発達障害でも「働く」を諦めない!資格・仕事・コミュニケーションの壁を乗り越えるコーチングの力
発達障害でも「働く」を諦めない!資格・仕事・コミュニケーションの壁を乗り越えるコーチングの力
「仕事が長続きしない」「職場でうまくコミュニケーションが取れない」「資格を取っても働けない気がする」——発達障害を抱える方や、そのご家族・支援者の方から、こうした声をよく耳にします。
実は、企業が新卒採用で最も重視するスキルは「コミュニケーション能力(42.3%)」と「意欲(42.2%)」(帝国データバンク2022年9月調査)。しかし、発達障害のある方の多くはこのスキルに苦手意識を持ち、就職・就労の場で深刻なギャップに直面しています。
この記事では、発達障害と仕事・資格・コミュニケーションの課題を整理しながら、「コーチング」がなぜその解決策として注目されているのかを、わかりやすくお伝えします。
【目次】
- 企業が求めるスキルと発達障害者のギャップ——現実を直視する
- 発達障害のある方が「仕事」で直面する5つの壁
- 資格取得で仕事は変わる?——正しい活用法と注意点
- コミュニケーションの課題は「性格」ではなく「特性」
- コーチングとは何か?——発達障害支援における可能性
- コーチングで変わること——具体的な支援事例
- 就労前後のサポートが定着の鍵——企業・支援者へのメッセージ
- まとめ——「働く」をあきらめないために
1. 企業が求めるスキルと発達障害者のギャップ——現実を直視する
帝国データバンクの調査によると、企業が新卒採用で重視する点の上位5項目は次の通りです。
| 企業が重視するスキル | 割合 |
| コミュニケーション能力が高い | 42.3% |
| 意欲的である | 42.2% |
| 素直である | 35.0% |
| 主体性がある | 8.6% |
| 忍耐力がある | 8.6% |
一見して明らかなのは、上位3項目すべてが「対人関係・内面的な姿勢」に関するものだということ。技術的なスキルや学歴ではありません。
発達障害(ASD・ADHD・LDなど)のある方の多くは、このコミュニケーション能力や意欲の「見せ方」に課題を抱えています。能力や意欲がないのではなく、「伝え方」「表現の仕方」に特性があるのです。ここに、教育現場と企業の間の大きなギャップが生まれます。
さらに問題なのは、このギャップが「採用後」に表面化することです。採用時には見えなかった課題——仕事のスピード、自信喪失、環境変化への戸惑い——が就労後に噴出し、多くの人が自信を失い、離職してしまいます。
2. 発達障害のある方が「仕事」で直面する5つの壁
発達障害のある方が職場で直面する課題は、個人によって異なりますが、共通するパターンがあります。
①コミュニケーションの壁
「空気を読む」「報告・連絡・相談のタイミングを掴む」「雑談で人間関係を築く」——これらは多くの職場で当然のように求められますが、発達障害のある方にとっては大きな負担です。ASDの方は言葉の裏を読むことが難しく、ADHDの方は会話中に集中力が途切れてしまうこともあります。
②仕事のスピードとマルチタスクの壁
複数の業務を同時にこなすことや、急な変更・割り込み業務への対応が苦手な方が多くいます。一つのことに深く集中できる強みがある一方で、「切り替え」が難しいケースもあります。
③自己評価の低さ・自信喪失
幼少期から「できない」「変わっている」と言われ続けた経験から、自己肯定感が極めて低い方が多くいます。仕事でミスをすると必要以上に自分を責め、「自分は働く資格がない」と感じてしまうケースも珍しくありません。
④環境変化への適応困難
部署異動、上司の交代、業務内容の変更——これらの「変化」が大きなストレスになります。「いつもと違う」状況に強い不安を感じ、パフォーマンスが著しく低下することがあります。
⑤怒られることへの恐怖
注意や叱責を「人格の否定」として受け取りやすい傾向があります。上司から少し強い口調で言われただけで、フリーズしてしまったり、翌日から出勤できなくなるケースもあります。
3. 資格取得で仕事は変わる?——正しい活用法と注意点
「資格を取れば仕事が見つかる」——この考えは半分正しく、半分は注意が必要です。
発達障害のある方に向いているとされる資格・職種はいくつかあります。例えば、ITパスポート・基本情報技術者試験などのIT系資格、簿記・MOSなどの事務系資格、医療事務・調剤薬局事務などは、業務の流れが明確で、マニュアル化しやすい環境が多いため、特性と合いやすいと言われます。
しかし、資格だけでは就労の課題は解決しません。資格取得後も「職場での人間関係」「報告・連絡・相談の仕方」「ストレスマネジメント」などのソフトスキルがなければ、長期就労は難しいのが現実です。
資格は「入口のドアを開ける鍵」です。でも、その先の職場で生き抜くためには、別のスキルが必要です。そこで重要になってくるのが「コミュニケーション力の強化」と「自己理解に基づいた働き方」——そしてそれをサポートする「コーチング」なのです。
4. コミュニケーションの課題は「性格」ではなく「特性」
「もっと積極的になれ」「なぜ空気が読めないんだ」——発達障害のある方は、こうした言葉をこれまでの人生で何度も言われてきたかもしれません。
でも、それは「性格の問題」ではありません。「脳の働き方の特性」です。
ASD(自閉スペクトラム症)の方は、言葉の字義通りの解釈をしやすく、非言語コミュニケーション(表情・声のトーン・身振り)の読み取りに困難を感じることがあります。ADHD(注意欠如多動症)の方は、衝動的に発言してしまったり、話を最後まで聞く前に動き出してしまうことがあります。
これらは「訓練」でゼロにはなりません。しかし、「自分の特性を理解し、どう対処するか」を学ぶことで、職場でのコミュニケーションは大きく改善できます。
例えば——
- 「相手の言葉の意図がわからないときは、一度確認する」というルールを持つ
- 「ミスしたとき、まず謝ってから確認する」という手順を覚える
- 「自分が話しすぎていると感じたら、一度止まって相手の反応を見る」という意識を持つ
こうした「対処法(コーピングスキル)」を一緒に考え、練習するのがコーチングの役割です。
5. コーチングとは何か?——発達障害支援における可能性
コーチングとは、コーチ(支援者)が対話を通じて、クライアント(支援を受ける方)が自分自身の答えを見つけ、行動できるよう支援するプロセスです。
カウンセリングとの違いは「過去の傷を癒す」のではなく「未来に向けて行動する」点にあります。コーチングは答えを「教える」のではなく、本人が「気づき、選び、動く」ことを支援します。
発達障害支援でのコーチングの特徴
- 【自己理解の促進】自分の強みと弱みを整理し、特性を「障害」ではなく「個性」として捉えなおす支援を行います。
- 【目標設定のサポート】「なりたい自分」「したい仕事」を言語化し、具体的な小さなステップに落とし込みます。
- 【コミュニケーション練習】実際の職場場面を想定したロールプレイや、対話の振り返りを行います。
- 【感情調整のサポート】怒られたとき、失敗したとき、どう気持ちを落ち着けるかを一緒に考えます。
- 【継続的なフォローアップ】就職後も定期的な面談を通じて、職場での困りごとに対処します。
発達障害支援に特化したコーチングは、一般的なビジネスコーチングとは異なるアプローチが必要です。特性を理解した上で、ペースを合わせ、具体的・視覚的な方法で支援することが重要です。
6. コーチングで変わること——具体的な支援事例
事例①:Aさん(30代・ASD・IT企業勤務)
Aさんはプログラミングが得意で、IT系の資格も複数持っていました。しかし「上司の指示の意図がわからない」「チームのミーティングで何を言えばいいかわからない」という悩みを抱えていました。コーチングを通じて、「わからないときに確認する具体的なフレーズ集」を作成。また、ミーティング前に「今日話す内容のポイント3つを書き出す」という習慣をつけました。3ヶ月後、上司から「最近コミュニケーションが取りやすくなった」と言われるようになりました。
事例②:Bさん(20代・ADHD・事務職希望)
Bさんは「仕事が続かない」という悩みを持って相談に来られました。過去3社で短期離職を繰り返していました。コーチングでまず行ったのは「なぜ辞めたのかの振り返り」。するとどの職場でも「急な変更に対応できなかった」「ミスを強く叱責された」という共通点が見えてきました。そこで、「変更があった際の気持ちの整理ステップ」と「ミスをしたときの対処手順」をコーチと一緒に作成。模擬面接も繰り返し、自分の特性を面接官に正直に伝えるスキルも磨きました。現在は事務補助の仕事で1年以上継続就労中です。
7. 就労前後のサポートが定着の鍵——企業・支援者へのメッセージ
帝国データバンクの調査が示すように、就労後に課題が「表面化」するケースは非常に多く、多くの人が自信を失います。これは本人だけの問題ではありません。企業・支援機関・教育現場が連携して、「就労前後の手厚いフォロー」を行うことが、定着の鍵です。
企業にできること
- 業務手順をマニュアル化し、変更がある場合は事前に知らせる
- フィードバックは「具体的に・穏やかに・一つずつ」行う
- 定期的な1on1面談で困りごとを早期にキャッチする
- 発達障害に関する社内研修を実施し、理解ある職場文化を作る
支援者・コーチにできること
- 内定後から就労初期の「不安が高まる時期」に集中してサポートする
- 本人が職場での困りごとを言語化できるよう支援する
- 企業担当者と本人の橋渡し役になる
- 小さな成功体験を積み重ね、自己効力感を高める
「事前のフォロー・ケア・対応が重要」というのは、支援の現場でも企業の場でも共通する認識です。問題が起きてから動くのではなく、「起きる前に備える」姿勢が、発達障害のある方の就労定着を大きく左右します。
8. まとめ——「働く」をあきらめないために
発達障害のある方が職場で直面する壁は、決して「能力の限界」ではありません。特性を理解し、適切なサポートと環境があれば、多くの方が自分らしく「働く」ことができます。
資格は「仕事の入口」を広げる力を持っています。しかし、職場で生き抜くためのコミュニケーション力・自己理解・感情調整は、資格だけでは身につきません。そこにコーチングの大きな価値があります。
コーチングは「答えを教える」ものではなく、「自分の答えを見つける」プロセスです。発達障害のある方が自分の強みを知り、苦手な部分への対処法を身につけ、自信を持って働けるようになる——その旅に寄り添うのがコーチングの役割です。
「どうせ自分には無理だ」と思っているあなたへ。あなたの「働く」は、まだ諦める必要はありません。
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【この記事のポイント】
- 企業が求める「コミュニケーション能力(3%)」は発達障害者にとって最大の壁
- 資格取得は就労の「入口」だが、職場定着にはソフトスキルが不可欠
- コミュニケーションの課題は「性格」ではなく「特性」——対処法は身につけられる
- コーチングは自己理解・目標設定・感情調整・コミュニケーション練習を包括的にサポート
- 就労前後の継続的フォローが定着の鍵
出典:帝国データバンク(2022年9月調査)「企業が新卒採用で重視する点」
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投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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