社会人のための目標達成とコーチング入門 認定資格取得の参考に
社会人のための目標達成とコーチング入門
はじめに
「目標を立てたけれど続かない」「やる気はあるのに行動に移せない」「もっと効率的に成長したい」
このような悩みを抱える方は多いのではないでしょうか。この記事では、最新の研究結果に基づいた「目標達成」と「コーチング」の効果的な方法を、
専門用語を使わず、日常生活や仕事ですぐに実践できるように解説します。
このガイドで学べること
- 効果が科学的に証明されている目標設定の基本
- 自分自身や周りの人をサポートできるコーチングの基礎知識
- 明日から実践できる具体的なテクニック
- 長期的に成果を出し続けるためのポイント
科学的に証明されたコーチングの効果

「コーチング」と聞くと、スポーツや企業の幹部向けのものというイメージがあるかもしれません。
しかし、コーチングは誰でも学べる対話のスキルであり、その効果は科学的研究によって証明されています。

コーチング心理学協会では、科学的根拠とに基づくエビデンスと、あなたらしい物語を育むナラティヴに基づいたコーチングを実践で、わかりやすく活用するようにしています。
見通しがなく、確証がない状態で行動するよりも、科学的なエビデンスに基づくことで、安心して自信を持って実行できるのです。
さらに、一定の証拠があることで成功率が高まり、どうせ取り組むならば、成功の可能性がより高いアプローチを選ぶほうが合理的です。それにより、時間の効率化にもつながります。
つまり、あらゆる物事は、根拠なく進めるよりも、信頼できる証拠をもとに実施するほうが、安心して取り組みやすくなるのです。加えて、時間の短縮にも貢献し、限られた時間の中で成果を上げるには、効率的な方法を選ぶことが重要です。
未来には確実な証拠は存在しません。しかし、過去の根拠を土台にして一歩ずつ進みながら、実際の経験を通じて確かな証拠を積み重ねることができるのです。
つまり、未来に明確な根拠がなくても、過去の経験や蓄積されたデータを活かして行動することで、自信を持って前進でき、その結果として、より大きな成功をつかむ可能性が高まります。
研究でわかっていること

2014年に発表されたTheeboomらの研究によると、コーチングには以下の5つの分野で明確な効果があることが分かっています:
- 目標達成力:最も高い効果が認められた分野(効果サイズ:中程度:0.74)
- 業務パフォーマンス:スキルや成果の向上(効果サイズ:中程度:0.60)
- 仕事に対する姿勢:仕事への満足度や意欲の向上(効果サイズ:中程度:0.54)
- 幸福感・充実感:全体的な幸福度の向上(効果サイズ:中程度:0.46)
- ストレス対処能力:困難な状況への対応力の向上(効果サイズ:中程度:0.43)
※効果サイズとは、介入(この場合はコーチング)がどれだけ効果的かを示す数値です。
0.2は小さい効果、0.5は中程度、0.8以上は大きい効果を示します。
*心理学の指標は、一部を除く.30以上あれば、ある程度効果があると、捉えていただいて大丈夫です。
さらに興味深いのは、コーチングの効果が一時的なものではなく、30週間以上も持続することが確認されている点です。
つまり、適切なコーチングを受けることで、長期的に自分自身で目標に向かって進む力が身につくのです。
効果的な目標設定の基本
多くのビジネス書や研修では「SMART目標」が紹介されています。SMART目標とは、Specific(具体的)、
Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性がある)、Time-bound(期限がある)の
頭文字をとったもので、目標設定の定番として広く知られています。
SMART目標の例
「英語力を向上させる」という漠然とした目標の場合:
- Specific(具体的):TOEICスコアを向上させる
- Measurable(測定可能):現在600点から800点に上げる
- Achievable(達成可能):週3回、各1時間の学習で実現可能な目標
- Relevant(関連性):海外取引先とのコミュニケーション向上のため
- Time-bound(期限):6ヶ月後の12月までに達成する
しかし、最新の研究によると、SMART目標が常に最適というわけではないことがわかってきました。
状況によっては、別のタイプの目標設定が効果的な場合があります。
SMART目標の限界と新しい知見
2024年に発表されたPietschらの研究によると、創造性を必要とするタスクや新しいスキルを学ぶ初期段階では、
具体的なSMART目標よりも、「ベストを尽くす」という非特定的な目標や、「どれだけできるか試してみる」という
オープンな目標の方が効果的な場合があることがわかっています。
状況に合わせた目標設定のポイント

1. 新しいことに挑戦する場合
「週に3回、絵を描いてみる」「どれだけ新しいアイデアが出せるか試してみる」といった
オープンな目標から始める
2. すでに基本的なスキルがある場合
「3ヶ月後までに、週3回のトレーニングで10km走れるようになる」といった
SMART目標を設定する
3. 習慣化したい場合
「毎日朝5分間、メールをチェックする前に計画を立てる」など、
すでにある行動に紐づけた小さな目標を設定する
誰でもできる実践的コーチングの基本
コーチングは特別な資格がなくても、基本的な考え方とスキルを身につければ、日常生活や職場で活用できます。
ここでは、研究で効果が確認されている簡単なコーチングのテクニックをご紹介します。

1. 目標焦点の対話
研究によると、コーチングで最も重要なのは「関係性の満足度」ではなく、「目標達成に焦点を当てた関係性」であることがわかっています。
つまり、親しく楽しい会話をすることよりも、相手の目標達成をサポートする会話に集中することが効果的なのです。
実践のコツ:
- 「今日はどんなことを達成したい?」と会話の最初に目標を確認する
- 「その目標に向けて、次のステップは?」と行動を促す質問をする
- 「目標達成のために、私にできるサポートは?」と具体的な助けを提案する
2. ソリューションフォーカス・アプローチ
問題の原因を深く掘り下げるよりも、解決策に焦点を当てた質問(ソリューションフォーカス)の方が
効果的だということが研究で示されています。これにより、ポジティブな感情や自己効力感が高まります。
実践例:
| 問題フォーカスの質問(避けるべき) | ソリューションフォーカスの質問(推奨) |
|---|---|
| 「なぜその問題が起きたの?」 | 「うまくいっている部分はどこ?」 |
| 「誰のせいでこうなった?」 | 「次に何ができそう?」 |
| 「なぜできなかったの?」 | 「小さな一歩として、何ができる?」 |
3. 自己効力感を高める質問
コーチングの大きな効果の一つは、自分で問題を解決する力(自己効力感)を高めることです。
これは、適切な質問によって相手の考える力を引き出すことで実現できます。
効果的な質問例:
- 「過去に似たような状況をどう乗り越えた?」
- 「もし友人が同じ状況なら、どんなアドバイスをする?」
- 「理想の結果を想像すると、どんな感じ?」
- 「その目標が達成できたら、何が変わる?」
- 「100点満点にできなくても、80点でも良しとするなら何ができる?」
すぐに実践できる目標達成の5ステップ
研究結果に基づいた、効果的な目標達成のためのシンプルな5ステップをご紹介します。
これは自分自身の目標にも、他の人をサポートする場合にも応用できます。
ステップ1:目標の明確化
達成したい目標を明確にします。新しいスキルを学ぶ場合は柔軟なオープン目標、
具体的な成果を出したい場合はSMART目標を設定します。
実践ワーク:
「1年後、どうなっていたいですか?それを3ヶ月、1ヶ月、1週間の目標に分解してみましょう」
ステップ2:行動計画の作成
目標達成のために必要な具体的な行動を特定します。小さな一歩から始められるよう計画を立てます。
実践ワーク:
「目標達成のために、明日からできる3つの小さな行動は何ですか?いつ、どこで実行しますか?」
ステップ3:障害の予測と対策
前もって障害を予測し、対応策を考えておくことで、挫折を防ぎます。
「もし〜なら、〜する」という計画が特に効果的です。
実践ワーク:
「この目標達成の途中で起こりそうな障害は何ですか?それぞれにどう対応しますか?」
例:「もし残業で運動の時間がなくなったら、通勤途中に一駅分歩く」
ステップ4:サポート体制の構築
一人で取り組むよりも、誰かに宣言したり、一緒に取り組む仲間がいると継続率が高まります。
実践ワーク:
「この目標を誰に宣言しますか?定期的に進捗を確認し合える人は誰ですか?」
ステップ5:振り返りと調整
定期的に進捗を振り返り、必要に応じて計画を調整します。失敗を責めるのではなく、
学びとして捉える姿勢が重要です。
実践ワーク:
「週に一度、5分間で今週の取り組みを振り返り、うまくいった点と改善点を書き出しましょう」
ポイント:小さな成功体験を積み重ねる
研究によると、大きな目標よりも、達成可能な小さな目標を積み重ねる方が、
モチベーションと自己効力感を高め、最終的な成功につながりやすいことがわかっています。
毎日の小さな成功を意識的に認識し、喜びを感じる習慣をつけましょう。
日常生活に取り入れる実践例
自分自身への応用
朝のセルフコーチング(5分)
- 今日の最重要タスク3つを書き出す
- 「今日が最高の日になるには何が必要か?」と自問する
- 「もし障害が起きたら、どう対応するか?」と対策を考える
夜の振り返り(5分)
- 今日うまくいったこと3つを書き出す(どんな小さなことでも)
- 「明日、何を改善できるか?」と自問する
- 「今日の学びを一言でまとめると?」と考える
職場での応用
1対1のミーティングでのコーチング的アプローチ
- 「今週の目標は何?優先度は?」と目標を確認する
- 「うまくいっている部分は?課題は?」と現状を共有してもらう
- 「次のステップとしてできることは?」と解決策を一緒に考える
- 「必要なサポートは?」と具体的な助けを提案する
※答えを教えるのではなく、質問を通じて相手自身の考えを引き出すことがポイントです。
チームでの目標設定ミーティング
- 全員でプロジェクトの目標を明確化する
- 各自が自分の役割と具体的な目標を設定する
- お互いの目標をシェアし、フィードバックし合う
- 進捗確認の頻度とフォーマットを決める
- 予想される障害と対策を全員で議論する
よくある質問
Q: コーチングと単なるアドバイスの違いは何ですか?
A: コーチングは答えを与えるのではなく、質問を通じて相手自身の考えや答えを引き出すアプローチです。
アドバイスが「これをやるべき」と答えを与えるのに対し、コーチングは「あなたはどうしたいですか?」と
問いかけ、自己解決力を高めます。
Q: 目標が大きすぎて途方に暮れる場合はどうすればいいですか?
A: 大きな目標は、小さな達成可能なステップに分解しましょう。研究によると、「次の一歩」だけに
集中することで、不安が減り、行動が起こしやすくなります。「今週できる最小の一歩は何か?」と考えてみてください。
Q: モチベーションが続かない場合はどうすればいいですか?
A: モチベーションは感情であり、常に高い状態を維持することは難しいものです。そのため、感情に頼るのではなく、
「習慣化」することが重要です。目標達成のための小さな行動を日常の一部にする工夫をしましょう。
また、「なぜこの目標が自分にとって重要なのか」という本質的な意味を定期的に思い出すことも効果的です。
Q: 完璧主義で、少しでも計画通りにいかないとすぐに諦めてしまいます
A: 完璧を目指すのではなく「進捗」に焦点を当てる考え方が効果的です。計画の100%達成ではなく、
例えば80%達成でも前進として認め、祝う習慣をつけましょう。また、失敗を「学びの機会」と捉える
マインドセットに切り替えることで、挫折からの回復力が高まります。
Q: 忙しくてコーチングを学ぶ時間がありません
A: コーチングは特別な時間を設ける必要はありません。日常の会話の中で、「答えを与える」代わりに
「質問をする」習慣を少しずつ取り入れるだけでも効果があります。まずは一日に一度、
「それについて、あなたはどう思う?」と聞く機会を作ってみてください。
まとめ:科学的に証明された5つのポイント
- 目標設定が効果的:明確な目標を持つことで、行動と成果が大きく改善します。ただし、状況に応じて
SMART目標と柔軟なオープン目標を使い分けましょう。 - コーチングには科学的効果がある:コーチングは、目標達成力、パフォーマンス、幸福感、ストレス対処能力など、
多くの面でポジティブな効果があります。 - 問題よりも解決策に焦点を当てる:問題の原因を深く掘り下げるよりも、解決策を探る質問の方が
前向きな行動と感情を引き出します。 - 小さな一歩を積み重ねる:大きな変化よりも、小さな成功体験を積み重ねることで
自信と継続力が高まります。 - 自走する力を育てる:正しいコーチングは依存関係を作るのではなく、自分で考え、
行動する力を高めます。これにより、長期的な成果につながります。
最後に:完璧を目指さず、一歩ずつ前進しましょう
このガイドで紹介したテクニックは、一度にすべてを実践する必要はありません。
まずは一つだけ選んで試してみて、うまくいったらさらに追加していきましょう。
コーチングの本質は「完璧」ではなく「成長」にあります。小さな一歩を踏み出すことから始めましょう。
参考文献
- Theeboom, T., Beersma, B., & van Vianen, A. E. (2014). Does coaching work? A meta-analysis on the effects of coaching on individual level outcomes in an organizational context. The Journal of Positive Psychology, 9(1), 1-18.
- Grant, A. M. (2012). An integrated model of goal-focused coaching: An evidence-based framework for teaching and practice. International Coaching Psychology Review, 7(2), 146-165.
- Pietsch, S., Riddell, H., Semmler, C., Ntoumanis, N., & Gucciardi, D.F. (2024). SMART goals are no more effective for creative performance than do-your-best goals or non-specific, exploratory open goals. Educational Psychology, 44, 946-962.
- Green, L. S., Oades, L. G., & Grant, A. M. (2006). Cognitive-behavioral, solution-focused life coaching: Enhancing goal striving, well-being, and hope. The Journal of Positive Psychology, 1(3), 142-149.
- McEwan, D., Harden, S. M., Zumbo, B. D., et al. (2016). The effectiveness of multi-component goal setting interventions for changing physical activity behaviour: A systematic review and meta-analysis. Health Psychology Review, 10, 67-88.
投稿者プロフィール

- 徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。
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