国際ポジティブ心理学会2025 IPPA2025 報告レポート


国際ポジティブ心理学会2025に参加報告
IPPA 2025 世界大会 参加報告
■ 開催概要
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大会名:9th World Congress on Positive Psychology
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主催:International Positive Psychology Association (IPPA)
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開催日:2025年7月2日~5日
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開催地:オーストラリア ブリズベン
今回のIPPA 2025は、ポジティブ心理学の最新研究だけでなく、臨床や教育、コミュニティ支援への実践応用が大きなテーマでした。特に 物語(narrative) の重要性や、「問いを生きる」という姿勢、そして 強みの文脈依存性 が繰り返し語られていたのが印象的です。

「危機の物語を書き換え、レジリエンス(回復力)、成長、そして希望の物語へと変える (Rewriting Narrative of Crisis into Storeis of Resilience, Growth & Hope)」
■Tayyab Rashid 博士のカンファレンス最終公演
テーマ:人が自分らしく生き直すための5つの視点
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トラウマは動的である
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トラウマの物語は人を癒す力にもなり得るが、固定化すると成長を妨げる。
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データから離れてはいけない
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PPTは物語と科学データの両輪で成り立つ。
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強みは文脈次第である
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親切心、好奇心、赦しなども状況次第で弱みになる可能性。
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問いに生きる
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答えを与えるのではなく、自ら問いを抱き続ける姿勢が重要。
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共に学び、成長する
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セラピーは共に物語を書き換える営みである。
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印象的な言葉
Take back the script.
Become the author of your own life.
Live into your questions.
And find the divine presence—in yourself, and in others.
② Strengths Are Contextual(強みの文脈性)
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Kindness → Compromised fairness(公平さを損なう優しさ)
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Forgiveness → Enabled exploitation(搾取を許す赦し)
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Curiosity → Induced anxiety(不安を生む好奇心)
強みの過度な強調は、文脈次第で逆効果になるという鋭い指摘が印象的でした。
③ Ohio Innocence Project の報告
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冤罪被害者への支援活動の中で、彼らの「強み」を分析。
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Gratitude(感謝)、Honesty(誠実さ) などが頻出。
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特に「赦し」はトップには来ておらず、「赦せ」と安易に勧める危険性が指摘されました。
④ ビデオ・インタビュー
パキスタンの女優で、サバイバーでもある女性の言葉:
「私は私の責任です。過去に何があっても、今の感情や選択は私自身のものです。
悲しみを抱えるのも、人生を生きるのも、自分の選択。
そして私は、神聖なもの(divine presence)を最も強く“子どもたち”の中に見出してきました。とくに、虐待され、無視され、見捨てられた子どもたちの中に。」
自らの脚本を取り戻す力強いメッセージでした。
■ 学びと今後の活かし方
今回の参加で以下のことを強く感じました。
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物語と科学の両輪:臨床現場で「物語」を聞きつつも、エビデンスに基づく視点を忘れないこと。
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強みの使い方の慎重さ:強みは状況次第で弱みにもなりうるため、クライアントの文脈理解が不可欠。
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問いに生きる:単純な答えを与えるのではなく、問いをクライアントと共に探求する姿勢が重要。
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人とのつながり:深い喜びや癒しは、ほとんどが他者との関係性の中で生まれる。
今後の臨床・教育・コーチングの現場で、こうした視点を大切にしていきたいと思います。
人が自分らしく生き直すための5つの視点
~ポジティブ心理療法(PPT)の実践から~
✅ 視点1:トラウマは動的である
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トラウマは単なる過去の出来事ではなく、語り方によって癒しの力にもなれば、逆に成長を妨げることもある。
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語られる物語は断片的で、一度に語られるとは限らない。固定的に「その人のすべて」と決めつけることは避けるべきだ。
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【事例】パーソナリティ障害のある若者が、16歳、17歳、18歳…と過去の痛みを語る場面で、他の参加者が涙を流し共感が生まれた。
✅ 視点2:データから離れてはいけない
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物語は力を持つが、それだけに頼ると偏るリスクがある。
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PPTは、小規模研究から始まり、20年をかけランダム化比較試験(RCT)やメタ分析で科学的裏付けを強化してきた。
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臨床実践は「物語」と「データ」の両輪で行うべき。
✅ 視点3:強みは文脈次第である
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「あなたの強みは〇〇」と機械的に断定するのは危険。強みは万能ではなく、文脈次第で弱みにもなる。
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【例】
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親切 → 自己犠牲や公平さの欠如
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好奇心 → 不安や衝動性
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赦し → 不当な搾取を許す可能性
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オハイオ無実プロジェクトの人々にとって赦しはトップの強みではなかった(スライド②、スライド⑨)。
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一方、ガイアナでの元夫婦の関係修復では赦しが力を発揮した(スライド⑤ Dinesh & Roopa)。
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✅ 視点4:問いに生きる
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多くの人は「答え(解決策)」を求めるが、PPTは「問いに生きる」ことを促す。
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「低い自尊心が原因」や「インナーチャイルドを癒せばいい」といった単純な答えは思考を止めてしまう。
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大切なのは、「あなたの強みをどう使いたいか」「意味ある使い方は何か」と問い続けること。
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【引用】
“Tell me, what are you going to do with your strengths… how are you going to use them for your own good and that of others?”(スライド⑧)
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クライアント自身が問いを持ち、その問いに生きることが変化の鍵となる。
✅ 視点5:共に学び、成長する
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セラピーは「壊してから再構築する」場ではなく、共に物語を書き換えていく営み。
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語り直しには勇気が要り、うまくいかないこともあるが「共に歩む」姿勢が大切。
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【体験的エクササイズ】
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笑った瞬間、喜び、意味、達成感を思い出す瞑想を行い、その体験を「一人で味わったものか」を問い直す。多くの場合、人とのつながりの中で生まれていることに気づく。
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【解説】
私たちの最も深い喜びは、他者との関係性の中で育まれる。PPTも社会的・関係的な文脈を重視する。 -
【関連スライド】スライド⑦「Re-writing is an Act of Communion」
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Break open, not break apart(壊すのではなく、開いていく)
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物語の書き換えは、練習と繰り返しによる共創的スキル。
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ビデオメッセージの紹介
パキスタンの女優であり、サバイバーでもある女性の言葉:
「私は私の責任です。過去に何があっても、今の感情や選択は私自身のものです。悲しみを抱えるのも、人生を生きるのも、自分の選択。そして私は、神聖なもの(divine presence)を最も強く“子どもたち”の中に見出してきました。とくに、虐待され、無視され、見捨てられた子どもたちの中に。」
彼女は、人生の脚本を引き継ぎ、自ら書き直すことを選び、その力を「他者とつながる中」に見出している。
講演の締めくくりの言葉
Take back the script.
Become the author of your own life.
Live into your questions.
And find the divine presence—in yourself, and in others.
統合的まとめ
この講演やスライド群を貫くメッセージは、単なる「ポジティブ思考」ではありません。
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人生を自分で書き直す力
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問いを生きる勇気
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他者と共に物語を編む関係性
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強みを盲目的に信奉せず、文脈を見極める洞察
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科学的エビデンスと主観的物語の統合
こうした多面的アプローチこそ、ポジティブ心理療法(PPT)の本質です。
そして最終的に人が自分らしく生き直すとは、「問い」と「つながり」の中にこそ見いだされるのです。
✔ Take back the script.
「人生の脚本を取り戻せ」
- 他人や過去の出来事に支配されるのではなく、自分自身の人生を自分の手に取り戻すという意味。
- 「自分には選択肢がある」と気づくことを促す言葉です。
✔ Become the author of your own life.
「自分の人生の作者になれ」
- 自分の物語を自分で書き直す存在になること。
- 過去や環境に書かれたままのストーリーに縛られず、未来を自分で創り出せるという希望を込めた表現です。
✔ Live into your questions.
「自分の問いの中に生きよ」
- すぐに答えを探そうとするのではなく、自分にとって大切な問いを持ち続けながら生きる姿勢。
- 「答え」がない不確実な状況の中でも、問いを抱え続けることが、自分らしい人生を形作るという考えです。
✔ And find the divine presence—in yourself, and in others.
「そして、自分の中にも他者の中にも、神聖なものを見出せ」
- divine presence(神聖な存在)とは、宗教的な神に限らず、「尊厳」「価値」「美しさ」「深いつながり」など、人間の中にある崇高で大切なものを指します。
- 自分自身の中にも、他者の中にも、その神聖さを見出すことで、人はより豊かに、つながりを持って生きられるという意味です。
全体としての意訳
「自分の人生を、過去や他人に書かれたままにはせず、自分の手で書き直していこう。
そのためには、すぐに答えを求めるのではなく、あなた自身の問いを抱えながら生きること。
そして、自分の中にも他人の中にも、尊いもの、神聖なものを見つけ出してほしい。」
投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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