コルトハーヘンのALACTモデルとは? リフレクション心理学入門

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🔄 コルトハーヘンのALACTモデルとは?

教育現場や実践的な職業訓練(例:教師、看護師、コーチ、カウンセラーなど)において「経験から学ぶ」ための振り返りモデルです。

「真の学びは、経験だけでなく、経験についての振り返りから生まれる。」フレッド・コルトハーヘン(Fred Korthagen)

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ALACTは、それぞれの頭文字に意味があります:

以下は、A-L-A-C-Tモデル(ALACT Model)と呼ばれるリフレクションのフレームワークについて、各ステップの意味・解説とコーチングに活用できる質問をまとめた表です。このモデルは教育やコーチング、医療など幅広い実践分野で応用されており、実践→内省→再設計→実践という循環型の学びを支えます。


🔄 ALACTモデルの概要とコーチングでの応用質問

略称 ステップ名(英語/日本語) 解説 コーチングでの活用質問例
A Action(行為) 実際にとった行動。何を、どこで、どのように行ったかを把握する。 ・何が起きましたか?
・そのときどんな行動をとりましたか?
L Looking back on the action(行為のふり返り) 行動を終えた後に冷静に振り返ることで、感情や判断を可視化する。 ・その時、どのように感じていましたか?
・印象的な場面は何ですか?
A Awareness of essential aspects(本質的な諸相への気づき) その行動の背後にある価値観・前提・構造的な要因に気づく段階。 ・なぜそのように対応したのでしょうか?
・その行動は何に基づいていましたか?
C Creating alternative methods(行為の選択肢の拡大) 今後、別の選択肢や可能性を生み出す段階。柔軟性・創造性を重視する。 ・他にどんなやり方がありそうですか?
・もし、別のやり方があるとしたら?
T Trial(新しい行為の試み) 代替案を次の実践で試し、再び循環させていくアクションプラン。 ・今回得た学びを、次はどこでどう活かせますか?
・次の一歩は何ですか?

ALACTの会話分析例

フェーズ コーチ クライエント (目的)
A:行動
「プレゼンのとき、実際にはどんなことをされましたか?」
「スライドを読んで説明しました。」
(事実の確認)
L:振り返り
「そのとき、どんな気持ちでしたか?」
「緊張して頭が真っ白でした。」
(感情の認識)
A:本質の気づき
「なぜ緊張したと思いますか?」
「上司に良く見られたいと思っていたからです。」
(内的要因の特定)
C:代替案の創造
「次に同じ状況なら、どんな準備をしたいですか?」
「リハーサルをして安心感を持ちたいです。」
(新行動の設計)
T:試行
「では、来週の打ち合わせまでに何を試しますか?」
「同僚と練習してみます。」
(実行へのコミットメント)

🌀 モデルの5ステップを詳しく

① 行為(Action)

  • 実際に起こったこと、または自分がとった行動。

  • 例:「授業中にある生徒が話を聞いていなかったため、注意をした。」


② 行為のふり返り(Looking back on the action)

  • 自分が何をしたか、なぜそうしたかを思い出し、感情や状況を整理。

  • この時点ではまだ「評価」や「反省」ではなく、ありのままに観察する。


③ 本質的な諸相への気づき(Awareness of essential aspects)

  • 起きた行為の背後にある「本質的な意味・要因」に目を向ける。

  • 例:「生徒が話を聞いていなかった理由は、授業がわかりにくかったのかもしれない」

👉 自分の価値観、信念、前提、他者との関係性などへの洞察を深めるフェーズ。


④ 行為の選択肢の拡大(Creating alternative methods of action)

  • 次に同じような状況が起きたら、**どんな別の対応が可能か?**を考える。

  • アイデアや方法を柔軟に出し、行動の幅を広げる。


⑤ 新しい試み(Trial)

  • 実際に新しいアプローチを試してみる。

  • 例:「次の授業では、事前に関心を引く導入を工夫してみる」

こうして、また①(行為)に戻り、学びのループが続きます。


🎯 ステップ②「行為のふり返り」を深める8つの問い

これは内省を深めるための質問法です。図にもあるように「自分視点」と「相手視点」に分けられています。

自分視点(自己理解) 相手視点(他者理解)
1. 私は何をしたのか? 1. 相手は何をしたのか?
2. 私は何を考えたのか? 2. 相手は何を考えたのか?
3. 私はどう感じたのか? 3. 相手はどう感じたのか?
4. 私は何をしたかったのか? 4. 相手は何をしたかったのか?

🔍 ねらい:

  • 自己の行動・感情・目的を客観的に見る力を育てる

  • 相手の内面を想像する力(共感力)を高める

  • 他者との関係性の中での学びを引き出す


💡 活用の場面(応用例)

活用領域 活用の方法例
教育(教師・研修) 授業後のふり返り、模擬授業の内省
コーチング/カウンセリング セッション後の内省・スーパービジョンの材料
医療・福祉現場 対応後の多職種連携のふり返り
組織開発・人材育成 面談・評価・OJT後の内省共有

🛠 ワークシート活用例(簡易)

ステップ 記入欄例(記述式)
① 行動 今日は〇〇という対応をした。
② ふり返り 自分:何を考えていたか?感情は?
相手:どう思っていた?目的は?
③ 本質的な気づき 背景にあった価値観・前提・他者との関係性は?
④ 他の方法 他にはどんな方法が考えられる?長所・短所は?
⑤ 試み 次回は〇〇を試してみたい。

コルトハーヘンのALAC(ALACT)モデルは、教育分野で教師や学生のリフレクション(省察)能力を高め、教育実践の質を向上させるために活用されています。以下では、ALACモデルの教育現場での応用とその効果について、最新の研究をもとにまとめます。

ALACTモデルの概要と教育現場での応用

  • モデルの構成
    ALACTモデルは「行動(Action)→振り返り(Looking back)→本質的側面の認識(Awareness of essential aspects)→代替行動の創出(Creating alternative methods of action)→試行(Trial)」の5段階で構成され、教師や学生が自らの実践を省察し、次の行動改善につなげるサイクルを提供します(Wegner et al., 2014; Jones, 2008)。

  • 教育現場での導入例
    大学の教員養成プログラムや理科教育プロジェクト(Kolumbus-Kids)などでALACTモデルが導入され、学生や教員のリフレクション能力向上に寄与しています(Wegner et al., 2014; Jones, 2008)。

効果と課題

  • リフレクション能力の向上
    ALACTモデルを用いた指導により、学生や教員が自分の授業や学習活動を客観的に振り返り、改善点や新たなアプローチを見出す力が高まることが示されています(Wegner et al., 2014; Loughran et al., 2018; Jones, 2008)。

  • リフレクションの不完全性
    一方で、学生の自己省察は必ずしも十分に行われていないことも報告されており、特に「今後の改善策の根拠」や「他者からのフィードバックの活用」が不十分な場合が多いとされています(Danciu et al., 2025)。

教師の専門性・学習者アイデンティティへの影響

  • 教師の専門性形成
    ALACTモデルやコアリフレクションモデルは、教師の専門性や学習者としてのアイデンティティ形成、自己効力感の向上、ストレス対処力の強化などにも寄与することが示唆されています(Streitman, 2024)。

  • 理論と実践の架け橋
    理論と実践を結びつける枠組みとして、ALACTモデルは教師教育や現職教員のプロフェッショナル・ディベロップメントに有効であるとされています(Loughran et al., 2018; Jones, 2008)。

実践のための工夫

  • チェックリストやルーブリックの活用
    省察の質を高めるために、ALACTモデルに基づいたチェックリストやルーブリックを用いて、自己省察の各段階を明確に評価・指導する工夫が行われています(Danciu et al., 2025; Wegner et al., 2014)。

まとめ

コルトハーヘンのALAC(ALACT)モデルは、教育現場でのリフレクション能力向上や教師の専門性形成に有効な枠組みです。理論と実践を結びつけ、自己省察を促進することで、教育の質の向上や教師・学習者の成長に貢献しています。ただし、リフレクションの質を高めるための指導や評価の工夫も重要です。

📘 参考文献

  • Fred Korthagen (2001). Linking Practice and Theory: The Pedagogy of Realistic Teacher Education.

  • 関連文献:「教師のための省察的実践モデル」「教育におけるALACTモデルの応用」

    Danciu, T., Veremis, B., Katser, M., Popov, V., & Ramaswamy, V. (2025). Rallying for Reflection: Pilot Use of Rubric to Facilitate Self-Reflection in Dental Education.. European journal of dental education : official journal of the Association for Dental Education in Europehttps://doi.org/10.1111/eje.13088

    Wegner, C., Ohlberger, S., & Weber, P. (2014). Korthagen’s ALACT model: Application and modification in the science project “Kolumbus-Kids”. **, 7, 19-34.

    Loughran, J., Cooper, R., & Evergreen, M. (2018). The articulation of the development of teacher knowledge during the implementation of new teaching procedures to enhance student understanding of molecular biological concepts. Teacher Development, 22, 355 – 374. https://doi.org/10.1080/13664530.2018.1442875

    Streitman, K. (2024). Crafting a professional teacher learner through models of learning and positive psychological coaching tools. ARGUMENTUMhttps://doi.org/10.34103/argumentum/2024/25

    Jones, M. (2008). Collaborative Partnerships : A Model for Science Teacher Education and Professional Development. Australian Journal of Teacher Education, 33, 5. https://doi.org/10.14221/AJTE.2008V33N3.5

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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