オープンダイヤログコーチング入門 コーチング心理学の視点 認定資格取得の参考に

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オープンダイヤログを活用したコーチング心理学とは

基本概念

オープンダイヤログ (Open Dialogue)とは、フィンランド発祥の「開かれた対話」を意味する心理療法的アプローチ。複数の専門家とクライアント・家族などが対等な立場で対話を重ね、問題解決を目指します。1980年代、フィンランドの西ラップランドで統合失調症治療のために開発。システミック家族療法や社会ネットワークの視点、対話重視の原則(対等な立場・不確実性の許容)などの影響を受けている。

発祥者・発祥地

1980年代、フィンランドの西ラップランド地方において統合失調症治療のために開発されました。フィンランド発の精神医療モデルであり、Jaakko Seikkulaらによって開発。家族・ネットワークの対話を重視し、精神的危機や精神病に対して支援を提供。主な特徴は、人間関係を軸とした即時介入と継続的な対話による協働的意思決定。

❗️評価

複数の専門家、クライアント、家族・支援者が対等な立場で集い、治療や「解決」を前提せず対話そのものをプロセスとすることで、自然な気づきや回復の道が形成される心理療法的アプローチ。WHOもそのグッドプラクティスとして評価している。

具体例
たとえば、統合失調症のクライアントが危機状態に陥った場合、24時間以内に家族・専門家を含むチームが集まり、対話セッションを開始。個々の感情や家族の相互理解を促進し、症状や関係性の改善、さらには社会復帰へとつながる変容を後押しする。

💡ポイント: オープンダイヤログでは「治療」や「解決」を前提としていないのが特徴。対話そのものがプロセスであり、その中から自然に道が開けていくことを信頼します。不確実なことに対しても心を開く点が特徴的。

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「対話的アプローチの最も単純で重要な点は、聴かれること、応答があること、そしてその応答が受け取られることで治癒のプロセスが完成する、というパラドックスです。」- Jaakko Seikkula(ヤーコ・セイックラ)名言

 

オープンダイヤログのルーツ

オープンダイヤログのルーツや影響を受けた主要なアプローチについて、概要と具体例を整理しました。

アプローチ名 ルーツ・影響 概要 具体例
システミック家族療法 ミルトン・エリクソン、サルバドール・ミニュチンなど、家族全体のダイナミクスに着目する家族療法の流れ。コミュニケーションやシステム論(グレゴリー・ベイトソン)の影響も受ける。 個人の症状だけではなく、家族全体の相互作用やシステムの中で問題がどのように生じ、維持されているかに焦点を当て、対話を通して家族内のコミュニケーションパターンや支援体制を再構築することで、問題解決と回復を目指す。 たとえば、家族会議形式のセッションで、家族全員が自分の感じていることを平等に共有し、誤解や対立を明らかにした上で、互いに支え合う新しい関係性の構築を図る。これにより、クライアント個人の回復だけでなく、家族全体の機能改善につながる。
ナラティブセラピー マイケル・ホワイトやデイヴィッド・エプストンらの社会構成主義的アプローチ。個人が語る物語やその意味付けにより、自己認識やアイデンティティを再構築する考え方が背景にある。 患者やクライアントが自らの人生の物語を再評価・再構築するプロセスを通じ、否定的なストーリーから新たな意味や可能性を見出し、主体的な変容を促す。対話を重視する点でオープンダイヤログと共通している。 たとえば、クライアントが「自分は常に失敗する」という否定的な物語を語るとき、セラピストはその物語の背景や固定された意味を問い直し、別の視点(たとえば過去の成功体験や強み)を取り入れて、より前向きな自己認識の物語に書き換える手法を用いる。
社会ネットワークアプローチ 社会学的視点やシステム理論、コミュニティ精神保健の実践から発展。個人を単独ではなく、家族、友人、地域コミュニティなど広いネットワークの中で理解・支援する考え方。 クライアントのみならず、その周囲に存在する支援システム全体を対象とし、対話と協働を通して相互理解、支援体制の強化、そしてクライアントの自然な回復プロセスを促進する。オープンダイヤログはこの視点を取り入れ、家族・友人の参加を重視している。 たとえば、危機的状況にあるクライアントに対して家族、友人、地域の支援者が一堂に会し、各メンバーがそれぞれの視点やリソースを共有し合う対話セッションを実施。こうした全体対話により、クライアントの孤立感が解消され、よりよい支援のネットワークが確立される。
解決志向ブリーフセラピー ミラー、グッドマンらの考え方を背景に、伝統的な問題分析よりも、「すでにうまくいっている部分」や資源に焦点を当て、短期間で成果を生み出すアプローチ。対話や相互作用を通じた自然な変容の可能性を引き出す点が共通している。 問題そのものに深くとらわれず、クライアントの強みや既存の成功体験に注目し、未来に向けた具体的な行動の変容を促す。オープンダイヤログの対話プロセスが結果として自然な解決へと導くという哲学と重なる側面がある。 たとえば、セッションの中で「これまでうまくいったことは何ですか?」と問い、クライアント自身が自分の資源や成功パターンを発見し、それを今後の行動計画に生かすことで、短期的な前向き変容を実現する。

 


まとめ
オープンダイヤログは、個人だけに焦点を当てるのではなく、家族や社会ネットワーク全体の中で対等な対話を重ねながら、固定的な「治療」や「解決」を前提としない点が特徴です。この対話重視の姿勢は、システミック家族療法、ナラティブセラピー、社会ネットワークアプローチ、解決志向ブリーフセラピーといった他の心理療法的アプローチから多大な影響を受けています。これらのアプローチはそれぞれ異なる側面から問題理解と変容を促すが、いずれも対話、共同理解、そして自然な回復のプロセスを重んじる点で共通しています。

主な特徴

以下の表は、オープンダイヤログの特徴について、各特徴の概要と具体例をまとめたものです。

特徴 概要 具体例
対等な対話の場 専門家も他の参加者と同じ立場で意見を共有し、互いに発言できる環境を整えることで、権威や上下関係にとらわれずに自由な対話が行われる。 カウンセリングセッションやグループディスカッションで、利用者の一人として意見を出し合い、解決策を共に模索する。
多様な視点の尊重 一つの正解や固定観念にとらわれず、参加者それぞれの経験や価値観、意見を尊重し、複数の観点が共存できる空間を作る。 セッション内で、利用者や家族、専門家など様々な立場の人々が話し合い、例えば個人の体験、文化的背景、地域の事情など、異なる視点から問題の原因や解決策を検討する。
プロセス重視 即時の問題解決よりも、対話そのもののプロセスや対話を通じた気づきを重視し、時間をかけた共同行動によって信頼関係や自己理解を深める。 すぐに結論を出すのではなく、継続的な対話の中で利用者が自分の感情や経験に向き合い、新たな気づきを得るプロセスを尊重する。例えば、定期的な対話の場を設け、長期的な成長・回復を促進する。
透明性の確保 「その人がいないところでその人の話をしない」という原則のもと、誰が発言した内容や背景が外部に持ち出されず、信頼関係を維持しながら全員が安心して対話に参加できる環境を保つ。 対話中の個人情報や発言内容は全員で共有されるが、セッション外で個別に議論したり、対象者が不在の場でその人の発言を引用することは避け、常に透明でオープンなコミュニケーションを心がける。
関係性のネットワーク 問題解決が個人の内面だけに留まるのではなく、人間関係やコミュニティ全体のネットワークを通じて捉えられる。周囲との関係性の中に問題や解決のヒントが存在すると考える。 セッションでは、利用者本人だけでなく、家族、友人、地域のサポートグループも参加し、各人の役割や関係性を探求することで、あらゆる角度から問題の背景や解決に向けた方向性を見出す。

このようなオープンダイヤログの特徴を実践することにより、参加者全員が対等な立場で意見を交わし、多角的な視点から問題にアプローチでき、長期的な信頼関係と改善プロセスを築けます。

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オープンダイヤログの特徴と効果

特徴的なアプローチ

以下の表は、オープンダイヤログの特徴として挙げられる「即時性」「ネットワーク視点」「水平な関係性」「不確実性の許容」それぞれについて、概要と具体例をまとめたものです。

特徴 概要 具体例
即時性 危機的状況が発生してから24時間以内に対応し、問題が慢性化する前に対話の場を迅速に設ける。 クライアントが急激な精神的危機に陥った際、専門チームが24時間以内に集まり、速やかに初期対話セッションを設定し、状態の悪化を防ぐ。
ネットワーク視点 問題を個人内部だけではなく、家族や友人など、クライアントを取り巻く社会的ネットワーク全体の中で捉え、支援する。 危機的状況にあるクライアントと同時に、家族や友人も対話に参加することで、互いの視点や支援体制を共有し、クライアントの回復を多角的にサポートする。
水平な関係性 専門家とクライアント、さらにはその周囲の人々が対等な立場で発言し、ヒエラルキーのないオープンな対話環境を作り出す。 カウンセリングの場で、精神科医や臨床心理士も参加者の一員として意見を出し合い、利用者自身の感じ方や意見を尊重する対話を行う。また、議論の進行役が一方的に指導しない仕組みをとる。
不確実性の許容 問題の即時解決を急がず、対話のプロセスを通じて自然に現れる答えを待つことで、柔軟な解決策の模索を行う。 対話セッション中に、すぐに結論や診断を下す代わりに、クライアントと参加者が継続的な話し合いを行い、時間をかけて問題の本質やそれに対する解決策を共同で探求する。

このように、オープンダイヤログでは、即時性、ネットワーク全体での理解、対等な関係性、そして不確実性への寛容さを重視することで、クライアントを含むすべての参加者が安心して対話に参加でき、より多面的な解決策が見出される環境が整っています。

 

オープンダイヤログの7つの原則

上記の各原則について概要と具体例を整理したものです。

原則 概要 具体例
1. 即時対応 危機的状況発生後24時間以内に対応し、問題が固定化される前に対話を開始することで、早期介入を実現する。 クライアントが突然のストレス反応を示した場合、24時間以内に専門スタッフが連絡を取り、初期カウンセリングを実施し問題のエスカレーションを防ぐ。
2. 社会的ネットワークの視点 クライアントのみならず、家族や友人など、周囲の支援ネットワークを巻き込みながら対話を進めることで、全方位からのサポートを実現する。 個人の悩みの解決に向け、カウンセリング時に家族との面談も取り入れ、各人の視点やサポート体制を共有し、家庭内での協力体制を確立する。
3. 柔軟性と機動性 クライアントのニーズや状況に合わせ、場所や方法を臨機応変に調整し、必要に応じたアプローチを実施する。 遠隔地や移動が難しいクライアントに対して、オンラインカウンセリングや訪問セッションを取り入れ、最適な方法で支援を提供する。
4. 責任 最初に対応したスタッフがプロセス全体の責任を持ち、継続的なフォローアップとサポートを行うことで、一貫性のある支援を確保する。 初回対応のカウンセラーが、その後の連続セッションも担当し、クライエントの変化や進捗を定期的に確認・記録しながら、治療計画を調整する。
5. 心理的連続性 過去・現在・未来をつなぐ物語として問題を捉え、クライアントの経験を一貫した支援プロセスとして統合し、継続的な成長を促す。 クライアントの過去の成功体験や困難な時期を振り返りながら、未来の目標設定や自己成長のビジョンを明確にするワークショップを実施する。
6. 不確実性に耐える 即座の解決や診断に急がず、対話のプロセスを大切にしながら、答えがすぐに出ない状況でも共に解決策を模索し続ける。 カウンセリングの初期段階では、クライアントと共に色々な可能性(原因や解決策)を探り、焦らずに問題の本質を見極めるプロセスを継続する。
7. 対話 すべての参加者が対等に発言できる環境を整え、ただの一方向の説明ではなく、多様な視点が交じり合う対話そのものを目的とする。 グループセッションにおいて、各クライアントや家族、専門家が自由に意見交換し、お互いの意見や感情を尊重しながら共通理解と新たな気づきを創出する場を設ける。

このような原則を適用することで、クライアントの危機的状況への早期介入から、長期的な自己成長・問題解決まで、一貫性と柔軟性を兼ね備えた支援が可能となります。

💡ポイント: これらの原則は厳格なルールではなく、対話を促進するための指針です。状況に応じて柔軟に適用し、 真の対話が生まれる環境づくりを心がけます。

 

オープンダイヤログとコーチング心理学の関係、類似点、そして応用できる点

次に、オープンダイヤログとコーチング心理学の関係や類似点、応用で点について検討しました。

オープンダイヤログとコーチング心理学の関係、類似点、そして応用できる点について、各側面ごとに整理した表です。

項目 オープンダイヤログの特徴 コーチング心理学の特徴 応用できる・共通する要素
対話の重視 参加者全員が対等な立場で対話に参加し、共感と相互理解を深めるプロセスを通して、危機や問題の根本原因を探求する。 クライアントが自己の内面に気づき、目標や未来像を共に見出す対話を重視。質問やフィードバックを通じて自己発見と成長を促す。 双方とも「対話」が中心です。参加者(またはコーチ)とクライアントが共に考え、自己理解を深めるプロセスが、最終的な問題解決や成長に導きます。
平等な関係性 専門家もクライアントも、家族・支援者も対等な立場で参加し、ヒエラルキーを排除することで、安心できる対話空間を作る。 コーチはアドバイザーというより対等なパートナーとして、クライアントが自ら答えを見い出すサポート役となる。 対等な関係性の構築により、双方の意見や経験が尊重され、柔軟かつ信頼性のあるコミュニケーションが促される。
ネットワークの視点 クライアント個人だけではなく、家族や友人、地域などの広い社会的ネットワーク全体を含め、問題の理解と改善を目指す。 クライアントの周囲のサポート(家族、職場など)を活かすことで、クライアントの目標達成や問題解決を多角的にサポートするアプローチが推奨される。 周囲との関係性に着目する姿勢は、双方で共通。多角的な視点からクライアントを取り巻く環境に働きかけることで、持続的な支援体制の構築が可能。
不確実性の許容 すぐに明確な答えや解決策を求めず、不確実な要素を対話のプロセスに委ね、自然に浮かび上がる気づきを大切にする。 クライアント自身が、未知の領域や不確実な状況に対してオープンになり、新たな可能性や解決策を自発的に探求するプロセスが重視される。 即答や即効性を求めず、対話や過程そのものから成長やヒントが得られる点において、両者は同様の姿勢を大切にしている。
目的・最終目標 危機介入、症状の緩和、関係性の改善、社会復帰など、クライアントの全体的な回復と変容を目指す。 クライアントの自己成長、目標達成、パフォーマンス向上、行動変容など、個々の可能性を引き出し実現することを目的としている。 個々人の成長や生活の質の向上、さらには現在の立ち位置から新たな未来へ向かう変容が最終目標となるため、目的意識において共通する部分がある。

まとめ:
オープンダイヤログとコーチング心理学は、どちらも対話を核に据え、対等な関係のもとで自己理解と成長を促す点で類似性があります。オープンダイヤログが特に家族や広い社会的ネットワーク全体での対話を重視する一方、コーチング心理学は個人や組織の成長と目標達成に焦点を当てます。これらの共通する原則や視点を融合することで、より包括的で柔軟な支援アプローチや対話プロセスが構築でき、個々のニーズに合わせた応用が可能となります。

 

コーチング心理学で活用できるオープンダイヤログのOPENフレームワーク

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オープンダイヤログの原則を踏まえ、コーチング心理学で活用できるOPENフレームワーク(Observe, Participate, Explore, Not-knowing)を紹介します。具体的な質問方法を検討した例です。これにより、クライアントの気づき・関与・多角的探求・不確実性の受容を促す対話が実現できます。

OPENの要素 定義・説明 コーチングの質問例 目的(対話・プロセスの狙い)
O: Observe(観察) 現在の状況、感じていること、直近の出来事など、クライアントの「今ここ」に目を向ける。 ・「直近の数日間で、特に印象的だった出来事は何ですか?」
・「今、お感じになっている感情や体の反応はどんなものでしょうか?」
クライアントが注意深く自己観察することで、現状の隠れた要因や感情のパターンに気づき、対話の出発点を明確にする。
P: Participate(参加/共鳴) 専門家とクライアントが対等な立場で対話に参加し、互いに意見を共有する。コーチングでは、クライアントが主体的に言葉を発し、共鳴するプロセスを促す。 ・「このテーマについて、あなた自身だけでなく、周囲の方々はどんな意見や感情を持っていると感じますか?」
・「私たちが共に考える中で、どのような新たな視点が出てくると思いますか?」
対等な参加を通じ、クライアントが自らの視点を広げるとともに、コーチとの信頼関係を強化し、多面的な対話の土台を築く。
E: Explore(探求/共感) 多様な視点を尊重し、自己の内面や外部関係について深く探求する。コーチングでは、自己理解と未来への想像力を引き出す質問を行う。 ・「この経験や状況は、あなたにとってどんな意味を持っていますか?」
・「もし異なる視点からこの課題を見るとしたら、どのような可能性が広がると思いますか?」
内面と関係性の両面から問題を探求することで、クライアントに新たな気づきや対処のヒントを生み出し、自己成長への道筋を描く。
N: Not-knowing(不確実性の許容/未知への開放) すぐに答えを求めず、未知や不確実な部分を受け入れた対話を進める。完璧な解決策がなくても、プロセス自体に学びがあると認める。 ・「今の段階では明確な答えがなくても構いません。どのような可能性や疑問が浮かんできますか?」

・「答えが見つかっていない部分について、どんな気持ちで向き合っていますか?」

クライアントが不確実性を受け入れることで、固定観念にとらわれず、オープンな心で新しい視点やアプローチを模索するプロセスを促進。

コーチングでは、新たな成長や学び、能力開発を焦点にあてる。


補足:

  • コーチングの現場では、クライアント自身が内省し発見するプロセスを重視します。OPENフレームワークの各要素を活用することで、一方通行の指導ではなく、対話を通じた共創的な気づきが生まれます。
  • また、対話の過程でクライアントが感じた違和感や不安、あるいは前向きな希望に素直に向き合うことで、長期的な自己成長や変容が期待できます。
  • 質問例はあくまで一例です。クライアントの状況や個性に合わせて柔軟にアプローチすることが、コーチングの成功への鍵となります。
  • 「Not-knowing」は、直訳すると**「知らないこと」や「分からない状態」**を意味します。文脈によっては、単に情報が不足している状態を指す場合もあれば、意図的に「知らないことを受け入れる姿勢」や「確実性を求めない態度」を示すこともあります。

例えば、コーチングや哲学の分野では、「Not-knowing」は柔軟な思考新しい可能性を開くための重要な概念として扱われることがあります。つまり、「すべてを知っている」と思い込むのではなく、「分からないことを認める」ことで、より深い洞察や創造的な解決策を見つけることができるという考え方です。哲学では、ソクラテスの「無知の知」の考え方に近い内容です。

このように、オープンダイヤログの原則とOPENフレームワークを活用した質問方法は、クライアントとの対話をよりオープンで包括的かつ主体的なプロセスへと導くための有用なツールとなります。

 

OPENフレームワークを活用した事例について

オープンダイヤログの原則を踏まえたうえで、コーチング心理学の現場で活用できるOPENフレームワーク(Observe, Participate, Explore, Not-knowing)の具体的な事例を示す表です。各要素ごとに、実際の対話例とその狙いを解説しています。

OPENの要素 具体的事例 説明・狙い
Observe(観察) 質問例: 「最近、どのような出来事や体験があなたの心に残っていますか?」「今、どんな感情や身体の反応を感じていますか?」 クライアントが「今ここ」にある体験や感情を見つめ直すことで、内面の現状を明確化。対話の出発点として、客観的な自己認識を促します。たとえば、クライアント自身にとって普段見逃している微妙な変化に気づいてもらい、自己理解を深めてもらうプロセスです。
Participate(参加/共鳴) 質問例: 「この問題について、あなたご自身だけでなく、あなたの周りの方々はどんな反応を示していると感じますか?」「私たちが一緒に話し合う中で、どのような新しい視点が浮かんできますか?」 コーチとクライアントが対等なパートナーとして共に対話に参加し、双方の視点が交錯する中で、クライアントの内面に新たな共感や気づきを生み出す。家族や仲間など、外部の視点を思い描くことで、孤立した問題ではなく、共有可能な課題として再認識できる場面を作り出します。
Explore(探求/共感) 質問例: 「この状況や体験は、あなたにとってどのような意味を持っていますか?」「もし今の課題を別の角度から見たら、どんな可能性が広がると思いますか?」 クライアントが自分自身の物語や背景を探求し、固定された解釈を越えて新たな意味づけを行います。対話を通じて、内面的な価値や強みを掘り下げ、未来への可能性を模索する過程で、自己成長のヒントを引き出すことを狙っています。
Not-knowing(不確実性の許容/未知への開放) 質問例: 「今はまだ答えが見えなくても大丈夫です。どんな可能性や疑問が浮かんでいますか?」「この問題について、完全な答えがまだ存在しない部分はどこだと思いますか?」 即答を求めず、不確実な状態や未解決の部分を受け入れながら対話を進めることで、クライアントに自らのペースで答えを模索してもらう。未知を恐れず対話に臨むことで、思いがけない気づきや新しいアプローチが生まれるプロセスを促進します。

補足説明:

  • **Observe(観察)**では、クライアントに「今ここ」の体験を正確に捉えることを促し、対話の基盤を形成します。これは、後続のプロセスにおいて新たな洞察や共感を引き出すための重要な第一歩です。
  • **Participate(参加/共鳴)**は、クライアントとコーチが対等なパートナーとして互いに関わることで、対話の中で相互理解や新たな視点を得る機会となります。
  • **Explore(探求/共感)**は、対話を通して課題の背景や意味を深堀りし、固定概念にとらわれず多角的に問題を捉えるための重要なフェーズです。
  • **Not-knowing(不確実性の許容/未知への開放)**は、まだ答えが出ていない状態を受け入れ、プロセスの中で自然に生まれる気づきや変容を促す、柔軟な姿勢を育む点が特徴です。

    💡ポイント:目標や目的を持たなくてはいけないのではなく、今は、目標や目的がなくても、大丈夫という安心感を感じたうえで、思い当たることに焦点を当てて、可能性を導いているのが特徴的です。

このOPENフレームワークを活用することで、コーチングセッションは対話自体が学びと成長の場となり、クライアントの内面の変化を促しながら、持続的な成長へとつなげることが期待できます。

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オープンダイヤログでウェルビーイングを高める質問

ここでは、オープンダイヤログの原則に基づいた**OPENフレームワーク(Observe, Participate, Explore, Not-knowing)**を活用し、ウェルビーイング(幸福感・健康感)を高めるための質問方法の事例です。対話プロセス自体が内面の成長や繋がりを促し、持続的なウェルビーイングについて取り上げます。

OPENの要素 質問方法・具体例 狙い・効果
Observe(観察) – 「最近の日常の中で、特に印象に残った瞬間は何ですか?その時、どんな気持ちになりましたか?」

– 「今、あなたが感じている身体の状態や心の声にどんな変化があるか、じっくり観察してみましょう。どんな感覚があるか教えてください。」

自己の現状に意識を向け、マインドフルな観察を促すことで、現在のウェルビーイングの状態や体感を具体的に認識。これにより、自己理解が深まり、改善の出発点を明確にします。
Participate(参加/共鳴) – 「あなたの周りの大切な人々は、あなたのウェルビーイング向上にどのような影響を与えていますか?共に感じたことは何でしょうか?」
– 「グループセッションや家族との対話の中で、一緒に感じた共感や支えがどんな意味をもたらしているか、教えていただけますか?」
対等な立場で自身や他者の体験を共有することで、社会的支援や共感の力を引き出し、内面の安心感と繋がりの感覚を強化。ウェルビーイング向上における「一緒に」(積極的な人間関係)感じる力を活性化します。
Explore(探求/共感) – 「この体験や日常の一コマは、あなたにとってどのような「肯定的な意味」があると感じますか?どんな価値や可能性を感じ取っていますか?」
– 「もし今の状況を別の角度から捉えると、どのような新たな気づきや前向きな可能性が見えてくるでしょうか?」
肯定的な意味づけや物語を深掘りすることで、自己の中に潜むストレングス(強み)ホープ(希望)、そして内面的なレジリエンスに気づくプロセス。既存の視点にとらわれず、未来への可能性を探る姿勢を育み、心の豊かさを促進します。
Not-knowing(不確実性の許容/未知への開放) – 「現時点で答えが見つからなくても構いません。それでも、なにかしら「前向きな問い」となるものを感じ取れますか?

– 「すぐに結論を出す必要はありません。未知の部分に対してどんな「希望」が感じられますか?」

完全な解答や固定された見解よりも、不確実な状態を受け入れる柔軟性を促す。未知を恐れず対話を進めることで、自己発見や自然な成長プロセスが流れるように生まれ、思いがけない気づきや変容を期待できる。特にここでは、「前向きに考え、行動できること」、「楽観性」、「希望」や「可能性」に焦点を当てる。

補足説明:

  • **Observe(観察)**の段階では、現状を客観的に捉えることを重視し、身の回りの体験や感情を明示化することで、何が変化しているか、今どこにいるのかを認識します。
  • **Participate(参加/共鳴)**は、対話の中で自分と他者との共鳴を体感し、孤立感を軽減。対等な視点で支え合う環境が、ウェルビーイングの向上に不可欠です。
  • **Explore(探求/共感)**では、体験の意味や感じ取った価値を深掘りすることで、内面的な豊かさや自己肯定感を高めます。
  • **Not-knowing(不確実性の許容/未知への開放)**は、結果がすぐには明確でなくても、そのプロセス自体を学びと成長の機会として捉え、柔軟に受け入れる姿勢を育てます。

💡ポイント:幸せでなければいけないのではなく、今は、幸福感を感じなくても、大丈夫という安心感を感じたうえで、思い当たることに焦点を当てて、ウェルビーイングの可能性を導いているのが特徴的です。

このOPENフレームワークを活用したコーチングの質問方法は、オープンダイヤログの対話原則を背景に、個人の内面の変化と社会的繋がりを促進し、ウェルビーイングを高めるための有効なアプローチとして機能します。さらに、対話を通じた気づきが、持続的な回復や成長、そして新たな可能性の開花へと導くことが期待されます。

投稿者プロフィール

徳吉陽河
徳吉陽河
徳吉陽河(とくよしようが)は、コーチング心理学研究会・コーチング心理学協会の創設者の一人であり、日本・世界のおけるコーチング心理学のパイオニア。コーチング心理士、公認心理師・キャリアコンサルタント、認定心理士(心理調査)、ポジティブ心理療法士、として教育・医療・福祉・産業分野で活動する専門家。東北大学大学院博士後期課程で研究し、国際コーチング心理学会、国際ポジティブ心理学会など、世界で学び、研究を発表。教育プログラム、心理尺度開発なども専門としている。著書に『ポジティブ大全』『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』『ナラティヴ・セラピー BOOK』、『コーチング心理学ガイドブック』『コーチング心理学ハンドブック』などの翻訳書などがあり、科学的なエビデンスと物語(ナラティブ)に基づくコーチングとウェルビーイング教育を推進している。累計4000名のコーチ、カウンセリング実績」(ワークショップを含む)、「累計6000回以上のセミナー実績」以上の実績がある。国土交通省 航空保安大学講師、元東北文化学園大学講師、元仙台医療センター看護学校講師、元若者サポートセンター講師など。教育機関、海外・国外の法人企業などで講師を担当実績がある。学校法人・企業法人・医療法人(リハビリ)など、主に管理職に関わる講師を数多く担当。座右の銘は、「我以外皆我師」、失敗・挫折もたくさんしており、「万事塞翁が馬」大切にしている。「自己肯定感が低いからこそ成長できる」ことを大切にしている。

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