進化心理学コーチング入門
コンテンツ一覧
進化心理学 × コーチング心理学
適応システムとして人を理解する
私たちは不安になったり、怒ったり、避けたり、完璧を求めたりします。
こうした反応はしばしば「弱さ」「性格の問題」「考えすぎ」と片づけられがちです。
しかし、進化心理学とコーチング心理学を統合すると、まったく違う見方が可能になります。
それは――
人の反応は欠陥ではなく、生き延びるために進化した適応システムの作動である
という視点です。
この視点に立つと、支援の方法は根本から変わります。
1.「症状」ではなく「機能」として理解する
たとえば次のような反応を考えてみましょう。
-
不安
-
回避
-
怒り
-
完璧主義
-
人見知り
-
自己批判
これらを単なる問題行動として扱うのではなく、
「何を守るための反応か」 という機能で読み解きます。
人間には主に次のような基本的適応領域があります。
-
安全(危険を避ける)
-
所属(仲間から排除されない)
-
公平(搾取されない)
-
地位(価値ある存在として認められる)
-
評判(信用・信頼を守る)
-
親密(重要な関係を維持する)
-
探索(新しい可能性を広げる)
たとえば――
完璧主義
→ 評判を守るシステムの過作動
対人回避
→ 排除回避(所属)+危険回避(安全)
このように理解すると、
「自分がダメだから」ではなく
「守ろうとしているものがある」
と捉え直すことができます。
自己批判が減り、具体的な改善の方向が見えてきます。
2.人は常に「動機の衝突」を抱えている
人はすべてを同時に満たすことはできません。
-
安全 vs 探索(安心したいが挑戦したい)
-
所属 vs 自己主張(嫌われたくないが言いたい)
-
公平 vs 親密(正しさと関係維持のジレンマ)
このような衝突は「優柔不断」ではなく、
進化的に当然のトレードオフです。
支援の目的は「全部うまくやること」ではありません。
納得できる最適なバランスを見つけることです。
具体的には:
-
何を優先するか決める
-
状況ごとのルールを作る
-
得られる利点と失うコストを見える化する
これだけで迷いは大きく減ります。
3.感情は「弱さ」ではなく情報である
感情を抑え込もうとする人は多いですが、
感情は本来、意思決定を助ける信号です。
-
不安 → 危険の検知
-
怒り → 不公平・搾取への警報
-
嫉妬 → 関係喪失のリスク
-
恥 → 評判や所属を守るサイン
つまり、感情を消す必要はありません。
読み取り方と使い方を学べばよいのです。
たとえば、不安が強い人は危険検知能力が高いとも言えます。
その能力を「準備」「計画」「安全確保」に活かすことで、
強みへと転換できます。
4.具体的な支援は「行動・環境・関係」を変える
コーチング心理学の強みは、
目標設定・行動設計・自己効力感の向上にあります。
これを進化的動機に合わせて使うと、非常に実践的になります。
安全が脅かされている場合
-
段階的に慣れる(スモールステップ)
-
身体の緊張を整える
-
安心できる人・場所を増やす
所属が課題の場合
-
小さな参加から始める
-
境界線(NOと言う力)を育てる
-
合意形成のスキルを学ぶ
評判・完璧主義の場合
-
失敗しても安全な実験を行う
-
自己批判を減らす
-
自己への思いやり(セルフコンパッション)
探索が不足している場合
-
好奇心ベースの目標を設定
-
学習計画を作る
-
小さな挑戦を積み重ねる
重要なのは、
同じ機能をより低コストで満たす方法を見つけることです。
5.日本文化との相性が良い理由
日本社会では特に次の要素が強く働きやすいと言われます。
-
所属
-
評判
-
恥
-
迷惑回避
その結果、
-
過度な同調
-
萎縮
-
完璧主義
-
自己抑制
が起こりやすくなります。
これを「性格が弱い」と捉えるのではなく、
文化 × 進化 × 個人差の相互作用として理解することで、
本人を責めずに支援できます。
文化的安全性を守りながら成長を促すことが可能になります。
6.実践プロトコル:7領域マップ
実際の支援では、次の流れが非常に有効です。
1.今、何が脅かされているか?
(安全・所属・評判など)
2.反応は適切か?
過剰か、不足か、誤作動か?
3.代替行動は何か?
同じ目的をより低コストで満たす方法
4.小さな実験
行動・環境・関係の変更
5.振り返り
何が起きたか → 学習 → 新しい物語の形成
投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
最新の投稿
未分類2026年2月19日進化心理学コーチング入門
TOPIC2026年2月19日進化心理学コーチングとはpresent2026年2月11日認知バイアスコーチング入門講座 AI時代のバイアス
TOPIC2026年2月2日発達障害支援コーチング 発達障害が増えている理由とは 認定資格取得の参考に





