コーチング心理学とは 入門編

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コーチング心理学とは何か
定義
コーチング心理学は、心理学の理論・研究・実証知見を基盤に、個人や組織のパフォーマンス、学習、成長、ウェルビーイングを高めることを目的とする応用心理学の一分野です。
コーチング心理学は、マーティン・セリグマンのポジティブ心理学の影響を受け、コーチング応用することを提唱することから始まり、心理学的な視点で、エビデンスに基づいた研究と実践活動がスタートしたのが始まりです。その後、国際コーチング心理学会が創設され、
国際コーチング心理学会(ISCP)の創設者の一人であるStephen Palmerは、コーチング心理学を「心理学に基づいた理論的かつ実証的なコーチングの実践」と定義しています。
特徴
定義
-
Stephen Palmer(国際コーチング心理学会創設者)
「コーチング心理学とは、心理学に基づいた理論的かつ実証的なアプローチを用いて、人々のパフォーマンス、学習、自己成長、ウェルビーイングを促進する応用心理学の一分野である」
-
O’Riordan & Palmer (2021, Introduction to Coaching Psychology)
コーチング心理学は、エビデンスに基づいた心理学理論・研究成果を土台にした実践領域であり、コーチとクライエントの関係性、アセスメント、モデル、介入技法を含む体系的な学問とされる。 - Anthony Grant(コーチング心理学の提唱者)
コーチング心理学とは、「行動科学(behavioral science)の体系的応用」によって、人生経験・仕事上の成果・ウェルビーイングの強化を図るものである
- 科学的根拠に基づく
認知行動療法、ポジティブ心理学、解決志向アプローチなど心理学的理論を背景に持つ。 - 目的
- パフォーマンス向上
- レジリエンス強化
- ストレスや不安の対処
- 自己効力感や自己受容の促進
- 応用範囲
- 組織(リーダーシップ開発・人材育成)
- 個人(キャリア形成・ライフデザイン)
- 教育(学習支援・動機づけ向上)
- 健康(ウェルビーイング、メンタルヘルス予防)
関連する心理学領域
- ポジティブ心理学(Seligman, 2000): 強み・希望・楽観性の活用
- 認知行動療法(CBT): 認知と行動を調整して自己効力感を高める
- 解決志向療法とコーチング(ソリューションフォーカスド・アプローチ): 解決志向で行動変化を促す
- 人間性心理学: 自己実現と成長志向
代表的な文献
| 文献名 | 著者 | 概要 |
|---|---|---|
| Introduction to Coaching Psychology (2021)
コーチング心理学ガイドブック |
Siobhain O’Riordan & Stephen Palmer | コーチング心理学の理論・モデル・実践を網羅する入門書 |
| Cognitive Behavioural Coaching in Practice (2022, 2nd Ed.) | Michael Neenan & Stephen Palmer | 認知行動的アプローチに基づく実践的手法とエビデンスを紹介 |
| コーチング心理学ハンドブブック2版 (2018) | Palmer & Whybrow | 未来の働き方に必要なレジリエンス・創造性・つながりを探究 |
| 『結果を出す人はどんな質問をしているのか?』(2024) | 徳吉陽河 | 質問力とコーチング心理学・ポジティブ心理学の実践を融合 |
| コーチング心理学入門 | 石井利江・松田チャップマン世理子 著 | |
| コーチング心理学概論 | 西垣悦代 ら著 |
まとめ
コーチング心理学とは、**「心理学の科学的根拠を活用し、人々の可能性を引き出し、成長と幸福を支援する実践」**です。
従来のカウンセリングが問題の解決や治療に焦点を当てるのに対し、コーチング心理学は「より良く生きること」「強みの活用」「ポジティブな未来構築」に重点を置きます。

コーチング心理学の関連領域との比較表
| 領域 | 定義 | 焦点 | 活用される理論・技法 | コーチング心理学との関係 |
|---|---|---|---|---|
| コーチング心理学 | 心理学の理論とエビデンスを応用したコーチング実践 | パフォーマンス向上・成長・ウェルビーイング | 認知行動療法、ポジティブ心理学、解決志向アプローチ、人間性心理学 | 中心的領域 |
| カウンセリング心理学 | 心理的困難や葛藤の解決を支援する心理学領域 | 問題解決・心理的サポート | カウンセリング技法全般 | コーチング心理学は「成長・発展」に重点を置き、治療寄りのカウンセリングと区別 |
| ポジティブ心理学 | 強みや幸福を科学的に研究する心理学分野(Seligman, 2000) | 強み・希望・楽観性・意味 | PERMAモデル、強みアプローチ | コーチング心理学の理論的基盤の一つ |
| 認知行動療法(CBT) | 認知と行動を変えることで心理的問題を軽減 | 認知の歪み修正・行動変容 | REBT, 認知再構成, 行動実験 | 「認知行動コーチング(CBC)」として応用 |
| 組織心理学/産業心理学 | 職場や組織の心理を研究 | モチベーション・リーダーシップ | 組織開発理論 | 組織内コーチングに応用される |
投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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