SMARTの法則と認知行動療法(CBT)、ビジネス・経営学での違いまとめ

SMARTの法則と認知行動療法(CBT)、コーチング心理学・ビジネス・経営学での違いまとめ

SMARTは「目標の書き方や質問法のフレームワーク」であり、認知行動療法(CBT)は心の問題の治療法、コーチング心理学,経営学は組織を成果に導くための体系であり、それぞれ異なるレベルの概念として用いられています。

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 1. SMARTの法則とは何か

SMARTとは、Specific, Measurable, Achievable(または Attainable)、Relevant(または Realistic)、Time-bound の頭文字を取ったもので、「良い目標の条件」を示す枠組みです(Ogbeiwi, 2018; Suvaryan & Karapetyan, 2023; Swaidi, 2023)。

もともとは経営における目標管理(MBO)から発展したもので、現在では医療・リハビリ・公衆衛生・非営利組織など、さまざまな分野で標準的な目標設定ツールとして活用されています(Ogbeiwi, 2018; Scobbie et al., 2009; Swaidi, 2023)。

また、SMARTの拡張形として、評価や適応性を組み込んだSMART-ERやSMAACTといったバリエーションも提案されています(Ogbeiwi, 2018; Suvaryan & Karapetyan, 2023; Dzreke & Dzreke, 2025)。

#主な利用領域の比較

利用領域 目的・使い方 典型的内容 文献
経営・組織 戦略や業績目標の設定・管理 売上目標、KPI、プロジェクト目標 (Gammarano et al., 2025; Suvaryan & Karapetyan, 2023; Scobbie et al., 2009; Swaidi, 2023)
医療・リハビリ 患者・利用者の行動変容・リハビリ目標 服薬、運動、生活習慣などの行動目標 (Lau et al., 2022; Ogbeiwi, 2018; Scobbie et al., 2009)
個人の健康行動 健康コーチング・行動改善の指導 禁煙、運動量、食事などのSMART目標 (Beaulieu et al., 2024; Pan et al., 2025)

2. 認知行動療法(CBT)との関係・違い

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CBTとは「認知(考え方)と行動を変えることで症状を改善する心理療法」であり、うつや不安など多くの精神障害に対してエビデンスのある治療法です(Nakao et al., 2021; Thigpen et al., 2021; Fenn & Byrne, 2013; Misciagna, 2020)。

CBTそのものは、理論と技法の総体で構成されており、

* 認知再構成
* 行動活性化
* 問題解決
* 曝露療法
* ホームワーク

などの技法を含みます(Kazantzis et al., 2018; Serafini et al., 2022; Thigpen et al., 2021; Fenn & Byrne, 2013)。

この中で目標設定は、「治療のゴール」や「行動課題」を明確にするためのプロセスとして位置づけられており、SMARTのような枠組みが援用される場合があります(Kazantzis et al., 2018; Serafini et al., 2022; Norbury et al., 2024)。

つまり、

* CBT:治療の枠組み・プログラム全体
* SMART:その中で用いられる『目標の書き方ツール』

というように、入れ子構造に近い関係性にあるといえます。

3. コーチング心理学・ビジネス・経営学におけるSMARTとCBT的アプローチ

コーチング心理学では,治療意外の目的で,行動活性化,問題解決,メンタルケア・目標設定に活用されます。

経営学においてSMARTは、目標管理(MBO)やKPI設計の標準的なツールとして広く使われています(Gammarano et al., 2025; Suvaryan & Karapetyan, 2023; Swaidi, 2023)。

加えて、知識マネジメントや組織能力と組み合わせることで、競争優位を高める枠組みとしても論じられています(Gammarano et al., 2025)。

近年では、変化の激しいビジネス環境において従来型のSMARTが硬直的になりやすいという批判があり、適応性・評価・学習といった視点を取り入れたSMARTERやSMAACTへの発展も議論されています(Gammarano et al., 2025; Ogbeiwi, 2018; Suvaryan & Karapetyan, 2023; Dzreke & Dzreke, 2025)。

さらに、コーチング心理学では,行動科学や心理学の理論(社会的認知理論、CBT、行動変容技法など)を応用して、

* 目標設定(SMART)
* 自己効力感の向上
* フィードバック

を組み合わせることで、従業員や患者の行動変容を促す「自己管理」や「デジタル介入」も増加しています(Lau et al., 2022; Lau et al., 2020; Pan et al., 2025)。

まとめ

SMARTは「どのように目標の質問法,記述」のフレームワーク・フォーマットであり、CBTは症状改善のための心理療法の体系、経営学は組織全体のマネジメント理論というように、階層が異なる概念です。

しかし、CBTや経営のいずれにおいても「行動を変える」という場面では、SMARTが共通の技術的ツールとして取り入れられている点に共通性があります。

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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