アート・インクワイアリーの国際事情と効果とは? 認定資格取得の参考に

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アート・インクワイアリー(芸術的探究)は、芸術を通じて新たな知識や理解を生み出す方法として注目されています。研究によると、アート・インクワイアリーは創造性や自己理解、学習意欲の向上に大きな効果があることが示されています。

当協会では、カードゲームを活用したコーチングなどで実施したりしています。主に関連する講座は以下です。

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アート・インクワイアリー(Art Inquiry)の歴史的背景は、芸術と対話、そして心理的探究の融合という流れの中で発展してきました。以下にその系譜を簡潔に整理します。

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アート・インクワイアリー(Art Inquiry)の歴史的背景は、芸術と対話、そして心理的探究の融合という流れの中で発展してきました。以下にその系譜を簡潔に整理します。


🎨 アート・インクワイアリーの歴史的背景

時代・潮流 背景と影響
20世紀初頭:表現主義・前衛芸術 ダダイズムやシュルレアリスムなど、言語を超えた表現によって内面世界を探究する動きが台頭。アートが「問いかけ」の手段として機能し始める。
1960〜70年代:アートセラピーの誕生 心理療法の一環として、絵画や造形を通じて感情を表現・理解する「アートセラピー」が確立。非言語的表現の治癒力が注目される。
1980年代以降:ナラティブ・アプローチと統合 「物語ること」が自己理解や癒しにつながるという視点が広まり、アートとナラティブ(物語)を組み合わせた探究が進展。
2000年代〜:ポジティブ心理学との融合 PERMAモデルや強みの活用など、ウェルビーイングを高める心理学とアートの統合が進み、アート・インクワイアリーが体系化される。
現在:教育・コーチング・組織開発への応用 自己理解・他者理解・創造性・レジリエンスを育む手法として、教育現場や企業研修、コーチング領域で活用が広がっている。

このように、アート・インクワイアリーは単なる芸術鑑賞ではなく、「アートを通じて自分を問い直す」ための対話的・探究的な実践として発展してきました。

アート・インクワイアリー(Art Inquiry)は、国際的にもさまざまな分野で注目されており、以下に海外の文献や実践例をもとにした視点を交えて整理しました。


🌍 国際的な視点から見たアート・インクワイアリーの概要

観点 内容 参考・出典例
哲学的背景 フランスの哲学者フランソワ・ジュリアン(François Jullien)は、アートを「既知から未知への逸脱(dé-coïncidence)」と捉え、芸術が存在の本質を問い直す手段であると論じている。 Art Inquiry Journal – 2025年特集号
学術的展開 ポーランドの学術誌『Art Inquiry』では、芸術と存在、アイデンティティ、創造性の関係性を探究する論文が多数掲載されている。2025年号では「偶然性からの逸脱(de-coincidence)」が特集テーマ。 Art Inquiry Journal
教育・研究応用 Arts-Based Research(ABR)として、教育・社会科学・医療分野でアートを用いた探究的手法が広がっている。視覚表現を通じて、複雑な社会的・個人的テーマを深く掘り下げる。 Leavy (2015), Barone & Eisner (2012) など
コーチング・心理支援 アートを媒介にしたナラティブ・コーチングやポジティブ心理学との統合が進み、自己理解・強み発見・レジリエンス向上に活用されている。 McNiff (1998), Neenan (2018) など
国際的な実践例 英国・米国・オーストラリアなどでは、教育現場や組織開発、医療福祉の現場でアート・インクワイアリーが導入されており、対話と創造性を促す手法として注目されている。 Arts Health Institute(AU)、Creative Inquiry(UK)など

このように、アート・インクワイアリーは哲学・心理学・教育・芸術実践が交差する国際的な探究手法として発展しています。特に「de-coïncidence(偶然性からの逸脱)」という概念は、アートが私たちの固定観念を揺さぶり、新たな意味や可能性を開く力を持つことを示しています。

 

海外のでアート・インクワイアリーを活用したワークショップ

海外では、アート・インクワイアリーを活用したワークショップが教育・医療・組織開発など多様な分野で実践されています。以下に代表的な事例をいくつかご紹介します。


🌍 海外のアート・インクワイアリー実践例

分野 ワークショップ名・内容 実施機関・地域
教育・研究 The Art of Creative Inquiry:創造的探究のためのアートワークショップ。参加者が自己表現を通じて「問い」を深める。 カナダ・コンコルディア大学(Warren Lindsら)
医療・福祉 Applied Arts with Health:アートを通じて先住民の若者の健康意思決定を支援するプロジェクト。 カナダ・サスカチュワン州(CIHRプロジェクト)
組織開発 Creative Inquiry for Teams:アートと対話を通じてチームの価値観・強み・未来像を可視化するセッション。 英国・Creative Inquiry UK など
心理支援 Expressive Arts Therapy Workshops:絵画・詩・音楽などを用いて感情やトラウマを表現・統合する実践。 米国・Shaun McNiffらの実践
教育(子ども) Visual Thinking Strategies (VTS):アート作品を使って観察力・思考力・対話力を育てる教育手法。 米国・MoMA、Project Zero(Harvard)など

これらのワークショップでは、「アートを通じて問いを立てる」ことが、自己理解・他者理解・創造性の育成につながるという共通の哲学が根底にあります。

学習・創造性への効果

  • 質問力と高次思考の向上:美術館を拠点とした高校生プログラムでは、探究的な指導を受けた生徒が、より多く・質の高い質問をし、より深いテーマについて考えるようになりました。また、自分自身の作品へのインスピレーションも広がりました(Hales & Erickson, 2018)。
  • 科学的スキルの発達:美術を取り入れた探究型理科教育は、観察力や推論力、実験設計力などの科学的プロセススキルの向上に寄与します(Kar & Cil, 2019)。

個人・社会的理解の深化

  • 自己理解・多文化的知識の促進:アートをナラティブ(物語)探究の手法として用いることで、自己理解や多文化的知識の創出、感情や想像力の発達が促されます(Ellis & Bochner, 2003)。
  • データや現実の新たな見方:データとアートを組み合わせた探究プログラムでは、個人の表現を通じてデータの理解やコミュニケーション力が高まることが示されています(Zhao et al., 2024)。

アート・インクワイアリーの特徴

各研究が示唆する効果・特徴を具体的にまとめた表を作成しました。


📚 効果・特徴と参考文献一覧

効果・特徴 内容の具体例 参考文献
質問力・創造性の向上 自ら問いを立て、独創的な発想やアート的探究へ展開する力の向上 Hales & Erickson (2018), Garoian (2006)
科学的思考・観察力の発達 検証可能な仮説づくりや、細部への注意による探究的思考の促進 Kar & Cil (2019)
自己理解・多文化的知識の深化 自らの経験をメタ認知的に見つめ直し、異文化的視点への共感や理解を育む Ellis & Bochner (2003), McNiff (1998)
データ理解・表現力の強化 複雑なデータや感情を言語・視覚・身体的に表現するスキルの向上 Zhao et al. (2024)
新しい知識や視点の創出 従来にない視点から物事を見る創造的知性の喚起や知の再構築 McCallum (2023), Garoian (2006)

さらに詳しく一つひとつの文献内容に踏み込みたい場合や、教育・研修等での応用事例と結び付けたい場合も対応できます。

理論的意義

  • アート・インクワイアリーは、科学や哲学と同様に「新しい見方や考え方の創出」に重点を置き、知識の生成や批判的思考を促進します(McCallum, 2023; Garoian, 2006; McNiff, 1998)。
  • 芸術的実践そのものが有効な研究手法であり、感覚・感情・想像力を重視した知の探究を可能にします(Blumenfeld-Jones, 2016; Garoian, 2006; McNiff, 1998)。

まとめ

アート・インクワイアリーは、創造性や高次思考、自己理解、データや現実の新たな捉え方を促進する強力な学習・研究手法です。芸術を通じた探究は、個人の成長だけでなく、社会的・学術的な知識の拡張にも寄与します。

References

Hales, L., & Erickson, M. (2018). Increasing Art Understanding and Inspiration Through Scaffolded Inquiry. Studies in Art Education, 59, 106 – 125. https://doi.org/10.1080/00393541.2018.1440150

Zhao, Y., Hodge, L., Bertling, J., & Dyer, E. (2024). Bridging Data and Art: Investigating Data-Art Connections in a Data-Art Inquiry Program. Journal of Science Education and Technologyhttps://doi.org/10.1007/s10956-024-10166-0

McCallum, K. (2023). Art as Inquiry: Theoretical Perspectives on Research in Art and Science. Leonardo, 57, 121-124. https://doi.org/10.1162/leon_a_02450

Ellis, C., & Bochner, A. (2003). An Introduction to the Arts and Narrative Research: Art as Inquiry. Qualitative Inquiry, 9, 506 – 514. https://doi.org/10.1177/1077800403254394

Blumenfeld-Jones, D. (2016). The Artistic Process and Arts-Based Research. Qualitative Inquiry, 22, 322 – 333. https://doi.org/10.1177/1077800415620212

Kar, H., & Cil, E. (2019). The effects of visual art supported inquiry based science activities on 5th grade students’ scientific process skills. Pegem Eğitim ve Öğretim Dergisihttps://doi.org/10.14527/PEGEGOG.2019.011

Garoian, C. (2006). Art Practice as Research: Inquiry in the Visual Arts. **, 48, 108. https://doi.org/10.5860/choice.42-5662

McNiff, S. (1998). Art-Based Research. **. https://doi.org/10.4135/9781452226545.n3

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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