1on1ミーティング, コーチング, コーチング心理学の違いとは? 認定資格の参考に

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いくつかの法人研修などで、「1on1ミーティングを職場で推進されるのですが、何やってよいかわかりません」という質問をいただくことがあり、あらためて、1on1、コーチング、コーチング心理学の視点でまとめてみました。ここでは、それぞれのアプローチにて探究していきたいと思います。

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1on1ミーティング, コーチング, コーチング心理学の違いを分かりやすく表にまとめてみました👇

項目 1on1ミーティング コーチング コーチング心理学
目的 日常のコミュニケーション・状況共有 相手の目標達成・行動変容の支援 コーチングの効果の理論的・心理的背景の探究
対象関係 上司と部下などの職場内ペア コーチとクライアント(上下関係でない場合も) 対象は研究・実践者。対人関係全般に応用可能
手法 傾聴・フィードバック・状況報告など 質問・リフレクション・ゴール設定 ポジティブ心理学・動機づけ理論・行動変容理論など
時間軸 短期的な状況確認が中心 中長期的な成長や変化を見据える 長期的な成長、自己効力感の形成が焦点
学術性 実践的。理論への依拠は少なめ 経験的、実践的かつ体系的、理論やエビデンスが明確でないケース エビデンス、ナラティブに基づく理論や実践を重視
活用される分野 企業の人材育成やマネジメント 企業・個人向けの成長支援/キャリア・ライフコーチング 教育・組織開発・メンタルヘルスなど幅広い分野
特徴的な問いかけ 「最近どう?」
「困っていることある?」
「どうなりたい?」
「何があなたを止めてる?」
「この行動の背後にはどんな思考や感情が関わっていますか?」
「どんな影響がありましたか?」


1on1のまとめ

目的もスタンスも異なりますが、組み合わせて活用するとより相乗効果が期待できる

それぞれの対応を使い分けしていくのが良いですが、1on1は、コーチングと比べて、そもそも目的がすくない雑談的な要素が含まれていると捉えてもよいかもしれません。

目的を伴うコーチングでは、より効果を求めるケースがあり、コミュニケーションを楽しむ点が、やや薄れてしまう可能性がありますが、目的を持って話すことで、時間の効率、明確な効果的な伝達になりそうです。

業務と日常会話の使い分けの意識を持っていると良いと思います。

 

1on1ミーティング、コーチング、コーチング心理学の違いをさらに深堀り

さらに、詳細に深堀りしてみましょう。

以下に1on1ミーティング、コーチング、コーチング心理学の違いをさらに詳細に比較した表をご用意しました。構造や目的、使われるスキル、理論背景まで多角的に整理しています👇

観点 1on1ミーティング コーチング コーチング心理学
主目的 上司と部下の信頼関係構築、情報共有、業務改善 対話によって相手の内面を引き出し、自発的な目標達成や行動変容をサポート コーチングの効果を心理学的・科学的に分析、理解し、実践に活かす
典型的な関係性 上司(ファシリテーター)と部下(主に受け手) コーチとクライアント(対等なパートナー関係) 科学的実践者、理論と実践者(体系的な理解・応用を前提)
対話の焦点 日常業務、課題、気づきの共有、エンゲージメント向上 本人の内的リソースや価値観にアクセスし、自己発見・行動を促進 動機づけ理論、変容学習理論、自己効力感、成長マインドセットなどに基づいた介入
使用されるスキル 傾聴、問いかけ、状況確認、フィードバック 傾聴・承認・質問・リフレクション、フィードバック、フィードフォワードなど 観察、傾聴、質問、承認、リフレクションのほか、各心理療法、メンタルトレーニングを活用する。

ベストプラクティス、ナラティヴアプローチ、心理的アセスメント、EBPM(Evidence-Based Practice)、行動科学、認知行動療法的要素などを含む

時間のスパン 定期的(週1回や月1回)、1回あたり30分~1時間程度 目標達成までのプロセス(中長期)。複数回のセッションが基本 長期的視点での研究と応用(数ヶ月~数年にわたる成長支援)
理論的根拠 明確な学術的理論はなく、マネジメント手法の一部として実践的に発展 一般的なコミュニケーション。スポーツ、ビジネスなど領域によって異なる。 主にコーチング心理学、ポジティブ心理学、スポーツ心理学、発達心理学、組織心理学、教育心理学、社会心理学の成果がベース
活用シーン 組織内の人材育成、パフォーマンス管理、リテンション向上 キャリア開発、ライフコーチング、リーダー育成など 教育現場、組織開発、公共政策、メンタルヘルス支援など、社会的応用領域全般
評価方法 主に当事者間の満足度・継続有無・離職率などの定性的指標 本人の行動変容・成果の達成度、フィードバック 観察、行動分析、実証研究、心理尺度、行動変容の定量評価(エビデンス重視)、物語の分析(質的分析)

 

「1on1ミーティング」「コーチング」「コーチング心理学」それぞれのメリット・デメリット

「1on1ミーティング」「コーチング」「コーチング心理学」それぞれのメリット・デメリットを比較した表です👇

観点 1on1ミーティング コーチング コーチング心理学
メリット ・心理的安全性の確保に効果的

・上司と部下の信頼関係を構築

・現場で即時対応しやすい

・自発的な成長を促す

・対話を通じた気づきと行動の明確化

・目的意識の強化に貢献

・エビデンスに基づいて実施するため、効果の確率は高くなる。安心して、実行できる。
・動機づけや行動変容の仕組みを深く理解できる・科学的支援が可能
デメリット ・雑談や業務確認で終わるリスクあり

・上司の関与スキルに差が出る

・フィードバックが一方的になりがち

・目的がないことがあるので、充実感を得られにくい

・目的意識が必要

・傾聴・質問スキルや信頼関係構築に時間がかかる

・効果が見えるまでに時間が必要なことも

・やや心理学的な知識と学びが必要。

・多少専門的知識や研修が必要

・レベルが高いケースも

1on1ミーティングの実践方法(心理学や心理療法を取り入れた応用した方法を紹介)

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一般社団法人コーチング心理学協会では、新しい効果的な1on1ミーティングの実践方法を常に検討しており、より詳細かつ実践的にステップごとに整理しました。

ただし、実施方法や効果は組織文化や風土によって異なる場合がございます。そのため、組織特性に配慮した効果的なアプローチを実践していただくためにも、団体・法人として研修をご希望の際は、お気軽にお問い合わせください。皆さまと協力・協働しながら有意義な機会を創出できましたら幸いです。

コーチング心理学で考える1on1の実践とは?

コーチング心理学や対人関係の心理療法などを参考にしたモデルをを参照に、単なる会話の1on1ではなく、より効果的な視点を取り入れたアプローチを活用しています。

ステップ 実践内容 具体的な行動例・テクニック 補足ポイント
① 目的の明確化 1on1の意義を部下と共有する

心理的安全性の確保

コラボレーション・アプローチ(協働で成長する意識)

1on1には目的がない場合がありますが、ある程度、目的を明確した上で対応することが望ましいです。

なくても否定せず。何かしら目的の可能性を探ります

「この時間は、お互いが成長するためのもの」として、協働意識、コラボレーションを意識します。

どんなことでも話しても、許されることを相手に伝える。

現在における自分との「共通点」を探す。

また、「共感できる点」を積極的に見つける。

評価面談との違いを明確にし、安心感を与える。

上から目線ではなく、お互いの成長のために実施する意識を持つ。
(マウントではなく、協働関係・協力関係を意識する。

常に対話について心理的安全性を意識して対応する。

② 定期的な実施 スケジュールを固定し継続的に行う 毎週/隔週など、30分〜60分で設定。Outlookなどで事前に予定化 強要はせず、継続性が信頼構築につながる
③ 議題の準備 双方が話したいテーマを持ち寄る 事前に「話したいこと3つ(ベスト3法)」などを共有。

短時間で終わる内容とする。

コミュニケーションに関わるアイスブレイク集など

予め、質問などを用意したり、
1on1シートをなどの活用もできます。

議題がない場合は、「最近の気づき」「気になっていること」「良かったこと」などから始める(ポジティブ感情を高め、1on1への参加意欲を高める。)
④ 対話の進行 心理的安全性の確保。

傾聴・共感・質問を中心に進める

・信頼関係づくりを優先。
・愚痴も、弱音も聞く。相手をフォーカス。
・7:3で部下が多く話す構成に

・前向きな視点で会話を勧めていきます。
・沈黙も尊重する
・どんなことを言っても相手を尊重し、許す対応を行う。(心理的安全性の確保)

アクティブリスニング(うなずき・相槌・繰り返し)を意識

相手のことと最大限の尊重し、相手の立場を理解した対応を忘れないようにする。

⑤ フィードバックからフィードフォワード 肯定的解釈、ポジティブ+改善提案をセットで伝える ・相手の言葉を肯定的な解釈をして伝える。
・フィードバック、フィードフォワードの実施。
・洞察と振り返りを活用し、気づきを深め、フィードフォワードにつなげる。
・原則的にポジティブフィードバックに心がける。・必要に応じて、「SBIモデル(Situation→Behavior→Impact)
・Iメッセージで伝える。・前向きな言葉で返す。・相手の視点をけして忘れないこと・目標や希望がなくても、思い当たるような可能性についてきく
「できていない」のではなく、そこまで、「できている点」を尊重し聞く。それから、お互いに「改善点」を検討する。

最後に「期待」を込める。

☓「ポジティブになりなさい。」「とりあえず、なんとかなる」などの押し付けはしないで、あくまでもポジティブなことにきづけるようにする。

⑥ アクション設計 次回までの行動や目的をもつことを意識する。 「次回までに何をやってみる?」と問いかけ、本人の言葉でまとめてもらう。

課題の実行が必要であれば、「アクションプラン(チャレンジプラン)」を検討し対応する。

小さな行動でもOK。成功体験の積み上げが自信につながる

成功体験につながるようにする。

できないようなことはしない。

⑦ 振り返りと記録 対話内容と気づきを記録・共有する ・「今日の気づいたことはなんですか?」と振り返りに聞き、記憶にとどめる。

・「語れていなかったこと」「語っておきたかったこと」も聞く

継続的な成長支援と、次回の対話の質向上に役立つ

記憶の終末効果を活用して、大事なことを記憶する。

語っていなかったことなどを聞くことで、本音を聞けることができる。


📌ポイント:目的、人・組織の特性に応じて変える必要があります。

  • あくまでも、お互いの成長と学びにつなげ、協力・協働感覚を意識する。日本人の場合、相手に迷惑をかけたくない文化、支援を受けることへの恥を知らず知らずに意識してしまうケースがあるため、その点を考慮する。
  • 相手との共通点、共感できるポイントを見つける。
  • 相手に対して、好奇心を持って対応する。
  • 相手の言葉を肯定的解釈し、相手に伝える。
  • ポジティブなことへの強制はしない。ポジティブなことに自然に気づいてもらう対応を行う。
    (単なる ☓前向きになりましょう。☓楽観的にいきましょうなど、ポジティブハラスメントになる)
  • 雑談も戦略的に:アイスブレイクとして「最近ハマってることある?」などから入ると自然に話しやすくなります。
  • 部下主導を促す:「今日は何から話したい?」と主導権を渡すことで主体性が育ちます
  • 信頼の貯金を意識:成果が出ていない時こそ、承認や共感を丁寧に
  • 弱音、愚痴、ネガティブな会話であっても、すべて受け止めて聞く態度を持つ。(心理的安全性)
  • 自分と価値観が一致していないことがあっても否定しないで受け止める。
  • 会話において、人は、自己中心的になりやすいことを理解しておく。(相手にフォーカス)
  • こちらから、積極的に声を掛け、コンタクトを取ること。
  • すべて、強要せず、コミュニケーションを楽しむ視点を持つ
  • 目標・目的・希望がなくても、否定せず、思いつく可能性をきく。


1on1・コーチング・コーチング心理学をステップアップ

次に、新人育成、リーダー育成において1on1・コーチング・コーチング心理学をステップアップ的に実践に展開する流れをまとめてみました。新人の成長段階に合わせて、段階的かつ体系的に支援できる構成にしています

🔰 ステップ1:信頼関係と心理的安全性の構築(1on1ベース)

  • 実施内容:週1回の1on1(20〜30分)、雑談も含めたリラックスした対話
  • 目的:不安・疑問の可視化、離職リスクの軽減、感情の言語化の促進
  • キーフレーズ例
    • 「最近どう?」
    • 「困っていることはある?」
  • ここでのコツ:まずは“話せる場”として認知されることが大切です

🧭 ステップ2:自己認識と内的モチベーションの刺激(コーチング導入)

  • 実施内容:テーマを絞った対話(キャリア観、目標、自分の強みなど)
  • 目的:「こうなりたい」という自発的ビジョンの形成
  • 使用技法:GROWモデル、リフレクション、フィードフォワード
  • キーフレーズ例
    • 「どんな仕事をしているときに“やりがい”を感じる?」
    • 「今の自分に必要なのは何だと思う?」
  • ここでのコツ:相手の言葉を「受け返し」しながら深掘りを進める

🧠 ステップ3:理論的支援と長期的成長の仕掛け(コーチング心理学の応用)

  • 実施内容:強みベースの支援(ポジティブ心理学)、モチベーション理論の実装
  • 目的:自己効力感・成長マインドの強化 → 長期活躍の土台づくり
  • 実践例
    • ストレングスカードを用いた強みの言語化
    • 「できた体験」にフォーカスした成功の積み上げ
    • 意義づけ(Why)の対話で内発的動機に火をつける
  • ここでのコツ:理論を“やさしい言葉”で新人の体験に結びつけてあげること

💡補足アイデア

  • 社内メンター制度との併用で心理的距離を縮める
  • 対話記録を残して成長ログ化(継続的リフレクション)
  • 必要に応じて外部コーチや研修と連携

実施方法や効果は組織文化や風土によって異なる場合がございます。そのため、組織特性に配慮した効果的なアプローチを実践していただくためにも、団体・法人として研修をご希望の際は、お気軽にお問い合わせください。皆さまと協力・協働しながら有意義な機会を創出できましたら幸いです。

*この件の研修のお問い合わせは、info[@]coaching-psych.com まで[]を外して、ご連絡をお願いします。一般社団法人コーチング心理学協会事務局

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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