時間のウェルビーイングコーチング 認知行動とポジティブ心理学コーチングの対話
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時間のウェルビーイング:幸福の新しい視点
現代社会では「お金の豊かさ」や「物質的な成功」だけでは、私たちの幸福は測れなくなっています。そこで注目されているのが 「時間のウェルビーイング(Temporal Well-being)」 です。これは「どのように時間を使い、どのように時間を感じるか」が、幸福感や健康に大きな影響を与えるという考え方です。
⏳ 時間のウェルビーイングとは?
時間のウェルビーイングには、以下のような側面があります。
- 時間パースペクティブ(過去・現在・未来への態度)
過去を肯定的にとらえ、未来に希望を持ちつつ、現在を楽しむバランスが幸福感を高めます (Drake et al., 2008; Zhang et al., 2013)。 - 自由時間の量と質
自由時間が少なすぎても多すぎても幸福度は下がることがわかっています。適度な自由時間と充実した活動が最も高いウェルビーイングをもたらします (Sharif et al., 2021)。 - 時間管理感覚・タイムアフルエンス
「自分の時間をコントロールできている」という感覚は、仕事や家庭での幸福感を強めます (Moen et al., 2013)。
📊 研究からわかること
| 主張 | エビデンス | 代表研究 |
|---|---|---|
| バランスの取れた時間パースペクティブは幸福感を高める | 強い | Drake et al. (2008), Jankowski et al. (2020) |
| 自由時間は「多すぎても少なすぎても」幸福度を下げる | 強い | Sharif et al. (2021), Krueger et al. (2009) |
| 時間管理能力が高いと心理的健康が向上する | 中程度 | Moen et al. (2013), Rigotti et al. (2021) |
🧭 コーチング心理学との接点
時間のウェルビーイングの向上には、コーチング心理学の実践が有効です。
- 認知行動コーチング(CBC)は、時間の使い方に関する「思い込み」や「不安」を修正し、行動変容を支援します。
- ポジティブ心理学的アプローチは、「今この瞬間の充実感」と「未来への希望」の両立を助けます。
- 「良い質問」を使うことで、自分自身や相手の時間の使い方に気づきを促すことができます。
💡 実生活での応用
- 仕事:在宅勤務や柔軟な働き方を取り入れることで、時間資源をコントロールしやすくなり、ワークライフバランスが改善します。
- 教育:学生に時間の使い方を意識させる教育は、自己効力感と幸福感を高めます (Kuan & Zhang, 2022)。
- 高齢期:趣味や余暇活動を自分で選び取ることが、長寿や幸福感に直結します (Harada et al., 2023)。
❓ コーチングで活用できる質問例
| 質問 | 狙い |
|---|---|
| 「過去の時間の使い方で、今でも誇りに思えることは何ですか?」 | 過去の肯定的再評価 |
| 「今の生活で『時間が足りない』と感じるのはどんな場面ですか?」 | 時間圧の認識 |
| 「未来の自分が満足できる時間の使い方はどんなものですか?」 | 未来志向の形成 |
| 「小さな余白の時間をもっと活かすとしたら、何に使いたいですか?」 | タイムアフルエンスの促進 |
時間のウェルビーイングは、現代社会で幸福を考える上で欠かせない要素です。
「時間の質」を高めることは、人生全体の幸福感を高める最も身近で効果的なアプローチ といえるでしょう。
これからのウェルビーイング研究や実践は、「どれだけ稼ぐか」ではなく、「どのように時間を感じ、使うか」 に焦点を当てていく必要があります。
「タイムマネジメントコーチング」と「時間的ウェルビーイング」の関係について、研究・実践の両面についてまとめました。
⏳ タイムマネジメントコーチングと時間的ウェルビーイングの関係
1. タイムマネジメントとウェルビーイング
従来のタイムマネジメント研究では、効率性や生産性の向上が主な焦点でした。しかし、近年の研究では、単に「時間を効率的に使う」だけでなく、**「時間をどのように感じ、満足できるか」**が重要であることが示されています。
- 時間管理能力が高い人は、ストレスが低く、心理的健康が高い(Moen et al., 2013; Rigotti et al., 2021)。
- 自由時間の満足度やバランス感覚が幸福度を媒介する(Osin & Boniwell, 2024)。
- 柔軟な勤務時間や自己決定感は、ワークライフバランスを改善し、時間的ウェルビーイングを高める(Nijp et al., 2012; Mullens & Laurijssen, 2024)。
2. タイムマネジメントコーチングの特徴
タイムマネジメントコーチングでは、以下のようなスキルや認知の変化を促します。
- 優先順位の明確化:「重要だが緊急でないこと」に時間を投資できるよう支援。
- 時間に関する認知の修正:「時間が足りない」という思い込みを再構成。
- 自己効力感の強化:時間のコントロール感を高め、自己決定感を強化。
- マイクロ・ハビット形成:小さな時間の使い方の改善を積み重ねる。
3. 時間的ウェルビーイングとの関係性モデル
モデル
- タイムマネジメント能力向上
↓ - 時間コントロール感・時間効率性の向上
↓ - 時間の使い方満足度・タイムアフルエンスの増大
↓ - 主観的ウェルビーイング(幸福感・心理的健康)の向上
4. コーチングで活用できる質問例
| 質問 | 狙い |
|---|---|
| 「今、最も時間を奪っている活動は何ですか?」 | 非効率な習慣の気づき |
| 「もし1日30分自由にできるとしたら、何に使いたいですか?」 | 価値観に基づく時間設計 |
| 「あなたにとって『大切だが緊急ではないこと』は何ですか?」 | 長期的視点の強化 |
| 「時間をコントロールできたと感じる瞬間はどんなときですか?」 | 自己効力感の強化 |
⏳ 時間ウェルビーイング・コーチング質問集
1. 現状認識(Awareness)
| 質問例 | 狙い |
|---|---|
| 「最近、時間に追われていると感じるのはどんなときですか?」 | 時間圧の認識 |
| 「一日の中で『無駄にしている』と感じる時間はありますか?」 | 非効率な時間の発見 |
| 「あなたにとって『時間が足りない』と強く思うのはどんな場面ですか?」 | 感情と時間感覚の関連づけ |
| 「過去1週間で、充実したと感じた時間はどんな瞬間でしたか?」 | ポジティブな時間体験の再確認 |
2. 未来志向・価値探索(Prospection & Values)
| 質問例 | 狙い |
|---|---|
| 「未来のあなたが満足できる時間の使い方はどんなものですか?」 | 未来志向の強化 |
| 「もし1日30分自由に使えるなら、何に使いたいですか?」 | 価値観の優先順位の把握 |
| 「10年後の自分が『やっておいてよかった』と思う活動は何ですか?」 | 長期的視点の導入 |
| 「あなたにとって『大切だが緊急ではないこと』は何ですか?」 | アイゼンハワーマトリックスの応用 |
3. 行動計画(Action Planning)
| 質問例 | 狙い |
|---|---|
| 「今週、10分だけでも『自分の時間』をつくるためにできる工夫は何ですか?」 | 小さな一歩の設定 |
| 「夜の習慣を1つ変えるとしたら、どんな行動が最も効果的だと思いますか?」 | 習慣改善 |
| 「今日からすぐに始められる、時間の使い方改善策は何ですか?」 | 即時実行可能性の確認 |
| 「どのタイミングなら、あなたは一番エネルギー高く時間を使えそうですか?」 | 行動実行の最適タイミング発見 |
4. 内省と気づき(Reflection)
| 質問例 | 狙い |
|---|---|
| 「どんなときに『時間をコントロールできている』と感じますか?」 | 自己効力感の強化 |
| 「これまでの人生で、時間の使い方に誇りを持てる経験はありますか?」 | ポジティブな再評価 |
| 「時間の使い方を変えることで、人間関係にどんな影響が出ると思いますか?」 | 社会的ウェルビーイングとの関連づけ |
| 「今の時間の使い方は、あなたの価値観にどのくらい合っていますか?」 | 価値と行動の整合性チェック |
🗣️ コーチング例:対話事例:時間のウェルビーイングを高める
*コーチングの会話例とともに質問・やり取りの意図について解説しました。
コーチ:
「最近、時間の使い方についてどんなことを感じていますか?」
(現状認識を促すオープンクエスチョン)
クライエント:
「いつも時間に追われている感覚があります。仕事も家事もあって、自由時間が足りない気がします。」
(時間圧の気づき)
コーチ:
「その『自由時間が足りない』と感じるのは、どんな瞬間が多いですか?」
(具体化・パターンの把握)
クライエント:
「夕方に仕事が終わっても、メールを確認したり、子どもの世話で夜まであっという間に過ぎてしまいます。」
(時間の流れの認識)
コーチ:
「なるほど。もし少しでも『余白の時間』が取れるとしたら、どんなことに使いたいですか?」
(未来志向・価値観の探求)
クライエント:
「本を読んだり、散歩したり、自分のための静かな時間がほしいです。」
(価値に沿った理想の時間の明確化)
コーチ:
「素敵ですね。では、一日の中で10分でもそうした時間を生み出すために、どんな工夫ができそうですか?」
(小さな行動変化の促進)
クライエント:
「夜のメールチェックをやめて、その時間を散歩にあてることならできそうです。」
(具体的行動計画の発見)
コーチ:
「いいアイデアですね。実際にやってみると、どんな気持ちになれそうですか?」
(実行の動機づけ)
クライエント:
「少しでも気持ちが落ち着いて、充実感を得られる気がします。」
(ポジティブ感情の予期)
コーチ:
「では、この1週間は『夜の10分散歩』を実験してみてはいかがでしょう?小さな一歩が、時間の使い方全体に変化をもたらすかもしれません。」
(実践課題の設定)
クライエント:
「はい、試してみます!」
(コミットメントの形成)
✨ ポイント
- 質問の焦点を「過去」ではなく「現在と未来」に置くことで、自己効力感を高める。
- 小さな変化から始めることで実行可能性を高め、ポジティブなフィードバックループを作る。
- 時間のウェルビーイングを「量」ではなく「質」で捉え直す支援を行う。
🕰️ Time-PERMA-HMC Well-being Scale(TPWS-24)
目的:時間の使い方が、幸福の8次元(感情・没頭・関係・意味・達成・健康・お金・キャリア)にどう影響しているかを測定。
回答形式:5件法リッカート尺度(1=全く当てはまらない ~ 5=非常に当てはまる)
項目数:8因子 × 各3項目 = 24項目 *研究中 *チェックリストとして利用できます。
1. 各因子と項目例
(P) Positive Emotion(感情 × 時間)
- 私は自分の時間の使い方に喜びや楽しさを感じている。
- 私の時間の過ごし方は、ポジティブな気分を高めている。
- 時間の使い方によって、ストレスよりも充実感を多く感じている。
(E) Engagement(没頭 × 時間)
- 私は時間を忘れるほど没頭できる活動に、定期的に時間を使っている。
- 自分の時間の使い方は、挑戦や成長につながっている。
- 活動中に「フロー状態(夢中になっている状態)」をよく経験している。
(R) Relationships(人間関係 × 時間)
- 私は大切な人と過ごす時間を十分に取れている。
- 人とのつながりを深めるために、意識的に時間を使っている。
- 私の時間の使い方は、人間関係を豊かにしている。
(M) Meaning(意味・目的 × 時間)
- 私の時間の使い方は、自分にとって意味のある活動とつながっている。
- 私が費やす時間は、自分の価値観や生きがいを反映している。
- 時間の使い方を通して、自分の人生の目的を感じている。
(A) Accomplishment(達成 × 時間)
- 私は時間を有効に使うことで、目標を達成できていると感じる。
- 私の時間の管理は、達成感を高めている。
- 自分の時間の使い方が、成果や成功につながっている。
(H) Health(健康 × 時間)
- 私は健康のために十分な時間を確保している。
- 睡眠・運動・休養にバランスよく時間を使えている。
- 時間の使い方が、心身の健康を支えていると感じる。
(M$) Money(経済・お金 × 時間)
- 私の時間の使い方は、経済的な安定や安心につながっている。
- 働き方やお金に関する時間の配分に満足している。
- 将来のために、時間とお金をバランスよく使えている。
(C) Career(キャリア × 時間)
- 私の時間の使い方は、キャリアや専門性の成長に役立っている。
- 仕事や学びに充てる時間が、将来のキャリアにプラスになると感じる。
- キャリアの目標に向けて、効果的に時間を使えている。
3. コーチングでの質問例
| 因子 | コーチング質問例 |
|---|---|
| P(感情) | 「どんな時間の過ごし方が、もっとポジティブな感情を生み出しますか?」 |
| E(没頭) | 「夢中になれる活動に、どのくらい時間を確保できますか?」 |
| R(関係) | 「大切な人との時間を優先するために、どんな工夫ができますか?」 |
| M(意味) | 「今の時間の使い方は、どんな価値観を反映していますか?」 |
| A(達成) | 「時間をどう使えば、達成感をさらに高められますか?」 |
| H(健康) | 「健康を守るために、どんな時間の使い方を見直したいですか?」 |
| M$(お金) | 「お金と時間のバランスを整えるために、どんな選択ができそうですか?」 |
| C(キャリア) | 「キャリア成長のために、もっと投資すべき時間はどこにありますか?」 |
投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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