解決志向コーチングのフィードバック(承認・コンプリメント)の種類とは? 子ども・大人も変わる「解決志向のほめ方・伝え方」を徹底解説
解決志向コーチングのフィードバック(承認・コンプリメント)の種類とは?
子どもも大人も変わる「正しいほめ方・伝え方」を徹底解説
「ほめているのに、なぜか子どもが伸びない」「コンプリメントをしているつもりなのに、うまく伝わらない」——そんな悩みを持つ教師や保護者の方は少なくありません。
実は、ほめ方には種類があります。ただ「すごい!」「えらい!」と声をかけるだけでは、人は本質的には変わりません。大切なのは、解決志向(Solution-Focused Approach)の視点に立った「コンプリメント」の使い方です。
本記事では、解決志向アプローチにおけるコンプリメントの種類・具体例・使い方のコツを、事例を交えながらわかりやすく解説します。支援者・教育者・コーチング実践者の皆さんに向けて、明日からすぐ使える内容です。
1.コンプリメントとは何か?解決志向との関係
解決志向のコンプリメントの語源と基本的な意味
「コンプリメント(Compliment)」とは、もともと英語で「称賛・賛辞・ほめ言葉」を意味します。しかし、解決志向アプローチ(SFA:Solution-Focused Approach)における「コンプリメント」は、単なるほめ言葉ではありません。
解決志向アプローチは、1980年代にスティーブ・ド・シェイザーとインスー・キム・バーグを中心に開発された心理療法・コーチングの手法です。「問題の原因を探る」のではなく、「すでにうまくいっていることや強みに注目する」ことが特徴です。
その中でコンプリメントは、クライアント(相手)が気づいていない自分自身の「リソース(資源)」「強み」「例外(うまくいったこと)」に光を当て、それを言語化して伝えるための重要な技法として位置づけられています。
「ほめる」とコンプリメントの違い
一般的な「ほめる」とSFAのコンプリメントの違いを理解することが重要です。
一般的なほめ言葉の例:
「すごいね!」「頑張ったね!」「えらい!」「天才だ!」
SFAコンプリメントの例:
「毎日練習を続けることができているんですね。それはどんな工夫があったからですか?」
一般的なほめ言葉は評価者(ほめる側)が主語になりがちです。一方、SFAのコンプリメントは相手自身の行動・選択・価値観に焦点を当て、相手が主人公となれるよう設計されています。評価するのではなく、「観察して、気づいたことを伝える」のがポイントです。
💡 ポイント:コンプリメントは「あなたはすごい」ではなく「あなたがしたことに気づきました」というメッセージです。
2.解決志向のコンプリメントの3つの方法
SFAにおけるコンプリメントは、大きく以下の3つ方法に分類されます。それぞれ目的・使いどころ・効果が異なります。
① ダイレクト・コンプリメント(Direct Compliment)
意味・特徴
最も直接的に相手の行動・考え・存在を肯定するコンプリメントです。相手の具体的な行動や努力を観察し、そのまま言語化して伝えます。ただし、「すごい!」などの曖昧な評価ではなく、具体的な事実に基づいて伝えることが重要です。
使い方のポイント
- 相手の具体的な行動を見て、それを言葉にする
- 評価的な言葉(「すごい」「えらい」)は使わず、事実を伝える
- 「〜できている」「〜していますね」という観察の形で伝える
具体例(子どもへの使用)
「今日も時間通りに宿題を持ってきましたね。それを続けているんですね。」 「友達が困っているときに声をかけていましたね。あなたにはそういう力があるんですね。」
具体例(大人・職場での使用)
「先週の提案、データを丁寧に整理して持ってきてくれましたね。そういう準備をしてくださっているんですね。」
ダイレクト・コンプリメントは、相手が自分でも気づいていなかった「できていること」を可視化する効果があります。自己効力感(self-efficacy)の向上にもつながります。
② インダイレクト・コンプリメント(Indirect Compliment)
意味・特徴
直接ほめるのではなく、「どうやってそれができたのですか?」「どうしてそう思ったのですか?」という質問形式でコンプリメントを届ける技法です。相手自身に「そうか、自分はそれができているんだ」と気づかせることがねらいです。
直接ほめられることに抵抗を感じる人(謙遜しがちな文化圏・内向的な性格・自己肯定感が低い人)に特に有効です。
使い方のポイント
- 「どうやって〜できたのですか?」という質問形を使う
- 相手の答えを評価せず、丁寧に聴く
- 答えの中に「強み・工夫・価値観」を見つけ、それを繰り返して伝える(エコー技法)
具体例
「毎日続けられているんですね。どうやってそれを続けられているんですか?」 「難しい状況の中でも諦めなかったんですね。何がそうさせたんでしょうか?」
この質問に答えることで、相手は自分の内なる動機・価値観・強みを自ら発見します。「外から与えられたほめ言葉」より、「自分で気づいたこと」の方が行動変容につながりやすいという研究知見とも一致しています。
💡 インダイレクト・コンプリメントは「内省を促す問い」とも言えます。コーチングの質問技術と組み合わせると特に効果的です。
③ セルフ・コンプリメント(Self-Compliment)
意味・特徴
相手が「自分で自分をほめる・認める」ことを促す技法です。最初は「先生にほめてもらう」という他者評価から始まっても、最終的には「自分で自分の成長に気づける力(自己評価力)」を育てることが解決志向の目標です。
自己肯定感の構築や、支援終結後も自分で歩み続けられる自律性の涵養に深く関わります。
使い方のポイント
- 「今日の自分の頑張りを10点満点で言うと何点?」などのスケーリング質問と組み合わせる
- 「自分で自分を認めてあげるとしたら、どんなことが挙げられますか?」と問いかける
- 相手が言いにくそうなときは、「〜ということをしていたけれど、自分ではどう思う?」と橋渡しをする
具体例
「今週の自分の努力を振り返ってみて、どんなところがよかったと思いますか?」 「今日のあなたの行動を、自分でほめるとしたらどうほめますか?」
セルフ・コンプリメントが自然にできるようになると、支援者がそばにいなくても自分で「例外(うまくいったこと)」を探し、前に進む力が育まれます。これは解決志向アプローチの最終目標でもあります。
3.コンプリメントを効果的に使うための5つのコツ
コツ① 具体的に・事実に基づいて伝える
コンプリメントが漠然としていると、相手は「社交辞令かな」と受け取ってしまいます。「何を・いつ・どのように」したのかを具体的に言語化することで、「ちゃんと見てもらえている」という安心感が生まれます。
✗ 曖昧な例:「最近よく頑張っているね」
✓ 具体的な例:「今週は毎日授業の最初の5分で自分でノートを開いていましたね」
コツ② 評価ではなく「観察」として伝える
「すごい」「えらい」などの評価語を多用すると、相手は「評価される側」に固定されてしまい、自律性が育ちにくくなります。代わりに「〜していますね」「〜できていますね」という観察の言語を使いましょう。支援者と相手の関係が対等に保たれます。
コツ③ タイミングを意識する
コンプリメントはいつでも有効というわけではありません。相手が感情的に混乱しているときや否定的な気持ちが強いときは、まず「傾聴・共感」が先です。気持ちが落ち着いた後に、例外や強みへの気づきを促すコンプリメントを入れましょう。
コツ④ 「あなた」ではなく「あなたがしたこと」にフォーカスする
「あなたはすごい人だ」という人格へのほめ言葉より、「あなたがしたこと・選んだこと」への言及の方が、行動変容につながりやすいとされています(ドゥエック博士の「マインドセット」研究とも一致)。行動・努力・プロセスに焦点を当てましょう。
コツ⑤ 相手の言葉をそのまま使う(エコー技法)
相手が「なんとか続けてきました」と言ったとき、「なんとかでも続けてこられたんですね」とそのままの言葉を返すことで、相手は「ちゃんと聴いてもらえた」という感覚を得ます。支援者の「解釈」を加えず、相手の表現を尊重することが信頼関係の構築にもつながります。
4.実践事例:場面別コンプリメントの活用例
事例① 不登校傾向の中学生への活用
状況:
Aくん(中2)は週に2〜3日しか登校できていない。本人は「どうせ無理」と言い、自信を失っている。
支援者のコンプリメント:
「今日、学校に来たんですね。それって、実はすごく大事なことだと思います。来ようと思ったのは何かあったんですか?(インダイレクト)」 「来るのが大変な日もあると思うけれど、今日来てみてどうでした?自分では何点くらいあげますか?(セルフ・コンプリメント)」
Aくんは「7点くらい…来てよかったかも」と答えた。この「自分で決めた7点」が次の一歩の動機になりました。
事例② 職場のマネジメントへの活用
状況:
Bさん(30代・チームリーダー)は自信がなく、常に「自分のマネジメントは下手だ」と言っている。
上司のコンプリメント:
「先週のミーティングで、Cさんが発言しにくそうにしているとき、自然に話を振っていましたね。あれはどんな判断があったんですか?(インダイレクト)」
Bさんは「そういえば、気になったから…でも、別に大したことじゃ」と言いかけ、上司が「それが大事なマネジメントだと思いますよ(ダイレクト)」と返した。この一言がBさんの自己認識を変えるきっかけになりました。
事例③ 保護者への子育て支援での活用
状況:
Cさん(40代・母親)は「自分はダメな親だ」と言い、育児に自信を失っている。
支援者のコンプリメント:
「今日こうして相談に来てくださったこと、お子さんのことをそれだけ真剣に考えているからですよね(ダイレクト)。毎日どんな気持ちで関わっているのか、聴かせてもらえますか?」
「来談した」という行動そのものをコンプリメントすることで、「自分はダメな親ではないかもしれない」という視点の転換が始まります。
5.コンプリメントと他のSFA技法との組み合わせ
コンプリメントは単独でも有効ですが、他のSFA技法と組み合わせることでさらに効果が高まります。
スケーリング質問との組み合わせ
「今の状況を0〜10のスケールで表すと?」というスケーリング質問の後に、「それが4なのはどんなことがあるからですか?」と問いかけることで、相手は「0じゃない理由(うまくいっていること)」を自ら語り始めます。その言葉に対して「それができているんですね(コンプリメント)」と返します。
例外探しとの組み合わせ
「問題が起きなかったときはどんなときですか?」という例外探しの質問に、相手が「あのときは…」と答えたとき、そのうまくいったこと・できたことに対してコンプリメントを届けます。「問題がない時間が確かにあるんですね。その時間に何があったのでしょう?」という流れです。
ミラクル・クエスチョンとの組み合わせ
「もし奇跡が起きて問題が解決していたら、明日の朝何が違いますか?」というミラクル・クエスチョンで未来の希望を描いてもらった後、「そのイメージができるということは、あなたの中にすでにそれを望む力があるということですよね(コンプリメント)」と返すことで、相手の動機づけを高めます。
6.よくある疑問とQ&A
Q:コンプリメントはお世辞や社交辞令と何が違いますか?
A:お世辞は事実と無関係に相手を喜ばせようとする言葉ですが、コンプリメントは相手の具体的な行動・選択・努力を観察した事実に基づきます。「見ている・気づいている」という誠実さがコンプリメントの本質です。
Q:相手が否定してきたらどうすればよいですか?
A:「そんなことないです」と否定されたとき、無理に押し返す必要はありません。「そう感じているんですね。でも私にはそう見えましたよ」と穏やかに伝え、無理に同意を求めないことが大切です。繰り返し丁寧に伝え続けることで、少しずつ相手の自己認識が変わってきます。
Q:コンプリメントはどのくらいの頻度で使えばよいですか?
A:「使わなければ」という義務感は不自然さを生みます。面談・授業・日常会話の中で、相手の行動を観察していると自然に「コンプリメントできる素材」が見えてきます。まずは1回の会話の中で1〜2回意識して使ってみることから始めてください。
Q:子どもにも大人にも同じように使えますか?
A:基本原則は同じですが、言葉の選び方・抽象度・タイミングは相手に合わせて調整が必要です。子どもには「今日ここに来られたね」などシンプルで具体的な言葉が向き、大人には「どんな判断があったのですか?」などより深みのある問いかけが効果的です。
7. よくある質問(FAQ2)
Q1. 解決志向療法とコーチングの違いは何ですか?
解決志向療法(SFT)は、粿神的な課題や心理的な苦痛を抱える人への臨床的アプローチです。一方、解決志向コーチング(SFC)は、基本的には粿神疑患のない健康な人の目標達成や成長支援を目的としています。職場での一般的な離職防止・人材育成においてはSFCが適しています。
Q2. 解決志向コーチングを学ぶにはどうすればいいですか?
国内外にSFC関連の研修・資格プログラムが存在します。日本でも 一般社団法人コーチング心理学協会にて,解決志向コーチングの研修が提供されています。解決志向コーチ は一般社団法人コーチング心理学協会の特許庁登録となっています。
Q3. 全社員に必要ですか、管理職だけでいいですか?
最初は管理職(特に現場マネージャー)へのトレーニングから始めることをお勧めします。管理職のコミュニケーションスタイルが変わると、チーム全体の雰囲気に自然と影響が広がります。定着してきたら、全社的な研修や文化づくりに展開するのが効果的です。
Q4. 解決志向療法とCBT(認知行動療法)はどう違うの?
CBT(認知行動療法)は、ネガティブな思考パターンを特定して修正することを重視します。一方、解決志向療法と解決志向コーチングは思考パターンの分析よりも、「解決が実現した未来」と「うまくいっている例外」に注目します。どちらも科学的根拠に基づいた有効なアプローチであり、目的や状況に応じて使い分けることが理想的です。
Q5.一般社団法人コーチング心理学協会では,「解決志向アプローチ」「解決志向コーチング」の実践について学べますか?
はい、コーチング心理学は,解決志向コーチング講座などで,学ぶことが出来ます。科学的・現代的な視点で解決志向とエンゲージメントについて実践・研究を行っています。各講座も工夫して,楽しめるようなツールやアプリなどを活用しています。ぜひ,体験してみていただければ幸甚です。
Q6. 一般社団法人コーチング心理学協会では,「解決志向アプローチ」「解決志向コーチング」に関する団体研修・法人研修などを実施してますか?(新入社員・中途社員・管理職研修など)
はい,実施しております。もしご希望でしたら,お問い合わせまでご連絡をいただければ幸甚です。
各組織や会社によって異なりますので,内容に合わせて対応いたしますの。協働で研修なども可能です。
お問い合わせまでご連絡をいただければ幸甚です。
https://www.coaching-psych.com/contact/
まとめ:解決志向のコンプリメントで、関わり方が変わる
本記事では、解決志向アプローチにおけるコンプリメントの3種類——ダイレクト・コンプリメント、インダイレクト・コンプリメント、セルフ・コンプリメント——について、具体例や実践のコツとともに解説しました。
コンプリメントの本質は「評価すること」ではなく、「相手が気づいていない自分の力・リソース・強みを、丁寧に言語化して届けること」です。
ほめ方を変えるだけで、目の前の人との関わりが大きく変わります。そして、相手が自分の力に気づき始めたとき——それが解決志向の真髄です。
ぜひ、明日の会話から意識して使ってみてください。最初は不自然に感じるかもしれませんが、繰り返すうちに自然と言葉が出てくるようになります。支援者自身も、自分の関わりの中にある「例外」や「強み」を発見できるはずです。
【参考文献・関連用語】
- 解決志向アプローチ(SFA:Solution-Focused Approach)
- スティーブ・ド・シェイザー著『解決のための面接技法』
- インスー・キム・バーグ著『子どもの解決を構築する』
- キャロル・ドゥエック著『マインドセット「やればできる!」の研究』
- コンプリメント / スケーリング質問 / 例外探し / ミラクル・クエスチョン
コンテンツ一覧
投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。









