AIに仕事は奪われない。コーチング心理学で磨く、AI時代の「人間力」

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AIに仕事は奪われない。コーチング心理学で磨く、AI時代の「人間力」

 

1. はじめに:AIの進化が問いかける「人間の価値」とは?

人工知能(AI)の急速な進化は、私たちの働き方に革命をもたらすと同時に、「人間の仕事はAIに奪われるのではないか」という広範な不安を引き起こしています。しかし、この技術的な大変革は、人間の価値を消し去るのではなく、むしろ再定義するものです。

 

本稿が提示する結論は明確です。AI時代に求められるのは、AIとのスペック競争ではなく、AIには原理的に到達できない人間性の領域
——マッキンゼーが特定した**「志を抱く能力」「判断力」「真の創造性」**——を、意図的に開発することです。

2. AI時代に再定義される「人間力」

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AIが定型業務を自動化する流れが加速する中で、私たち人間に求められる貢献の質は、より複雑で、よりニュアンスに富んだ領域へとシフトしています。この変化の本質を理解することは、個人にとっても組織にとっても、極めて戦略的な意味を持ちます。

マッキンゼーの事例は、このシフトを象徴しています。同社では、2万5000ものAIエージェントがコンサルタントと協働し、検索や要約といったタスクにおいて、昨年だけで150万時間もの労働時間を削減しました。さらに、これらのAIエージェントは過去6ヶ月間で250万点のグラフを作成したといいます。これは単なる効率化ではありません。コンサルタントたちが単純作業から解放され、より本質的で**「複雑な課題」**に取り組む時間を確保できるようになったことを意味します。

近年の学術研究は、このような時代に求められる「人間力」が、従来のソフトスキルという枠組みを超えた、より包括的な概念であることを示しています。AI時代に不可欠とされる能力は、以下の要素の総体として再定義されています。

 

  • 創造性 (Creativity): 新しいアイデアや解決策を生み出す力
  • 共感力 (Empathy): 他者の感情や視点を理解し、寄り添う力
  • 批判的思考 (Critical Thinking): 情報を多角的に分析し、本質を見抜く力
  • コミュニケーション能力 (Communication Skills): 複雑な意図や感情を的確に伝え、関係を構築する力
  • 倫理観 (Ethical Principles): 正しい判断軸を持ち、行動する力
  • 適応力 (Adaptability): 変化する環境に柔軟に対応する力
  • AIリテラシー (AI Literacy): AIを理解し、効果的に活用する力
これら7つの能力は人間力の全体像を示していますが、マッキンゼーが特定した3つのスキルは、いわばその中核をなすOS(オペレーティングシステム)です。特に「志」「判断力」「創造性」は、他のスキルを発揮するための土台となるのです。

3. マッキンゼーが特定した、AIが模倣できない3つの核心的スキル

マッキンゼーのグローバル・マネージング・パートナーであるボブ・スターンフェルス氏は、プロフェッショナルの世界において、人間の価値をAIの有用性から明確に区別する3つの根本的な能力を特定しました。これらは、AIには決して模倣できない、人間ならではの領域です。

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3.1. 志を抱く能力 (The Ability to Aspire)

AIは与えられた目標を最適化することはできますが、そもそも「どのような目標を目指すべきか」というビジョンや野心を自ら設定することはできません。スターンフェルス氏はこの能力を次のように表現しています。
「低軌道を目指すのか? 月を目指すのか? 火星を目指すのか? それを選択する能力は人間にしかないものです。」
このスキルには、単に高い目標を設定するだけでなく、そのビジョンを他者に伝え、共感を呼び、信じてもらうというリーダーシップの側面も含まれます。

3.2. 判断力 (Judgment)

AIは膨大なデータから最適解を提示しますが、その判断には価値観や倫理観が含まれていません。ここで重要になるのが、人間の「判断力」です。「どのような前提や基準を設定してAIを使うべきか?」という問いに対し、企業の価値観や社会規範といった文脈を反映させた判断のフレームワークを設計し、適用する能力は、人間にしか担えません。

3.3. 真の創造性 (True Creativity)

スターンフェルス氏は、AIを「あくまで推論モデルであって、次に最も可能性の高いステップを導き出すものだ」と定義します。近年の研究ではAIが発散的思考タスクで人間を上回る結果も報告されていますが、それは既存データの組み合わせの妙です。スターンフェルス氏が言う「真の創造性」とは、そのデータセット自体を書き換えるような、パラダイムシフトを起こす着想を指しています。人間は、既存の発想や枠組みそのものに縛られず、まったく新しいアプローチや概念に飛躍する能力において、圧倒的な優位性を持つのです。
これらのスキルこそが、AI時代における私たちの価値の源泉となります。しかし、問題は「知っていること」ではなく、「いかにしてそれらを開発するか」です。その問いに答える鍵が、コーチング心理学にあります。

4. コーチング心理学で、いかに「人間力」を鍛えるか

これらの重要なスキルを特定しただけでは、絵に描いた餅に過ぎません。多くの人が「志」や「判断力」「創造性」といった抽象的な能力をどうすれば体系的に伸ばせるのか、その具体的な方法論を求めています。その答えとなるのが、実践的かつ効果的なアプローチであるコーチング心理学です。

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4.1. コーチングが『志』に輪郭を与える:目的発見の技術

コーチングは、個人が日々のタスク実行という視点から抜け出し、根源的な目的を探求するプロセスを支援します。「もしリソースや制約が一切なければ、何を成し遂げたいですか?」「その『火星』に到達した時、あなたや組織はどのように変貌していますか?」といった問いかけが、思考の枠を外し、単なる目標設定を超えた、深く意味のある「志」を育むのです。

4.2. 内省的対話で『判断力』の軸を築く

コーチングにおけるソクラテス的な対話や価値観を明確化するプロセスは、個人の「判断力」の土台を築きます。この内省的対話を通じて、個人は自身の行動や思考の背景にある信念、価値観、倫理観を深く掘り下げ、言語化します。AIを導くために必要となる人間主導の意思決定は、このようにして築かれた強固な判断の足場があって初めて可能になるのです。

4.3. 固定観念からの解放:『真の創造性』を解き放つ思考法

AIが過去のデータパターン、すなわち「学習データ」に依存するのに対し、人間の創造性は既存のパターンからいかに自由になるかにかかっています。コーチは「その前提は、今も本当に真実ですか?」と問いかけることで、クライアントが自身のアルゴリズム(固定観念)から脱却し、AIには予測不可能な飛躍を生み出す支援をします。このプロセスが、真に斬新なアイデアを生み出す思考の扉を開くのです。
このように、コーチング心理学は、AI時代に求められる核心的な人間力を、精神論ではなく具体的な技術として鍛え上げるための確かな道筋を提供します。

5. 未来への提言:AIとの協働で輝くために

AI時代に個人と組織が持続的に成長し、輝き続けるためには、未来を見据えた戦略的な取り組みが不可欠です。最新の学術研究とビジネスの最前線からの洞察は、私たちが注力すべきいくつかの重要な方向性を示しています。

  • 戦略的必須科目としての継続的学習 (Continuous Learning as a Strategic Imperative)
     技術の進化はスキルの陳腐化を加速させます。AI時代を生き抜くためには、常に新しいスキルを学び続ける「リスキリング」と、既存のスキルを深化させる「アップスキリング」が不可欠です。学び続ける姿勢そのものが、最も重要な戦略となります。
  •  組織的リスクとしてのスキル格差 (The Skills Gap as an Organizational Risk)
    AIに適応し、新たなスキルを習得する層と、そうでない層との間には、深刻な格差が生まれるリスクが指摘されています。この「スキル格差」を放置することは組織の競争力低下に直結するため、誰もが変化に対応できる学習機会の設計が急務です。
  • 才能獲得のパラダイムシフト:採用基準の変革 (A Paradigm Shift in Talent Acquisition: Transforming Hiring Criteria)
    マッキンゼーのスターンフェルス氏が指摘するように、人材を評価する基準そのものを変革すべき時が来ています。
    特に技術人材については、どの大学を卒業したかといった従来の経歴を見るのではなく、その人の成果物で示される実際の能力を評価すべき。
    実力本位の評価は、多様なバックグラウンドを持つ才能が活躍する機会を広げます。
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6. まとめ

AIの台頭は、私たちの仕事を奪う脅威ではなく、私たちがより人間らしくなるための絶好の機会です。単純作業やデータ処理をAIに委ねることで、私たちは人間だけが持つ本質的な能力に集中することができます。

本稿で探求したマッキンゼーが提唱する3つの核心的スキル——「志を抱く能力」「判断力」「真の創造性」——は、これからのキャリアを築く上での明確な指針となるでしょう。そして、コーチング心理学は、これらの能力を観念的に理解するだけでなく、実践的に磨き上げるための具体的な方法論を提供します。

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我々の目標は、AIとの競争ではなく、人間だけが持つ深遠な能力を解き放ち、AIを究極の「思考の増幅器」として使いこなすことです。それこそが、AI時代における真のプロフェッショナリズムであり、より人間的な未来を創造する唯一の道筋なのです。

 

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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