリカのセラピスト、スティーブ・ド・シェイザーとインスー・キム・バーグが開発した「解決志向短期療法(SFBT:Solution-Focused Brief Therapy)」を源流とします。
その後、ビジネスやコーチングの世界に応用され、今では世界中の組織開発・リーダーシップ開発の場で活用されています。
問題志向との根本的な違い
従来の「問題志向アプローチ」は、「なぜ問題が起きているのか」「誰が悪いのか」「どこに欠陥があるのか」を分析します。これは原因追究には有効ですが、人の心理的安全性やモチベーションには逆効果になることがあります。
一方、解決志向コーチングは次の問いを中心に据えます。
- 「どうなりたいですか?(ゴールの明確化)」
- 「うまくいっているときは、何が違いますか?(例外の発見)」
- 「10点満点で今は何点?では1点上がったら何が変わりますか?(スケーリング)」
この「未来・強み・可能性」に焦点を当てるスタンスこそが、解決志向コーチングの最大の特徴です。
解決志向コーチングの4つのコアスキル
- ゴール設定(Well-Formed Outcome):「どうなりたいか」を具体的・肯定的・本人がコントロールできる形で描く
- 例外探し(Exception Finding):「すでにうまくいっている場面」を見つけ、そこにある強みを活用する
- スケーリング(Scaling):数値(1〜10点)で現在地と次の一歩を可視化する
- ミラクル・クエスチョン:「もし明日、奇跡が起きてすべて解決していたら、何が違いますか?」と問い、理想の状態を鮮明に描かせる
2. エンゲージメントとは何か:なぜ今、企業が注目するのか
「エンゲージメント」とは、社員が仕事や組織に対して持つ「主体的な熱意・没頭・貢献意欲」のことです。単なる「仕事の満足度」や「やる気」とは異なり、自発的に組織の目標に向かって動く状態を指します。
エンゲージメントが低いと何が起きるか
ギャラップ社の調査(State of the Global Workplace)によると、世界の従業員のうち「積極的にエンゲージされている」のはわずか23%程度とされています。日本に至っては5〜6%という衝撃的な数字が示されています。
エンゲージメントが低い状態では、次のような問題が生じます。
- 離職率の上昇・優秀人材の流出
- 生産性の低下・ミスの増加
- 組織内のコミュニケーション不全
- イノベーションの停滞・変化への抵抗感
エンゲージメントを高める「3要素」
心理学者のウィリアム・カーンが提唱したモデルでは、エンゲージメントは以下の3要素に支えられています。
- 意味感(Meaningfulness):自分の仕事に意味・価値を感じられるか
- 安全感(Safety):失敗や発言を恐れず自己表現できるか
- 可用性(Availability):集中するためのリソース(時間・エネルギー・スキル)があるか
実は、解決志向コーチングはこの3要素すべてに直接アプローチします。次のセクションで詳しく解説します。
3. 解決志向コーチングがエンゲージメントを高める「3つの理由」
理由① 強みにフォーカスすることで「意味感」が生まれる
解決志向コーチングでは、「あなたの弱みを直す」のではなく「あなたがうまくいっているときに何をしているか」を探ります。これにより、社員は自分の強みや価値を再発見し、仕事に意義を感じやすくなります。
ポジティブ心理学の研究でも、強みを活かせていると感じる社員は、そうでない社員と比べてエンゲージメントが6倍高いというデータがあります(Gallup, 2022)。
理由② 非評価的な問いが「安全感」をつくる
解決志向コーチングの問いは「あなたは何が悪かったのか?」ではなく「どうすればうまくいくか?」です。この姿勢は、心理的安全性(Psychological Safety)を生み出します。
Googleが行った大規模な職場研究「プロジェクト・アリストテレス」でも、高パフォーマンスチームの最大の要因は「心理的安全性」であることが示されました。解決志向コーチングのアプローチは、まさにこの心理的安全性を日常的な会話の中で育てます。
理由③ 小さな一歩の設計が「自己効力感」を育て可用性を高める
スケーリングクエスチョン(例:「今7点なら、8点にするために明日できることは何ですか?」)は、大きな変革ではなく「次の小さな一歩」を設計させます。これにより、達成感が積み重なり、自己効力感(Self-efficacy)が高まります。
自己効力感が高まると、困難な課題にも前向きに取り組めるリソース(可用性)が生まれます。これこそがエンゲージメントの根幹です。
4. 問題志向 vs 解決志向:具体的な会話の違い
実際の職場での会話を比較してみましょう。部下のAさんが「最近、営業の数字が出ていない」という状況での上司の反応です。
| 問題志向アプローチ(従来型) | 解決志向アプローチ |
| 「なんで数字が取れないの?」 | 「数字が出ているとき、何が違う?」 |
| 「もっと訪問件数を増やして」 | 「どんな状況なら自信を持って動ける?」 |
| 「前期はできてたでしょ、何が悪くなった?」 | 「今の取り組みで、うまくいってる部分はある?」 |
| 「このままじゃ困るよ」 | 「理想の状態になったとき、何が変わっていると思う?」 |
| 【結果】防御的になり、言い訳が増える | 【結果】主体性が生まれ、自分で行動を考える |
この違いは小さいようで、積み重なると組織文化そのものを変えます。問題を指摘し続けるリーダーの下では「失敗を恐れる文化」が育ち、解決を一緒に考えるリーダーの下では「挑戦する文化」が生まれます。
5. 職場で使える解決志向コーチングの実践ステップ
ここでは、1on1ミーティングや日常の対話で使える実践的なステップを紹介します。
STEP 1:ゴールを明確にする(5分)
まず「今日の面談で、どうなったらいいですか?」と聞きます。「問題を解決したい」ではなく「どうなりたいか」を具体的に引き出します。
ポイント:ゴールは「肯定的な言葉で・本人がコントロールできる範囲で・具体的に」なっているか確認しましょう。
STEP 2:例外を探す(10分)
「問題が起きていないとき、何が違いますか?」「過去にうまくいったとき、あなたは何をしていましたか?」と問います。
これにより、「問題は常に起きているわけではない」という事実に気づき、自分の中にある解決のリソースを発見できます。
STEP 3:スケーリングで現在地を確認する(5分)
「理想の状態を10点とすると、今は何点ですか?」「その点数なのは、なぜですか?(どんな強みがあるから?)」と続けます。
重要なのは「なぜその点数か」という問いで、すでにある強みや工夫を引き出すことです。「0点ではない理由」を言語化させることが鍵です。
STEP 4:次の一歩を設計する(5分)
「1点上がったとき、何が変わっていると思いますか?」「そのために明日できる最小の行動は何ですか?」と問います。
大きな変化ではなく、「明日できる一つの小さな行動」に絞ることで、実行可能なアクションが生まれます。
6. マネジャーが陥りやすい落とし穴と対処法
落とし穴① 「解決策を提案したくなる」
経験豊富なマネジャーほど「こうすれば解決する」とアドバイスしたくなります。しかし、解決志向コーチングでは、答えを渡すのではなく、本人が答えを発見できるよう「問い」で引き出します。
対処法:「私ならこうする」という言葉を使う前に、「あなたはどう思う?」と一度返す習慣をつけましょう。
落とし穴② 「なぜ」を使いすぎる
「なぜ」という問いは原因追究には有効ですが、「なぜできないの?」という問いは防御反応を引き起こします。解決志向コーチングでは「なぜ」より「何が・どうすれば・どんなとき」を多用します。
対処法:「なぜ失敗したの?」→「次はどうすればうまくいくと思う?」に言い換える練習をしましょう。
落とし穴③ 「問題の深掘りが共感だと思っている」
「それは大変だったね。で、なぜそうなったの?」と続けると、相手は問題にのめり込みます。共感は大切ですが、そこから「どうしたいか」に転換するのがコーチの役割です。
対処法:「それは大変でしたね(共感)。その経験から、あなたはどうなりたいと思いましたか?(転換)」という流れを習慣にしましょう。
7. よくある質問(FAQ)
- 問題が深刻な場合でも解決志向コーチングは使えますか?
- はい、使えます。ただし、心理的な危機状態(うつ・パニックなど)の場合は、専門家への連携が優先です。解決志向コーチングはあくまでも「機能している状態をより良くする」アプローチです。深刻な問題が背景にある場合でも、「では、少しでも楽になったら何が変わる?」という問いから入ることで、前向きな方向性を見出す助けになります。
- 部下から「問題の話を聞いてほしい」と言われたら?
- まず十分に聴きます。解決志向コーチングは「問題の話を遮断する」アプローチではありません。「よく話してくれましたね。その話を聴いて、あなたにとってどうなることが大事だと感じましたか?」と、聴いた上で未来に転換します。
- 解決志向コーチングを学ぶには何から始めればいいですか?
- まずは「例外探し」の習慣から始めるのが最も導入しやすいです。日常の会話で「最近うまくいったことは?」「そのとき何が良かった?」と聞くだけで、解決志向の会話が始まります。まず,解決志向コーチングなどの講座で学ぶことをおすすめ致します。
よくある質問(FAQ2)
Q1.一般社団法人コーチング心理学協会では,「解決志向アプローチ」や「エンゲージメント」の対応について学べますか?
はい、コーチング心理学は,解決志向コーチング講座などで,学ぶことが出来ます。科学的・現代的な視点で解決志向とエンゲージメントについて実践・研究を行っています。各講座も工夫して,楽しめるようなツールやアプリなどを活用しています。ぜひ,体験してみていただければ幸甚です。
Q2. 一般社団法人コーチング心理学協会では,「解決志向アプローチ」,「エンゲージメント」に関する団体研修・法人研修などを実施してますか?(新入社員・中途社員・管理職研修など)
はい,実施しております。もしご希望でしたら,お問い合わせまでご連絡をいただければ幸甚です。
各組織や会社によって異なりますので,内容に合わせて対応いたしますの。協働で研修なども可能です。
お問い合わせまでご連絡をいただければ幸甚です。
https://www.coaching-psych.com/contact/
8. まとめ:未来に目を向けるだけで、職場は変わり始める
解決志向コーチングは、特別なスキルや長いトレーニングがなくても、今日の会話から取り入れられます。
本記事のポイントを振り返ります。
- 解決志向コーチングは「問題の原因」ではなく「望む未来と強み」にフォーカスする
- エンゲージメントの3要素(意味感・安全感・可用性)すべてに働きかける
- 問題志向の会話を解決志向に変えるだけで、部下の主体性が変わる
- 1on1や日常会話で使える4ステップ(ゴール・例外・スケーリング・次の一歩)を実践する
- まずは「例外探し」の一言から始めることが、最も簡単な第一歩
「あなたが最近うまくいったことは何ですか?」
この一言から、あなたのチームのエンゲージメントを高める旅が始まります。問題を直す前に、すでにある「うまくいっている部分」を一緒に探してみてください。それだけで、職場の空気は確実に変わり始めます。
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投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。









