コーチング・コーチング心理学 手法の種類

Coaching

コーチングの8つのタイプ:実践的詳細解説

それぞれのコーチングタイプについて、目的・対象者・具体的な場面・使用する技法・成果の見え方を、より実務的な視点から解説します。


1. スキルとパフォーマンス向上コーチング

どんなコーチング?

「今、目の前の仕事をもっと上手くできるようになる」ことを目指す、最も実務直結型のコーチングです。

誰のため?

  • 新しい業務を任された若手・中堅社員
  • 配置転換や昇進直後で新しいスキルが必要な人
  • 営業成績や業務効率を具体的に上げたい人

具体的な場面

  • 「営業の成約率を20%上げたい」
  • 「プレゼンで緊張してうまく話せない」
  • 「タスク管理が苦手で締切に追われている」
  • 「新任管理職として部下への指示の出し方を学びたい」

使う技法

GROWモデル:目標(Goal)→現状(Reality)→選択肢(Options)→実行(Will)という対話の流れ

SMART目標設定:具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Achievable)、関連性(Relevant)、期限(Time-bound)な目標を設定

行動リハーサル:実際の場面を想定したロールプレイで練習

成果の見え方

  • 営業の売上が15%向上
  • プレゼン後のアンケート評価が上昇
  • 残業時間が月20時間削減
  • 上司からの評価点が改善

期間の目安:3ヶ月〜6ヶ月程度の短中期


2. 能力開発コーチング

どんなコーチング?

「自分の中に眠っている可能性を引き出し、成長の土台を作る」ことを目指す、内面重視のコーチングです。

誰のため?

  • もっと成長したいと感じている意欲的な社員
  • 自分の強みや適性がわからない人
  • 次のステップ(リーダーや専門家)を目指す人

具体的な場面

  • 「自分の強みって何だろう?」
  • 「いつも同じパターンで失敗してしまう」
  • 「もっと自信を持って仕事がしたい」
  • 「学んだことがなかなか身につかない」

使う技法

ストレングス・アプローチ:「できないこと」より「できること」に注目し、強みを伸ばす

リフレクション(内省):経験を振り返り、そこから学びを引き出す深い質問

  • 「そのとき、何があなたを動かしたのですか?」
  • 「その成功体験から、あなたの何が見えますか?」

成人発達理論:人の成長段階を理解し、次のステージへの移行を支援

成果の見え方

  • 「私は分析力が強みだとわかった」という自己理解
  • 新しいチャレンジを自ら選択する行動
  • 学習意欲の向上と自主的な勉強の開始
  • 半年後、1年後に任される役割の幅が広がる

期間の目安:6ヶ月〜1年以上の中長期


3. 変革を促すコーチング

どんなコーチング?

「今までの考え方や前提そのものを問い直し、新しい可能性を開く」ことを目指す、変容重視のコーチングです。

誰のため?

  • 大きな変化の時期にある組織や個人
  • 「このやり方でいいのか?」と疑問を感じている人
  • イノベーションを起こす必要がある立場の人

具体的な場面

  • 「業界の常識が通用しなくなってきた」
  • 「成功体験が足かせになっている気がする」
  • 「新規事業を立ち上げたいが、発想が固まっている」
  • 「組織文化を変えたいが、どう動けばいいかわからない」

使う技法

ダブルループ学習:「やり方」を変えるだけでなく、「前提となる考え方」自体を見直す

認知行動コーチング:「〜すべき」「〜に決まっている」といった思い込みを特定し、柔軟な思考に変える

ナラティブ・アプローチ:自分の「物語」を語り直すことで、新しい意味や可能性を発見

成果の見え方

  • 「失敗は悪」→「失敗は学びのチャンス」という認識転換
  • 従来なら選ばなかった選択肢を検討できるようになる
  • 不確実な状況でも決断できるようになる
  • 新しいビジネスモデルや業務プロセスを創出

期間の目安:6ヶ月〜1年、場合により継続的


4. エグゼクティブ・コーチング

どんなコーチング?

「経営層・上級リーダーとしての判断力、影響力、人間的成熟を高める」ことを目指す、最も高度なコーチングです。

誰のため?

  • 経営者、役員、部長以上の上級管理職
  • 将来の経営幹部候補(ハイポテンシャル人材)
  • 事業責任者、重要プロジェクトのリーダー

具体的な場面

  • 「経営判断の質を上げたい」
  • 「組織全体への影響力を高めたい」
  • 「リーダーとして孤独を感じる」
  • 「自分のリーダーシップスタイルを見直したい」
  • 「ワークライフバランスが崩れている」

使う技法

システムズ思考:部分ではなく全体を見る、相互関係や波及効果を考慮した意思決定

360度フィードバック:上司・同僚・部下からの多面的評価を活用

メタ認知対話:「自分がどう考えているか」を俯瞰的に見る能力の開発

適応型リーダーシップ:状況に応じて最適なリーダーシップを発揮する

成果の見え方

  • より戦略的で長期的な視点での意思決定
  • 組織のエンゲージメントスコアの向上
  • 周囲からの信頼・尊敬の増加
  • 危機的状況での冷静で効果的な対応
  • 後継者育成の進展

期間の目安:1年以上、継続的な関係も多い

特徴:完全な守秘義務、1対1の深い信頼関係が前提


5. チーム・コーチング

どんなコーチング?

「チーム全体の力を引き出し、メンバーの協働と集合知を最大化する」ことを目指す、集団対象のコーチングです。

誰のため?

  • 新規プロジェクトチーム
  • 部署やチーム全体
  • 経営チーム・役員会
  • 部門横断のタスクフォース

具体的な場面

  • 「チームの方向性がバラバラ」
  • 「メンバー間の連携がうまくいかない」
  • 「意見の対立が表面化せず、問題が潜在化している」
  • 「リモートワークでチームの一体感が薄れた」
  • 「新メンバー加入後、チームがうまく機能していない」

使う技法

心理的安全性の構築:失敗や意見を安心して共有できる環境づくり

チーム・リフレクション:チーム全体で活動を振り返り、改善点を見出す

ファシリテーション:建設的な対話を促進し、合意形成を支援

成果の見え方

  • プロジェクトの納期遵守率の向上
  • メンバー間の信頼度調査スコアの改善
  • 問題解決までの時間短縮
  • 会議での発言量・質の向上
  • チーム全体の創造性向上

期間の目安:3ヶ月〜6ヶ月、定期セッション形式

特徴:個人コーチングと異なり、メンバー全員参加のセッション


6. ピア・コーチング

どんなコーチング?

「同僚同士が対等な立場で互いに支援し、学び合う」ことを目指す、相互成長型のコーチングです。

誰のため?

  • 同期入社のグループ
  • 同じ職種・専門性を持つ仲間
  • 学習コミュニティのメンバー
  • 社内の自主勉強会参加者

具体的な場面

  • 「同じような課題を抱えている同僚と相談したい」
  • 「経験を共有し合いながら成長したい」
  • 「外部コーチを雇う予算はないが、学び合いたい」
  • 「孤立感を感じているので、支え合える関係がほしい」

使う技法

リフレクティブ・ダイアログ:互いの経験を深く聴き合い、気づきを引き出す

コミュニティ・オブ・プラクティス:実践コミュニティとしての学習文化の形成

基本的なコーチングスキル:傾聴、質問、フィードバックの相互提供

成果の見え方

  • 月1回の学び合いが1年間継続
  • 互いの課題解決のヒントを得られる
  • 職場での孤立感の軽減
  • 自己解決能力の向上
  • 組織内の横のつながり強化

期間の目安:継続的(数ヶ月〜数年)

特徴:低コストで実施可能、組織文化として根付かせることが理想


7. ライフ・コーチング

どんなコーチング?

「仕事だけでなく、人生全体の充実と幸福を追求する」ことを目指す、包括的なコーチングです。

誰のため?

  • 人生の転換期にある人(結婚、出産、転職、退職など)
  • ワークライフバランスに悩んでいる人
  • 「このままでいいのか?」と人生を見直したい人
  • 年齢や職業を問わず、より良い人生を求める全ての人

具体的な場面

  • 「仕事ばかりで家族との時間が取れない」
  • 「何のために働いているのかわからなくなった」
  • 「子育てと仕事の両立に悩んでいる」
  • 「定年後の人生をどう生きるか考えたい」
  • 「健康・趣味・人間関係も含めて、人生を見直したい」

使う技法

ウェルビーイング理論:幸福を構成する要素(PERMA:ポジティブ感情、エンゲージメント、人間関係、意味、達成)を高める

バリュー・クラリフィケーション:自分にとって本当に大切な価値観を明確にする

ビジョン・ワーク:理想の人生像を描き、そこに向かう道筋を設計

成果の見え方

  • 主観的幸福感の向上
  • 生活満足度スコアの改善
  • 仕事と私生活のバランス実現
  • 人生の目的感・意味の発見
  • より一貫性のある意思決定

期間の目安:3ヶ月〜1年

特徴:ビジネスコーチングより個人的・私的な内容を扱う


8. キャリア・コーチング

どんなコーチング?

「職業人生の方向性を見定め、キャリアの選択と移行を支援する」ことを目指す、キャリア特化型のコーチングです。

誰のため?

  • 就職活動中の学生
  • 転職を考えている社会人
  • キャリアの方向性に迷っている人
  • 昇進や配置転換の節目にある人

具体的な場面

  • 「自分に合った仕事が何かわからない」
  • 「転職すべきか、今の会社に残るべきか迷っている」
  • 「管理職になるべきか、専門職を極めるべきか」
  • 「40代でキャリアチェンジは可能か?」
  • 「やりたいことと、できることのギャップに悩んでいる」

使う技法

キャリア構成理論:過去の経験から一貫したテーマを見出し、未来のキャリアを構想

ライフデザイン:仕事だけでなく、人生全体の文脈でキャリアを設計

ナラティブ・キャリア:自分のキャリアストーリーを語り直すことで、新しい意味や方向性を発見

キャリアアセスメント:適性検査や価値観診断を活用

成果の見え方

  • 「自分は〇〇の仕事が向いている」という納得感
  • 転職先の決定と行動開始
  • キャリア満足度の向上
  • 3年後、5年後のキャリアプランの明確化
  • 面接合格率の向上

期間の目安:3ヶ月〜6ヶ月(転職・就職活動期間に応じて)

特徴:実務的支援(履歴書添削、面接練習)も含むことがある


【比較表】どのコーチングを選ぶ?

タイプ 焦点 時間軸 主な効果
スキル・パフォーマンス 業務スキル 短期(3-6ヶ月) 即戦力化
能力開発 潜在能力 中長期(6ヶ月-1年) 成長基盤
変革促進 思考転換 中長期(6ヶ月-1年) イノベーション
エグゼクティブ リーダーシップ 長期(1年以上) 経営力
チーム 協働性 中期(3-6ヶ月) チーム力
ピア 相互学習 継続的 学習文化
ライフ 人生全体 中期(3ヶ月-1年) 幸福感
キャリア 職業選択 中期(3-6ヶ月) キャリア形成

まとめ:状況に応じた選び方

「今すぐ成果を出したい」 → スキル・パフォーマンス向上コーチング

「自分の可能性を広げたい」 → 能力開発コーチング

「大きく変わりたい・変える必要がある」 → 変革促進コーチング

「経営・リーダーとして成長したい」 → エグゼクティブ・コーチング

「チーム全体を強くしたい」 → チーム・コーチング

「仲間と学び合いたい」 → ピア・コーチング

「人生を見直したい」 → ライフ・コーチング

「キャリアの方向性を定めたい」 → キャリア・コーチング

実際には、これらを組み合わせたり、段階的に進めることも効果的です。

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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