地震災害に対するPRISMとコーチング心理学の対応法

地震災害に対するPRISMとコーチング心理学の対応

Tomorrowmind(これからの生き方)』とコーチング心理学を心理的資源を防災・減災に応用する

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このたび、熊本地震により被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げます。

被災された皆様の安全と、一日も早い復旧・復興を心よりお祈り申し上げます。

当協会といたしましても、被災された皆様のお力になれるよう、私たちにできる支援や対応について積極的に取り組んでまいりたいと考えております。

Tomorrowmind(これからの生き方)』では、変化や逆境に適応するための心理的資源として、PRISMという5つの要素が提示されています。これらは職場だけでなく、大規模な地震災害のような危機的状況にも応用できる考え方です。PRISMは、「レジリエンス・認知的敏捷性」「意味・重要感」「迅速な信頼関係」「プロスペクション(未来予測)」「創造性・イノベーション」の5つの要素で構成されています。
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この記事のポイント

PRISM5要素を地震災害の備え・対応・復興に応用する枠組みを解説

・発災前・発災直後・復旧復興期の3フェーズごとの実践ポイントを整理

・個人だけでなく組織・自治体の防災マネジメントへの応用も紹介

PRISMに基づく地震災害への対応

PRISM5つの要素は、それぞれ地震災害時の異なる局面に対応しています。以下の表は、各要素がどのような対応や実践例に結びつくかを整理したものです。

 

PRISM要素 地震災害時の対応 実践例
PProspection

(未来予測)

被害の拡大を予測し、先回りして備える 避難経路の確認、家族との連絡方法の決定、非常用品の備蓄、BCP(事業継続計画)の策定
RResilience &

Cognitive Agility

(レジリエンス・認知的敏捷性)

状況の変化に柔軟に適応する 避難所の変更への対応、最新情報に基づく判断、ストレスマネジメント
IInnovation &

Creativity

(創造性・イノベーション)

限られた資源の中で新しい解決策を生み出す 身近な物資の代用品活用、SNSを活用した支援連携、地域資源の有効活用
SRapid Rapport

(迅速な信頼関係)

支援ネットワークを素早く構築する 近隣住民との助け合い、自治体・医療機関・ボランティアとの連携、高齢者や要配慮者の安否確認
MMeaning &

Mattering

(意味・重要感)

希望や役割意識を維持する 家族を守る使命感、地域復興への参加、支援活動への参画

 

災害フェーズごとのPRISMの活用

防災・減災の取り組みは、発災前・発災直後・復旧復興期という時間軸で捉えると、PRISMの各要素をより効果的に活用できます。

1.発災前(Preparedness

発災前は、災害への備えを充実させる段階です。

  • Prospection:ハザードマップの確認、避難計画の作成、住宅の耐震化を進める
  • Resilience:防災訓練や心理教育を通じて、災害への対応力を高める
  • Rapid Rapport:地域コミュニティとの関係を築き、顔の見えるつながりを形成する
  • Meaning:家族や地域を守るという目的意識を共有する
  • Innovation:デジタル防災ツールや新しい備蓄方法を積極的に取り入れる

2.発災直後(Response

発災直後は、人命を守るための迅速な対応が求められます。

  • 冷静に安全を確保する(Resilience
  • 正確な情報を収集・共有する(Rapid Rapport
  • 状況に応じて柔軟に避難行動を変更する(Cognitive Agility
  • 限られた資源を工夫して活用する(Innovation

3.復旧・復興期(Recovery

復旧・復興期は、生活と地域を再建する段階です。

  • 喪失体験から少しずつ回復し、心身の健康を取り戻す(Resilience
  • 地域や職場とのつながりを再構築する(Rapid Rapport
  • 自分自身の役割や生きがいを見いだす(Meaning
  • 将来の災害に備えて改善策を取り入れる(ProspectionInnovation

 

3つのフェーズとPRISM要素の対応関係を一覧にすると、以下のようになります。

 

フェーズ 概要 PRISM要素ごとの実践ポイント
発災前

Preparedness

災害への備えを充実させる段階 Prospection:ハザードマップの確認、避難計画の作成、住宅の耐震化

Resilience:防災訓練・心理教育による対応力の強化

Rapid Rapport:地域コミュニティとの関係構築

Meaning:家族・地域を守る目的意識の共有

Innovation:デジタル防災ツールや新しい備蓄方法の導入

発災直後

Response

人命を守るための迅速な対応が求められる段階 Resilience:冷静な安全確保

Rapid Rapport:正確な情報の収集・共有

Cognitive Agility:状況に応じた柔軟な避難行動の変更

Innovation:限られた資源の工夫した活用

復旧・復興期

Recovery

生活と地域を再建する段階 Resilience:喪失体験からの回復、心身の健康の回復

Rapid Rapport:地域・職場とのつながりの再構築

Meaning:自分自身の役割や生きがいの発見

Prospection・Innovation:将来の災害に備えた改善策の導入

 

組織・自治体への応用

企業や自治体では、PRISMを防災マネジメントに次のように活用できます。

  • PProspection):リスク評価、シナリオプランニング、BCPの策定・更新
  • RResilience):危機対応訓練、心理的支援、リーダー育成
  • IInnovation):災害DXAI・ドローン・デジタル地図などの活用
  • SRapid Rapport):行政・医療・企業・地域住民との連携体制の構築
  • MMeaning):復興ビジョンの共有と住民参加型の意思決定の推進

コーチング心理学の視点から見るPRISM

PRISM5要素は、コーチング心理学が培ってきた対話技法や支援モデルと重ね合わせることで、災害支援の現場でより具体的な行動に落とし込むことができます。ここでは、各要素とコーチング心理学の主要な技法・視点との接点を整理します。

Prospection × 未来志向の問いかけ

コーチングでは、クライアントが望む未来を具体的にイメージし、そこから逆算して行動を設計する「未来志向の問い」を重視します。WOOP法(WishOutcomeObstaclePlan)のように、望む結果と障害を事前に言語化しておく手法は、避難計画やBCP策定といったProspectionの実践と直接つながります。「もし避難所が使えなかったら、次にどうするか」を対話の中で具体化しておくことが、発災後の迷いを減らします。

Resilience & Cognitive Agility × リフレーミングと認知的柔軟性支援

コーチング心理学における認知的柔軟性の支援は、出来事そのものではなく、出来事の捉え方(フレーム)に働きかける点に特徴があります。被災という圧倒的な出来事に直面したとき、コーチは評価や助言を急がず、まず状況を言語化する手助けをし、そのうえで「今できる小さな一歩は何か」を共に探ります。ソリューション・フォーカスト・コーチングの発想は、被害の大きさに圧倒されず、対処可能な次の行動に焦点を当て直すレジリエンス支援に応用できます。

Innovation & Creativity × 強みベースコーチング

強みベースコーチングは、欠けているものではなく、すでにその人・その組織が持っている資源や強みに光を当てるアプローチです。限られた物資や人手の中で工夫を生み出すInnovationの実践は、まさに「今ある強みをどう組み合わせるか」という強みベースの問いから生まれます。コーチが「これまでの経験の中で、似たような制約を乗り越えた工夫はありますか」と問うことで、当事者自身の中にある創造的な解決策を引き出すことができます。

Rapid Rapport × 動機づけ面接(OARS

迅速な信頼関係の構築には、動機づけ面接(Motivational Interviewing)で用いられるOARS(開かれた質問・是認・聞き返し・要約)が有効です。特に「聞き返し」と「是認」は、初対面であっても短時間で「この人は自分の話を理解しようとしている」という安心感を生み出します。混乱した状況で情報や支援を求めている被災者・住民との対話において、評価や助言よりも先にまず聞き返し、相手の言葉を要約して返すことが、信頼関係構築のスピードを高めます。

Meaning & Mattering × ナラティブコーチング

意味・重要感の回復には、ナラティブコーチングの視点が特に有効です。被災という体験を「奪われた物語」としてだけでなく、「自分がどのような役割を果たしたか」「何を大切にして行動したか」という物語として語り直すプロセスは、強みの内在化(DiscoverNameNarrateInternalizeContribute5ステップ)と重なります。復興期において、支援活動への参画や地域での役割の再発見を通じて、被災体験そのものに新しい意味づけを与えることが、心理的な回復と成長を後押しします。

コーチング心理学から見た実践のポイント

ProspectionWOOP法などで「望む未来」と「障害」を事前に言語化しておく

Resilience:評価を急がず、対処可能な次の一歩に焦点を当て直す

Innovation:強みベースの問いで、当事者自身の中にある工夫を引き出す

Rapid RapportOARS(開かれた質問・是認・聞き返し・要約)で短時間の信頼構築を図る

Meaning:ナラティブコーチングの視点で、被災体験に新しい意味づけを与える

まとめ

PRISMは、単に災害への耐性を高めるための考え方ではありません。地震という極めて不確実な状況の中でも、将来を見据えて備え、状況の変化に柔軟に適応し、人とのつながりを維持し、自分の役割や生きる意味を見失わず、新しい解決策を生み出すことで、個人・組織・地域が災害から回復する力だけでなく、災害を経験した後にさらに成長する力を育むことができます。

このPRISMアプローチは、『Tomorrowmind(これからの生き方)』で示されている5つの心理的資源を、地震災害への備えと対応、そして復興の各段階へ応用した実践的なフレームワークです。さらに、WOOP法、解決志向コーチング、強みベースコーチング、動機づけ面接のOARS、ナラティブコーチングといったコーチング心理学の技法を重ね合わせることで、防災・減災の取り組みは「備えるべきこと」の羅列にとどまらず、一人ひとりが主体的に未来を描き、行動を選び取っていくための対話の枠組みへと発展します。

よくある質問(FAQ

  1. PRISMとは何の略ですか?
  2. PRISMは、Prospection(未来予測)、Resilience & Cognitive Agility(レジリエンス・認知的敏捷性)、Innovation & Creativity(創造性・イノベーション)、Rapid Rapport(迅速な信頼関係)、Meaning & Mattering(意味・重要感)の頭文字を組み合わせた5つの心理的資源のモデルです。
  3. PRISMは職場のメンタルヘルス以外にも使えますか?
  4. はい。もともと職場における変化への適応力を高める枠組みとして提示されていますが、地震災害のような危機的状況への備えと対応、復興のプロセスにも応用できる汎用性の高い考え方です。
  5. 個人でPRISMを防災に活かすには何から始めればよいですか?
  6. まずは発災前のProspection(未来予測)から始めるのが有効です。ハザードマップの確認や避難計画の作成、家族との連絡方法の決定など、先回りした備えが土台になります。
  7. 組織や自治体がPRISMを防災マネジメントに取り入れるメリットは何ですか?
  8. リスク評価やBCPの策定(Prospection)だけでなく、危機対応訓練(Resilience)、災害DXの活用(Innovation)、多機関連携(Rapid Rapport)、復興ビジョンの共有(Meaning)まで、備え・対応・復興の全段階を体系的にカバーできる点がメリットです。
  9. PRISMとコーチング心理学はどのように結びつきますか?
  10. PRISMの各要素は、コーチング心理学の具体的な技法と対応づけることができます。例えばProspectionWOOP法、Resilienceはソリューション・フォーカスト・コーチング、InnovationMattingは強みベースコーチングやナラティブコーチング、Rapid Rapportは動機づけ面接のOARSと結びつきます。これにより、抽象的な心理的資源を、対話の中で実践できる具体的な問いかけや聞き方に落とし込むことができます。

 

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投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』翻訳書『Tomorrowmind日本語版 これからの生き方』『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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